ー 68話
「こりゃくそワレェ、こんクソゲームがぁ!」
ガン..........カンカンカンカン........(鎚が放り投げられた音)
「もう嫌じゃァ.......才能ないんけ.........。」
小柄でありながらも体格は、ムキムキの身体をした女性プレイヤーは、その場にしゃがみ込みながら自身の作った剣を見て溜め息を付く。
[Name:まだ名前が付けられていません。]
耐久性:15800/15800
攻撃力:350~840
器用さ:+30
鋭さ:+20
オプション
再生(耐久性が落ちても再生し、回復する。)
魅了(この剣は、何度も破壊され一人の手により精錬され続けたため、これ以上破壊されたくないと言う思いから生まれた剣の意志、手に取った人物を惑わし魅了する。)
意志(成長(0年目)、意志が芽生えたばかりの剣)
技能:吸血(攻撃時ダメージ総量+5%のHPを回復する。)
技能:執念(鈍足、吐き気、眩暈、盲目のどれかを3%の確率で付与。)
これほど、凄い剣を生み出してもなお、彼女はこの剣を駄作としてしか見ていなかった。もし、この剣を競売に売りに出せば、現実世界でもゲームの中でも巨額の富を得ることが出来ただろう.......。それほどの名剣であったのに、彼女からしたら何の価値もない出来損ないのような物にしか見えていなかったのだ。
「これじゃないんやぁ.............。」
「俺は、こんな駄作なんぞ要らんわボケ。」
握り締めた剣を部屋の端に投げ捨てる。その場で体操座りをして、俯きながら黙り込んだ彼女は、目の前に現れたウィンドウの警告を見て、暴言を吐き捨てる。
「お前のせいじゃ、ボケェ.......毎回毎回、目の前に現れてぇ.....寝ろだの落ちろだの休憩しろだの警告しやがって.......気が散ってしまうんじゃボケ.......。」
このゲームの安全上仕方のない事だと分かっていながらも、納得のいかない彼女は、そんな言葉を吐き捨てて、もう二度とこんなゲームやらないと思いながらログアウトしようと、メニューを開けた瞬間。
コンコン(ノックする音)
不意に、この作業部屋のドアがノックされた。
それに驚いた彼女は、涙を拭いながらも、警戒して声を掛ける。
「だ、誰や!勝手に人ん家の作業場まで入ってきやがって!」
???「........こんにちわ。少し、お話がありまして.......お時間を頂けないでしょうか?」
若い女性の声がドアの向こうからして、少しだけ警戒を解きながらも、組合の連中か....と悟った彼女は、冷たくあしらって出て行くように言う。
「は、話すことなんかないわ!」
「出てけや......もう俺ぁ.....こんゲーム辞めるんじゃけん.....。」
???「あの.....少しだけでいいんです......。それに、貴方にとっても良いお話だと思うんですよ?」
意味の分からない事を話すドアの先の人物に苛立ちを感じながらも、そいつの顔だけでも最後に拝んでおくかと思いドアを開けて、睨みつける。
「からかっとんのか我ェ、ふざけとんやったら今すぐ.......。」
バン(ドアを開ける音)
ドアを開けた瞬間、自身よりも身長が高い彼女を見て、驚きつつも、自分の種族が土人.....ドワーフ?だった事を思い出して、睨みつける。
???「あの.....ずうずうしいお願いだとは、分かっているのですが、依頼をしたいんです。」
「依頼やと?」
???「はい。」
取り敢えず組合連中ではない事に、安堵しながらも今は何か作りたい気分でもなければ、もうこのゲームを辞めるつもりでいた彼女は、そいつに溜め息を付きながら、
「すまんけど、依頼は受けとらんのや。」
???「どうしてでしょうか?」
「俺はぁもうこんゲーム辞めるつもりじゃけんや。」
それを聞いて、困った顔をした彼女は、その場でしゃがみ込んだと思ったら、土下座をしてお願いする。
???「お願いします......。」
「は、はぁ!?な、なんなんや、お前ェ....というか、俺じゃなくて他に頼めや......。」
???「.......貴方にしてほしいんです。」
「はぁ?」
一度も会った事ない奴にいきなりこんな変な頼みごとをされたかと思えば、俺じゃないとダメだとか訳の分からない事を言う女性に、困惑しながらも取り敢えずこんな場所で話し続けるのに我慢の限界に達した俺は、その女性に来いと言って、客室に案内する。
「んで.....まぁ.....その、話だけ聞いたるわ......。」
彼女があまりにも必死に頼む物だから、取り敢えず内容だけ確認して、適当な理由でも付けて追い返そうかと考える。
???「これを.....修理してほしいんです。」
目の前に出された時計を見た俺は、
(なんで鍛冶屋に時計なんか持ってくんねんと、イライラしながらも......時計を手に取って見てみる。)
「あんなぁ.....ここは、鍛冶屋であって時計屋やないんや.....こういう道具は、時計屋に.......。」
[Name:表示不可]
耐久力:0/5
攻撃力:現在破損に付き、攻撃力不明
魔法効率:現在破損に付き、%不明
オプション
必中(絶対に効果が発揮される。)
表示不可
「ん?.....これ武器なんか?」
武器にしかつかない攻撃力という表記に驚きながらも、たまにこういう訳の分からないアイテムが存在する事を思い出した俺は、手に取った時計を見ながら質問する。
???「武器かどうかと聞かれたら、武器ではありますが.......攻撃するための道具ではありません......。」
曖昧な返事をする女性を見ながら、何処かおかしい事に気が付く。
(こいつ.....NPCか?)
(って事は、なんかのクエスト?)
今更ながら、プレイヤーにあるネーム表記が無い事に気が付いた俺は、不思議に思いながらも女性を見つめる。
???「それで.....引き受けてはくれませんか?」
「いや......まぁ、引き受けるのは構わんけど.......って、ダメや。」
「俺は、今虫の居所が悪いんや......やから、これは他に依頼せい。」
???「.......もっと、鍛冶のレベルが上がるとしてもですか?」
ㇺっとしながらも、少し興味深い話をされて女性の方を睨みつける。
「ど、どういうことや?」
???「それの修理を引き受けて下さったら、今よりも先のレベルまで行けますけど興味ありませんか?」
と、言いながら優しく微笑む女性に、イラっとしながらも、鍛冶の技能を最大まで上げたのにも関わらず、これより先があると言う事を聞いて興味が沸く。
「ほんまなんやろな?」
「嘘やったら、承知せんで?」
???「はい......。」
???「それでは、お願いしますね。」
そう言った瞬間、彼女は目の前から消えてしまった。
その事に驚いて固まっていると、俺は大事なことを思い出す.....。
「あ!そういや、金の話もこれのクエストのメッセージもなんも出てへんやないか......。」
「騙されたんか......?」
「まぁ......ええわ、ほんまにレベルが上がるっちゅうんやったら、どうせこんクソゲー辞めるつもりでおったし.....修理するだけして、嘘やったら辞めればええ.....ほんまやったら.....まぁ、タダで修理しても設けもんやろ......。」
そんな事を思いながらも、先ほどから目の前で警告音を発しながら警告してくるメッセージを見て、
「はいはい、落ちますよ。」
「これで、ええやろが.....。」
と言ってログアウトする。
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「第49話に出てきた鍛冶師さんの再登場です。」
「それと....依頼主さんは誰なのでしょうか?」
「それから時計には、どんな秘密が隠されているのでしょうか?」
「本日のサクッと解説は、武器について説明していきましょう。」
「このゲームの武器は、そうですね......チュートリアルで貰う剣がこんな感じです。」
[Name:初心者の剣]
耐久力:∞/∞
攻撃力:6~8
オプション
不破壊(一部の条件を覗いて壊れる事の無い剣。)
「ちなみに、売れません.....。売る事自体は可能ですが、買う人がいないからです。」
「理由は、誰も欲しがらないし、そこら辺に捨ててあるからです。」
「ちなみに、剣のオプションに技能が付与されているのも、ほとんどありません......。1個だけなら、まだしも複数もついている剣はなかなかないでしょう......。」
「このように、今回登場した剣の凄さがどれほどなのかが、良く分かるでしょう。」
「以上でサクッと解説を終了します。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「さようなら~。」
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