出会う

第1話 愛を語ろう

「ねえ、私ばっかりあなたを愛してない?」

キッチンで夕食の用意をしながら、ダイニングテーブルでコーヒーを飲む彼に問う。

「そんなことないよ。」

彼は時々テレビを見ずにコーヒーをただ嗜むことがある。

そんな彼は何を思っているのか、彼の周りの空気が少し冷えているように感じた。

「そんなことないって、本当?」

「本当。」

はいどうぞ、と作っていたカルボナーラを出すと

「ああ、ありがとう」

と少し目の端を緩ませている。

そんなところが大好きだ。


 私は元々他人へ好意や称賛を伝えることが多い。自分の中から溢れ出てくるその人に対しての尊敬や感動を抑えることができず、直接伝えるようになってしまった。別に悪いことではないと思っているし、周りからも「正直な感想ありがとう」「お世辞を言わないって知ってるから嬉しいよ」と言われる。

 しかし、恋人に対して、いつも私から「好き」と言っている。私ばっかり彼が好きで、彼は私に対してなんとも思っていないんじゃないか。私の好意に付き合ってくれているだけなのではないか。と本気で疑ってしまう。


「なんで君は、僕が君を愛しているとわかってくれないんだい?」

「だって」

「なんだい?」

「いつも私ばっかり話して、好きって言って、でもあなたは静かで、私の話をきちんと聞いてくれて、でも、私の話に付き合ってもらってるんじゃないかって」

「そんなわけないって何度言ったかな。」

「えと、、」

「僕も、君のことが大好きだ。でも、君も言ったように僕はあんまり自分から話すタイプじゃない。だからこそ、君の話が楽しいしそんな君が素敵だから、傾聴するわけで、断じて君を嫌っているなんてことはないよ。」

「そお、か...」

「そうだよ。今日のカルボナーラも美味しかった。ありがとう。」

「うん...うん!」


これからも日々が続くんだろう。

でも、それでも良い。

あなたと愛を語れるならば。

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