第28話 毛利君の気持ち
エディンバラから帰って来てから一週間が経った。夏休みも残り四日。私と明日香は映画を見に行ったり、図書館に行ったり、公園に行ったりと毎日一緒にいる。
「アスカ、そろそろ方向性を決めないといけないね」
「方向性?」
「うん、大学に行って何を学ぶかって。それで将来何になりたいのかって」
「そうだな。出来れば俺はお父さんやお母さんの様な研究者になりたいけど、仕事大変そうだし。でもしっかりとお金を稼げる仕事に就かないといけないから、もう少し考えるかな」
「でも、今年中には考えて、来年は志望校決めないといけない」
「そうだよな。レイラと一緒に大学が良いけど、俺の学力で付いていけるかな?」
「何言っているの。明日香はもうすぐ全教科で私を抜くわ。今だって数学、物理、化学、英語では上じゃない。国語と社会位でしょ。それも最近はとても出来るし」
「そうだっけ。まあ、レイラと一緒の大学ならどこでもいいよ」
「またそんな事言って。二人でよく考えよ」
「そうだな。二人でよく考えるか」
二学期の初日の始業式の日。俺はジェシカと家の最寄り駅で待ち合わせして電車に乗り、学校の最寄り駅でレイラと合流する。
そしてレイラと手を繋いで歩くのだけど、前だったジェシカも手を繋ぎたいと我儘をいっていたが、今日は何も言わない。何か心境の変化でも有ったのか?
でも顔は明るいし挨拶も元気で良かったから大丈夫なんだろうけど、それでもこれはこれで気になる。
「ジェシカ、エディンバラから帰って来てから何か変わった事でもあるのか?」
「何も無いよ。そうだアスカ。私、この高校に卒業までは居るからそれまで宜しくね」
「えっ、それは当たり前だし、構わないけど」
どういう意味だ?
教室に入ると毛利の傍で百瀬さんが楽しそうに彼と話をしている。
「毛利、おはよう」
「おはよう、カーライル」
それだけ言うとチラッとジェシカの顔を見た。百瀬さんの顔を見て面白くなさそうな顔をしている。どうしたんだ?
始業式も終り、午前中二時間の授業も終わって帰ろうとした時、ジェシカが
「毛利君、一緒に帰らない?」
「「「えっ?!」」」
流石に声を掛けられた本人も俺もレイラも驚いた。どういう事だ?
「えっ、ああ、いいけど」
毛利がチラッと百瀬さんの方を見た。俺も彼女の方を見ると面白くない顔をしている。これってもしかして。毛利の返事を聞いてジェシカが嬉しそうな顔をした。
「毛利君、アスカ達と一緒に帰ろう」
この日は四人で駅まで行って毛利とは別れ、電車に乗った後、ジェシカとは駅で別れた。レイラは俺の家に来る。
次の朝、登校して教室に入るとやはり昨日と同じ光景が有った。俺の顔を見た毛利が、
「カーライル、譲原さん。今日お昼食べ終わったら、ちょっと相談に乗ってくれないか?」
「構わないけど」
何だ?毛利が俺達に相談って。
昼休み、俺とレイラ、毛利とジェシカと一緒にお昼を食べた後、毛利の誘いで校舎裏のベンチに行った。
「悪いな。二人共」
「構わないけど、どうしたんだ?」
「…言いにくいんだけど、夏休みの間に百瀬さんから告白されて」
「……………」
「でも、実言うと俺、アンダーソンさんの事が気になっているんだ。四月からずっと彼女の相手をしているうちに彼女の事好きになって来ているみたいで」
「「えーっ?!」」
「「しーっ!」」
俺とレイラが一緒に驚いて一緒に唇に人差し指を当てた。
「あははっ、お前達は本当に仲が良いな。話し戻すけど、でもアンダーソンさんが俺の事どう思っているか分からないんだ。
それと彼女と二人だけで話す勇気がない。だから彼女に俺の事をどう思っているか聞いてくれないか?」
「これはまた…」
「聞いてくれと言われてもなぁ。レイラ聞けるか?」
「私は…。でもエディンバラから帰って来て、いやその前からジェシカが変わって来ている。そう、毛利君を意識している様な気がする。私の感だけど。でも聞くのはなぁ」
「そうだよな。ついこの前までアンダーソンさんはカーライル一色だったからな。彼女にとって譲原さんは恋敵になるんだから聞けないか。カーライルから聞いて貰うのは、話が拗れそうだし」
「毛利、二人で会え。ジェシカには言っておく。毛利と会ってくれと言うだけなら何も問題ないだろう。レイラ言ってくれないか?」
「私?」
「こういうのは女の子同士の方が良いんじゃないかな?」
「まあ、一理あるけどねぇ」
私達は毛利君と話が終わった後、教室に戻ったのだけど、百瀬さんが心配そうな顔をしていた。ジェシカは不思議そうな顔だったけど。
そして次の日の登校の時、私はジェシカに
「ジェシカ、ちょっと良いかな?」
「なに、レイラ?」
「…毛利君があなたと二人で話をしたいんだって」
「えっ?!なんで?」
「それは本人から聞いて。どう会ってあげれる?」
「会うのは構わないけど、百瀬さんが最近、毛利君と仲が良いでしょう。それは大丈夫なの?」
「それを含めて話をして見たら」
「分かった」
「じゃあ、後は二人でね」
毛利君が私と二人で会いたいと言って来た。どういう事なの?まさか、もう私の相手をする気はないとか言われるのかな。嫌だな。
私は一限目が終わった中休みに
「毛利君。今日放課後、図書室で教えて欲しい事があるんだ。いいかな?」
「構わないけど」
チラッと百瀬さんを見ると面白くない顔をしている。彼女やっぱり毛利君の事を。
不味い、何か毛利君に対してあの三人が不穏な動きをしている気がする。何とか阻止しないと。
私は、昼食はいつも仲の良い女子達と食べている。いつもは教室だけど今日は
「ねえ、今日は学食で食べないかな?」
「「いいよ」」
三人で学食に行ってお弁当を食べながら
「夏休み、毛利君に告白したんだけど保留にされたの」
「えっ!どういう事?」
「そういう事。だから朝は彼の傍に行って色々話したりしてアピールしているんだけど、ちょっと気になる事が有って」
「なに?」
「カーライル君、譲原さん、アンダーソンさんの動きが怪しい?」
「怪しい?」
「うん、昨日のお昼休みに毛利君がカーライル君と譲原さんと話をしたでしょ。あれが気になって」
「…。えっ、そういう事」
「そういう事って?」
「毛利君はアンダーソンさんに気が有るんじゃないかって所。だからあの二人に相談したんじゃない」
「なるほどう。確かに」
「だから、どうすればいいかと思って」
「うーん、難しい問題だな。毛利君にその事、直接聞く訳には行かないし」
「あっ、今日アンダーソンさん、毛利君に放課後図書室で教えて欲しい事があるって言っていたじゃない」
「あんた良く聞いているわね」
「まあね。だからそれを聞けば」
「でも私はそれ出来ないよ」
「私が、ちょっと離れて座っている」
「お願いね」
「うん、分かった。友梨佳の頼みだもの」
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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