第12話 生徒会長は考える
私、周防京子。都立七尾高校の生徒会長。私は中学時代も生徒会長をやっていて、この高校に入ってからも中学の実績を買われて一年の時から生徒会に入った。
私が目を付けた子で入らなかった生徒はいない。まして私にあの様な言い様をしてくる生徒なんていなかった。
他の生徒は私が生徒会長だというだけで一歩下がって話をしてくれていた。なのに……。
ボキッ!
「京子。割りばしが。」
「あっ!」
私とした事が。
「あの子の事そんなに悔しいの?」
「静香、だって私が声を掛けたのよ。何あの態度は!」
「カーライル君はスコットランド人よ。考え方が違うんじゃないの?」
「そうなの?でも、こうなったら何が何でも彼を生徒会に入れるわ」
「なんでそこまで?」
「だって、生徒会の広告塔としては最適よ。背が高くて北欧系の顔立ちで金髪よ。染めているんじゃないのよ。かっこいいの一言でしょ」
「そこなの?」
どう見ても彼女の気持ちだけの問題の様な。
「静香、こうなったら全員を集めて緊急会議よ」
「緊急会議のお題は?」
「アスカ・カーライルを生徒会に入れる方法を考える会」
「それって、なんか要員確保の視点と違う様な」
「そんな事はいいの。今日の放課後は緊急会議よ」
言い出したら聞かないんだから。
途中生徒会長に昼食時間を邪魔されたが、その後はレイラと二人で楽しく食べた。お昼を食べ終わった俺達は、早速図書室に向かった。
「レイラ、何から読み始めようか?」
「えっ?どういう意味で言ってんの?」
「別に意味なんて無い。全部読もうと思っているから」
「ねえ、図書室に何冊あるかこの前の図書オリで聞いたでしょ。三万冊以上あるのよ。単純計算でも一日二十七冊以上読まないといけないのよ。全部なんて無理でしょ」
「うーん、二十七冊かぁ。一日では読めないな。一日一冊でも千九十五冊か、無理だな」
「当たり前でしょ。もう!」
「じゃあ、歴史とかはどうだ。日本史や世界史、科学史もいいな」
「明日香は将来何になるつもり?」
「まだ決めていないけど、両親と同じ道に入ると思う。だから高校の内に世界史や日本史を覚えておいて、大学に入ったら科学の方向に行こうかなと思っている」
「じゃあ、日本史から始めたら。それから世界史読んで最後に科学史ってどうかな?」
「レイラも同じで良いよな?」
「私も?」
「そうだよ。俺は日本史から初めてレイラは世界史から始める。そして終わったら交代して、今度はレイラが日本史を読んで俺に質問する。俺は世界史を読んでレイラに質問する。これで先に呼んだ歴史書で頭から抜けた部分を再度補完するんだ」
「私には無理よ、そんな事」
そんな話をしている内に受付の子が
「もう閉めます。もうすぐ授業が始まります」
「「えっ?!」」
図書室の時計を見ると午後の授業開始十分前になっていた。
「いけない。明日香、戻るわよ」
「おう」
私と明日香は途中ちょっと寄ってから教室に戻った。間に合った。
放課後になり、私は図書室に行く前に明日香に話しかけた。
「ねえ、本を読むのは賛成だけど、部活どうする?今日から見て回っても良いよ」
「そうか、じゃあ本借りてから見に行くか。本借りるのそんなに時間掛からないだろうし」
「そうだね」
二人で図書室に行くと受付に昼に居た生徒とは違った生徒が座っていた。早速二人で受付の子に図書カードを作って貰い、日本史と世界史をそれぞれ借りてスクールバッグに入れると図書室を出た。
「さてと、今日はどれを見る?」
「どれにしようか。運動部にこだわる必要無ないけど文芸部と園芸部はちょっとね」
「そうだな。楽器全然分からないし。演劇無理だしな」
「じゃあ、バスケからにする。男女有るし」
「そうだな」
一度ローファーに履き替えて体育館の中の練習風景を外から見る事にした。
生徒会室では
「みんなの知恵を出して。何とかカーライル君をこの生徒会に居れるのよ」
シーン。
「黙っていても駄目じゃない。何か案ないの?ブレストでも良いわよ」
シーン。
「周防会長。今副会長二名、書記二名、会計二名、庶務二名いますよね。彼を入れる理由が、広告塔の役割と言ってもさせる仕事も明確に無いですし、やっぱりここは一度この案を下げた方が」
「静香、何言っているの。彼に入ってもらって毎日ここに来て貰うの。そうすれば皆仕事の張りが出るでしょう」
会長以外の生徒が皆首を横に振った。ブンブン全員で首を振る風景は見ものだ。
「京子、みんな意見が違うみたいよ。私も彼がどうしても必要とは思えないわ。生徒会は今でも十分に機能しているし」
何とか彼を生徒会に入れてゆくゆくは…と思っていたのに。これでは仕方ないわ。
「分かったわ。今日の緊急会議はここまで。でもいずれ彼が必要な時が来たら入ってもらいます。いいですね」
シーン。
「もう!」
周防会長と薄井副会長だけが残ると
「京子、本当はあなたが彼を傍に置いておきたかったんじゃないの。みんなそれが見え見えだから何も意見言わなかったのよ」
「やっぱりバレてた?」
「見え見えだったよ」
「だってぇ、彼、背が高くて金髪のスコットランド人だし。かっこいいじゃない」
「あのねえ、それだけで生徒会に入れようなんて思わないの!」
「ええ、静香だけは分かってくれると思ったのにぃ」
「分かっているから彼を入れるのは反対。京子は彼が出来ると駄目駄目になるじゃない。中学の時の事思い出しなさい」
「あっ、あれは、あの時で。今度は大丈夫だから」
「駄目です。恋愛したいなら会長終わってからにして」
「えーっ、そんなぁ」
全く、京子は私がいないと直ぐに駄目になるんだから。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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