第26話 人の心は変わる物


 学期末考査の結果は

 毛利が三位。

 百瀬さんが五位。

 レイラが十五位。

 俺が十七位


 だった。ジェシカは残念ながら四十位以内には入っていない。でも本人は手応えが有ったのにと残念の様だ。


「カーライル。凄いじゃないか。もう言葉の壁なんて全く無いんだな」

「ああ、レイラのお陰だよ」

「そ、そうか」

「私だってリストには載らなかったけど手応えあったんだから。見てよこれ」


 成績順位は個別にも渡される。ジェシカは二百四十人中で八十五位だ。

「ジェシカ、凄いじゃないか。まだ日本に来て一年半だっていうのに」

「ふふっ、アスカ私を見直した」

「ああ、凄いぞ」

「じゃあ、これからも毛利君とアスカで教えてよ」

「「「えっ?!」」」


 毛利君が入った。相当彼を気に行った様だ。


 私、百瀬友梨佳。悔しい。私の席がもっと彼らに近かったら。ジェシカ・アンダーソン、彼女さえ転入して来なかったら今頃毛利君と…。でもまだ十分にチャンスがある。もうすぐ夏休みだ。この機会を生かさないと。




 夏休みが近くなった日に明日香が

「レイラ。夏休みエディンバラに行かないか。お婆ちゃんとお爺ちゃんにレイラを紹介したいんだ」

「え、うん。行きたいけど両親に相談しないと」

「それは勿論だ。八月半ば位に両親と行こうと思っている。今回はまだ一ヶ月近くある。準備は十分出来るだろう」

「うん。聞いてみる」


 その日、家に帰って両親に聞くと

「そうか。明日香君がそう言うのか。ご両親はどうなんだ」

「去年既に言われている」

「そうなの。だったらいいけど…。でも麗羅そこまで行くともう後戻りできないわよ。あなたは今年で十七になるのよ。本当に彼で良いのね」

「うん」


「分かった。麗羅がそこまで思っているなら行って来なさい」

「はい」


 私はスマホで直ぐに明日香に連絡した。

『両親は行って良いって』

『本当か!じゃあ直ぐにパスポート準備しないと』

『うん。でも夏休みは例年と同じだよ』

『当たり前だ。やる気満々だよ』

『ふふふっ、それならいいわ』



 俺はレイラから連絡が有った後、直ぐに両親にその事を話した。

「そう、レイラちゃんが行くって言ってくれたのね」

「あの子なら申し分ない。両親に会わせたらもう大丈夫だろう。ところでレイラちゃん会話は大丈夫なのか?」

「英コミの成績は良いから自分の紹介は出来ると思う」

「それが出来れば問題ない」

「いよいよだな。母さん」

「ええ、嬉しいわ」



 パスポートは夏休みの宿題を始める前に申請した。受領迄一週間ほどかかるらしい。


 その間に二人で夏休みの宿題を急いで済まそうと思ったら、何故かジェシカが毛利と一緒に俺達とやりたいと言って来た。


 毛利と二人だけでやれと言ったんだけど、彼が二人では色々心配だ。だから俺も一緒に入れてやってくれと言う事でまた四人になってしまった。



 四人で夏休みの宿題をやり始めて五日目。ジェシカが

「アスカ、今年はエディンバラに帰るの?」

「帰るぞ。レイラも一緒だ」

「えっ?!レイラも一緒なの?」

「ああ、お爺ちゃんとお婆ちゃんに紹介する。俺の結婚する相手だって」

「げほっ、げほっ。明日香、お前、譲原さんと結婚するの?」

「ああ、両方の親も認めてくれている。だから後はお爺ちゃんとお婆ちゃんに紹介すればいいだけだ。勿論、結婚は今直ぐじゃないけどな」


 ジェシカが悲しそうな顔をしている。でもこればかりは譲れない。


「はぁ。お前達もうそこまで来ているのか。羨ましい限りだよ。何で俺、彼女出来ないんだろう」

「えっ、毛利君いないの?」

「うん、なんか女子からも敬遠されている感じで」

「敬遠?」


 そういう事か、クラスの中では何となく毛利君の相手は百瀬さんという空気が流れている。もしジェシカの相手をしていなければ、もうそういう仲になっていただろう。

 しかし、それはそれで重いな。


「まあ、いいけどさ。でも高校卒業するまでには見つけたいよ。お前達程じゃないにしてもさ」


 ジェシカが何とも言えない顔で毛利君を見ている。ちょっと空気が重くなって来た。


「お話はその位で早く宿題片付けよう」

「そうだな」



 七月も三十一日になり、四人共一通りの宿題が終わった。

「終わったな。後は、夏休みだ。明日香達はエディンバラに行く以外何か有るのか?」

「今年は、レイラの家族と海に遊びに行く。去年はうちの家族とレイラが一緒だった」

「なんか、聞いているだけで世界が違う気がするよ。がっちり、家族同士の関係が構築されているんだな」

「勿論だ。もう九年になるからな」

「俺も欲しいなぁ。彼女」

「ところで毛利、この後の夏休み何か予定入っているのか?」

「クラスの男子とプールに遊びに行くくらいだ」

「毛利、私と一緒に遊ばないか?」

「「「えっ?!」」」

 ジェシカの言葉に三人が驚いた。


「えっとぉ……」

 毛利君も流石に即答できない様だ。


「嫌なのか?」

「ジェシカ、お前もうすぐ、エディンバラに帰るんじゃなかったっけ?」

「まあ、そうだけど。二日空いているし。一日位いいかなと思って」

「アンダーソンさん。流石にそれは厳しいよ。今度にしよう」

「やっぱり無理なの?」


「まあ、俺も色々有るし」

「さっき何も無いって言った」

「あれば遊びだけの話だから」

 ジェシカがまたつまらなそうな顔をしている。


 話を適当に切り上げて私が作ったお昼を四人で食べ終わると解散となった。但し、帰ったのは毛利君だけ。


「ジェシカ帰らないの?」

「誰もいないし。アスカの傍に居たいし」

「そうか」


 参ったなぁ。毛利君とジェシカが帰ったら明日香と二人で楽しい事するはずだったのに。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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