第39話 体調を崩した日

 誰かの声が聞こえた。

 俺を呼んでいるような気がする。

 それに、その声の主は俺を揺さぶっている。

 しかもさっきから耳元でずっと何かがジリジリと鳴っている。


「おに…、おき……」

「もう少し……」

「お兄!起きて!」

「ハッ」


 目を開くと、ベッドの隣に小百合が立っていた。

 耳元で鳴っていた音はスマホの目覚ましアラームだった。


「アラーム、鳴ってるのに起きないから」

「あ、あぁ。すまん。ありがとう」


 アラームを止めて、身体を起こす。

 昨日は、どうしたんだったか。

 寝起きのせいかよく思い出せない。

 

「お兄、頭痛は大丈夫?」

「頭痛……あぁ、うん。大丈夫だ」


 小百合に言われて思い出す。

 そうだ、昨日は日並の買い物に付き合って、途中で頭痛が酷くて解散したんだった。

 そして家に帰っても頭痛が治らなくて、あれからずっとベッドの上で寝っ転がっていたんだ。

 だけど頭痛の上に体調も崩すわ、頭痛を治そうと寝ようとしても寝れないわで中々酷い有様だった。

 結局朝の四時くらいまで寝れなかったせいで大分寝坊をしてしまったようだ。


「すまない。これからご飯を作る」


 俺がそう言うと、小百合は首を横に振った。


「まだ体調悪いでしょ? 私が作るから、お兄は寝てて」

「……わかった」


 俺が返事をすると、小百合は微笑んでから部屋を出ていった。

 兄として情けない話だが、ここは小百合の言葉に甘えるとしよう。

 少しだけでも寝れたおかげか、頭痛はもうなかったが今度は寝不足気味だった。

 体調を元に戻すには睡眠が必要だ。

 俺は二度寝をするために目を閉じる。

 そういえば日並に連絡しないとな、とも思ったが、まどろんでいると眠気はすぐにやってきた。


 その時俺は、小百合とのやり取りにどこか違和感を覚えた。

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