ー 57話

団長「陛下の招集によりはせ参じました。此度は何用でお呼びになったのでしょうか?」


団長は、いつも陛下がいらっしゃる執務室ではなく応接間におり、さらには陛下が頭を抱えている状況を疑問に思いながらも、今回私が緊急で呼び付けられた件について質問する。


国王「我が国は..........なのか?(小声)」

団長「.....あの、国王陛下、失礼でなければもう一度おっしゃられていただいてもよろしいでしょうか?」

国王「団長よ、我が国の兵はやはり軟弱なのか?」


それを聞いた団長は、拳を握り締めてから唇を噛みしめ、今までなかなか申し上げられなかったことを申し上げる。


団長「畏れながら申し上げますが、陛下のおっしゃる通り、我が国はとても平和ではありますが、王国の騎士団は既に腐敗しきっており、貴族連中の現状も決して良いとは言い切れません。」


最悪不敬罪で首が撥ねられることを覚悟し、陛下に嘘偽りなく正直に全てを申し上げる。


執事「陛下に向かって無礼だぞ.......。」


執事は眉をひそめながら、団長の申し上げた無礼な物言いに向かって激怒するが、陛下がそれを諫めて黙らせる。


国王「よい。」

国王「団長よ、貴殿に新たな任を与える。」

団長「ッハ!何なりとお申し付けください。」

国王「ただちに腐敗しきった騎士団を正常にし、強固な王国兵士へと育て上げよ!」

団長「ッハ.......仰せのままに。」


拳をぎゅっと握り締めた団長は、国王陛下の無茶振りにも了承する事しかできなかった。しかし、今の私の実力ではこの無茶振りをどうする事も出来ないので、無礼だとわかっていながら、それでいて却下されると分かっていながらも、一つだけ陛下にお願いする事にした。


団長「陛下......それには一つ、お願いを申し上げてもよろしいでしょうか?」

国王「ふぅ........。申し上げみよ。」

団長「我が王国騎士団の管理の権限を全てお譲りください。」

執事「な!無礼にもほどがありますぞ、団長殿!」

執事「国の守護者である騎士......それもただの騎士の権限ではなく、王国騎士団の権限だと!」


わなわなと怒りを露わにしながらも、それでいて何処か冷静さのある執事は団長を睨みつける。

国王は、少し悩んだ後に立ち上がり、団長に背を向けて窓の方を見つめる。


国王「よかろう......ただし、3か月以内に成果を見せよ。」

国王「もし3か月以内になんの成果も得られていなければ、貴殿の団長の座を剥奪し、永久に降格させる。」

執事「な、陛下!国の切り札なのですぞ?」

国王「分かっておる。ただし3か月だ。」

国王「聞いておるな?騎士団長。」

国王「貴殿には期待しておる。」

団長「ッハ!期待に応えられますよう。誠心誠意お仕えいたします。」

国王「では、下がりなさい。」

団長「ッハ。失礼いたします。」

バタン(ドアを閉める音)


団長は、このお願いは決して叶わない願いであり、却下されると思っていたので応接室を出た後からも、現実味が無く夢の中にいるような感覚に陥っていた。

しかし、その無茶な願いは承諾され、3か月という短い期間でありながらも、騎士団の権限を手に入れ、自身が今まで変える事の出来なかった騎士団の在り方に今後は、悩むことなく着手することが出来る。その事を思うと、拳が震え歓喜していた。


執事「陛下!」

国王「.........3か月だ。それで成果が見られるならば良し。」

国王「見られぬならば......我が国の未来は暗いものになる。」

執事「分かっておるのですか?」

国王「分かっておる。貴族共の事であろう?」

執事「そうです。あの豚共は、贅沢な暮らしだけには飽き足らず。国王の権利まで脅かそうとしておるのですぞ?」

執事「彼らに隙を与える事となってしまいます!」

国王「だから、3か月なのだ。」

国王「3か月までなら我の権威も耐えうるであろう?」

執事「.....そんな、耐えうるなどと......。陛下は国の頂点であらせられるお方ですぞ?」

国王「そうだ。我は頂点ではあるが、決して盤石なモノではなかった。」

国王「現に、貴族からの反発も年々強くなっておる。」

国王「あの異世界人共を排除しろだのと......。」

執事「......アレは何を考えておるのでしょうか?」

国王「分からぬ、あの天におわすお方の考えだ。しかし、良からぬことを考えておるのは、間違いないであろう。」

執事「...........。」


国王は知っていたのだ。あの司教が話した例の件が、実は怪物が起こした事件ではないという事を。しかし、教会側であるという証拠もなく、怪物側ではないという証拠も無いため、否定する事も出来なかったのだ。

※例の件:12月25日

溜め息を付いた国王は、雨がだんだんと強くなっていく外を見て、昔の事を思い出す。


国王「愚者を演じてから、何年たったのであろうか?」

執事「陛下.......愚者などと自身を卑下しないで頂きたい。」

国王「我が息子には、平和な世に生きて欲しかった。」

国王「貴族連中の事ならば、我が退位する前にすぐに片付ける事が出来たであろうに......。」

国王「勇者などというやっかいな存在さえいなければ、教会連中も追い出すことが出来ただろう。」

国王「しかし、そういうわけにも行かなくなった。」


先ほどの司教の話を聞いて、今は馬鹿な貴族連中であっても簡単に手放すことが出来なくなってしまった。


国王「ッグ.......。後手に回ってしまったか。」


拳を握り締めた国王は、応接間を出て執務室に戻る。


国王「ベクターを呼べ。あれを進める。」

執事「ッハ。畏まりました。」


バタン(ドアを閉める音)

ベクター「何用でしょうか陛下?」

国王「あれを進める。」

ベクター「アレといいますと?アレですか!?」

国王「あぁ、腐った貴族連中を一掃し、国をまとめあげる。」

ベクター「陛下、畏れながら申し上げます。」

ベクター「まだ、それをするには早すぎるのではないでしょうか?」

ベクター「裏で操っている人物を全て把握しきれておりません。」

国王「分かっておる。しかし、9割近くは排除可能であろう?」

ベクター「陛下!しばしお待ち下され!」

国王「いつだ.....。しばしとは、いつまでなのだ!」


拳を握り締め、鬼の形相に変わった国王は、ベクターを睨みつけ圧を与える。


ベクター「もう少しの辛抱なのです。」

国王「だから....それはいつ頃になるのだ。」

国王「もう、15年だぞ......我が暗殺されかけてから......。」

国王「我が息子にもひっきりなしに暗殺者が送り込まれておる。」

ベクター「分かっております。しかし、完璧に潰すためには裏で操っている人物を全て排除しなければならないのです。」

国王「ふぅ.......我も分かっておるのだ。気を急いでいる事を。」

国王「しかし、もう待つことは出来なくなってしまったのだ。」

ベクター「どういうことでしょうか?」


国王は、溜め息を付いて教会から貰った手紙を前に出す。


ベクター「それは.......あの腐った信者共の?」

国王「滅多なことを言う出ない。その信者が我が城に来ておる。」

ベクター「失礼いたしました。」


ベクターは手紙を受け取り、読み進め拳を握り締める。


ベクター「では....あの噂は?」

国王「アレが言うには全て本当の事らしい。」

国王「そしてもうすでに、手遅れだ。」

ベクター「はぁ......では本当に進められるので?」

国王「それしか方法はない。」

国王「これ以上、後手に回れば奴らに全て喰いつくされしまう。」

ベクター「畏まりました。」


ベクターは一礼し、執務室を出て何処かへ行ってしまった。


国王「はぁ.....勇者などと言う"信仰心の塊"は、何故このようにタイミングが悪いのだ。」

執事「.........しかし、"彼"があちら側とまだ決まったわけではないのでは?」

国王「分かっておる。しかし、遠からずそうなるであろう?」

執事「そうですな......。」


Name:表示不可

種族:人

職業:国王陛下

Level:表示不可

Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/王国騎士流剣術(最上級)/王の威圧

称号:...../国王


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「王国編第3話です。」

「どうやら前回の司教との会話は、国王の演技だったようですね。」

「騙し騙され、何が真実で何が嘘なのやら.....。」

「本日のサクッと解説は、今回の作中に出てきた内容を解説していきます。」

「まず、国王ですが、だいぶ優秀な人間のようです。」

「どうやら読み進めて行く限りでは、異世界人が誰によって召喚されているのかや、プレイヤーの存在を詳しくしっているようですね。」

「さらに、12月25日の件もある程度は察しているようです。」

「ただ、証拠が揃っておらず、ある程度しか予測出来ていないようですけどね。」

「また、執事が最後に"彼"と言っている事から、勇者を男性だと思っているようです。」

「まぁ、仕方ないですよねヒカリ(?)さんが今までいろいろ変装したり声変えたりしてたんですから。」

「それに勇者についてあまりいい印象を抱いていないようです。」

「以上で本日のサクッと解説を終了します。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「さようなら~。」

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