ー 63話
「聖女様ばんざ~い!」
「聖女様!」
聖女(ふふ.....それじゃぁ、始めましょうか。)
聖女様は、民衆に微笑みながら大きく手を振り合図を送る。
貴族街の屋根上に潜み聖女様の演説を眺めていた黒服は、聖女様の合図を見て応える。
黒い服「..........合図だ。」
黒い服「やれ。」
???「ヒヒ、俺らの出番かぁ?」
黒い服「そうだ、派手にやれよ?」
???「わぁってるって、報酬の事忘れんなよ?」
黒い服「それは、お前達次第だ。」
顔を隠した黒服は、その場から消えて何処かへ行ってしまう。
ドカーン(衝撃音)
NPC「キャー!?」「何?」
Player「なんだなんだ!?」
NPC「助けて!」
Player「え、エヌピーシーの安全を確保しろ!」
NPC「誰かー!」
後ろの方で大爆発が起き、城門前は民衆が大パニックを起こし、大変なことになる。
騎士「陛下!早くこちらへ!」
国王「な、なにが起きたというのだ?」
騎士「何者かによる攻撃です。」
騎士「陛下の安全を最優先し、この場から離れよ!」
騎士「ッハ!」
統率の取れた騎士が、陛下の前に立ち押し寄せてくる民衆の波を防ぐ。
国王「皆の安全はどうする!」
騎士「我々がおります!ご安心ください。」
国王「...........。」
騎士「陛下!我々が今まで情けの無い姿を見せていたせいで、陛下を失望させてしまった事を我々は知っています。」
騎士「どうか、今一度、我々に機会を頂きたい!生まれ変わった我々を信じ、陛下をお守りさせてください。」
国王「分かった.......。」
執事「陛下、移動しましょう。」
皇太子「..................。」
国王「息子よ、何をしておる!」
皇太子「....................................。」
執事「皇太子殿下、行きましょう。」
皇太子は、爆発が起きたところを見つめたまま立ち尽くしていた。
皇太子「ダメだ.......。」
国王「何をしておる!早く、連れて来ぬか!」
騎士「皇太子殿下!」
皇太子「辞めろ!」
皇太子「辞めてくれ!」
皇太子が見たものは........。
爆発のあった場所で木に吊るされている若くて綺麗な一人の女性だった。
???「ひっひっひ、依頼に書いてあったのは、あそこにいるあいつかぁ?」
???「そうらしいぜ。」
吊るされている女性の首に向かってナイフを突きつけたプレイヤーは、皇太子の方を見て不敵な笑みを浮かべる。
皇太子が、凄い形相をして騎士を押しのけて、こちらの方に剣を向けて走ってくるのが見える。
騎士「で、殿下を御止めしろ!」
皇太子「辞めろーーー!!!(大声)」
騎士「殿下!危険です!」
執事「で、殿下ー!」
???「おうおう、血相変えたイケメンがこっち来てるぜ?」
???「ひっひっひ、確か出来るだけ皇太子と遊べだったよな?」
???「違う違う、出来るだけ絶望を与えろだ。」
???「同じことだろ?」
???「ッハ、チゲェねぇ。」
周りのプレイヤー達は、大パニックを起こした民衆に押し流され、身動きが取れなかったりドミノ倒しになったりしたせいで、潰されたりと大変な目にあっていた。
「押すなー!」
「逃げろ!」
「こ、攻撃だ!」
「ぷ、プレイヤーとかいうやつのせいか!?」
「し、死にたくない!」
「皆、落ち着け!」
貴族はというと、昔の光景を....歴史を思い出し、急いで兵士を呼びだしては、身の安全を一番に確保し自身に近づく者を平民、犯罪者問わずに斬り捨てよと命令を出す。
それがさらに大パニックを起こす火種となってしまった。
皇太子「辞めろ!」
ガキン(金属音)
???「ひっひっひ、こいつぁ殺していいんだったかぁ?」
???「ダメだ、そいつは生かしておかなきゃならねぇ。」
???「ッチ、まぁでも腕の一本ぐらいは記念に貰ってもいいよなぁ!」
皇太子「なぜなのだ!」
???「ア"?」
騎士「陛下をお守りしろ!」
???「ッチ、そいつら任せたぞ!」
???「へ~いへい。」
騎士「な!?」
騎士「退け!邪魔をするな!」
???「退けと言われて退く馬鹿はいねぇだろぉが?」
ガキン(金属音)
皇太子「なぜ、このような!」
皇太子「先ほどの素晴らしい演説を聞いていなかったのか!」
???「演説ゥ?」
???「ッハ、俺らぁはなぁ?」
???「てめぇらが、生きてるだとか生きてねぇだとかいうそんな下らねぇ事なんて知らねぇんだよ。」
皇太子「な!これからは、我々と共に平和な国を作れるというのに何故そのような事を!」
???「平和ァ"?んなもんくそくらえだ。」
???「平和なんぜ、日本でさんざん糞みてぇに味わってんだよ!」
???「俺らぁはなぁ、ただ刺激が欲しいんだよ。」
皇太子「だからと言ってこのような事が許されるはずがない!」
皇太子「そこに吊るされている女性を誰と心得る!」
???「あいつかぁ?そんなもんお前のガールフレンドだろぉ?」
???「いっちょ前に、イケメン面してて腹立つしよぉ。」
???「しまいにはだらだらと説教垂れてくるしよぉ。」
???「俺らはただ"ゲーム"してんだけなのによぉ!」
ガキン(金属音)
皇太子「や、辞めろーーー!!!彼女に何もするな!」
???「ほらほらぁ、近づいたらこの子の首がぶっ飛んじまうぞぉ?」
???「なぁんてなぁ。」
ガキン(金属音)ドン(腹を蹴る音)
皇太子「っぐ........。」
腹を蹴られた皇太子は、後ろの方まで吹き飛ばされて膝をつく。
???「ひっひっひ、なぁ?まだ気づかねぇの?」
皇太子「な、何を......今すぐ.......そのご令嬢から離れよ......!」
???「ほらほ~ら、この面見ろって!」
皇太子「な!?」
吊るされている令嬢の顔を持ち上げて、皇太子の方に向けて見せてあげる。白目を剥いた状態で、すでに息絶えた状態の令嬢が目に移り、皇太子は涙を流しながら、プレイヤーを睨み剣を握りしめる。
皇太子「この、外道めがー!」
???「っひっひっひ、これだよこれ!」
???「最高だなぁ!」
ガキン(金属音)キーーーーーン(衝撃音)
剣とナイフが衝突した瞬間、衝撃音と突風が吹き荒れる。
???「ひっひっひ、怒ったか?怒ったよなぁ!」
???「楽しかったぜ?」
???「何度も何度も泣き喚いてよぉ。」
???「その度に殿下が助けて下さるからだとか、覚悟しておけだとか言っててよぉ。」
???「傷が出来る度に、ポーションで直してあげて!」
ガキン(金属音)
皇太子「黙れぇ!この外道がぁ!」
皇太子「彼女に何の恨みがあってそのような事を!」
???「恨みぃ?」
???「恨みなんてねぇよ。」
???「ただ、俺らが楽しみたかっただけ!」
???「いっただろぉ?刺激が欲しいんだよ刺激!」
皇太子「このクソ"プレイヤー"共が!」
System:ファルネアスの王、イザナが全プレイヤーに対して敵対心を持ちます。
System:プレイヤーとNPCとの間に埋められない溝が出来てしまいました。
System:ファルネアス王国の全NPCが全プレイヤーを"プレイヤー"として"認識"しました。
System:ファルネアス王国のNPCが、全プレイヤーに対しての好感度が最低値を下回りました。
System:今までNPCが受けてきたプレイヤーの行動がゲーム内に全て反映されます。これにより、システムのアシストが全て無効化されました。
Player「な!?」
NPC「お前たちのせいだプレイヤー!」
NPC「えーん....おかぁさぁん、どこぉ......。」
Player「今は、争ってる場合じゃ!」
Player「協力して.....。」
NPC「退け!この外道共!」
NPC「何が協力だ!ふざけやがって!」
システムの警告により、事態は更に悪化し今まで落ち着いていたプレイヤー達もパニックに陥る。
ガキン(金属音)
騎士「へ、陛下!」
皇太子「近づくな!」
皇太子「今すぐそこに吊るされている私の婚約者を連れてこの場から離れよ!」
皇太子「それから、我が騎士達よ!我が国民を悪しき"プレイヤー"共から守れ!」
騎士「し、しかし!」
皇太子「これは、命令だ!」
騎士「ッハ!」
普段、何があっても他者に対して命令をしない殿下が、あれほど怒り狂い命令という言葉を口にされた事に驚きながらも、命令に逆らう事の出来ない騎士は、急いで息絶えている令嬢を連れてこの場から離れようとするが、そこにプレイヤーが立ちはだかる。
騎士「退け!」
???「キリリング、死んだのかぁ....?」
騎士「退けと言っているのが聞こえないのか!」
???「くはは....んじゃぁ、次は俺の番だなぁ!」
騎士「な!?」
ひゅ~ん(プレイヤーが消えた音)ガキン(金属音)
???「かってぇなぁ、その甲冑!」
首元にナイフを突きつけるが、甲冑により弾かれて後方に吹き飛ばされる。
???「脱いだらどぉだぁ?」
???「そんな重てぇの邪魔だろぉ?」
ドスンと地響きでも聞こえてきそうなほど大きい男性が騎士の後ろからやって来る。
騎士団長「退けぇ騎士共!わしがヤル!」
騎士「だ、第二騎士団長!」
???「っくはは!ツヨソォだなぁおまえ!」
騎士団長「小童が、王国にこのような事をして、ただで済むと思っておるのか?名を名乗れ!」
???「名ァ?」
???「名ァねぇ.....もうすぐ死ぬてめぇらに名乗らなきゃなんねぇのかぁ?」
騎士団長「ならば、名も無き者として有象無象の衆と共に死ぬが良い!」
???「ア"?」
ガキン(金属音)ドォォン!(地面が凹む音)
???「ガァ、こんのぉ馬鹿力が!」
ガキン!(金属音)
騎士団長「ガッハッハ、なかなかやるではないか!」
???「カスが、粋がんじゃねぇぞぉ。プログラムの分際で!」
騎士団長「ッハ!小童が、その舐めた態度、後悔するぞ!」
ドン(地割れ)
騎士団長が足を振り落とすと、思いっきり地面が揺れて地割れが起きる。
???「んだてめぇ、脳筋かよ!?」
騎士団長「この程度で驚かれては困るなぁ!」
ガキン(金属音)
???「グアァ。」
???「クソが!」
???「んだよぉてめぇ。ただのNPCじゃねぇな?」
騎士団長「確かに、貴様らの言うただのNPCとは違うであろうなぁ。」
騎士団長「何故なら、我はこの国の騎士団長であり、国民を守るための盾と剣である!貴様らのような悪党共に屈するほどやわな身体をしておらん。」
騎士団長「さぁ。」
ドン(大剣を地面に突き刺す音)
???「何の真似だぁ?」
騎士団長「名を名乗れ!」
恐ろしいほどの圧が騎士団長から伝わってくる。
???「ハァ?」
ギルガ「ッチ、ギルガだ、ギルガ。てめぇら騎士にさっき殺されたキリリングの兄だ。覚えとけ、糞騎士。」
騎士団長「ガッハッハ、威勢の良い餓鬼であるなぁ!」
騎士団長「良し、ここはひとつ年配者として教育してやろう。」
ッグっと腰を落とし、拳を握り締めギルガの方を向く。
ギルガ「何の真似だぁ?」
ギルガ「剣も持たずに止まってたら、何も出来ずに死ぬぞ老いぼれが!」
シュン(高速移動の音)
一瞬で騎士団長の背後に回ったギルガは、首元に向かって毒のついたナイフで斬りつけにかかる。
騎士団長「ガッハッハ、では......。」
首元にナイフが触れたと思った瞬間、画面が真っ暗になり強烈な衝撃波が現実の脳に伝わってきて、頭に装着したVR機器が頭から外れて飛んでいく。
「があああああああああああああああああ。」
その瞬間、激しい頭痛がギルガを襲い悲鳴を上げる。
「おい、兄貴どうした!」
隣の部屋から凄まじい悲鳴を聞いて急いで飛んできたギルガの弟こと、ゲーム内名キリリングが、部屋のドアを開けてやって来る。
「クソがぁぁぁぁ!」
「いってぇ.....いてぇよぉ......。」
「兄貴!おい、しっかりしろどうした!」
ベッドの上で頭を抑えながら涙を流す兄を見て、ただ事じゃないと思った弟は急いで病院に電話をする。
「あ、兄貴、もうすぐ救急車がやってくるから!」
パニックになりながらも、どうにか心を落ち着かせて、部屋の扉の前でうろうろする。
「クソがぁぁぁぁ!」
先ほどからずっと、頭を押さえながらクソがと叫ぶ兄を見ながら、少し恐怖すると同時に、原因であるであろう兄のVR機器に目が行く。
床に転がったVR機器は、特に何も変わった様子もなくただピーと言う聞きなれない音を出しながら、転がっているのだった。
Name:表示不可
種族:人
職業:国王陛下
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/王国騎士流剣術(最上級)/王の威圧
称号:...../国王
Name:セドリック・レイン・アルドリック
種族:人
職業:執事
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/暗器術(最上級)/闇魔法(上級)[闇に関する魔法技能統合]
称号:...../卓越した指導者/国王の執事
Name:イザナ・ファルネアス・???
種族:人
職業:皇太子殿下
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:...../皇太子
Debuff:発狂/怒り
Buff:聖力による影響(詳細不明)
Name:表示不可
種族:獣人
職業:第二騎士団長
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:...../第二騎士団長/ソードマスター
※ファルネアス王国のNPCの中でプレイヤーに対して好感度が下回らなかった偉大な人物。
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「王国編第11話です。」
「聖女様の計画は、どうやらこれだったようです。」
「NPCとプレイヤーとの良い関係を築きたかったのではなかったのでしょうか?」
「これから聖女様はこの場をどのように納められるのでしょうか?」
「それと......今後のプレイヤーとNPCの関係はどうなっていくのでしょうか?」
「ちなみに、最後ギルガさんが頭を痛がっていた原因は現在不明です。」
「この後病院に行ってから検査を受けて明らかになるかも?」
「以上でサクッと解説を終了します。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「さようなら~。」
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