第23話 二人が承知しても納得しない子がいる
俺はレイラに告白した次の日からも何も変わらない日々を過ごすはずだったのだが…。
まだ、五日ほど夏休みがある。
レイラと一緒に居る所へ当然の様に遊びに来るジェシカに
『ジェシカ、俺、レイラに告白して正式に付き合うことにしたから』
『えっ?!なんで?』
『何でと言われても俺はレイラと一緒になる』
『駄目だよ。レイラは日本人だよ。アスカはスコットランド人じゃない。私と一緒になるのが当然でしょう』
『今時何を言っているんだ。俺はもうこっちに八年もいる。これからもこっちに住むんだ』
『アスカ、考え直して。ねえ、私があなたのパートナーになる。ずっと、ずっとあなたを大切にする。あなたが日本に居ると言うなら私もこっちにいる。だからレイラより私を選んで』
明日香とジェシカが言い合っているというより彼女が明日香に何か頼んでいる感じだ。
彼は今日ジェシカが遊びに来たらはっきり言うと言っていたからその事だろう。でもジェシカは納得していないみたい。
『駄目だ、俺はレイラを選ぶ。諦めろ』
いきなりジェシカが立ち上がった。
『私は絶対にアスカがレイラと一緒になる事を認めない。ぜーったいに認めない。アスカは私と結婚するの!
レイラ、あんたにアスカは渡さないわ!』
凄い剣幕で何か言うと部屋を飛び出して行った。
「明日香、彼女…?」
「うん、俺がレイラに告白して付き合いう事に決めた。レイラと一緒になるって言ったらジェシカが絶対に認めない俺と一緒になるのは自分だって言って出て行った」
「やっぱりそうなるかぁ」
「ジェシカには納得してもらうしかないよ」
「彼女、積極的だよ。ヤダよ、勝手にファーストキス取られちゃぁ」
「じゃあ、レイラ、今からキスしようか。もうこういう事言ってもいいんだよな」
「良いけど、しない。まだ大切な言葉聞いていない。女の子が絶対に言って欲しい言葉」
なんなんだ?その女の子が絶対に言って欲しい言葉って?教科書にも歴史書にも載っていないぞ。
次の日から俺はレイラの家に朝早くから行く事にした。ジェシカが来てもいなければ諦めるだろう。それにスクールはもう始まるはず。
九月に入り学校が始まった。始業式当日、俺とレイラは学校の最寄り駅で待合わせると俺からレイラの手を握った。
「ふふふっ、嬉しいな」
「レイラ、俺もだ」
学校が近くになるにつれて同じ制服を着た生徒が多くなって来る。中には俺達が手を繋いで歩いている事に驚いた顔をしている人も居た。
昇降口で洗っておいた上履きを靴袋から取り出して履き替えるとそのまま手を繋いで教室に入った。
もう教室の入口は俺の身長では頭を下げないとぶつかる様になってしまった。仕方ないけど。
自分達の席に着くと
「おはよ、カーライル、譲原さん」
「「おはよ、毛利(君)」」
「手つないでいたよな」
「ああ、俺とレイラは正式に付き合うことにしたんだ」
-えーっ、つ、ついに。
―間に合わなかったか。
―最初から無理だったのよ。
―悲しい。
周りの声を無視して
「そうか、おめでとう。良かったなカーライル」
「ああ、俺も嬉しいよ」
「へーっ、じゃあ、キスとかしたの?」
「えっ、百瀬さん、そういう話は」
「えっ、まだしてないの?二人共付き合い始めたんでしょ」
「そ、そういう事はゆっくりと」
―ねえ、これって。
-うん、まだチャンス有るって事なんじゃない
―そうだ、そうだ。
そんな話をしていると担任の小早川先生が教室に入って来て
「体育館で始業式を行います。皆さん、廊下に出て下さい」
ガタガタと皆で廊下に出る。並びは俺が一番後ろだ。体育館で校長先生のお話を聞いた後、色々な連絡事項を言われた。
始業式が終わり、教室に戻って来ると少しして早川先生が戻って来た。
「皆さん、共通の宿題は、各列毎に後ろの人から順番に前に渡してくるように。各教科の宿題は担当の先生に渡してください。これから避難訓練が始まります。校内放送がありますのでそれに従い行動して下さい」
「レイラ、避難訓練ってなんだ?」
「さぁ、私も初めてだし」
始まってみれば、何てことない事だった。皆で校庭に出て、消防署の人の説明と模擬消火訓練のデモなどだ。
二人でそれを見ていると後ろから声を掛けられた。
「カーライル、譲原さん。いつもながら仲いいな」
振り返ると中学の時一緒だった秋葉作治だ。
「サクジ、久しぶりだな」
「ああ、それよりお前達、付き合い始めたんだって」
「何で知っている?」
「もう学年じゃ噂が広まっているよ。それより、カラーライル、譲原さんにどんな告白したんだ。愛しています。付き合って下さいとか言ったのか?」
「「あっ!」」
明日香が考えて私に言って欲しかった言葉をーっ!
「秋葉君、どっかに行きなさいよーっ!」
「な、なんだよ、いきなり。久しぶりに会ったのに」
「五月蠅い。あっちに行きなさい」
「カーライル、俺なんかいけない事言ったか?」
「多分、俺もそう思う」
「そ、そうか。じゃあまたな。幸せにな」
秋葉君が、走って人混みに消えた。
「あの、レイラさん」
「な、なによ」
「サクジが言っていた、あ…」
「待って。明日香、ここでは言わないで。帰ったら」
「分かった」
早めに終わった学校を後にして
「レイラ、俺の所に来るか?」
「うん」
はぁ、でも…ふふふっ、まあいいか。きっかけはどうあれ。
明日香の家に行って、彼の部屋に入ってから彼は私を優しく抱いて
「レイラ。愛している」
「明日香。私も愛している」
それから…。後は想像して。えへへ。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
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