第11話 クラスメイト
次の日曜日はジェシカが来る前にレイラの家に行った。何度も来ているから道は知っている。
家に行ってご両親に挨拶をした後、レイラの部屋に入った。ちょっと狭いけど二人で一時間位居てから外に出た。
「良かったの?ジェシカさん」
「構わないよ。俺がいなければ勝手に過ごすだろう」
「それならいいんだけど」
私は彼女が日本に来た理由を知らない。でも言われなくても分かる。明日香を追いかけて来た事位。
明日香はスコットランド人、彼女も同じだ。私なんかより意思の疎通は良いだろうし、私と明日香の七年間なんて一気に詰められそうだな。
また、レイラが何か考えて寂しそうにしている。ジェシカの事を気にしているのかな?
「レイラ、最近寂しそうな顔が多いぞ。何か悩み事があるなら教えてくれ。俺はレイラがそんな顔すると俺も寂しくなる。だから教えてくれ」
「明日香…」
私の事言ったって…。
「もしジェシカの事なら本当に気にしなくていい。俺はレイラだけだから」
その気持ちが余計私の心を難しくしてくれる。私達はまだ高校に入ったばかりの十五才。彼は私だけだと言ってくれているけど、私が彼に必要なくなる要素はこれからどんどん増えてくる。
「レイラ。俺は嫌だよ。君がそんな顔するの」
そんなに顔に出ていたのかな。私何で明日香が私から一人立ちするのを寂しがっているのかな。彼の事が好き?まだそんな感情ない。ずっと一緒に居たから離れるのが嫌なのかもしれない。
「あははっ、ごめん。勉強で疲れたのかな」
「レイラが勉強で疲れるなんてあるのか?」
「偶にはあるよ」
「そうか、じゃあ今日は勉強忘れて思い切り遊ぶか」
「うん」
翌日の模試は簡単だった。やっぱり予想していた通り中学の学力レベルを確かめる程度の内容だった。これなら明日香も簡単じゃなかったのかな。
放課後、
「明日香、どうだった?」
「ああ、中学の勉強範囲内だったな。簡単だった」
「良かった。勉強内容間違っていなかったね」
「そうだな。レイラに間違いはないよ」
私が間違ったらどうするのよ。
そして翌日の放課後は図書室に行った。受付の子や中にいた子が明日香が入って来ると驚いていたけど。
「レイラ、結構色々な本があるな。これなら日本語覚えるのに凄く勉強になりそうだ」
「そうね。明日香ならどんどん吸収していくから、私なんかもう必要なくなるかもね」
いきなり明日香が私の方を向くと
「レイラ、今度それ言ったら怒るぞ。俺は一生レイラと一緒だと言っているだろう」
―えっ?!
―聞いた。一生一緒だって。
-あの二人もう婚約しているのかな?
―さぁ。
「明日香、ちょっ、ちょっと」
私は明日香を図書室の外に連れ出すと
「明日香、直ぐにああいう事言わない。誤解受けるじゃない」
「俺は誤解される様な事は何も言っていないが?」
「だって、私と一生一緒に居るって言うし」
「レイラは、俺と一生一緒じゃ嫌なのか?」
「そんな訳ないじゃない。でも皆の前で言われると」
「良くないのか?」
「恥ずかしいし、良くない!」
「そうか、じゃあなるべく他人の前では言わない様にしよう」
「お願いね」
やっぱり明日香の気持ちが分からない。彼の一生一緒に居るって…どういう意味だろう。まさか結婚…。まだ私達十五才だよ。
「レイラ、顔が赤いけど熱でもあるのか」
「ばか!知らない」
レイラが、何故か怒って階段の方に向かってしまった。
「ちょっ、ちょっと待ってレイラ」
次の日、二人で教室に入ると他の生徒、男子も女子も私達の事を見ている。明日香の前に座る毛利君が
「カーライル、昨日図書室で派手な事言ったそうだな?」
「派手な事?」
「譲原さんと一生一緒に居るって言ったそうじゃないか」
「いけないのか?」
「お前達、もう婚約とかしているのか?」
「していないけど。俺達はまだ十五才だ。それに必要ないだろう」
「ねえ、毛利君」
「何譲原さん?」
「その事はあまり深く突っ込まないで」
「そうなの?」
「そうだよ、毛利君。二人は小学校三年からの付き合い。つまり幼馴染って事。だからそういう言い方もあるのよ」
「百瀬さんはそう言うけど。そうなのか譲原さん?」
「うん、そんな感じ」
-なんだ。そうだったのか。だったら、まだ全然チャンス有るじゃない。
-そうね。焦ったわ。
-えっ、あなたも?
―私だけじゃないわ。この学校の女子は皆狙っているわよ。
えっ、そうなの。益々不味いじゃない。私なんかより綺麗な子は一杯いる。明日香だって心変わりするかも。
「レイラ。どうした?」
「あっ、何でもない」
午前中の授業が終わり、明日香と一緒に購買に行って菓子パンとジュースを買って、教室に戻って、食べているといきなり明らかに上級生と分かる女子が二人入って来た。
キョロキョロした後、私達の方に視線を向けると
「あっ、居た」
直ぐに寄って来た。
「君が、アスカ・カーライル君ね」
「そうですけど」
明日香が食べるのを止めて応えると
「私は生徒会長の周防京子(すぼうきょうこ)よ。こちらは副会長の碓井静香(うすいしずか)。早速だけど君に生徒会に入ってもらいたいの。どうかな?」
生徒会長の周防京子。都立七尾高校の生徒会長。腰まで有る艶やかな髪の毛。切れ長の大きな目に綺麗なスッとした鼻筋に可愛い唇の綺麗な女性。
でも何で明日香を生徒会に?
「レイラ、この人何言っているんだ。いきなり食事中に来てギャアギャア、まくし立てているけど」
「この人は…」
「あなたが譲原麗羅さんね。あなたも一緒で良いわよ。時間無いから放課後生徒会室に来てくれないかな。細かい説明はその時に。行くわよ静香」
「ちょっと待てよ。俺入らないから。礼儀も知らない生徒会長とか言う人に興味無いので」
「えっ?!」
こんな事言われたのは初めてだわ。私に口答えする子なんて。
「そう、悪かったわね。とにかく放課後…」
「行きません。帰って下さい。俺は食事中なんです!」
生徒会長と言った人は俺の顔をジッと見ると教室を出て行った。
「レイラ、何だあれ?」
「明日香を生徒会に入れたかったんでしょ。理由は分からないけど」
「あんな礼儀を知らない人が生徒会長か。大丈夫かな?」
「さぁ?」
「カーライル。見直したぜ。俺もあの人の言い方に頭に来ていたから」
「そうだよな」
何故か皆が俺達を見る目が和やかになった様な。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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