ー 58話

カタン(食器の上にフォークを置く音)

国王「..........何も応えてくれぬつもりかのぉ?」

国王「聖女よ。」


会話のないままの静かで重たい空気の中で食事が進み、食事を終えてしまった国王が、聖女に一言申し上げる。


聖女「いやですわ、国王様。」

聖女「私には、何もおっしゃらなかったではありませんか?」


聖女は、食事の手を止めてニコっと微笑み、何も聞かされていないわよという国王が聞きたいであろう内容を事前に知っているであろうに、白々しい顔をしてアピールする。


国王「では、聖女よ。改めて其方ら、教会側にお願い申し上げたい。」

国王「我は、教会と王国で良き隣人になれると信じておる。」

国王「今までの我らの行いを許し、協力しあう事は出来ぬであろうか?」


聖女は、顔には決して出さなかったが、その呆れた内容を聞きながら内心では、はらわたが煮えくりかえるほどの怒りが湧いてきていた。


国王の話を要約するとこうだ。

[俺たちは友達だもんな?]

[だったら、我々王国側が今までしてきた教会側に対する無礼な言動及びに、侮辱してきた罪を全て許して、協力することは容易だろ?]

[こっちが頭を下げてお願いしてるんだから承諾してくれるよな?]

という事だ。


なんなんだこの物言いは?

この国王は、気でも狂ってるのか?


聖女は、少し考えた振りをしてから、司教様の話を出す。


聖女「司教様はなんとお応えになったのでしょうか?」

国王「全て聖女様に一任するとのことだった。」


国王は聖女の方を見ながら笑顔を向けてはいるものの、静かに圧を与えてくる。


聖女「そうですか、国王様には大変申し訳ないのですが、少し考えさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

聖女「教皇様にもお伝えしなければならない重要な案件でございますので。」

聖女「私一人の考えだけでは、お応えする事ができません。」


そう言いながら申し訳なさそうな顔をしてから、国王の方を見て一礼する。


国王「良き返事が貰える事を期待している。」

聖女「私も良き隣人となれる事を期待しておりますわ。」


そう言って、立ち上がった聖女は後ろを振り向いてそのまま食堂を出て自身の部屋に戻る。


バタン(扉を閉める音)

聖女「すみません。便箋を持ってきて頂いてもよろしいでしょうか?」

メイド「は、はい!畏まりました。聖女様。」


急いで部屋から出ていき、メイドがいなくなった事を確認した聖女は、手を叩いて黒服を呼ぶ。


黒い服「ッハ!お呼びでしょうか?」

聖女「準備は出来てる?」

黒い服「はい、かのご令嬢の情報及び、現在地も全て把握しております。」

黒い服「今すぐお連れしましょうか?」

聖女「いいえ、今は構わないわ。」

聖女「教会側から、クエストを発行してもらえる?」

黒い服「クエスト.....ですか?」

聖女「えぇ、"プレイヤー"とかいう人種に向けてクエストを発行して人を集めなさい。」

黒い服「プレイヤーですか?」

聖女「えぇ、あの主がお呼びになった"プレイヤー"とかいう不死の存在の事よ。」

黒い服「畏まりました。」

黒い服「強さのほどは?」

聖女「そうねぇ、あの者達がいうレベル100とかいう数字前後のプレイヤーがいいわね。出来れば、すぐに騙されそうなお人好しの馬鹿か、"犯罪者"がいいわね。」

黒い服「犯罪者.....ですか?」

聖女「えぇ、もし犯罪者の場合のクエスト報酬は、犯罪経歴の抹消と聖武具よ。」

聖女「これだけすれば、いくらでも人が集まると思うわ。」

黒い服「畏まりました。」

聖女「人が来たわ。もう、下がりなさい。」

黒い服「ッハ!失礼いたします。」

ッシュ(消える音)


ガチャ(扉を開ける音)

メイド「聖女様、便箋をお持ちいたしました。」

聖女「ありがとう。」

メイド「失礼でなければいいのですが、どなた当ての手紙なのでしょうか?」

聖女「ふふ、ごめんなさいね。あなたの思うような殿方への手紙じゃなくて、教会への業務連絡なのよ。」


にこやかに笑う聖女様の笑顔を受けて、頬を真っ赤にしたメイドは、失礼しました。と言ってお辞儀する。


聖女「ふふ、それじゃぁメイドさん。」

メイド「はい!何なりとお申し付けください。」

聖女「申し訳......ないのだけれど、紅茶も持ってきて頂いてもいいかしら?」

メイド「か、畏まりました。」


また急いで部屋を出ていったメイドは、ドアを出てからすぐのところで躓いて転んだ音が聞こえてくる。


メイド「いてて.....。(小声)」


聖女「ほんと、可愛らしい子ね。」


ペンを持った聖女は、教皇に向けて手紙を書いていく。一見普通のように描かれている手紙だが、ところどころ暗号で本当の文面が隠されており、王国の詳細が書かれていく。

書き終えた聖女は、一息ついて窓の外を見る。

今日は昨日のように雨が降っていないものの、非常に天気が悪く外は曇ってしまっていて真っ暗だった。


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聖女が出て行って少し経った後.....。

食事を終えた国王は、一息ついた後に暗部を呼ぶ。


???「ッハ、国王陛下。お呼びでしょうか?」

国王「聖女を監視しろ。」

???「...........、し......しかし......。」

国王「責任は、我がとる故、其方らは何も気にする事は無い。」

???「畏まり.....ました。」

ッシュ(消える音)


執事「よろしいので?」

国王「............。」


ため息を付いた国王は、紅茶を手に取り飲み干すと、不機嫌な顔をしながら応える。


国王「あの小娘聖女に何かが出来るとは、我も思っておらん。」

国王「指示を出しておるのも、裏で手をまわしておるのも教皇とあの司教であろう。」

執事「そうでしょうが......あの聖女様が不憫でなりません。」


立ち上がった国王は、何も言わずに食堂を出て執務室へ向かう。


執事「陛下......。」

国王「分かっておるのだ。」

国王「出来れば、あの聖女も助けてやりたいが、国がこの有様ではそうもいくまい。」

執事「...........。」

国王「先代の聖女も、いいように使われて反抗するようになれば、教会側にこっそりと処理されてしまった。」


悔しそうな顔をする国王は、教会のしている事に怒りを露わにする。


国王「あれは、信仰と言う名の善を被った悪魔の集団にしかすぎぬ。」

国王「だから何も信用ならんのだ......。」

執事「でしたら、あのような強い口調で聖女様に話されずとも.......。」


先ほどの会話を裏で聞いていた執事は、聖女様が不憫で仕方がないという顔をして、国王に申し上げる。


国王「少し鎌をかけてみたのだ。」

国王「あの場で聖女が教皇や司教に確認を取らずに全てあの場で決定するか、もしくはあのような物言いに怒りを露わにしておれば、教会側かもしれないと予測ができよう?」


しかし今回、聖女様と食事をして教会側ではないという事がある程度確認することが出来た。

国王の話を聞いた執事は、拳を握りしめて悔しそうな顔をする。


国王「そう怒るでない.....セドリック。」

国王「我も、不本意なのはわかっておろう?」

国王「しかし、こうでもしなければ教会側の人間は、信用ならんのだ。」

執事「分かっておりますとも陛下......。」

執事「私は、陛下に怒っているのではありません。何もできない私自身に......憤りを感じ怒っているのです。」


肩を落とした執事は、陛下に向けた無礼な言葉を謝罪し一礼する。


国王「ふぅ.....どうしたものかの。」

国王「今のところ先ほどの会話だけでは、聖女が教会側ではなさそうだという風にしか断定できぬ。」

執事「なので先ほど、暗部に監視を?」

国王「そうだ。もしこれで、何か怪しい行動が少しでも見つかれば、聖女が教会に命令されるだけの操り人形ではなく、教会側の人間だと断定できよう?」

国王「まぁ、その場合は......先ほどの会話は不利に働き、この国は、教会側と敵対関係になったわけなのだが........。」

国王「どのみちあのような集団となぞ上手くいくまい?」

執事「危険な賭けではございませんか?」

国王「.......だが、聖女があちら側という可能性は、限りなく低かろう?」


執事は、静かに頷いた後、仰せのままにと言って国王の後ろに控えるのだった。


Name:表示不可

種族:人

職業:聖女

Level:表示不可

Skill:......./聖力(伝説級)[聖に関する技能統合]/神聖[神聖に関する技能統合]/聖なる威圧

称号:...../聖女


Name:ファミリス

種族:人

職業:メイド

Level:表示不可

Skill:表示不可

称号:平民/王宮メイド

Buff:聖力による影響(詳細不明)


Name:表示不可

種族:人

職業:国王陛下

Level:表示不可

Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/王国騎士流剣術(最上級)/王の威圧

称号:...../国王


Name:セドリック・レイン・アルドリック

種族:人

職業:執事

Level:表示不可

Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/暗器術(最上級)/闇魔法(上級)[闇に関する魔法技能統合]

称号:...../国王の執事


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「王国編第5話です。」

「あらら、国王様どうやら勘違いしているようですね。」

「聖女様は、根っからの教会側の人間ですのに......。」

「どうやら以前の聖女様が、とても不憫な目にあったようですね。」

「なので、勘違いしているようです。」

「本日のサクッと解説は、お休みです。」

「以前の聖女様について解説しようと思っていたのですが、もう少し後にいたしましょう。」

「以上で本日のサクッと解説を終了します。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「さようなら~。」

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