第4話 一時帰国は課題が多くなる


 エディンバラで 

 以降の会話はスコットランドの母国語です。


 両親と俺はエディンバラ国際空港に降りて入国審査を済ませた後、ゲートを出た所で

「アスカ!」


 いきなり、女性が抱き着いて来た。

「な、なんだ?」

「ジェシカよ。ジェシカ・ゲオルグ・アンダーソン。たった六年なのに忘れたの?」

「えっ、ジェシカって?そばかすの…」

「ぶっぶっ。何言っているの。もう私も十四になるのよ。それより日本ていう国はどうだった?」


 話し始めた俺達にお父さんが

「アスカ、ジェシカ。家に帰るぞ」



 キャリーにスーツケースを乗せて駐車場近くまで行くと空港にはお爺ちゃんが車で迎えに来てくれていた。


「お父さんただいま」

「お帰り、クレイグ、ヨーコ、アスカ」

「お父様ただいま」

「ただいま、お爺ちゃん。ところでジェシカはどうやって空港に?」

「うん、アスカのお爺ちゃんの車で」

「ジェシカがどうしても一緒に迎えに行くってうるさくてな」


 ジェシカは、家の隣に住む娘だ。同い年で小さい頃からずっと一緒で幼馴染という奴だ。俺が日本に行く時は散々泣いていた。



 俺達は、家に着いて自分の部屋にスーツケースを運び入れた後もジェシカは、ずっと俺の傍に居た。


「一度家に帰ったら?」

「ここも私の家と同じよ」

「でも、もう午後八時だぞ」

「大丈夫。全然明るいし。アスカの所って言って有るから。ねえ、それより日本ってどんなところ?」

 日本と違い、スコットランドはこの季節午後十時位までは十分に明るい。確かに明るいと言えば明るいのだが体内時計はそうはいかない。


 車の中でも散々聞いて来たけど、まだ聞き足りないのかな?

「二週間は居るから。今日は帰って。飛行機で二十時間も乗っていたんで疲れているんだ」

「えっ、二十時間も乗っているの?日本ってどんな僻地にあるの?」

「もう、ヒースロー経由だから。ヒースローからは十八時間位。とにかく今日は帰って」

「分かった。明日は朝からね」



 一週間もするとスコットランドの学校は休みになる。次に行くのは九月の新学期だ。日本とはずれているけど仕方ない。


 だから、一週間後からは毎日俺の所といっても隣だけど、やって来ては遊びに連れ出された。


 俺はレイラがネットで送って来た夏休みの宿題をしないといけないのに。




 両親の仕事は二週間近く延びて、結局一ヶ月近くこっちにいる事になった。その間はレイラがWEBカメラで


「アスカ、一人で夏休みの宿題大丈夫?進んでいる?」

「厳しい。何とか頑張っているけど、色々邪魔する奴がいて」

「邪魔するって誰が?」


― アスカーッ!


「不味い。レイラ切るぞ。また後でな」

「う、うん」

 何でこんな時間に来るんだよ。


 アスカ、どうしたのかな?邪魔する奴って誰?



「どうしたんだ。ジェシカ?」

 振り向くと飛んでも無い格好でやって来た。


「夏でしょ、暑いから…アスカと一緒に寝ようと思って」

「何言っているんだ。暑いから別々の方が良いんじゃないか」

「大丈夫。ねっ、昔の様に一緒に寝よう」

「駄目だ。あの時はまだプライマリースクールに入る前の年だ」


「良いじゃない」

「駄目、どうしてもここって言うなら、俺はリビングに行く」

「じゃあ、私も」


 説得しようにも切りがなく、仕方なく二人で一緒にベッドで寝る事にした。ジェシカとは小さい頃よく一緒に寝たし、彼女を異性として意識するなんて無いからいつも通りベッドに入って目を閉じた。俺は寝つきが良くベッドに入ると十秒掛からない内に眠りに入った。


 朝、起きるともう彼女はいなかった。何故か、ベッドの上に彼女の下着と未使用のあれが置いてあった。俺何か悪い事したかな?




 次の日もレイラからネットで送って来た宿題を一生懸命やったんだけど…。帰るまでに三分の一は残ってしまった。ジェシカの所為だ。


 そんな事を言っても仕方なく、明日は日本の戻る事になった俺は、ジェシカにその事を伝えると


「アスカ、日本なんか行かないでこっちで暮らしなよ」

「駄目だ。親と離れて迄ここに留まる訳には行かない」

「じゃあ、私が日本に行く」

「な、何言っているんだ。日本語は難しいぞ」


「大丈夫。勉強するから」

「止めとけって。俺だって大変だったんだから」

「ぶふっ。アスカより私のが頭いいわ。セント・ジョージ・スクールにいくかイギリスの高校に行こうか考えている位だから」

「勝手にしろ」


 俺はこの時、ジェシカの言葉は口だけだと思っていた。




 ヒースロー経由だけど、また空の上で長い時間を過ごした。



 成田に着くと、蒸し蒸してやっぱり暑い。エディンバラとはあまりにも違う風景。


 エディンバラとは生活様式も全く違う。また一か月前の生活に戻るのかと思うとちょっと胸が詰まる所もあるけれど仕方ない。それに俺にはあの子が居るから過ごし易いか。



 日本では夏休みが後一週間で終わろうとしていた。家に戻った翌日、直ぐにレイラに連絡した。


『レイラ、アスカだ。手伝ってくれ』

『帰って来て開口一番それ?』

『改稿一番?何か修正するのか?』

 はぁ?アスカらしいか。


『開口一番って言うのはね、久々に会った人に言う時の最初の挨拶の事』

『ああ、そういう事か。レイラ。帰ったぞ』

 もう、何それ。私が心配だったとか、病気とか怪我しなかったかとか…。もう良いか。


『分かった。とにかく、明日からアスカの家に行くから』

『悪いな。あっ、お土産買って来た』

『それは後で』

 まあ、私の事向こうでも気にしていてくれたか。


―――――

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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