第22話 言葉の忘れ物
明日香が帰って来た日は、疲れているだろうからと私は一人で家に帰った。結局言えなかった。
でもその日の夜、明日香から連絡が有った。
「レイラ、明日会いたい」
「勿論だよ。私の家に来る?それとも明日香の家に行く?」
「俺が、レイラの家に行く」
「分かった」
俺は、明日レイラに俺の気持ちを伝えるつもりだ。たったの一週間だけど彼女が傍に居ない事がどれだけ辛い事か良く分かったからだ。
翌日、俺は午前九時にレイラの家に行った。俺の家でも良かったが、ジェシカが来る可能性が高かったからだ。
インターフォンを押すと直ぐに玄関を開けてくれた。
「上がって」
「うん」
レイラは、何も言わずに俺を彼女の部屋に連れて行くと
「明日香」
彼女がいきなり抱き着いて来た。俺も彼女の背中に手を回して抱き締めると
「明日香、会いたかった。あなたが居ない間、心が苦しくて、寂しくて、どうしようも無かった」
「レイラ、俺もだ。明日香が居ない日なんて考えた事無かったから、向こうに居てもずっと君の事が忘れられなかった。もう離れるのは嫌だ。ずっと一緒に居よう」
「うん、絶対に離れない」
どの位経ったのか分からない。ずっと抱き締めて、抱き締められていた。
明日香がゆっくりと私の背中から手を離すと私も離した。ベッドの端に二人で座ると彼は凄く真面目な顔になって
「レイラ」
「うん」
「も、もし今から言う事が嫌だったら、はっきりってくれ」
「……………」
「レイラ、好きだ。君と初めて会ってから今迄一日たりとも一緒に居ない事は無かったけど、向こうに一週間行って考えたんだ。
俺はレイラが居ないと駄目なんだって。今の気持ちは友達としての好きなのか、それとも…異性として好きなのか、…多分両方入り混じっているんだと思う。
でも、レイラと一生一緒に居たいという気持ちは揺らがない。
…レイラの気持ちも知らずにこんな事言って、笑われたら、友達だけだって言われたらどうしようかという思いがずっと有って怖くて言えなかった。
でも、もうはっきりしたい。このままじゃあ、一生一人で悩んでいそうだから。
……レイラ、俺と結婚してくれ。直ぐにとは言わない。でも結婚すれば一生一緒にいれる」
明日香が、言ってくれた。結婚してくれって。私の心の不安が一気に飛んだ。でもその前の肝心な言葉を聞いていない。でも良いのかな。
「レイラ。駄目なのか?」
私はもう一度彼を思い切り抱きしめると
「うん、うん。いいよ、いいよ。結婚しよう。でもその前に言って欲しい言葉がある」
「言って欲しい言葉?」
「うん」
なんだ、これだけ言葉並べたんだぞ。まだ言っていない言葉なんてあるのか?
「あの、レイラ。それって」
「うん、言って」
「……………」
「えっ、言えないの?」
「俺、何か忘れている?」
「うん、女の子が一番言って欲しい言葉」
「…。レイラ、ごめん。分からない。俺の知らない難しい日本語があるのか?」
「知っている。それ言ってくれるまでキスもしないから」
「えーっ!そんなぁ!」
俺はいったい何を言い忘れたんだぁー?
もう、母音の一番目と二番目でしょ。でも明日香からはっきりと私への気持ちが聞けた。これでもう心が落着ける。でも、不安要素が一つある。ジェシカ・アンダーソンの事だ。
彼女は積極的。下手すると明日香のファーストキスを持って行かれてしまう。だから彼には早く言って欲しい。あ・い・し・て・るって。
「レイラ。俺達は今まで通りで良いと思うんだけど、今迄の状態と付き合っているという状態ってどこが違うんだ?一応これで俺達付き合っているという事にしていいんだよな」
まだ、言葉足りないけど、虫よけにはいいか。
「そうね。今まで通りだけど。明日香が私にきちんと言ってくれたから付き合っているという事になるね。
でも今までと違う所って?…何かな?」
「さぁ?あっ、登校時に手を繋ぐとか?」
「今更の様な気もするけど」
「そうだよなぁ」
「じゃあ、取敢えずこのままで居ようか。後、学校ではどうする?話す?」
「聞かれたらで良いんじゃないか。隠す必要も無いけど、こちらからアナウンスする必要も無いだろう」
「そうだね。そうしようか」
―――――
中学時代に明日香が一ヶ月スコットランドに帰国していますが、今回は気持ちを現す場面なので棚に上げて置いて下さい。宜しくお願いします。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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