ー 54話
パッパラッパッパラパー♪
パパパパーン♪パー♪パパパパーン♪
パー♪パパパパーン♪パー.......
聖女を乗せた馬車が王都の大通りを通りながら、華々しく登場し、後ろでは白い服と十字架を身に着けた音楽隊とカッコイイ聖騎士が列を成して進んでいる。
馬車に乗っている聖女様は馬車の小窓から顔を出し、市民や冒険者に、笑いかけて手を振る。
司教「おっほっほ、良いですなぁ。聖女様。」
馬車のカーテンを閉めた聖女は、溜め息を付いて席に座り、気持ちの悪い笑顔でこちらを見ている司教に目をやってから、呆れた顔をする。
聖女「よく平気で出来ますわね。こんな茶番。」
馬車のカーテンの隙間から見える外の人々の笑顔を見ながら、気持ち悪いと吐き捨てて、司教の方をじっと見つめるが、司教は澄ました顔をして、
司教「はて?何のことやら......。聖女様は、このまま自身の仕事を全うして下されば良いのです。余計な事を口出ししないで頂きたい。」
聖女「ッチ。」
そっぽを向いた聖女は、外から聞こえる人々の歓声と笑顔を見ながら、王城まで無言のまま馬車に乗せられて進んで行った。
騎士「開門!!!」
ジャラジャラジャラジャラ、ガタガタガタガタガタン(扉の開く音)
扉の開く音が街中に響き渡り、王城へ続く扉が開かれる。それと同時に人々の歓声も大きくなり、いろいろな声が聞こえてくる。
「おぉ!凄いぞ!貴族街だ!」
「初めて見た!」
「写真撮れ!」
「なかなかお目にかかれない光景だぞ!」
「SNSにアップだ!」
外でいろんな人々の声と歓声、それから音楽隊のトランペットの音が聞こえてくる。
聖女「はぁ......貴族って本当に情けないわね。こんなとこでずっと籠ってるなんて.....。」
司教「まぁまぁ、聖女様そう言いなさるな。過去に起きたアレが原因なのですし。」
聖女「まだあんなのを引きずってるわけ?それにアレはしっかり管理もろくにできなかった貴族共の自業自得でしょ?」
司教「それでもです。彼らにとってアレは、とても恐ろしい事として歴史に残っているのでしょう。」
司教「それに、一部の貴族は外でご活躍されておりますぞ。ここに残っている貴族のほとんどは、歳を取った大貴族か、外を恐れた弱小貴族です。」
司教は溜め息を付いてから、聖女を睨みここから先はこの話をするんじゃないとジェスチャーする。
聖女「事実でしょ?」
司教「あぁそうだ。だが、ここから先でその話は禁句だ。」
と言って窓の外を指差している。カーテンの隙間から窓の外を見てみると、普通の街とは違って、貴族街は協会所属でない王国の騎士が大通りを列を成して整列しており、貴族連中が扇子を口に当てながらこちらを値踏みしている。
聖女「はぁ、ここは、息苦しくてほんと嫌いだわ。」
聖女「それにあの貴族.....私を値踏みするなんて死にたいのかしら?」
司教「まぁまぁ、聖女様。ここで数日、彼らの御機嫌取りをしてるだけで良いのです。あのバカな冒険者共よりは、簡単で良いではないですか?」
と言いながら、また気持ち悪い笑顔をこちらに向けてくる。聖女は、そっぽを向いたまま溜め息を付いて、
聖女「分かったわ。」
とだけ応えて司教の命令をそのまま承諾する。
本当は、聖女である私が嫌だと言えば、司教の命令なんて簡単に断る事が出来る案件なのだが、これも全部あの研究バカの
まぁ、それでも簡単に断る事は可能なのだが、資金の問題が出来てしまった。あの研究バカは、図々しくも私にもっとましな研究室と騎士を用意しろと催促し、そればかりか実験材料である人間をもっと持ってこいだとかなんだとか言ってきたのだ。
貴族相手に聖女である私が、こんな屈辱的なご機嫌取りをしなければならないのは我慢ならないが、研究さえ成功すれば、主に褒めて頂けるだけでなく、真の神の使いとして選ばれるかもしれない。一度成功しているはずの実験なのだ、次は完璧に成功し、私に結果をもたらしてくれるはずだ。失敗は許されないし、もし次失敗でもすればその時は、あの研究バカには消えてもらう。
そんな事を考えながら、静かに外の様子を見ていると、
司教「おっほっほ、どうやら先日の教会での事件がだいぶ効いているようですな。」
と言いながら、聖女がいつもと違って反論してこない事と静かにしているせいで少し調子に乗った司祭は、舌なめずりして気持ち悪い笑顔をこちらに向けながら続けて、
司教「なんなら私共に、"あの研究"を委託していただければすぐにでも......。」
聖女「黙りなさい?」
あの研究と司祭が口に出した瞬間、聖女の眼光が一瞬光、司教の顔がみるみるうちに真っ青に変わり、冷や汗が流れ首元を抑えてもがき苦しみだす。
司教「っは.....はぁ......はぁ。」
司教「出過ぎた事を言いました。聖女様のそのひろ"ぃおごころでお許しく"ださい"。」
倒れ込んだ司教は、汗を流しながら跪いて聖女様に謝罪する。
聖女「二度目はない。あの件は極秘事項だし、決して外部に漏らすな。」
聖女「もし、漏れている事が私の耳に少しでも入れば、真っ先に貴様の首から跳ね飛ばす。」
司教「ははぁ、分かりました。決して外部には、漏らさないと誓います。」
首元を抑えながら、席に座って深呼吸をした司教は、澄ました顔に一瞬で切り替えて汗を拭う。
司教「さ、先ほどの話、一度よく考えて頂けると幸いです。」
聖女「何度も言わせるな。」
イライラしながらも、ここでこの司教を殺すわけにはいかないので、聞かなかったことにしてそっぽを向く。
(それにしても私の事を舐めている連中が、最近は教会の内部で多過ぎる。)
(一度、教会の内部を整理しなければならない。)
王城の前に辿り着いた馬車は、城門の前で一度停止し、騎士が走ってこちらにやってきてドアをノックする。
ガチャ(ドアを開ける音)
騎士「高貴な身分の方々にご挨拶をさせて頂きます。」
騎士「王国騎士団所属、第一騎士団の騎士アルハットベルンと申します。」
騎士「馬車の中を一度確認させて頂いてもよろしいでしょうか!」
司教「あぁ、構わない。」
騎士「感謝致します!」
騎士「確認が済みました!ご協力ありがとうございます。」
騎士「お二人に、王国の太陽の御加護があらんことを!」
バタン(ドアを閉める音)
聖女「王国の太陽ですって。」
フッと笑う聖女様の顔を見て、ゾッとした司教は、
司教「あ.....あれは、王国式のお見送りの方法でして、決して我々をぞんざいに扱っているわけでも下に見ているわけでもないのですぞ?聖女様。」
と説明する。
聖女「そんな事分かってるわよ。馬鹿じゃないんだから。」
聖女「でも、こんなところで一生を籠って過ごしている王族の御加護だなんてたかが知れていると思いませんか?」
と不敵な笑みを浮かべて司教を見つめる。
司教「ハハハ.....わ.....私には良く分かりませぬな。」
と言って腰を抜かした司教は、そのまま手で空中で仰ぎながら、先ほど自分が聖女に言った言葉を思い出して、再度ゾッとする。
(この後ワシは、無事に帰れるだろうか。)
(いや、むしろ無事に帰れたとして、その後やっていけるのだろうか。)
なんて事を考えて先ほど自分が言った事を後悔してしまう。
教会の中で一番恐ろしいのは、神聖守護騎士だと言われている。
理由は、神聖守護騎士は教会に所属している騎士の中で、一番位が高く大司教や教皇、それから聖女様の護衛が主な仕事であるため、どんな事でもこなせる必要があるからだ。拷問をはじめとした残酷な技能から、一般的な雑用である清掃の技能まで全ての事をこなせる神聖守護騎士は、誰もが憧れ尊敬する職業であると同時に、最も畏怖されている存在なのだ。
しかし、それは外部の人や、教会の下っ端の人間が思っている事で実際は違う。
一番恐ろしい人物は、教皇であり、次に恐ろしいのが、"命令を下す人物"で、その次に.....3番目に恐ろしいのが、以外にもこの聖女様なのだ。普段はニコニコとしていらっしゃり、誰に対しても慈愛溢れる方であり、誰もが尊敬し感謝し、優しい人物だと疑わない聖女様が3番目に恐ろしいのだ。
この顔と、柔らかな態度に騙される者も多い。
それに教会の中で一番多く遭遇し、会話の機会が多い可能性があるのが聖女様なのだ。
私はなんという愚かな事を進言してしまったのだろうか。
先ほどから冷や汗が止まらない。
聖女様の不敵な笑みが先ほどから脳裏にちらつく。
司教「聖女様!(大声)」
聖女「何よ?」
司教「な、何かと不便もありますでしょうが、私にお任せください。」
司教「きっとお役に立って見せましょう。」
聖女「あっそ.....勝手にするといいわ。」
聖女は呆れた顔をしながら窓の外を見つめ溜め息を付く、王城の入り口に着いた馬車が止まり、ノックをしてドアが開かれる。
ガチャ(ドアを開ける音)
騎士「高貴な方々にご挨拶をさせて頂きます。」
騎士「王国騎士団所属、第一騎士団副団長ラインヘル=ベルソンです。」
騎士「御手をどうぞ。」
聖女「まぁ、とても親切にして頂きありがとうございます。」
聖女「貴方に、神の御加護がありますように。」
と言ってニコッと笑顔を向けた後に騎士の手を取り、馬車から降りる。
騎士「聖女様にこのような御言葉を頂き、誠に光栄でございます!」
と言って副団長は、お辞儀をする。
それに続いて、司教も馬車から降り、挨拶をする。
司教「これはこれは、ご丁寧にどうも......。」
国王「遠路はるばるお越し下さりありがとうございます。」
国王「本日は心ゆくまでお楽しみ頂けると幸いです。」
と言って、階段の上から国王がやって来て挨拶をする。
国王「聖女様も、遠路はるばるお越し下さりありがとうございます。」
国王「よろしければ、我が息子に城内をご案内させますので、楽しんで頂ければと。」
聖女「国の太陽であらせられる国王陛下とご子息であられる皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」
と言ってお辞儀をし、国王の提案を受け入れてニコッと笑う。
聖女「ご配慮痛み入ります。それでは、陛下の御言葉に甘えさせて頂きます。よろしくお願いいたしますね。皇太子様。」
と言って一礼し、皇太子に向けて微笑み、共に城内へ入って行った。
国王「どうかしましたかな?司教様。」
司教「く、国の太陽であらせられる国王陛下にご挨拶申し上げます。」
先ほどからソワソワしながら、汗を拭っている司教は、顔を真っ青にしながら何かを考えていたが、陛下に声をかけられ我に返った司教は、急いで挨拶をし、
司教「い、いえ、何でもありませぬぞ。国王陛下のこのような手厚いお出迎えをして頂き心より感謝を申し上げます。」
と言って笑顔を向けて、一礼する。
国王「そうかそうか。それは、準備した会がありますなぁ。」
と笑った国王は、司教の元へ行き、
国王「それでは、我々も中へ入ろうではないか。」
司教「は、はい。そうですなぁ。」
と言って司教を招き入れ、城内を案内する。
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種族:人
職業:聖女
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Skill:......./神聖[神聖に関する技能統合]/聖なる威圧
称号:...../聖女
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種族:人
職業:司教
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Skill:表示不可
称号:...../司教
Name:表示不可
種族:人
職業:国王陛下
Level:表示不可
Skill:..../王の威圧
称号:...../国王
Name:表示不可
種族:人
職業:皇太子殿下
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:...../皇太子
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「今回は、王と教会の関係のお話です。」
「どうやら、昔何かあったようですね?」
「それに司教と聖女様は、王国に何をしにやって来たのでしょうか?」
「考えられるのは、資金の調達?それともこの前あった大祭について?」
「いったいどうしてやってきたのでしょうかね?」
「本日のサクッと解説は、威圧についてです。」
「威圧は、簡単に説明すると、自身のレベルよりも一定数以上低い者にのみ有効な精神系攻撃技能です。」
「魔法とは少し違っているため、MPを消費する事はありません。」
「威圧を受けると、相手のステータスが下がり、デバフに畏怖と恐怖等が付きます。」
「レベル差が大きくなればなるほど、デバフの効果とデバフの数が多くなっていき、最悪死にいたります。」
「死因:心臓麻痺や窒息死等......。」
「これは、以前クリスマスの日の大祭で起きたパペットドールが渡した、プレゼントボックスと同じ原理ですね。」
「相手に対して恐怖値が一定の上限を突破すると、心肺停止により、死亡します。」
「ちなみに威圧は自分よりも相手がレベルが高いと効かないので自身より強い人間には、意味のない技能となっています。」
「さらに、精神攻撃に対する耐性を持っていれば、例えレベルの低い人間だったとしても効かないのであまり普段では見られない技能です。」
「ただ、隠しステータスである熟練度同じで、極めれば極めるほど威圧も強くなるので、馬鹿には出来ませんけどね。」
「以上で本日のサクッと解説を終了します。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「さようなら~。」
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