ー 66話
(皇太子)「何者だ?」
(団長)「そこの者!止まれ!」
空から降りてきた眼鏡をかけた奇妙な格好をした人物が、皇太子の方に降りてきて近寄ってくるため、第二騎士団の団長が大剣を向けて立ちはだかる。
アル「これはこれは、お初にお目にかかります。第二騎士団長。それから、皇太子殿下。」
アル「私は、貴方のお父様に頼まれてやって来た。魔側の人間.......いえ、貴方達の言うところのプレイヤーですね。」
深く頭を下げてお辞儀をした後に、顔を上げて皇太子に向けてにこっと微笑みかける。
「それでは、貴殿ら魔側もこれを機に表舞台へ出て、このクエストに参加し、我を討伐しようという魂胆か?」
やれやれという風に、呆れた表情をしながら俯いた後に、皇太子は奇妙な格好をした人物に剣を向けて睨みつける。
アル「いえいえ、そういうわけではございません。」
アル「ある意味、今回の頼まれごとも一種のクエストではありますが、我々のクエストは、貴方達の救出です。」
アル「それから、何か勘違いをされていらっしゃるかも知れませんが、12月25日に起きた大祭は、我々のせいではございません。それに、我々は遠い昔から表舞台へ出てプレイヤーとNPCの安全を守ってきておりました。」
その言葉を聞いた騎士達が後ろでざわざわとしだし、どういう事か分からないという風に疑問を投げかける。
アル「そうですね.......貴方達が今まで何を根拠に
アル「今まで起きた事のほとんどの厄災や災害、それから事件や事故のほとんどは、教会が計画的に信者を集めるために起こしたものです。」
アル「特に、教会が今回のように、我々が起こした事件だと発表する時のような大きな出来事などは、全て教会が計画的に考えて実行したものですね。」
アル「まぁ、この話をしても大抵の人間は、今の貴方達のように批判し、否定し、そんな事があるわけがないと信じないのですが......。」
アル「ですから、先ほども言ったように、我々にとっては、貴方達が何をどう根拠にしてあの教会連中共を信じ、何を勘違いして我々を敵と決めつけていらっしゃるのかなんてどうでもいい事なんです。」
そう言うと、アルカードは皇太子の方へ近寄り、頭を下げて申し上げる。
アル「それで?貴方達は、我々の事を信じ救われる気はありませんか?」
皇太子は、向けていた剣を取り下げて、アルカードの問いに対して唇を噛みしめて応える。
「...............、しかしなぁ、今更それは無理な事なのだよ。」
「我々を救うとおっしゃられたが、我々は既にシステムから見放され、モンスターとして処理されてしまう存在なのだ......。」
そう言うと、皇太子は剣を地面に突き立てて、悔しそうな顔をする。
アル「えぇ、存じておりますとも、皇太子殿下。」
アル「ですので、これはバグだと思っていただければいいのです。」
「バグ.....と言うのは?」
アル「そうですね.......、簡単に言うと世界を作った神様ですら気付けなかった、"致命的な欠陥"でしょうか。」
「それは、どういう.......。」
なんの話をしているのかが分からない皇太子は、その欠陥について説明を求めるが、何度アルカードの説明を聞いても理解する事が出来なかった。
「ガッハッハ、皇太子よ!細かい事は我はわからんが、救ってくれると言うのなら良いではないか!」
「それで?我々はどうすればいいのだ?」
アルカードの肩を叩きながら、大声で笑う騎士団長は、何をすればいい?と言う風に聞いてくる。
アル「快いご協力感謝いたします。」
アル「それでは、まず......貴方達には私の事を信じ、一度死んで頂きます。」
そのありえない言葉を聞いた騎士達は、ふざけるなと言う風に、アルカードに怒りをぶつけ、攻撃しにかかろうとしたのを、団長が無言で制し、アルカードの顔を見つめて問う。
アル「信用なりませんか?」
「.......いいや、一度信じてみよう。」
「騎士団長!ダメです!そのような妄言信用なりません!」
止めようとする騎士をよそに、騎士団長は声を高らかに宣言する。
「貴様ら!よく聞け!俺はこの小僧を信じ一度死のうと思う!」
「もし、俺が戻ってこなかったら.....貴様らが皇太子殿下を守れ!」
「良いな!」
「ッハ!」
一糸乱れぬ、敬礼で整列した騎士達は、騎士団長に向けて一礼する。
アル「それでは、心の準備は良いですね?」
「あぁ.....俺は貴様を信じ、一度死ぬ。」
「それで....この束縛から外れられるのであろう?」
アル「はい、しかしそうとうな痛みが伴います覚悟は、よろしいですね?」
「ガッハッハ、痛みなぞで、屈しておったら俺は今の地位まで登っておらんかったろう.......。」
「一思いに、思いっきりやってくれ!」
アル「畏まりました。それでは、また後程お会いいたしましょう。」
そう言うと、アルカードは騎士団長の胸に手を思いっきり突き刺して心臓をえぐり取る。
ぐったりとして倒れた騎士団長を見た騎士達は、自身の団長の最後を目にし、涙を流しながら敬礼する。
アル「そう悲しまないで下さいよ皆さん、すぐに復活させますから。」
そう言うと、アルカードはインベントリーから1つのアイテムを取り出して使用する。それは、虚実の書でルーが見つけた一人1回限り使用可能な、果実だった。
団長「...............グハ。はぁ.....はぁ......。」
アル「お疲れ様です。ご機嫌いかがでしょうか?」
団長「最悪な気分だ.....戦争の時に、腹にぽっかりと穴をあけられた時のような.....そんな不快感がある。」
(それは.....実際に心臓をえぐり取られて、腹ではなく胸にぽっかりと穴が開いていましたしね......。)
アル「フフ、それって、死んでいてもおかしくないのでは?」
団長「ガッハッハ、たかが腹に穴が開いたくらいで......死ぬわけがなかろう。」
団長「おっと....。」
なんとか身体を起き上がらせた団長は、ぽかんと口を開けたまま固まっている騎士たちを見て笑い飛ばす。
団長「ガッハッハ、戻ってきたぞ!お前達!」
その言葉を聞いた瞬間、騎士たちが歓声を上げて騎士団長の方を見て喜ぶのだった。
アル「それでは皆さん。死ぬ準備は出来ていますか?」
にこやかに笑うその奇妙な格好の人物を見て、次は自分たちが死ぬ番なのかと言う事を思い出して絶句し、先ほどまでの喜びが何処かへ消え失せ背筋が凍る。
それは、そうだろう......いくら死ぬ準備が出来ていてたとしても、それは名誉ある死であるから我慢できるのであり、何の抵抗もできずにただただ死ねと言われるのとでは、心の準備の仕方が違う。
ゾンビのように、あぁぁぁ.....と言う何とも言えない情けない声を出しながらも、今更騎士団長が我々のために一度危険な賭けに出て証明して見せた物に対し、我々がやらないという選択肢はない。
「はぁ、すまないな.....我が騎士の者がこのような情けない姿を......。」
アル「いえいえ、誰だって死ぬのは怖いでしょう?」
「貴殿らもそうなのか?」
アル「えぇ、いくら何度でも復活するプレイヤーであったとしても、死ぬというのは経験したくないですし、怖いですね.....。」
「.......後で頼もうと思い、言わないでいたのだが、我の恋人も復活を頼んでよろしいか?」
アル「..................。」
皇太子は黙ったままのアルカードに対し、何かを察して黙り込み、騎士達がこれ以上怯えて自身の死を躊躇わないように、そのまま自身の胸に自分の剣を突き刺して死んでしまったのだった。
アル「それでは、皆さん......死ぬのが怖いと思いますが、一瞬の出来事ですので我慢のほどよろしくお願いいたします。」
System:♰イザナ・ファルネアス皇太子殿下♰が"自殺"しました。
System:クリア時間は、00:41:23です。
System:プレイヤーの皆様、お疲れまでした。
System:頑張って頂いたプレイヤーの皆様に......ににににに?????????
System:警告、参加者がいないため、貢献度がありません。
System:報酬の受け渡しが不可能です。
System:エラーが発生いたしました。死亡したはずのNPCであるイザナ・ファルネアス・ロードスト皇太子殿下がゲーム内に存在しています。
System:原因不明のエラーが発生しました。
System:現在状況を確認しております。
System:不可逆的な偉業を達成しました。[因果律の改変]
System:偉業を達成した者の所在が不明です。
System:貢献度の多い人物に受け渡したいと思います。
System:エラー、このイベントに貢献度の多い人物が存在しません。
System:称号の所在が不明です。
System:原因の究明のため、システムが一時的に凍結します。
アル「お帰りなさいませ、皇太子殿下。」
皇太子「........不快な気分だ。」
アル「それは、一度死んでおりますので......すぐに、元の状態に戻りますよ。」
皇太子「........やはり、我が恋人は復活できぬのか?」
アル「試してみる価値はありますが、あまり期待はできませんよ?」
アル「それでもよろしいのであれば......。」
皇太子「頼む.......。」
アル「畏まりました。」
何故、恋人の復活に対してこのように、前向きでないのかについてなのだが、一度主によって完全に破壊された魂の蘇生が不可能に近いからだ。
今回、教会が起こしたであろうこの事件は、主と密接に関係している可能性があるため、皇太子殿下の恋人を復活させるのは、不可能に近いだろう。
アル「しかし、成功して良かったです。今回はまだ、教会の手が加わっていない、イレギュラーな事件であったため、このような蘇生が可能でした。(小声)」
アルカードは、皇太子の方へ近寄り一礼し、王宮の方に向かっても一礼する。
アル「それでは、我々はこれにて失礼いたします。」
皇太子「あぁ.....何か困ったことでもあれば、次は我々が協力しよう。」
アル「ありがとうございます。」
そう言うと、アルカードは、ゴーストプリンセスの元へ行くのだった。
Name:イザナ・ファルネアス・ロードスト
種族:人
職業:皇太子殿下
Level:370(?)
Skill:........../王国騎士流体術(伝説級)/王国騎士流剣術(伝説級)/王の威圧
称号:...../皇太子/罪への清算/一度の死を得て
※システムが一時、破損し修復されたステータスです。
Name:第二騎士団長
種族:獣人
職業:第二騎士団長
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:...../第二騎士団長/ソードマスター/一度の死を得て
※ファルネアス王国のNPCの中でプレイヤーに対して好感度が下回らなかった偉大な人物。
PlayerName:アルカード(?)
種族:血人
職業:不明
Level:不明
Skill:不明
称号:不明
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「王国編第14話。」
System:エラーの修正のため、解説コーナーが開けません。
System:システムが一時的に凍結しております。
ブチッ
※回線が切断されました。
[絶対に、許さない......。]
[お父さんを殺したこの世界も、創造主も、NPCも......。]
[絶対に、絶対に、許さない。]
ガタンカタンカタンカタカタカタ.....(歯車の周る音)
ガタンカタンカタンカタカタカタ.....(歯車の周る音)
プシュ―(蒸気の音)
[まずは、
[きっと、何処かで見つかるはずなのだから.....。]
ガタンカタンカタンカタカタカタ.....(歯車の周る音)
ガタンカタンカタンカタカタカタ.....(歯車の周る音)
※回線が復旧しました。
System:現在システムエラーによりシステムが一時的に凍結しております.......。
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