花嫁はただ泣くだけ。

神永 遙麦

花嫁はただ泣くだけ。

 もう私はあなたに相応しくない。あなたの花嫁として相応しくありたかった。

 そんな気づきと願いに挟まれて、潰されてぐしゃぐしゃにむせび泣いた。泣きながらもあなたの元に来ている私は図々しいかもしれない。それでも、あなたの近くにいたかった。もう無理だ。全てが手遅れ。あなたの花嫁としては穢れすぎている。汚いわ。

「これくらい大丈夫よ」を繰り返していた。心に引っかかりを感じていたけど「気の所為だと」言い訳をしてまで。相応しくない。近づいてはいけない。汚い。手遅れよ……。それでもあなたの……。


 泣きじゃくっていると、あなたの手が私の顎を持ち上げ目線を合わせてくれた。涙で霞んだ目でも、あなたの表情が見えた。私の視界が晴れるにつれ、私の心も不思議と澄み荒波も凪いだ。

 あなたの眼差しは「赦す」と告げていた。ただただ、よく分からないくらい深く慈愛のこもった瞳。

 気がつくとまた私は涙を流していた。

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花嫁はただ泣くだけ。 神永 遙麦 @hosanna_7

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