ー 53話

トコトコ......(足音)

リリス「あ!お久しぶりです!ユーマさん。」


カウンターの方に元気よく走ってやって来たリリスさんは、椅子の上によじ登ってカウンターからひょこっと顔を出す。


ユーマ「相変わらず、ちっさ可愛いですね。」


それを聞いたリリスさんは、顔を真っ赤にしながら、


リリス「ユーマさん!ちっさいは余計です、それにレディに失礼です!」


と言いながら頬を膨らませてぷんぷんと可愛く怒っている。


ユーマ「すみません。これで許していただけますか?お嬢さん。」


俺は、インベントリーからフワフワパンケーキが入ったお土産を取り出して、リリスさんに渡す。


リリス「これどうしたんですか?それにこの匂いは!」


箱をゆっくり開けたリリスさんは、目を輝かせながら、涎をたらす。


リリス「ど、どうして私の好きなパンケーキ知ってるんですか!」


と、カウンターに乗り出して元気よく訪ねてくるリリスさんに、


ユーマ「あの方が快くリリスさんの好きな食べ物を教えて下さったんです。」


と、奥の方で気難しい顔をしながら書類の整理している女性社員を指差す。


リリス「フラールさん.......。」

ユーマ「ッフ.....その感じだと、買ってきて正解だったようですね。(小声)」


俺は、リリスさんの満面の笑顔を見てからこちらも嬉しくなって微笑み、カウンターの前にある席に座る。


リリス「って、そうじゃなくて今回はどうしたんですか?それにその喋り方.......。」


貰ったお土産をゆっくり大切に持ち上げて、リリスさんの作業している場所にずらして置いたリリスさんは、俺の方をじっと見つめて首を傾げる。


ユーマ「喋り方はですね.....お恥ずかしい話なのですが、暫くこれでいろいろやっていたせいで板についてしまいまして。」


と頭を掻きながら、リリスさんの方を見ると、どういうことなのか分かっておらず首を傾げている。


ユーマ「まぁ、そんな事よりもこれを頼まれていまして。」


真っ黒で赤いハンコで封がされた手紙を渡した瞬間、リリスさんの顔が一瞬強張り、冷や汗を流しながら手紙を開ける。


ユーマ「どうでした?」

リリス「な、なんで?あなたが......ユーマさんがこの手紙持ってるんですか!(口パク)」


俺の胸倉を掴んで顔を寄せて来たリリスさんは、口パクでどうしてこの手紙を持っているのか俺に説明を求めてくる。


ユーマ「それはですね。」


自分を指差した後に、リリスさんを指差してニコッと笑った俺に、リリスさんはどういう事かを察して、掴んでいた手を離してカウンターの椅子に座り溜め息を付く。


リリス「いつからですか?」

ユーマ「最近です。」


その言葉を聞いたリリスさんは、呆れた顔をしながらため息を付くと、黒い手紙をその場で燃やしてから口パクで、


リリス「何処所属なんですか?(口パク)」


と聞いてくる。


ユーマ「貴方が一番最初に依頼した場所クエストですよ。」


とニコッと笑って言うと、目を泳がせながら、


リリス「そ.....その節は、ごめんなさい。(口パク)」


と言って頭を下げて謝って来る。


ユーマ「いいですよ。別にあの事は怒っていませんし。」


と言いながら、初めてやった教会の清掃のクエストの事を思い出す。あれのおかげでシスターさんや神父さん、子供たちにも会えたわけなのだから、騙されたとはいえ、むしろ感謝しているくらいだ。


ユーマ「それにしても、リリスさん.......とても大変そうですね。」


俺は、リリスさんの机の上にある大量の書類と本を見て、そう質問する。


リリス「はい、最近はあのクソ教会が、最近あったアレ大祭の出来事を、全部、私達側魔族側の責任にし、公表してるんですよね。」

リリス「だから、それの事後処理と.......。何かあった時のために冒険者プレイヤー達の安全を守らないといけませんので。」


と言って、溜め息を吐いてやれやれと呆れた顔をする。


リリス「あ、もしかして最近のアレ大祭で大きな貢献をしたっていう仮面の騎士って......。」


と、俺に指を指しながら口を開けているリリスさんに、無言で頷いてから苦笑いする。


リリス「だから、そんな変な感じの口調なんですね。」


と言ってニヤニヤしながらからかってくる。


ユーマ「変...ですかね?」


と苦笑いしながら、頭を掻くと、変ですよと言ってリリスさんは笑い出した。それからリリスさんは、俺に気になっていた事を質問する。


リリス「それじゃぁ、あれって本当なんですか?英雄が勇者になったって言う。(小声)」

フラール「勇者?」


いつの間にかリリスさんの真後ろに立っていたフラールさんが、勇者という言葉に反応してどういうことかと食い気味で聞いてくる。


リリス「アハハ、フ、フラールさん。ゆ、勇者がどうしたんですか?」

フラール「え?勇者って言ったのはリリスちゃんじゃない?」


目を輝かせながら不思議そうに首を傾げて聞いてくるフラールさんに押されながらも、リリスさんは咄嗟に、


リリス「ち、違いますよ。ユーマさんって言ったつもりが噛んじゃって、ゆぅましゃんになったんです。」


と顔を真っ赤にしながら、誰が聞いても分かるほどの苦しい言い訳をするが、それをそのまま信じたフラールさんがリリスさんに思いっきり抱き着いて、


フラール「リリスちゃん可愛い!」


と言った事で、事なきを得た。その後、フラールさんが仕事に戻ったのを確認したリリスさんは、溜め息を付いて、


リリス「危なかった......。(小声)」


と冷や汗を拭って、きょろきょろと辺りを見回す。


リリス「そ、それで?本当なんですか?(口パク)」


周りをしっかり確認した後に、口パクでそう聞いてくるので、小さく頷いて本当である事を言うと、疲れた顔をしながらため息を付いて別の質問もする。


リリス「もしかして会側は、そのことも知ってるんですか?」


その質問に対して、俺はリリスさんに軽く頷いた後に、なんなら、教会側は英雄の時にすでに勇者に一回会っていて、今は勇者を探すために聖騎士を総動員して辺りを探索している事も付け加えて教えてあげる。


リリス「じゃ、じゃぁ今もですか?」


それに対して首を横に振った後、今はどうやら教会で何か問題が起きたようで勇者の捜索は、一時中断されたらしいという事を説明する。


リリス「何かって何ですか?」

ユーマ「さぁ?ただ、それの調べがつくまでは、暫くの間は、こっちも動く事を中止されてる。だからさっきの手紙にも書いてあっただろ?」


と先ほど燃やした手紙に指差しながら、リリスさんに教えてあげる。納得したリリスさんは、仕事に戻りますとだけ言って席を下りて、奥の方へ行ってしまった。


冒険者組合を出た俺は、今日は久しぶりに修行もなくてやる事がないので、どうしようかと考えてから、久しぶりに本庶館に行ってみる事にする。あれからいろいろあったため、一度も訪れることが無かったが、今もっている技能もいろいろ手詰まりしてしまってる状態なので、何かアドバイスか役に立ちそうな技能の本がないか探してみる事にしたのだ。


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:72

Skill:High Heal/Essence of Life(生命の源)/王国騎士流体術(中級)/竜装/Meditation(瞑想)/竜葬剣術(上段)[剣に関する技能統合]/Battle Up(バトルアップ)/Magic Control(魔力操作)(上級)/Boost Slash (斬撃上昇)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)/火魔法(上級)[火に関する魔法技能統合]/炎魔法(初級)[炎に関する魔法技能統合]/契約魔法(初段)/水魔法(中級)[水に関する魔法技能統合]/風魔法(初級)[風に関する魔法技能統合]/闇魔法(中級)[闇に関する魔法技能統合](※Hiding技能統合)

称号:プレイヤー/竜霊魂(ドラゴンレイス)の欠片/妖精の歓迎/竜霊の弟子/虐殺者/不可能を可能に。


Name:リリス

種族:土人+血人

職業:冒険者組合の受付嬢(?)+魔族側のスパイ(?)

Level:表示不可

Skill:表示不可

称号:表示不可


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「久しぶりのユーマさんの登場です!それにリリスさんも!」

「どうやらリリスさんは、冒険者組合の社員でありながら、魔族側だったようですね。」

「少しずつ謎が解明されて言ってます!」

「本日のサクッと解説は、闇魔法に関する事をちょっとだけ。」

「Hiding技能は、どうやら闇に関する魔法技能だったようです。」

「ただの隠れ蓑術だったり、身を潜める術だったりするわけでは、なかったようですね。」

「使用中は、MPを消費し続けますが、燃費は良いようです。」

「本日は短いですが以上で解説を終了します。」

「質問や解説してほしいものがある人はいつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「それでは、ばいば~い。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る