ー 56話
バタン(閉じらを閉める音)
国王「それで.....今回の教会から頂いた手紙の件は、どういった事なのか詳しく聞かせて頂いてもよろしいかの?」
椅子に腰を下ろし肘をついてもたれかかった国王は、疲れたような表情をしてから、司教を睨みながら質問する。
司教「そうですな......。」
司教「まずは、順を追って少しずつ説明させて頂いてもよろしいですかな?」
と言いながら、立ったままの司教は、少し考えた素振りを見せてから、真剣な表情に持ち直すと国王陛下の方を見つめる。
ゆっくりと頷いた国王は、司教に席へ座るように促し、部屋の中にいた護衛やメイドを含めて全員を部屋の外に下がらせた。
司教「それでは......。」
司教「まず、事の発端から.......。」
司教「8月の始め頃.....我々の信仰する尊きお方から、聖女様に向けて啓示が下されたのが事の始まりです。」
啓示という言葉に眉をひそめた国王は、不穏な表情をしながら司教に質問する。
国王「して.....その.......啓示の内容とは?」
オホンという咳払いをし、立ち上がった司教は、この事は国王陛下と言えど他言無用でお願いしますぞ。と付け加えた後に啓示の内容を伝える。
司教「もうじき、今代の"勇者"が現れ、悪しき"怪物"を打ち砕くであろう。」
司教「さすれば、この世の"闇"が"全て"打ち払われ、"光"が我らに希望を照らし、この世界の"負の連鎖"を断ち切り解き放たれるであろう。」
オホンと最後にもう一度咳払いをした司教は、ゆっくりと席に座る。
国王「今までの啓示と違うではないか?」
眉をひそめながら、司教に確認してみると、司教はゆっくり頷き質問に応える。
司教「はい......。残念ながら、今までの勇者は怪物に対して、全く太刀打ちできなかったのでしょう。」
司教「しかし、この啓示によれば、今代の勇者は怪物を打倒しうる力を持っているという事なのです。」
司教は啓示について詳しく説明し、国王の方を見る。
国王「はぁ......。」
国王「それで?」
国王「その勇者とやらは本当に現れたのか?」
顔に手をやり、疲れたような表情をして、司教に真剣な顔を向けて質問する。
司教「国王陛下は......既に、ご存知なのでは?」
と、言いながら司教は国王の方を静かに見つめる。
国王「はぁ、確かに其方の言うように、余もある程度は噂を聞いて知っておる。」
国王「ただ、噂の域を出ない程度であるため、確証を持てないでおるのだ。」
はぁと溜め息を付いた国王は、椅子にもたれかかり、天を見つめて困ったような表情をする。
国王「して......その話がどこまでが本当の話で、どこまでが脚色された話なのだ?」
と、司教を睨み圧を与える。
ガタガタ、ガタガタ......。(窓が震える音)
窓の外は、先ほどまで晴れていたのに、いつの間にか暗くなり、雨が降り出して雨粒が窓に当たっている。まるで、これから先の未来を暗示しているかのように、国王の不安は拭えない。
教会に協力をする程度であるならば、余の出来うる限りでいくらでも協力しよう。しかし、今まで聞いた噂がすべて本当であった場合、余が出来る事などたかが知れておる。それに、国民の被害は尋常でないほどのものになると予想され、貴族からの反発も大いに受けるであろう。
私が責任を取るだけならまだしも、私の大事な息子にまでその責任がいってしまえば、まだ若く......"優しすぎる"皇太子には、その任は務まらないだろう。
司教「..............。」
国王「余の質問に応えぬつもりか?」
少し間をおいてから、息を飲んだ司教は、国王に向けて真剣な顔をしながら、目を瞑り、
司教「残念ながら全て......本当です。本当の事なのです........。」
と応える。
それを聞いた国王は、あり得ぬと言って、目の前のテーブルに拳を落とし、すごい音を立てて、鬼の形相に変わる。
ダン!(テーブルを叩く音)
兵士「陛下!何事ですか!」
扉の外で待機していた兵士が、部屋の中からものすごい音を聞いて国王の安否を確認するために、ドアを叩きながら中に入ろうとしてくる。
国王「な、なんでもない。余は無事だ。」
国王「今は、司教様と大事なお話の最中である。入ってくるでない!」
と言い、ドアの外で待機している兵士に向けて一喝する。
兵士「ッハ!」
兵士「申し訳ございません。」
国王「ふぅ......という事は、今回の件も.....。」
※12月25日に起きたクリスマスの件の事。
司教「はい、怪物側からの勇者に向けての宣戦布告だと捉えても良いのかと。」
と言い、"嘘"の情報を国王に向けて平然と伝えると、黙り込んだ国王は、拳を握り締めて怪訝そうな顔をする。
国王「何故なのだ?」
司教「........はい?」
国王「何故、今になってこのような.......。」
国王「もっと早くに我に伝えられたであろう?」
司教に怒った表情をしながら圧を与え、今までどうして教会がこのような重要な情報を国に、そして世界に隠していたのかを問い詰める。
司教「それについては、我々も仕方のなかった事なのです。」
司教「このような.......情報など国民に、信徒に、皆に.....伝えられるわけがないではないですか?」
その言葉を聞いた国王は、立ち上がって司教に掴みかかる。
国王「ならば、何故今になったのだ!」
国王「今も国民に、信徒に......、このような重要な情報を知らせていないではないか!」
国王「もっと早くに我に伝えておれば、力を貸せたというのに。」
掴みかかって来た手を掴んだ司教は、不機嫌な顔をし立ち上がって国王に向けて一喝する。
ダン!(テービルを叩く音)
司教「ならば、我らが今まで信徒に向け、国民に向け、怪物を打倒しようという祈りを唱えていた時、何故何も.....何故今まで協力しようとせなんだのだ!」
司教「それに、もし我々が聖女様から聞かせて頂いた尊きお方からの啓示を国王に世界に伝えていたとして、其方は皆は素直に信じたのか?」
司教「いいや、信じなかったはずだ!」
司教「今まで、我々は怪物打倒を目標に、各地に赴き教を唱え、人々を救ってきた。」
司教「その間、国王は.....国は?貴族は?世界は?何をしていたのだ!」
押し黙った国王は、掴みかかっていた手を離して座り込む。
国王「貴殿の無礼を許そう......それと、其方らの意見は十分に理解した。」
国王「すまなかった........。」
国王「我々は、見て見ぬ振りをしてきたのだな........。(小声)」
席に座って俯いたままの国王は、顔に手を当てて考え込む。
国王「教会は......我が国との同盟を.....協力を結んで下さるのか?」
司教「.......それは、聖女様次第です。」
国王「わかった。では司教殿、長旅でお疲れであろう。」
国王「此度はごゆるりと部屋でお休み下され。」
国王「おい!司教殿を部屋へ案内して差し上げろ!」
メイド「か、畏まりました。」
部屋の外にいたメイドが国王の命令を聞いて返事をする。
国王に向けて一礼した司教は、そのまま部屋の扉の前に行き立ち止まる。
司教「では、私はこれで.....失礼いたします。」
バタン(ドアを閉める音)
国王「はぁ.......。」
国王「我が息子よ。其方には平和な世を生きて欲しかったのだが、そう言うわけにはいかなそうだ。(小声)」
国王「我が不甲斐ないばかりに......これからは、もう少し息子を厳しく育て上げねば。」
席にもたれかかって溜め息を付いた国王は、昔の事を思い出す。
小さかった我が息子が、私の膝の上に座り、
「この国を平和で豊かな国にしたい。お父様のような立派な国にするために勉強も剣術も頑張る!」
そう言って笑顔を向けてぎゅっと抱きしめてくれたのが、まるで昨日の事のようにさえ感じる。
拳を握り締めて、テーブルを叩いた国王は、
綺麗に整備され、人々が行き交い、大国とまではいかないが争いのない平和な国。
だが、実際のこの国は昔の事件をきっかけに、貴族は国に引きこもり国民から徴収した税金で贅沢に暮らし、貴族の職務と責務を放棄してしまっている。
争いがしばらくなかったこの国の兵士はというと、訓練をさぼり昔よりもずっと、弱く脆くなってしまっている。
こんな国に、教会側が協力を申し出るはずも、同盟を結ぶはずもない。
奴らはきっと、この国の財産を.....資金を.......余すことなく回収しに来ただけなのであろう。もしくは、今まで我々が見て見ぬ振りをしてきた教会側からの報復なのかもしれない。
国王「暗部!」
???「ッハ!」
国王「今すぐ、この国の現状を変えるために働け!」
国王「各貴族に私からの手紙を送り、皇太子の護衛をより一層強化するのだ。」
???「畏まりました。」
国王「ベルン!ベルン副団長はいないのか!」
騎士「国王陛下、お呼びでしょうか?」
国王「今すぐに、騎士団の団長を呼べ!」
騎士「ッハ!畏まりました。」
国王「.........しばらく忙しくなりそうだな。(小声)」
Name:表示不可
種族:人
職業:司教
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:...../司教
Name:表示不可
種族:人
職業:国王陛下
Level:表示不可
Skill:..../王国騎士流体術(最上級)/王国騎士流剣術(最上級)/王の威圧
称号:...../国王
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「王都編第2話ですね。」
「なんというか、教会側が一枚上手です。」
「このままでは、王国はどうなってしまうのでしょうか?」
「皇太子の未来は?王国の未来は?」
「本日のサクッと解説は、お休みです。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「さようなら~。」
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