第25話 ジェシカの様子がおかしい

今日から毎日投稿になります。残り六話です。お楽しみ下さい。


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 私はアスカが通うハイスクールに入ってから分かったのだけど、私の日本語ではまだ理解が出来ない所が多くてその都度に隣に座る毛利君に聞く事が多かった。


 本当はアスカに聞きたいのだけど、彼の隣にはレイラが居る。そしていつも悔しいほどに仲がいい。


 レイラが途中駅で乗って来ると直ぐに手を繋いでいる。電車に乗って学校の最寄り駅に着いてからも彼女と手を繋いで歩いて行く。


 私も手を繋ごうとしたんだけど、断られた。最近、土日にアスカの家に遊びに行っても居ない。レイラの家に行っている様だ。でも私は彼女の家を知らない。




 毎日、毛利君に言葉を掛けて分からない事を聞いている内にこいつも良い奴だと感じる様になった。


 私がしつこく、でも本当に分からないから聞いているのだけどいつも笑顔で答えてくれる。特に国語は日本語学校の授業の比じゃない。


 英語以外は彼が傍に居ないと全く駄目だ。だからいつも彼には悪いと思いながらべったりと付いている。


 購買に行くのも彼と一緒だ。勿論アスカも一緒だけど。今日も何とか午前中の授業をこなし、お昼になった。

「毛利君、購買に連れてって」

「「「えっ?!」」」


「あ、ああ。いいよ。行こうか」


 ジェシカが明日香より先に毛利君に声を掛けた。どういう事?


「カーライル、行こう」

「おう」


 四人で購買に行く。今でも凄い注目を浴びるが、前の様に奇異な目では見られなくなった。


「毛利君、コロッケパンというのは美味しいの?」


 明日香が、

「ジェシカ、コロッケというのはジャガイモで出来ているんだ。美味いぞ」

「本当か、アスカ。じゃあ買ってみる。後、コンビーフサンド。それに牛乳だ」


「ジェシカも購買にだいぶ慣れたね」

「皆のお陰だよ」


 ジェシカが前の様に明日香、明日香しなくなった。多分毛利君効果。これで明日香から少しでも気がそれればいいんだけど。




 私は、四月からアスカの家に住んで、お母さんをエディンバラに帰せると思っていた。でもアスカとレイラを見ているとしっかりと恋人同士になっているのが良く分かる。私だって女の子だ。ちょっとした二人の仕草でどこまで進んいるのかなんて分かる。


 でもそんな関係どうにでもなる。結婚前に童貞や処女じゃなくてはいけないなんて全くありえないからだ。私は未経験だけど。


 だから、まだ十分チャンスはあると思っている。しかしアスカの両親もレイラの事をとても気に入っているのが良く分かる。


 勿論、私に対しても大切に接してくれているけど、今のままではどうにもならない。はっきり言って二人の間に付け入るスキがないんだ。


 そんな私の精神的状況に入って来たのが毛利君。勿論彼から何を言われた訳ではない。毎日私が迷惑を掛けてしまっている。


 本人からすれば迷惑極まりないのだろうけど、嫌な顔一つ見せずに丁寧に色々な事を教えてくれる。




 アスカとレイラそれに私が学校の最寄り駅に降りて学校に歩いて行くとまだまだ注目の的だ。


 一つには私だけじゃない。背が高く、綺麗な金髪で私と同じエメラルド色の眼を持つアスカが一緒という事も有ると思う。レイラだって可愛いし背も女の子にしては高い方だ。


 もう一つは私である事は間違いない。日本人だって綺麗に輝く黒髪を持っているけど私の様な色の髪の毛は居ない。


 スコットランドでは、髪の毛の色はバラバラだ。金髪、銀髪、赤毛、黒毛、私みたいなゴールドに赤が混じった髪の色。私は珍しい方だと思うけど。でも一杯いる。



「ジェシカ、静かだな」

「アスカ。今度ガッキマツコウサが有って直ぐにその後モシが有るじゃない。勉強教えて。この前のチュウカンコウサの時、全然分からなくて」



 明日香も同じだった。でも明日香が駄目だったのは小学校、中学一年くらいまで。中学二年から三年、高校一年にかけての理解度は急激に伸びた。そしてこの前の二年生になって初めての中間考査は学年順位が二十位まで上がった。凄いと言っていい。


 単に勉強が出来るだけじゃなくて日本語の理解力が凄いのだ。お互い歴史書を図書室で借りて読んでいるけど、明日香の読書速度はとても速い。


一週間で一冊読み切る速度だ。その速度で日本語の知識がどんどん積み重なって言っている。英語は勿論のこと数学、物理だけを取ってみれば私より出来る。やはりご両親のDNAなんだろうな。



「毛利に教えてもらったらどうだ?」

「アスカは私に教えるのが嫌なの?」

「そんなことないけど、今ジェシカは毛利に見て貰っているじゃないか。その延長で頼めばいいんじゃないか」

「だけど…私はアスカがいい」



 そんな話をしている内に教室に着いた。自分の席に着くなり明日香が

「毛利、おはよ」

「おはよ。カーライル」

「なあ、学期末考査に向けて四人で勉強会しないか?」


-えっ?

―毛利君とカーライル君が一緒に勉強会?

-聞き捨てならないわね。

―うんうん。


 変な所で女子が反応した。



「四人って、カーライルと俺、それに譲原さんと…アンダーソンさん?」

「そうだ」

「良いけど」


「ねえ、それに私達も入れないかな?」

「えっ?!」

 声を掛けて来たのは一年から一緒の女子と何と百瀬さんだ。


「百瀬さんも?」

「うん」


「カーライル。ちょっと予定が違って来たぞ。どうする」

「あんまり人数が多いのはちょっと」

「そっかぁ、そうだよね」

「あっ、百瀬さん、私達いいから。あなただけ入れて貰ったら。ねっ!」

「えっ?」


 私達は一年の頃からの友達。毛利君と百瀬さんがクラス委員長と委員をやっている時から百瀬さんが毛利君を気にしていた事は知っている。


 二年生になって百瀬さんが毛利君に接近するのかと思っていたら、なんとアンダーソンさんが転入して来て毛利君を独り占め。


 手を子招いている百瀬さんを毛利君に推すいいチャンスだ。アンダーソンさんはカーライル君狙いだって分かっているけど、カーライル君と譲原さんの関係は遥かに長い。


 その上しっかりと恋人同士になっている。校内全員が公認の仲だ。余程の事が無ければ割って入る事は出来ない。


 もし、アンダーソンさんが毛利君に矛先を向けたら、今の関係からしてあの二人が恋に落ちる可能性は高い。

 だから私達は百瀬さんを応援する。一年からのクラスメイトとして。


「百瀬さん一人くらいなら良いか」

「そうだな。ウィークディは図書室でやって、土日は図書館って所か」

「アスカの家は?」

 ジェシカが言うと


「うーん、リビングで五人か。何とかなるかな」

「ほんと!」

 反応したのは百瀬さんだった。


「一応両親には確認取るけどいいか?」

「勿論だよ」

 明日香と私だったら何の問題も無いけどこの人数じゃね。


 結局勉強会は五人で行うことになった。ウィークディは図書室で静かに行ったけど、ジェシカが毛利の横にピッタリとついて聞きまくっている。百瀬さんはそんな二人を横に見ながら一人で一生懸命だ。



 土日は俺の家のリビングで行った。駅まで俺とレイラが毛利と百瀬さんを迎えに行って二人が来た事をジェシカに連絡する手はずだ。



 例によってジェシカが毛利の隣に居るけど反対隣りは百瀬さんだ。

 俺とレイラはローテーブルを挟んで反対側で並んでいる。いつもならジェシカは俺の隣に来るはずだが、いつも聞いている毛利の隣の方が聞きやすいんだろう。


 時々、百瀬さんが毛利に聞いている。この子は結構成績がいい筈なんだけど?


 帰りは俺とレイラそれにジェシカの三人で毛利と百瀬さんを駅まで送って行く。分かれ際に百瀬さんが毛利ととても仲良さそうにしているのを見てジェシカが面白くない顔をしていた。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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