番外編-3 第54話 [リュウ]

「やぁみんな。久しぶりだな!俺だ!リュウだ。」

「って俺は、誰に向かって言ってるんだろうな.....。」


自分に向けてGOODのポーズをして決め台詞を吐いた俺は、青空を見上げながらため息を付いて、近くにあったベンチに腰を下ろして座り込む。


「はぁ.....暇だなぁ。」


最近の俺は、冬休みに入ったから長時間自由な時間が増えたって言うのに、母ちゃんに怒られるのを避けるため、夜遅くまでゲームをやる事を控えている。

決してこの前怒られたのが効いたわけじゃねぇぞ?


そのため、いつも夜遅くまでレベリングをやっているゲームの友達と遊ぶ時間がなかなか出来ていないのだ。

あっちは、2人とも成人して働いているため、基本的に夜中がメインだし、休日は昼間は疲れて寝てるか、平日出来ていなかった溜まっている家事してるらしくて結局は、集まるのが夜になるんだよな......。

ヨリヨリさんは、時間があるだろうけど、夜どうせ皆で集まるから会えるのに、昼間の時間帯に俺の都合で誘うのもなんだか申し訳ないし、たいてい昼間は寝ているか別のことしているらしいから、結局俺は、昼間は一人でこのゲームを遊ぶ事になってしまっている。


最近は、ユーマが俺と同じ時間帯くらいにゲームにログインしているのを知って、一緒に遊ぶか?って連絡入れたんだけど........最初は来てくれたんだが、最近はやる事があるって毎回断られるんだよな.....。


たぶん、あいつにも俺と同じようにゲーム友達が出来たに違いない!

それに、俺が最初に別のやつらと遊びだして、あいつの事を蔑ろにしちまったから、俺がどうのこうの言える立場でもないし、結局そっかぁとしか応えられなかったんだ。

俺は、ユーマに新しいゲームの友達が出来て遊べないんだって断られてるんだと、最近まで毎回そう思っていたんだが、実は違ったんだ。


「あいつリアルでもいい奴だけどよ......。」

「ゲームの中でもいい奴なのな!」


つくづく前からそう感じてたんだよ。だってあいつNPCにも敬語で話すしよ。お店で俺が何か買う時にNPCをぞんざいに扱ったり、暴言吐いてたらよく謝ったり、俺に注意してくれてたんだよな。

俺は、いつもそんなあいつの言う事に、耳を傾けずに......。


「たかがNPCだろ?」

だとか、

「NPCだからいいじゃねぇか?」

だとか、

「ゲームだろ?」


って、NPCをぞんざいに扱ってたんだ。

でもさ、俺.......あいつの行動で気付いたんだよ。

あいつ、俺がゲーム一緒にやらないか?って誘ってた時、断られたから暇だったんだ。だから街を探索がてら散歩してたらさ。

偶然だぞ?偶然、街であいつの事が目に入って後をつけたんだ。

そしたら、あいつうっきうきの笑顔で、教会に行っててよ。

何事かと思ってよくよく目を凝らして観察してたらさ。

あいつが笑顔でNPCの子供たちにお菓子やったり、鬼ごっこして遊んであげてる姿とか見てよ。

俺は今までの自分の行動を反省したな。


「俺は今まで何やってたんだってな........。(小声)」


NPCだからと言って、ゲームだからと言って、あんな風に言ったり、命令したりするもんじゃなかったよな。

あいつらだって、心があるかどうかは知らねぇけど傷ついたかも知れねぇから。

それに俺、あいつのあんな笑顔でNPCと会話しながら楽しそうに子供達と遊ぶ姿、久しぶりに見たからよ.......。

※実は、ユーマ君は子供達に会いに行ってるのは、シスターさんに会いに行くためのついでで、来れていない本当の理由はシスターさんとの修行です。


「だからまぁ、なんか.....俺バカだから上手く言葉に出来ねぇけど、反省したな。」

「だからこれからは、気をつけようと思ったんだ。」


「それにしても........リアルだよなこのゲーム。」


あいつが、NPCに感情移入するのも分かるぜ。普通に会話もできて、表情もあって、怒ったり反論したりして.......。

リアルって言うか生きてるって言うか......。

むしろゲームやってる俺らの方が"偽物感"があるんだよな。


「まぁ、こんなくだらねぇ事考えても仕方ねぇ。」

「いっちょレベル上げしてきますか!」


だって俺、夜出来ていない分と、受験期間で出来ていなかった分であいつらとレベル差が相当開いちまったからな.......。


ちなみに余談だが、俺と佑真は無事、同じ大学に入学が決まったぞ!

まぁ噂では、俺はギリギリ合格だったみたいだが.......。

あいつに前日まで勉強を叩きこんで貰えて良かったわ。

本当に佑真には、感謝しかない.......。


PlayerName:リュウ

種族:竜人

職業:竜槍士

Level:43

Skill:........./Dragon Heart (竜の心臓)/Dragon Howling (竜の咆哮)(未完成)/竜槍(中級)[槍に関する技能統合]/Boots Spear (突上昇)/火魔法(最上級)[火に関する魔法技能統合]/炎魔法(中級)[炎に関する魔法技能統合]/Feeling of Magic(感覚魔法)

称号:プレイヤー/竜魂/フレンドリー

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