第24話 ジェシカが転入して来た


 明日香と恋人同士になってから四か月が過ぎた。ジェシカも大分日本語が上手くなって来て、私達の会話に日本語で混じる様になって来た。


 そして年が明けてから彼女が、

「アスカ、レイラ。私、転入する。あなた達の学校に」

「「えっ?!」」


「転入って言ったって、試験とか有るだろう。大丈夫なのか?」

「伊達に去年の二月から日本語を覚え始めた訳じゃないわ。今ではこうして話せるでしょ。日本語」

「確かになぁ」


 でもまだ怪しい感じだけど。

「転入試験はいつ受けるんだ?」

「二月の終り。だから同じ学年よ四月から」



 確かにジェシカは頭が良いのは分かるけど一年で転入試験受けれるまでになるとは。


「学校には頼むの、アスカと同じクラスになる様にって」

「そ、そうか」

 そんな事出来るのかな? 


 転入試験が受かった事を聞いた後は、ジェシカのお母さんがうちに来て両親や俺にジェシカの事を宜しく頼むと挨拶してくれた。


 ジェシカとはエディンバラに居た頃からの幼馴染だし、出来る限りの事はすると言ったのだけど。



 そして、四月になり始業式が有った。次の日に新しく担任になった毛利理香子(もうりりかこ)先生が教室に入って来ると


「皆さん、おはようございます。今日から転入してきました生徒を紹介します。アンダーソンさん入って来なさい」


「「「「「おーっ!」」」」」

「「「「「きゃーっ!」」」」


 腰まで有る艶やかなレッドゴールドの髪の毛。背は高く百七十センチ近い。大きなエメラルドグリーンの様な瞳。高い鼻と可愛い唇。クラス全員の注目を引いた。


 教室の中が鎮まらない。


「静かにしなさい。アンダーソンさん。自己紹介をして下さい」

「はい、私の名前はジェシカ・ゲオルグ・アンダーソン。ジェシカと呼んで下さい。スコットランドエディンバラから来ました。アスカ・ヨウレン・カーライルは私の幼馴染です。

 先月までインターナショナルスクールと日本語学校に通っていました。宜しくお願いします」


 パチパチパチ。


「アンダーソンさんはカーライル君と同郷ね。カーライル君の隣の譲原さんだから、その前の毛利君の隣がいいわね」


「先生、私はアスカの隣が良いです」

「駄目です。毛利君の隣です」

 カーライル君の隣は譲原さんと中学からの申し送り事項。変える訳には行かないわ。しかし、何も無ければいいんだけど。



 ジェシカがスタスタとこっちにやって来る。皆の注目の的だ。


―すごいなぁ。滅茶苦茶綺麗な髪の毛だ。初めて見た。

―眼も綺麗だな。カーライルで慣れてたけど、女の子の眼ってまた違う輝きがあるな。

―うん。


 自分の席を通り過ぎて俺とレイラの席の間に立つと

「アスカ。来たわよ。もっと仲良くしよう」

「ジェシカ、分かったから自分の席に座れ」

「レイラが替わればいいのよ」

「ジェシカ。一日目からそんな事言っていると…」

「アンダーソンさん、早く座りなさい」

「はい」


―ねえ、聞いた。

-これは一波乱あるかも

-うんうん。



「毛利君、君がアンダーソンさんに学校の中を案内してあげて下さい」

「分かりました」


 本当はアスカが良いのに。なんでこの男なんだ?


 午前中の授業は聞いているはずなのに先生達が入って来る都度に目を丸くしていた。

 ただ、まだ先生の日本語や教科書の内容についていけない部分があるみたいで、やたらと毛利君に小声で聞いていた。昔の明日香と私見たい。


 午前中の授業が終わりお昼休みになるとジェシカが、

「アスカ、ここではお昼はどうするの?」

「毛利、教えてあげてくれ」

「やだ、アスカがいい」

「ジェシカ。我儘言うな」


「カーライル、アンダーソンさんが慣れるまで俺と一緒に居てくれ。彼女も安心するだろう」

「それは分かるが」

「じゃあ、教えて」

「仕方ない。レイラも一緒だぞ」

「分かっている」



 ここ迄は良かったのだが、ジェシカを連れて廊下に出たとたん、他のクラスの生徒からの注目が凄かった。


-誰だ?

―今日2Aにスコットランドから転入して来たらしいぞ。


―凄いわね。あんな綺麗な髪の毛見た事無い。

―それにあのエメラルドグリーンの眼。引き込まれそう。

―お人形さん見たい。



「アスカ、賑やかね」

「皆が慣れるまでだ」


 購買に行くと

「アスカ、これは?」

「菓子パンと言う奴だ。美味しいぞ」

「アスカが選んで」

「仕方ないなぁ。早く慣れろ」

「分かっている」


 ジェシカ用にコンビーフサンドと焼きそばパンを選んだ。食べれるかな?後はオレンジジュースだ。


 俺とレイラはいつもの奴。毛利も好きな物を選んでいた。



 買っている間もジェシカの注目度は凄かった。そんな事は無視して教室に戻り食べていると入り口に他のクラスの生徒が溜まっている。ジェシカを見に来た子達だ。


「アンダーソンさんは、凄い人気だな」

「一週間も過ぎれば来なくなるよ」

「それで済めばいいんだけど」



 四人で食べ終わると

「カーライル、校内を案内するのはいいが、結構気を付けないとな」

「ああ、毛利とジェシカ。俺とレイラで四人で行くか。良いかレイラ?」

「私は構わないけど」


「アスカだけじゃ駄目なの?」

「毛利先生がジェシカを案内するのは毛利だと言っていた。あれ?毛利。毛利先生って?」

「ばれたか。あの人は俺の義理の姉だ。でも気にしないでくれ」


―そ、そうなの?

―何となく気にはなっていたんだけど。


 何故か、他の女子が反応した。


「そうか。じゃあ、そろそろ行くか」

「ああ、まだ二十分あるけど、残りは今日の放課後にするか」

「そうだな」



 昼休みは、図書室とか理科室、音楽室を案内した。しかしそこに行くまででも三年生や一年生がジェシカを見ては驚いていた。もう開き直るしかない。



 午後の授業も終り、放課後になると

「カーライル。今日中にアンダーソンさんへの案内済まそう。協力してくれ」

「大丈夫だ。行くぞレイラ」

「うん」

「アスカ、私は呼んでくれないの」

「もう、行くぞジェシカ」

「あははっ、これは大変だなカーライル」


 その後は体育館や武道場、校庭を案内したんだけど、部活の人達の練習が止まってしまう程の注目を浴びてしまった。


 いずれにしろ、知られるんだから、一日で済ませた方がいいけど、明日からが大変そうだな。



一通り案内が終わると

「アスカ、疲れた。帰ろう」

「ああ、疲れたな。帰ろうか」

「うん」


「カーライル、譲原さん悪かったな」

「そんな事は無いよ。毛利君、明日からジェシカの事宜しくね」

「私は、アスカ」

「駄目。明日香は私の彼だから」

「ふん!今の内よ」


「おい、カーライル。これって?」

「見ての通りだよ。毛利、ジェシカを頼む」

「分かったけど…」


 はぁ。カーライルを追ってスコットランドからやって来た女の子か。また凄い子が来たものだな。でもカーライルと譲原さんは誰もが認める恋人同士。どうなるんだぁ? 


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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