ー 62話
ベクター「陛下がおっしゃられたように、我々の派閥の貴族に寄付金をしっかり司教に渡すように伝えておきました。」
悔しそうな顔をするベクターを見て、国王は頭を下げてそれに応える。
国王「すまない.....ベクター、我が至らぬばかりに、このようなことになってしまった。」
ベクター「へ、陛下!?お顔を上げてください。」
予想外の出来事に戸惑うベクターは、陛下に頭を上げて欲しいとお願いする。
ベクター「一国の王がこのように軽々しく頭を下げられては困ります。」
ベクター「それに、どこであの豚共が監視しているかも分からないのですよ?」
ベクター「この事が広まってしまえば、より多くの反発が.......。」
国王「.......すまない。」
疲れた顔をする国王を見たベクターは、国王の心境を察して一礼する。
ベクター「い.....いえ、こちらこそ出過ぎた事を言いました。お許してください。」
国王は、ベクターに頭を下げるのを辞めよと手で振り払い、今後の事について考え込む。
執事「.....ベクターよ。」
ベクター「はい、なんでしょうか父上。」
執事「ベクター、このような場で父上なぞと言う出ないといつも言っておろう?」
ベクター「も、申し訳ございません。執事長。」
執事「はぁ、このような場ですみません陛下。」
国王「はっはっは。」
国王「よいよい、気にすることでないぞセドリック.......。」
親子のやり取りを見た国王は、一瞬笑顔を浮かべるが、また険しい表情に変わって何かを考える。
オホンと咳払いした執事長は、ベクターの方を見てから気になっていた点を質問する。
執事「.......ベクターよ、寄付金の事でアレの件はどれほど延期する事となったか教えよ。」
ベクター「ッハ、少なくとも3か月後なら可能だそうです。」
国王「ふむ.......。」
国王「ベクターよ、祭事後は難しいか?」
ベクター「.......難しいかと。」
国王「そうか.......。」
項垂れながら溜め息をついた国王は、ベクターの申し訳なさそうな顔を見て謝罪する。
国王「よい、其方のせいではない.....。」
国王「其方は父親と同様に十分に我に尽してくれておる。」
国王「我が、其方に教会に寄付するように伝えたのだ。」
国王「自信を責めるのを辞めよ。」
ベクター「.............はい、陛下。」
執事「ベクターよ、本当に無理なのか?」
執事が国王の疲れた顔を見た後に、ベクターの方を見て質問する。
ベクター「方法はございます。」
少し悩んだ後にベクターは、唇を噛みしめながら国王陛下の方を見て真剣な顔をして応える。
国王「して、その方法とは?」
ベクター「祭事を今すぐ取りやめる事です。」
それを聞いた国王と執事はやはりそうかと思い、ベクターにそれは不可能だと応える。
国王「.........ベクターよ、それは無理な話だ。」
ベクター「分かっております陛下。」
執事「.......ベクターよ、正直に述べよ。寄付金の件が無ければ祭事後に実行する事は可能だったのか?」
ベクター「はい、今のように不可能な話ではありませんでした。」
執事「ではなぜなのだ?」
ベクター「父上、寄付金の件は資金の問題だけではないのです。」
拳を握りしめたベクターは、悔しそうな顔をする。
執事「それはどういう......。」
国王「教会か......。」
ベクター「はい。」
国王の一言に、ベクターは頷き執事は、どういうわけかが分からずに息子に説明を求める。
ベクター「父上.......司教が寄付金を頂いた家に何をお配りしているかしっておりますか?」
執事「.......いったい何を配っているというのだ?」
ベクター「十字架です......。」
執事は、十字架という言葉を聞いてどういう事かを察して顔を青ざめ、悔しい表情を浮かべる。
国王「.......はぁ、これも教会の思惑か?」
ベクター「そのようです。」
ダン(机をたたく音)
国王「聖女の方は?」
ベクター「聖女様は、この件には関わっていないようです。」
国王「そうか.......。」
ベクター「それと聖女様は案の定、手ぶらで帰っている様子から、同意書の類は手に入れられていないようです。」
国王「やはりか.....。」
聖女の事もそうだが、まずは司教の方を対処しなければならなくなってしまった。
国王「司教に十字架を配るのを即刻辞めさせる方法はあるか?」
ベクターは困った顔をした後に深呼吸をし、国王に向けて応える。
ベクター「.......家紋を一つこの国から消してもよろしいのであれば、すぐにでも可能です。」
国王「......そうか。(溜め息)」
ベクター「行いますか?」
執事「ベクター!(大声)」
国王「よい、セドリック。」
国王「ベクターよ、司教の事はひとまず置いておけ。」
ベクター「畏まりました。」
ベクター「それでは、失礼いたします。」
バタン(ドアを閉める音)
国王「はぁ、セドリックよ。」
溜め息をついた国王は、執事の方を見て質問する。
執事「はい、なんでしょうか陛下。」
国王「もし、祭事後に反逆罪でこの国の豚共を一掃したとして、教会が口を出してくると思うか?」
執事「はい、そのための十字架なのかと。」
項垂れる国王を見た執事は、国王の心境を察して一度休憩をすることをすすめる。
国王「よい.....。余を心配している事は分かっておる。」
国王「しかし、すまぬなセドリックよ。今は、休憩なぞしている暇はないのだ。」
執事「しかし......、このままでは陛下が.......。」
国王「セドリックよ、すまぬが眠気覚ましにお茶を入れてきてくれるか?」
執事「畏まりました.......。」
困った顔をしながらも国王の命令に逆らう事の出来ない自分に、苛立ちと陛下に対して尊敬を覚えながらも、執事は部屋を退出する。
国王「はぁ、よりによって十字架を配ると来たか.....。」
自身のシンボルマークを配ったという事は、その家紋に対し何か不幸があった時は我々が助けましょうといっているのと同じことなのだろう。
つまり、その家紋に対して国王が反逆罪で罰したとあらば、教会から何を言われるか分かったものではない。
賠償金の請求や責め立てられるだけなら良いが、この国を悪しき国として定め戦争にまで発展してしまえば、貴族を掃討したばかりの国では、不安定な国であるためあっという間に攻め滅ぼされてしまうであろう。
国王「まさに漁夫の利だな......。」
国王「いや、この場合一石二鳥....いや、三鳥か?」
もしそうなれば、教会側は王国側から大量の寄付金を手に入れたばかりか、さらには弱った国をあれこれ理由を付けて聖敵とし、攻め滅ぼして領土も民も信仰までも手に入る事だろう。
国王「ははは....、後手に回っていたのではなく、すでに勝ち目のない戦いだったのか......。(小声)」
国王「この国を生存させるには、どうすればいいだろうか?」
国王「....やはり、貴族の掃討を中止するしかないのだろうか?」
国王「しかし、そうなれば我は国王の座を降りた時に息子に王位を譲った後、すぐに貴族共のせいで滅びる事となるであろう。」
国王「息子に......このような汚れた状態の国を引き継がせるわけにはいかない。」
国王「どうすれば......。」
ガチャ(窓が開く音)
ひゅ~(冷たい風)
???「お手伝いしましょうか?」
国王「誰だ!」
後ろを振り返った国王が見たのは、真っ黒な翼の生えた..........。
Name:表示不可
種族:人
職業:国王陛下
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/王国騎士流剣術(最上級)/王の威圧
称号:...../国王
Buff:聖力による影響(詳細不明)
Name:セドリック・レイン・アルドリック
種族:人
職業:執事
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/暗器術(最上級)/闇魔法(上級)[闇に関する魔法技能統合]
称号:...../卓越した指導者/国王の執事
Name:ベクター・レイン・アルドリック
種族:人
職業:表示不可
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(中級)/暗器術(上級)/闇魔法(中級)[闇に関する魔法技能統合]
称号:表示不可
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「王国編第9話です。」
「最後に現れた人物は、いったい誰なのでしょうか?」
「翼の生えたってことは、もしや魔側の人!?」
「教会の計画もとてもやばいですね。」
「本日のサクッと解説は、今回の話の解説です。」
「まず、ベクターの言った十字架をこれ以上配らせない方法としては、十字架を頂いた一家が教会に対して無礼を働き、十字架をこの国にこれ以上配らせないようにする方法です。」
「ちなみにその場合は、国が教会側に謝罪した後、その一家と国とは全くの関係がないと切り捨てなければならなくなります。」
「そうする事で、教会側の十字架を配る行為を辞めさせるように出来るのと、貴族を掃討した際に、十字架を利用し悪しき事を企んでいた貴族だったと教会側に報告し、例の件も解決する事が出来ます。」
「しかし、その場合は国王側の派閥の貴族が歴史からも1つ消える事となり、その一家とそこで働いている人間は全員処刑されることとなります。」
「それが分かっているため、執事はベクターを叱り、国王はその提案を却下しました。」
「以上でサクッと解説を終了します。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「さようなら~。」
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