ー 59話
あの国王様との食事から2日が経った。
あの食事を終えた後から相変わらず私の周りには、煩わしい虫がぶんぶんと飛び回っているのだけれど、私は気付いていない振りをして過ごしている。それに、向こうも私の事を白かもしれないと思ってきたからか、私の事を監視していない時間帯も少しずつだが増えつつある。
その時間帯に、黒服に連絡を入れては状況を確認しつつ、あのバカな司教とも連絡している。あの司教は、と言うと貴族共に連絡をいれ、好条件で契約が結べたからか呑気に昼間っから酒を飲んでいたらしい。
それから、この監視について黒服に聞いた話だと、どうやら国王は私が前の役立たずな聖女のように、ただ教会に操られているだけの可哀そうな少女だと思っているようだ。
勘違いも甚だしい、地位も名誉も手に入れておきながら、人々の為だけに尽し人々を守り、教会の間違いを正そうと綺麗ごとだけを並べるような愚かな人間と、私が同じですって?馬鹿なのかこの国の人間は........。
綺麗ごとだけで飯が食べられるわけがない。
信仰だけで、全ての人間が救われるわけがない。
少しの犠牲は、仕方のない事なのに全員を守り助けようとするから、自身の地位も奪われて結果的に全てを取りこぼすのよ。全く呆れて何も言えないわね。
まぁ、それでもやっぱり自分の事は可愛かったのかしら?
最後の最後になって守っていた人間を全て見捨てて教会から逃げだしたのですもの。
綺麗ごとだけは、一丁前に並べる癖にいざ自分が危険な目に会ったら、仲間も守りたかった者も全て投げ出して逃げるんですものね。
それにしても、何故前聖女は教会の聖遺物を盗んでから逃げたのかしら.......。
聖遺物なんて持っていれば、教会の人間に何処にいるのか分かってしまうし、逃げる時に邪魔になるのに......。
確かあの時、盗まれたのって杯と本.....だったかしら?
何に使う物かは、教皇様ですら私に教えてくれなかったのだけれど。
まぁ、今となってはその前聖女を探しようもないし、私には関係のない事だから、どうでもいいのだけれど、それにおかげで私がこの地位に居座れるわけなのだし、感謝してあげても良いのかもね。
ただ、その聖女と私が同じだと思われるのは、どことなく腹が立つわね。
聖女「はぁ......。」
メイド「どうしました?聖女様。」
心配しながらこちらを見てくるファミリスに、大丈夫よと告げて微笑む。
聖女「ちょっと憂鬱だったのよ.....。最近は雨ばかりでここへ来た理由である祭事を行えないでしょう?」
メイド「........。私は、聖女様のお世話が出来てとても光栄です。」
メイド「それに、私は聖女様が祭事を終えて帰ってしまわれるのを思うと......とても悲しい反面、聖女様が祭事を出来ないと悲しむのを見ていると、私も悲しいです。」
メイド「し、失礼しました。」
メイド「い.....今のは、忘れてください。」
慌てた様子で、お辞儀をするメイドを抱きしめて頭を撫でてあげる。
聖女「貴方さえ良ければ私の専属神官にならない?」
メイド「...........。」
メイド「私は........。」
聖女「良いのよ?無理しなくて、正直に言いなさい。」
メイド「私は、この国が大好きです。でも.......今は.........。」
聖女「この国を捨てろと言っているんじゃないのよ?」
聖女「貴方が返りたい時には、いつでも帰って来れるように手配もしてあげられるんだから。」
メイド「そんな.......それでは、聖女様にご迷惑が........。」
聖女「ふふ、迷惑だなんて、私が貴方にしてあげたい事なんだから、気にしないで?」
メイド「どうしてこんなに優しくして下さるのですか?」
聖女「そうねぇ......私が貴方の事を気に入ったからかしら?」
メイド「それだけ.....ですか?」
聖女「そう、それだけ。でもね?」
聖女「貴方に何かしてあげたい理由なんて、それだけで十分じゃない?」
メイド「聖女様.......。」
ニコっと笑うファミリスを見ながら、聖女はおぞましい顔をして微笑む。
(いけないわね.....。最近は、いろいろとストレスが溜まっているからかしら?)
(顔と感情のコントロールに手間取ってしまうわね。)
(それに、今は虫が飛び回ってるから、すぐに戻さないと危険だわ。)
聖女「ふふ、よく考えてくれたら嬉しいわ。」
聖女「私は、貴方をいつでも歓迎してるんだから。」
メイド「はい、聖女様......。」
メイド「ありがとうございます。」
少し泣いてしまったメイドは、涙を拭って微笑みお茶をご用意してきますと言って部屋を退室してしまった。
聖女「ふふ、それにしても近頃は、本当に天気が悪いわね。」
聖女「いろいろと準備も遅れているし、祭事が出来ないから巡礼も出来ないわ。」
聖女「それに、皇太子殿下とは、あれから会ってないよね.......。」
聖女「お元気なのかしら?」
ガサ(物音)
部屋の物音を聞いた聖女は、虫が何処かへ行ったのを確認して、溜め息を付く。
まぁ、皇太子殿下が会いに来ていないのは、我々のせいだろう。
教会側と協力したいと申し出ている癖に、何一つこちら側を信用していないから、自分の息子を安全な場所に閉じ込めて警備でもしているのだろうという事は簡単に予想がつく。
聖女「ただ.....残念ね。」
だって、私は皇太子殿下じゃなくてその婚約者を狙ってるのだから。
計画も順調に進んでいるらしいし、そろそろ動き出そうかしら?
出来れば私がその婚約者に会っていろいろ計画を進めて行きたかったのだけれど、ここで皇太子殿下の絶望する顔を見るのもまた面白そうなのよね。
実際に顔を見られるかどうかは、知らないけれどね。
メイド「お待たせいたしました!」
聖女「いつもごめんなさいね。」
メイド「いえ!私の生き甲斐であり、お仕事ですので。」
ニコッと微笑むメイドを見ながら、外の天気を見てから微笑む。
(あぁ、本当に楽しみね。)
ザー(雨の音)
ゴロゴロゴロ(雷の音)
Name:表示不可
種族:人
職業:聖女
Level:表示不可
Skill:......./聖力(伝説級)[聖に関する技能統合]/神聖[神聖に関する技能統合]/聖なる威圧
称号:...../聖女
Name:ファミリス
種族:人
職業:メイド
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:平民/王宮メイド
Buff:聖力による影響(詳細不明)
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「王国編第6話です。」
「どうやら、おぞましい計画が進んでいるようです。」
「聖女様はいったい何をしようと企んでいるのでしょうか?」
「本日のサクッと解説は、お休みです。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「さようなら~。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます