ー 61話
国王「あれから聖女と司教の様子は?」
執事「はい。」
執事「聖女様は、現在下級貴族の家を訪問しております。」
国王「はぁ......下級貴族か。」
国王は、聖女の意図を理解するものの、その行動がとても浅はかな事だと思い、溜め息を付く。
執事「はい......下級貴族です。」
執事もこの事についてどういう事かを深く理解していたため、なんともいたたまれない気持ちになる。
国王「確かに、上級貴族共が首を縦に振るはずがないものなぁ......。」
執事「はい......。」
国王「聖女は、知らなかったのであろう........。」
国王「貴族共は......貴族という輩は、何よりも自身の体裁を気にする生き物であり、権力に貪欲な人物であることを.......。」
国王は、聖女の行動が理解できるものの、これでは絶対に同意書など1つも手に入らないと感じ、項垂れていた。
国王「こんなつもりではなかったのだが......。」
国王「我は、ここまで聖女を苦しませるつもりなぞなかったのに......。」
ただ、聖女に現実の厳しさという物を少しだけ教えてあげようと思っていただけだったのだが、事態はより深刻な方へ進んで行ってしまった。
執事「私が聖女様に貴族という者達についてしっかりと助言していれば良かったです.....。誠に申し訳ございません陛下。」
国王「よい、セドリック。我も聖女にそこまで気が回らなんだ。これは、誰のせいでもない。」
国王「強いて誰のせいかと言うのならば、我があの願いを承諾してしまったせいであろう.....。」
項垂れる国王は、これからどうした物かと考え込む。
確かに、教会の聖女という立場を考えれば、これまで政治の勉強なぞ受けれた事がない事は明白だろう。そのため、貴族の序列について聖女が理解していないのも、考えたことがないのも自然な事だ。
そんな簡単な事を見落としてしまっていたのは、最近騎士団長に国王の権限である王国騎士団の管理権限を渡したことで、貴族の反発がより大きくなり慌ただしい日々が続いていたせいなのかもしれない。
国王「もう過ぎてしまった事か.......。(小声)」
聖女の考えは、理解できる。
我も何の教育も受けていなければ、承諾してくれるはずのない貴族よりも、承諾してくれるかもしれない貴族に真っ先にお願いをするであろう。
しかし、貴族と言う人間においては、その考えを捨てたほうがいいのだ。何よりも体裁を気にする生き物で貴族は、教会のそれも聖女という上の立場の人間が、上位貴族を差し置いて、下級貴族からコンタクトを取り、頼み事をしたことが周りに知られれば、上位貴族の人間は、まず良い顔をしないであろう。
頭の悪い貴族の中には、下級貴族が首を縦に振るのに、上の立場である我々がそんな簡単な願いに首を縦に振らないと思っているのか、もしかして教会は我々貴族を見下しているのかなどと訴えてくるかもしれない。
かと言って、上位貴族にお願いを申し上げても首を縦に振らないのは明白であり、下級貴族にも首を縦に振らないように命令する事も分かり切っている事なのだが....。
この件は、あまりにも繊細な案件なだけに、下級貴族からのコンタクトを行った事は、あまりにも無思慮であったと言わざるを得ない。
国王「ふぅ、後で聖女に温かい飲み物でも送るように......。」
執事「畏まりました。」
国王「司教の方は?」
執事「あれから、上位貴族の方々の元へ訪問しては、残念そうな顔をして出て行っております。」
国王「寄付金か?」
執事「そのようです。」
国王「これは厄介なことになったな。」
執事「......そのようですね。」
このままでは、教会からの1つ目の願いについても叶える事が難しくなってしまう。貴族が出し渋る寄付金を、国王が出したと知られれば、国庫を無駄な事に使っているなどと、変な噂を流される恐れが出て来てしまった。
ダン(机を叩く音)
国王「セドリック、今すぐベクターを呼べ。」
執事「はい、畏まりました。」
国王「.......ふぅ。」
国王「教会から何を言われるか分かったものではないな。(小声)」
こちら側から協力を申し出ておきながら、我が国の貴族は少ない寄付金ですら渡すことを出し渋り司教を追い出してしまっている事が知られれば.....。
このままでは、教会から聖敵だとみなされ、戦争になる可能性まで考えなければならなくなってくる。
こちら側から多額の寄付金を寄付すれば、一時の凌ぎにはなるが......。
そんな事をすれば、先ほどの考えたように、貴族共によって国王は国の税金を無駄にしているなどと噂を流され、内乱が起きてしまう。そうでなくても、貴族の反発がより一層大きくなることは目に見えている。
それに......教会に寄付なんぞしてしまえば、どうなってしまうか......。
ベクター「何事でしょうか?」
ベクター「アレの事でしたら、準備は進んでおります。」
国王「そうではない.....。アレの準備を少し延期し、教会に寄付を行うように各貴族に伝えよ。」
ベクター「しかし.....。」
国王「ベクターの言おうとすることは分かっておる。」
国王「情けのない国王ですまぬ.......。」
国王「今は、それしか方法が無いのだ。」
ベクター「.......畏まりました。」
ベクター「失礼いたします。」
執事「..........陛下。」
国王「仕方のない事なのだ。」
国王「こうでもしなければ、教会に寄付なぞできんだろう?」
執事「そうですな.......。」
国王「貴族の掃討作戦をするのが遅かったばかりに.....。」
執事「....................。」
国王「メイドの方はどうだ?」
執事「聖女様の為だと説得し、修行の方は進んでおります。」
国王「間に合いそうか?」
執事「.............。」
国王「よい、難しい事である事はよく分かっておる。」
執事「はい。」
執事「申し訳ございません。私が至らぬばかりに.....。」
悔しそうな顔をするセドリックを見て、国王は窓の外に目をやって見なかったことにする。
Name:表示不可
種族:人
職業:国王陛下
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/王国騎士流剣術(最上級)/王の威圧
称号:...../国王
Buff:聖力による影響(詳細不明)
Name:セドリック・レイン・アルドリック
種族:人
職業:執事
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/暗器術(最上級)/闇魔法(上級)[闇に関する魔法技能統合]
称号:...../卓越した指導者/国王の執事
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「王国編第8話です。」
「あれ?どういう事でしょうか?」
「すでに同意書を手に入れているはずですのに......。」
「もしかしてこれも何かの計画だったり?」
「本日のサクッと解説は、今回の話で矛盾していると思われる点を解説していきます。」
「まず、前回すでに聖女様は同意書を手に入れているはずなのに下級貴族を訪問している点ですが、これはアリバイ作りを行うためです。」
「急に同意書がポンと出てきたらあまりにもおかしくないですか?」
「そういう時の怪しまれないためのアリバイ作りと言うわけです。」
「当の聖女様は、同意書を既に手に入れているので、貴族共の家へは布教活動をしにいっているだけなのです.....。」
「今後の"計画"のために.......。」
「次に、司教が残念そうにしている点ですが、これは全部演技です。」
「貴族がそんな無礼を働けばすぐに聖戦だと司教が言うだけでいいのですから.....。」
「この演技を行う事でどう利点があるかについてなのですが、既にお話に出ているようにさらに王国から多くの寄付金が演技1つで簡単に手に入る点ですね。」
「王国の実情を隅々まで把握し、報告を黒服から受けているためこのような演技に至ったわけです......。」
「これで一応、この話の矛盾はないと思われます。」
「ちなみに、聖女が下級貴族から訪問したのも計画の一部だったり、今回のように同意書を手に入らないと国王に思わせるためだったりもします。」
「以上でサクッと解説を終了します。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「さようなら~。」
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