時空の書
時空の書
「読者の皆様、お久しぶりです。」
「あぁ......私が誰だか分からない方もいるようですね。」
「皆様が、そう思われるのも仕方ありません。」
「既に私は、この世を去り死んでしまった人間なのですから.......。」
「ハハハ......どういうことか分からない方も多いようですね。」
「そうですね.....足を悪くしたおじさん.....もしくは、あの子にとっての父親になる事の出来たおじさんと言えば分かる方は、いるのではしょうか?」
「既に物語を退場したはずの人物である私が、何の用があってこんな場所に姿を現したのかについてなのですが......これは、既に遠い昔に私が記録した本のページの1枚にしか過ぎません。」
「.......ハハ、少し難しい話になってしまうようなのですが.......。」
「そうですね.......どういう事なのかについて少しだけ皆様にお話し致しましょうか。」
「私が、帰宅途中で中古屋に寄り、偶然買ったこのVRと言う名のゲームを使用して、この異世界というのでしょうか........そんな世界にやって来たのは、皆様もご存じの事だと思われます。」
「この世界には.....いえ、ここ以外の世界にも、数々の物語が存在し、1人1人にその
「"創造の書"をご覧になった皆様にとっては、既にご存知の内容でしたね......。」
「1人1人がその本の主人公であり、1人1人の本をまとめた書架が、この世界です。」
「簡単にお話すると、本棚が世界であり、その中に立てかけられた1冊1冊の本が貴方達の人生を描いた本だと思っていただければ幸いです。」
「何が言いたいのかと言いますと、もしその本棚の中の1冊を誰かが勝手に別の本棚に並べてしまえば、どうなると思いますか?」
「その本棚にあったはずの物語は崩壊し、本棚からはその人物の記録が消えてしまうのです。」
「しかし、別の本棚に新たな本が1冊加わった場合は、どうなってしまうのでしょうか?」
「あるはずのない物語が加えられ、
「例えば、歴史.....その世界では、まだ発展していないはずの技術を、別の世界にお教えする事が出来るのです。」
「本来、その世界では、何百年....もしくは、何千年後.....それか、技術すら芽生える事は、なかったかもしれないのに.......貴方という物語が本棚に加わってしまった事で、簡単に変化が訪れてしまうかも知れないのです。」
「他には、その世界になかった技術や魔法.....病気.....そういった物が他の世界に渡ってしまう恐れもあるのです。」
「昔々のお話で、とある勇者が活躍する英雄的な物語、皆さんの知っているその人物は、もしかしたらその世界の人間には持っていない別の物を持っていたのかもしれません。」
「今あげたような例を考えて見ると、どれほどの影響を世界に与えてしまうのかが、おわかりでしょう。」
「もし、そんな影響を与えるほどの大きな出来事が立て続けに起きればどうなるでしょうか?」
「一方の本棚は、消えてしまった物語の穴を埋めようと、全員の物語を書き換えて世界から消えてしまった物語の分の記録を補充しようとするでしょう。」
「これが、いわゆる私達と言う存在が消えたとしても、誰も覚えていない事に繋がるのです。」
「事象の書き換えとでも言いましょうか.......。」
「急に人間が消えた事を、神隠しや行方不明者として記録されるように、私達という存在が無かった事として、その無かった部分を世界はどうにか埋め合わせようとするのです。」
「埋め合わせ方法は、いろいろありますが.......主に自然災害等がそうだと思っていただければ幸いです。」
「反対に、本が補充され続けてしまったせいで本棚に収まりきらなかった本は、どうなっていくのでしょうか?」
「本棚に入りきらないほどの本が急に増えてしまった事で、対応しきれなかった本棚の記録が崩壊し、一部分が別の本棚の記録に紛れ込んでしまう事があるのです。」
「それが、伝竜の覇者キングルーと言う人の存在なのかもしれませんね。」
「どういう事かと言いますと、あの方は転生者だという事が、以前に皆さんに明かされた事でしょう?」
※勇者の書
「あの人の読んだであろう本と言うのが、もしかしたら、ここの本棚の一部が抜け出し、別の本棚に偶然紛れ込んでしまった記録の一部だったのかもしれないのです。」
「それが、偶然、ルーさんの世界の本になり、販売され小説になったのか.....漫画になったのか......そんな事は、ルーさんにしか分かりませんが.......。」
「この世界の出来事をある程度知っていたのも、その物語の一部に触れてしまったからだと思われます。」
「もしかしたら、ルーさんがこの世界にやって来たのも偶然ではなく.......その本を読んでしまい、自身の
「まぁ、私の研究分野ではないので......魂と魄に関する研究をしている"××"と言う方にでも聞いてみて下さい......。」
「おっと、まだ登場していない人物だったようですね。」
「記録と言うのは、不思議なもので.....一方通行では相手には伝わらないのです。」
「双方が意味を知り言葉を理解し、言語として認識できなければ、今のように相手には伝わらないのです。」
「私が、遠い未来.......死ぬ直前で作ったような、"機械"と"魔法"の集大成.....あれさえ完成させれれば、皆様にも私の知っている事を伝えられることなのですが.......もっと他にも皆様に伝えなければならない重大な話があるためその時は、書くのを控えさせて頂きます........。」
「と言っても、既に皆様は内容を知っているため、私がここで話しても伝わる事でしょう。」
「勇者の誕生。」「4人の大祭。」「天界へ続く塔。」「世界の木。」「天界のしんこう。」「地球の"滅亡"。」
「これらは、いずれ皆様が知っていくことなのです。」
「なので......これ以上の事を私が書く必要はないでしょう。」
「それと、どうやって遠い過去の人物である私が、先の未来の出来事を知り、助言しているのかについてなのですが、簡単な話です。」
「今お話ししたように、記録の一部と言うのは、本棚が圧迫され続ければ、何処からか抜け落ち、歪みが出来てしまうのです。」
「私は、その歪みを利用し、記録の本を盗み見し続けてきたのです。」
「いわゆる皆さんと同じ"読者"と言えるでしょう。」
「難しい話をながながとすみません......。」
「これ以上.....私が入り込む隙間は、無いのかもしれませんね。」
「最後になるかもしれませんが、皆さんとお話が出来て私はとても良かったです。」
「娘よ.......。遠い未来、あのような死に方でしか私自信を許せなかった事をしたどうか許してほしい。」
「あの時も言っていたが、私は"本当の意味で良い父親"には、なれていなかったのだと思う。」
「私の最後に、お父さんと呼んでくれて.....ありがとう。」
「君の言葉は、既に遠い過去の"読者"である私に届いていたのだよ。」
「すまなかった........でも、やはり......あの言葉を聞くために、私はこの事に対して、知らない振りをし続けるしかなさそうだ。」
「愚かな父親と笑ってほしい。」
「今日と言う記録を書いている日にさえ、愛していると娘に伝えられない私をどうか.....許してくれ。」
「読者の皆さん、どうか......私の娘を最後までよろしく頼む。」
「君たちが私の記録者だ。」
「私と言う存在の生きた証なのだ。」
「辛い過去を乗り越えて、私と言う存在が世界から消えないために........。」
「愚かな私は、これから先も死ぬ瞬間まで記録を書き続ける。」
Name:おじさん
種族:"人間"
職業:研究者
(第52話にて死亡済み)
※この記録は、過去に綴られた物語である。
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
System:エラーの修正のため、解説コーナー及び、管理者への応答が出来ない状態となっております。
System:システムが一時的に凍結状態になっております。
ブチッ
※回線が切断されました。
ガタンカタンカタンカタカタカタ.....(歯車の周る音)
[お父さん.......ほんと....馬鹿なんだから。]
[私は、お父さんと出会えて本当に幸せだったんだよ。]
[ありがとう.......。]
[きっと私の記録は、お父さんには届かないのだろうけど........。]
[この復讐は、絶対にやり遂げて見せる。]
[きっと、何処かにあるはずなの.......
ガタンカタンカタンカタカタカタ.....(歯車の周る音)
プシュ―(蒸気の音)
※回線が復旧しました。
System:現在システムエラーによりシステムが一時的に凍結しております.......。
System:読者の皆様は、もうしばらくお待ちください。
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