第4話 襲来

 あれから3ヶ月の月日がたった。


 レイラに剣を教えてみて驚いたのはその成長性だ。


 たったの3ヶ月で俺が教えたことを全て実践し、更に自分の戦闘スタイルにあった独自の剣技を身につけたのだ。


 流石は最強キャラレイラと言ったところだろう。

 

「やった! アルクから一本取れた!」


 俺の頬に微かに傷をつけたレイラは子供のようにはしゃいで喜んでいる。


 先程は力をセーブしていたとはいえ油断はしていなかった。これは彼女の実力が俺の予想を超えた結果だろう。


 最近剣を教えていたお陰で彼女に対して弟子のような感覚を覚えていた俺は悔しさよりもむしろ彼女の成長が嬉しくてたまらなかった。


「ああ、やられたよ。強くなったね、レイラ。」


「ふふ、アルクに言われると嬉しい♪」


 この3ヶ月でレイラは俺を名前で呼ぶようになり前より優しく話しかけてくれるようになった。


 家にきた時とは大違いだ。


 それにしても彼女は本当に強くなった。剣術はもちろん魔力量も3ヶ月前より圧倒的に増えている。


 このまま鍛錬を続ければもしかしたらゲーム以上の強さを持つレイラが誕生するかもしれない。


 まぁ、その為にはある一つのことを解決しなきゃいけないんだが……


「じゃあ今度は魔法の練習するぞ。」


「……やだ。」


 わかりやすく嫌な顔をして顔を背ける。


 そう、彼女はどうやら魔法があまり好きじゃないらしい。絶対に魔法の才能はあると思うのだが彼女が嫌がるせいでまだ一度も魔法を教えれていない。


 この世界の人々は大体、剣士か、魔術師のどちらかになる。どちらも使うという人もいるが大体が両方とも中途半端で典型的な器用貧乏になってしまう。


「……なんで嫌なんだ?」


「だって魔法って撃ったらそれでおわりでしょ? そんなのつまんないよ」


「魔法が使えるようになれば剣術の他にも択が増える。生存率が上がるんだぞ?」


「……じゃあアルクがお願い聞いてくれたら考える。」


「なんだ? 手間とお金がかかるのはやめてくれ。」


「今日久しぶりに一緒に寝て。」

 

 よほど恥ずかしかったのか、そう言った後エルフ特有の尖った耳が朱色に染まっていた。


 いや、可愛いなおい。


 正直この世界にカメラがあったならいますがにでも枠に納めたいくらいの素晴らしい光景だ。よし、その場を記録する魔法でも作るか。


「別にいいぞ、それくらい。」


「ほんと! やった!」


 ゲームのレイラは感情をあまり表情に出さなかったが今の彼女は一目でわかるくらいに感情が出ている。


 もしかしたらこれがレイラ本来の性格なのかもな。


「魔法は使えるな?」


「うん、少しだけど……」


「十分だ。お前には才能があるからな。少し見ていろ。」


 確か、レイラの得意属性は雷。


 とりあえず上位の魔法を見せておくか。


「《雷轟ミョルトゥネス》」


 俺がそう唱えた瞬間、俺の手の平から黒い雷が放出された。


 雷はうねり、獲物を求める猛獣のように攻撃対象を探し、目の前の一本の木に命中した瞬間凄まじい轟音と光と共に木は跡形もなく消え失せ地面が激しくえぐれていた。


「と、こんな感じだ。」


「……すごい……」


 ポカンと口を開け驚くレイラをみて俺はやりすぎたことを知った。


 うーん……かなり威力を抑えたつもりだったんだが……まだまだ出力の制御に関しては課題が多いな。


 うわ……結構地面えぐれてんじゃん……後で父上に怒られるかもな。


「あと、応用としてこんなこともできるぞ。」


 刀身に雷を纏わせると同時に足に魔力を集中させる。

 一度やってみたかったんだ。魔法と剣技を合わせた技を。

 

 そして一気に解放する。


「《 雷轟一閃 》」

 

 瞬間、周囲の大気が揺れ、俺が通った後に雷の軌跡が残る。

 空を切り裂いた俺の刃は負荷に耐えられず、ひびが入っていた。

 

「すごい! アルク、それどうやってやったの?」


「いや、これはまだレイラには無理だからまずは魔法を——」


「ライゴーイッセン!」


「え?」


 その瞬間、目の前からレイラが消え、その直後踏み込みで地面が深くえぐれる。


 な、ま、まさか!


 前方を見ると、20メートルほどで空を切り裂くレイラがいた。


「できた! アルク、できたよ!」


 ま、まさかこれほどとは……レイラの才能やばすぎるだろ……


 

 ◇



「ねぇ、もうちょっとそっちいっていい?」


「……もう十分近いだろう」


「もっとくっつきたいの。だめ?」


「駄目ではないが……」

 

 夜、俺はライラとの約束通り、今日は彼女と一緒に倉庫の檻で寝ることになった。


 前によくうなされている時期があったのでその時はよく一緒に寝ていたのだが最近はそれもなかった。


「今日はよく頑張ったな。流石だ。」


「ふふん、すごいでしょ!」


「でも、魔法はちゃんと覚えような。」


「むぅ……アルクのイジワル……」


 顔をムッとさせ拗ねるところが可愛くて俺が頭を撫でようとした時だった。


「……レイラ、檻から絶対に出るなよ」


「え? アルクどうしたの?」


 俺は格納魔法の中に入れておいた真剣を取り出し、倉庫の壁をじっと見つめる。


 探知魔法に引っかかった反応は3つ。


 間違いない、


 その次の瞬間、壁が吹き飛ばされ立ちこめる粉塵のなかから三人の人影が見えてくる。


 ローブを纏い、杖を持った魔法使いの少女に斧を持った戦士の少女。

 

 そして黒髪の正義感の強そうな瞳の剣士の少年。


 ついに……来たな……


 血が湧き、肉が踊る。


 さぁ、始めようか…………!






  【あとがき】


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ゲーム世界の奴隷商人の横暴息子に転生してしまったので、奴隷ヒロインを甘やかしてたら重たい愛を向けられるようになってしまった ぷらぷら @1473690623

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