第8話 高校生になったぞ


 入学式の前に送られて来た高校の制服を着る。一通り着た後、等身大の鏡で見ると中々似合っていると自分では思っている。


「お父さん、お母さん。どう?」

「とても似合っているわよ」

「ああ、よく似合っているぞ。アスカもとうとう高校生か」


 都立七尾高校の制服。赤色のネクタイに少し青色の縞が入っている。紺のブレザーの胸には校章。そして濃いグレーのチェックのスラックスだ。シャツは勿論白シャツ。まだ空のスクールバッグを肩に掛けて出かけた。


 お父さんとお母さんは後から来るらしい。


 高校の最寄り駅はここから三つ目、その一つ前にレイラの家の最寄り駅がある。電車に乗ると同じような制服を着た男女がいた。


 レイラの駅のホームに電車が入ると俺の乗っている車両のドアの前に彼女が居た。乗って来ると


「おはよ。明日香」

「おはよ、レイラ」


 レイラが来ている制服は、赤に紺と金糸が入っているリボンと同じ紺の制服、勿論胸には校章が付いている。


 そして濃い赤と紺のチェックのプリーツスカートだ。紺のソックスにローファーを履いている。黒くて艶やかな腰まで有る髪の毛はそのままにしている。とても可愛い。


「似合うかな?」

「レイラ程似合っている女の子はいないよ」

「ふふっ、ありがとう」


 周りが私達、いえ明日香の事をジロジロ見ているけど気にしない、もう慣れた。



 駅に着いて改札を出ると、ゾロゾロと同じ様な制服を着た生徒達が一杯学校の方へ歩いて行く。


 校門の傍に先生が立っていて道案内をしている様だ。校舎の近くに行くと昇降口はこっちだという感じで案内している。


 昇降口に入って出席番号の書いてある下駄箱にローファーを入れて新しい上履きを袋から出して履くと一段と気分が高まる。


 クラスは入学前のしおりで知っていたのでレイラと一緒に1Bの教室に入って行くと先にいた生徒が一斉にこっちを見た。


―噂には聞いていたけど。

―へーっ、本当に金髪だ。

―背が高いなー。


 好きな事を言っているが気にせずに自分の出席番号の書いてある席に着くと横に座っている女子がチラッと見てはまた視線を外し、またチラッと見ては視線を外している。


 レイラの方を見ていると早速、男子から声を掛けられていた。彼女可愛いからな。でも気分が悪い。


 段々、生徒が入って来て一杯になって少し経った時、前のドアが開いて女の人が入って来た。教卓の前に行くと


「私が、今年一年君達の担当になる小早川秀子(こばやかわひでこ)です。自己紹介は後にします。入学式が始まりますので体育館に行きます。皆さん廊下に出て下さい」


 ぞろぞろと皆で廊下に出ると他のクラスの子達も出ていた。長い列で体育館の正面口に行って並んでいるとやがて大きなドアが開かれて拍手が聞こえた。


 俺も流れに沿ってゆっくりと歩いて行くとお父さんとお母さんが座っているのが分かった。胸の辺りで少しだけ手を振ると二人共微笑んでくれた。


 クラス名が掛かれている場所のパイプ椅子に座ると入学式の開会が宣言されて入学式が始まった。


 校長先生のお話、来賓のお話や先生の紹介、生徒会長の言葉とか、長々と続いた後、校歌が歌われた。既に配られている校歌が書かれた紙を手に持っているが、全然歌えない。まあ今日は良しとしておこう。



 無事に入学式の終り、1Bの教室に戻って来ると少ししてさっき担任と言っていた女の人が入って来た。手に箱を抱えている。あれなんだろう?


「皆さん、改めて。私が一年間君達の担任になる小早川秀子です」

 こっちに背を向けると黒板に自分の字を書いて見せた。髪の毛が肩より少し長く、細面の顔で眼鏡を掛けている。全体的に細身だ。


「早速ですが、席替えを行います。この箱の中に入っている机の位置が書いてあるカードを一枚引いて下さい。廊下側先頭の人から取りに来て」


 そう言うと小早川先生は窓際のパイプ椅子に座った。


 俺の順番が来た時、

「アスカ・カーライル君ね」

「はい」

 なんで先生俺に声を掛けたんだ?


 箱の中に手を入れて一枚引くと6-6と書かれている。窓際一番後ろだ。その後も続いてレイラの順番になった。


 なんか難しい顔をしている。どうしたんだ。


「はい、みんな引いたわね。では移動して下さい」



 ガタガタとバッグを持って席を立って窓際一番後ろに行くとレイラが近寄って来た。そして、なんと俺の隣に座った。

「レイラ、良かったよ」

「うん」


 今の会話に周りの人が直ぐに私達を見たけど、何も言わなかった。


「それでは、自己紹介にしますか。窓際一番先頭の人から前に立って話してください」


 最初の男の子が大分緊張して話し始めた。俺の番は直ぐに来た。前に出ると


「アスカ・ヨウレン・カーライルです。カーライルと呼んで下さい。スコットランド・エディンバラから小学校三年の時に日本に来ました。

 今、俺の隣に座っているレイラは小学校三年の時から今日まで毎日一緒に過ごして来た人です」


-えーっ!

-どういう関係?

―後で聞くしかねえぞ。



 明日香の奴、また要らぬ事を言って。


 私の番になったので

「譲原麗羅です。明日香、いえカーライル君とは小学校三年の時、机が隣になったのがきっかけでそれ以来、日本語を覚えるお手伝いをして来ました。毎日一緒に居たのは本当の事です」


-なになに。これは、これは。

-うん、聞き応えが有りそうだ。



 一通り自己紹介が終わると

「皆さん、今度はクラス委員と各役員を決めて頂きます。本当は自薦他薦ですが、まだお互いに知らないと思いますでの、クラス委員だけは私の方から指名します。

 クラス委員長は毛利元也(もうりもとや)君、クラス委員は百瀬友梨佳(ももせゆりか)です。二人共前に出て挨拶して下さい。その後は皆さんの手元にある役員を決めて貰います」


 幸い、俺とレイラは何も役する事は無かったけど、毛利という男子は俺の席の前、百瀬という女子はレイラの前だ単なる偶然か?


 それも終わると小早川先生が

「明日と明後日はオリエンテーションです。午前中は学校の中を案内します。午後からは体育館で部活紹介です。明後日は午前中に図書室のオリエンテーションが有ります。

 帰りに昇降口で教科書を配布しますので、もれなく受け取って下さい。今日はこれで終了です。気を付けて帰って下さい」


「レイラ帰るか」

「うん」


 昇降口で彼女と一緒に教科書を受け取っている時、手伝いをしている先輩達が驚いた顔をしていた。


 教科書を受け取って校舎を出ると

「アスカ、結構重いね」

「そうだな。俺が持ってやるよ」

「いいよ。この位」

「じゃあ、レイラごと」

「何言っているの!」

 優しいのは良いんだけど…。


―――――

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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