ー 47話

ルー「はぁ....はぁ.......。」

ルーが走って大聖堂に戻ってきたとき、モンスターのHPは50%を切った瞬間だった。

「おっほっほ、皆さん......やりますねぇ。」

「これほどまでに苦戦を強いられるなんて思ってもいませんでした。」

「こんなことなら、小人たちを残しておけば........。」

と言い白い袋に手を入れた巨大な老人は何かを探す。

「あったあった......。」

「それでは皆さん、さようなら。」

と言い袋から取り出したボタンを押した瞬間、バグでも起きたかのように背景が一瞬だけ灰色に染まる。

「だめじゃな~いか♪」

「逃げるなんて卑怯じゃない?」

パキン(割れた音)

そんな声が何処からか聞こえた瞬間、物凄く大きな割れた音がして、巨大な老人が後方へ吹っ飛び倒れ込む。

「グハ........私は.....まだ死ぬわけには..........。」

「目的を完璧に........だから.........いかない........。」

老人はぶつぶつと呟きながら身体を起こして、白い袋を逆さまにし玩具をばら撒く。

「お前ら、私が.....逃げる時間を.....稼げ。」

白い袋から落ちて来た玩具が次々に動き出す。

Monster:玩具の音楽隊

Monster:パペットドールハウス

Monster:玩具の幽霊船

Monster:聖夜の幻霊

Monster:玩具の電霊列車

Monster:聖霊の魔女

「おい......こんなことって.......あっていいのかよ!」

「クソ!後50%なんだぞ!」

ルー「おらぁ!気張れ!皆!俺があの糞ボスの相手するからてめぇら周りのやつやったれ!」

と言い竜人が前線へ飛び出す。

イラ「遅かったじゃねぇか。」

と言うイラに、

ルー「ありがとな.......。(小声)」

とだけボソっと言い戦闘準備を始めるが、巨大な老人は、振り返ることなく大聖堂をぶち壊しながら必死に逃げようとしている。

色欲「.............。こんな事って........あっては、行けないと思うんです。」

この光景を見た色欲は、あまりにも理不尽なこの難易度に怒りを露わにし、権能を発動する。

色欲「さぁ.......皆さん、絶望している暇なんてありません。」

色欲「皆さんでハッピーエンドを飾るんでしょ?」

色欲「どうか......力を貸してください。」

全員の右上にアイコンが現れる。

Buff:[魅入られた者]

「うぉおおおおおおおおお!」

その瞬間、全員が雄叫びを上げてモンスターに突っ込んでいく。

虚飾「あらあら........私.......少し来るのが遅かったでしょうか?」

フードを深めに被った人物がどうどうとした態度で大聖堂に入って来る。

色欲「貴方も手伝って下さる?」

という色欲の問いかけを無視し、フードを被った人物はモンスターの目の前まで来て何かをささやいた瞬間。

モンスターの身体が捻じれてエフェクトを発して吹き飛ぶ。

色欲「...............。」

その光景を目の当たりにした色欲は、歌を中断しフードを被っている人物を見つめるが、

虚飾「歌を続けになってください。」

と言われ、慌てて歌を歌いだす。

フードを被った彼女(?)の歩いている場所は、冷たくなったように空気が冷え、息もできなくなる。近くにいたプレイヤー達はその場に座り込み過呼吸になる。

周りのモンスターも彼女(?)には、決して近づこうとはせず、彼女が近づくたびに後退りする。

虚飾「頼まれたんです。彼に........。」

虚飾「でも......本当は来たくなかった。」

虚飾「だって、私の事なんて誰も理解してくれないから。」

虚飾「それに、私がいると.....周りを巻き込んでしまうから。」

彼女(?)の頬から涙が零れ地面に落ちた瞬間、花が咲く。

まるで幻でも見ているかのような.......そんな彼女の雰囲気に当てられて近くで見ていたプレイヤーはその場で固まってしまう。

虚飾「さぁ.......皆さん、まだ終わっていません。私は、約束を果たしたのでこれで帰らせて頂きます。」

そう言った彼女は、振り返って大聖堂の外へ行ってしまった。

色欲「さぁ.....皆さん、彼女がハッピーエンドの道を示して下さりました。」

ここぞとばかりに、語りだした色欲は、皆を先導して残りのモンスターを攻撃する。

Monster:聖夜の幻霊が死に。

Monster:玩具の音楽隊も死んだ。

残りは、4体。

しかもいつの間にかその残りの4体のモンスターのHPは50%を切り、全員が苦しそうにしている。

(これならいける.....。私達は、勝てる。)

希望を持ち出したプレイヤー達も武器を構えて攻撃する。


「こんなの........ありえない........。」

ドン(衝撃音)

「グハ........おっほ......ほ........。」

振り返ることなく、大聖堂をぶち壊しながら逃げていく老人、やっとの事で大聖堂を抜け出し、街の中に差し掛かる。

ドン(衝撃音)

背中から衝撃が伝わり、頭から倒れる。

「まだ....死ねない。目的の大半は達成した.....しかし.....まだ........。」

「主様の命令.........。」

思いっきり腕を後ろに振り回して後ろの二人を攻撃しようとする。

ルー「あっぶねぇな。」

イラ「やっとやる気に....っておい!」

身体を小さくした老人は、街の中へ走り出す。

必死に走り抜けながら、これまでの事を考える。

(死ねない.......死にたくない。)

冷や汗を流しながら自身のHPを確認する。

みるみる減っていく自分の寿命。

大祭のために用意され、主の命を叶えるためだけに生まれた生命体。

(まだ.....何も.....成しえていない。)

ずっと仕事続きで楽しい事なんて........。

生まれたばかりなんだ..........。

(死ねない.........。)

これも一種のバグなのかもしれない。

こんな事を誰が予測できただろうか。

ただ命令を達成するために、プレイヤー達を多く殺すために生まれた存在に"創造主"も予測すらしていなかった"感情"が産まれてしまったのだ。

ただひたすらに走り路地に入り、壁を伝って乗り越え、ガラスを割って室内に入り、進んで行く。

それを追いかけてくる二人の恐ろしいプレイヤー。

[聖夜の幻霊が権能により死亡しました。]

[玩具の音楽隊が衰弱死しました。]

(あぁ.....我が子が........。)

「グハ........。」

転んでも足をぶつけてもそのまま走り続けた老人は、街の外へ差し掛かった時、立ち止まった。

ブゥゥゥゥウン(効果音)

目の前に現れたウィンドウには、この先へは決して行けない事が書かれており、これ以上先へ進むことが出来なくなった。

「..............。」

上を見上げた老人は、全てを察し絶望する。

今まで私が忠誠を誓ってきた創造主は、私の事なんて何も気に留めてすらいなかったのだ。

(ただの消耗品......。)

毎日毎日この日のために汗水垂らして頑張って来た。

入念に準備をし、家族玩具達との時間を犠牲にし.......。

その家族玩具も.....この戦いで犠牲にして..........。

生れてからこの日までずっと........。

「これがお前らの.........✕〇×✕◎の.......。」

創造主という言葉が出てこない。

当たり前だよな........。

だってこの戦い.....この大祭を全て"魔族側"のせいにするつもりでいたのだから。

これも一種の信仰心を深めるための戦略だ。

だから、大聖堂という場に私を振り落とし、魔族側が本格的に攻めてきたという演出を見せて、破壊させ戦わせた。

「とんだ茶番じゃないか........。」

「おっほ.....っほ........。」

私を追いかけて来た二人のプレイヤーを見て立ち上がる。

私はどうせ助からないだろう。

雪が降りだし......体も冷えてきた。

私の家族玩具もここにはない。


殺 せ 。 プ レ イ ヤ ー を 自 身 の 価 値 を 示 せ 。


あぁ......何処まで行っても私は........。


"自由"になんてなれないんだ。


ルー「このクソ老人が!」

イラ「今までさんざんよくも俺達を苦しませてくれたな!」

二人のプレイヤーが私に怒りを露わにしながら突っ込んで来る。

私の意識は.....もうここには........"無い。"


「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああ。」

雄叫びを上げた老人の身体は、見る見るうちに変形し、異質な姿へと変わる。

「聖なる夜にメ ー    リ    マ

      リ   ク    ス    ス。」

カタコトで喋るその老人は、変形した腕で竜人を攻撃する。

ルー「グハ!」

イラ「大丈夫か!」

吹き飛ばされたルーは、そのまま家屋の中へ消えて行った。

ルー「ゲホゴホ.....大丈夫だ。」

ルー「それよりも前!」

イラは空中で吹き飛ばされ、吹き飛んだイラを空中から叩き落す。

ドン(衝撃音)

「ぐらじゃざしばらおい?」

何を言っているのか分からないが首を傾げながら、ニタァっとこちらを見て笑っている。

いつの間にかボスのHPが増えており、50%切っていたはずが90%付近まで回復している。

身体が小さくなったため全体的に攻撃範囲が減った分、火力も機動力も上がっている。

イラ「クソが!」

イラが怒りを露わにし攻撃しようとするが、最初に見せたような覇気は見られない.......。

それはそうだろう.......ここまでこの戦いが始まってからかれこれ4時間以上たっている.....。しかもその間ずっと集中しっぱなしで、怒りっぱなしと考えれば疲れて当然だろう。

ルー「おい!大丈夫か?」

イラ「あぁ.......。」

息切れをしながらやってきたイラは、汗を拭う真似をしてルーの方へやって来る。

ルー「そういやあの人は?」

と言い、イラの近くにいたはずのイラフィリスは、何処へ行ったのか尋ねる。

イラ「あいつか.....あいつは、助っ人呼びに行った.....。」

それを聞いて、あのフードと仮面の男の事だと察する。

「ばらりえら?あらふぁ?るじあい?で?」

首を変な方向に曲げながらゆっくりと近づいてくる化け物。

Monster:聖yr7老4-

名前もおかしな感じで表示され、HPバーも先ほどは、90%で止まっていたのに今は、減ったり増えたりを繰り返している。

イラ「完全に.......。」

ルー「バグってやがる........。」

老人の周りに次々とウィンドウが現れ、赤い文字でエラーと書かれている。

何処からか最初に聞いた鈴の音まで聞こえてくる。

リン リン リン リン(鈴の音)

異質な形に変わった老人の目からは涙のような液体が溢れ出てくる。

???「こんな結末になるなんて.......。」

イラとルーの後ろから勢いよく飛び出して来た仮面の男は、異質な形に変貌した老人の首を斬り割いて消し飛ばす。

ブクブクブシャ.......(効果音)

ブクブクという音とブシャというしゃがれたような音が繰り返し斬り割かれたところから響き渡り、異質な形に変貌した老人がゆっくりとこちらへ近づいてくる。

???「もう.....終わりにしましょう。」

という言葉と共に、屋根の上から降りて来たヒカリ(?)が金色のエフェクトを剣から発して、上から下に真っ二つに斬り割いた。

「メリークリスマス。」

リン リン リン リン(鈴の音)

リン リン リン リン(鈴の音)

という言葉と共に、ニコッと笑いかけた老人がエフェクトとなって降っている雪と共に消えて行った。

System:聖夜の老神が倒されました。

System:クリア時間は、04:36:49です。

System:プレイヤーの皆様、お疲れ様でした。

System:頑張って頂いたプレイヤーの皆様には貢献度に応じて報酬をお渡しします。


???「やはり協力は出来ませんか?」

と仮面の男が、ヒカリに聞くが、

ヒカリ(?)「ごめん......やっぱり魔族側の人は信用できない。」

と言いそっぽを向く。

???「そうですか......残念です。」

と言った仮面の男は、さようならとだけ言って何処かへ行ってしまった。

イラ「そんじゃぁ、俺も帰るわ。あいつと約束あるし。」

と言ってイラフィリスを指差し、そんじゃなぁと言ってイラも手を振って行ってしまう。

ルー「あー.....その.....悪かったな......。」

と頭を掻きながらヒカリの方にやってきたルーは顔を真っ赤にしてヒカリに謝る。

ヒカリは、何のことか分からなずにどういう事か聞き返す。

ルー「その.....最初.......な?お前に突っかかってきたりして........。」

と言いながら、恥ずかしそうに謝っている。

ヒカリ(?)「いいわよ.......貴方が何で私の事知ってるか知らないけど........。」

ヒカリ(?)「それも聞かないでおいてあげる。」

と言ってヒカリも何処かへ消えてしまった。

ルー「.......母ちゃん.....父ちゃん.......俺.......これからはちゃんと頑張るわ。」

と言って前世の母親と父親、そして今世の母親と父親を思い浮かべる。

ルー「まずは....謝らねぇとな。」

と言いルーはログアウトした。

[伝竜の覇者キングルーがログアウトしました。]


System:不可能な偉業を達成しました。

System:ユーマは、新たな称号を手に入れました。

???「ふぅ....取り敢えず、目的の一部は達成と.....一番の目的であった勇者の阻止もしくは仲間にする.....は出来なかったけど.......。」

???「プレイヤー達は、多く救えたわけだからこれで構いませんよね?シスターさん......。」

仮面を外したユーマは、ウィンドウを見て溜め息を付く。

(これだけ死ぬほど努力したのに.....まだ足りなかった。)

勇者と出会って実感した。

英雄の時は、まだ勝てそうな気がしたが、英雄が勇者になった瞬間、埋められないほどの差を感じたのだ。

ユーマ「これが......言ってた事だったんですね。」

シスターさんに念を押され、顔を隠し名前を隠しておいて正解だった。

次に出会う時までには、これ以上に強くなっていないといけない。

目標は打倒勇者.......。できれば仲間になってほしいけど、今日話した感じそうなりそうにはなかった。

最悪の結末なんて辿らせるわけにはいかない。


PlayerName:伝竜の覇者キングルー

種族:竜人

職業:魔斧士

Level:不明

Skill:多すぎるため詳細不明

称号:不明


PlayerName:ヒカリ(?)

種族:人

職業:剣士

Level:不明

Skill:多すぎるため詳細不明

称号:プレイヤー/回帰者/.../Pioneer(先駆者)/英雄


PlayerName:イラ

種族:人

職業:無職

Level:不明

Skill:.../憤怒(太陽の拳......)

称号:プレイヤー/憤怒/..../偉大な一撃


PlayerName:イラフィリス

種族:精霊

職業:支援

Level:不明

Skill:.../憤怒の権能

称号:憤怒の精霊


PlayerName:不明

種族:不明

職業:音楽家

Level:不明

Skill:.../色欲

称号:プレイヤー/色欲/......


PlayerName:不明

種族:精霊

職業:支援

Level:不明

Skill:.../色欲の権能

称号:色欲の精霊


PlayerName:不明

種族:不明

職業:不明

Level:不明

Skill:.../虚飾

称号:プレイヤー/虚飾/......


PlayerName:不明

種族:精霊

職業:支援

Level:不明

Skill:.../虚飾の権能

称号:虚飾の精霊


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:67(+50)

Skill:High Heal/Essence of Life(生命の源)/王国騎士流体術(中級)/竜装/Meditation(瞑想)/竜葬剣術(上段)[剣に関する技能統合]/Battle Up(バトルアップ)/Magic Control(魔力操作)(上級)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)/火魔法(上級)[火に関する魔法技能統合]/炎魔法(初級)[炎に関する魔法技能統合]/契約魔法(初段)/水魔法(中級)[水に関する魔法技能統合]

称号:プレイヤー/竜霊魂(ドラゴンレイス)の欠片/妖精の歓迎/竜霊の弟子/虐殺者/不可能を可能に。

Buff:[竜霊の加護][魅入られた者][虚栄心]


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「本日もサクッと解説をやっていきます。」

「仮面の男はどうやらユーマさんだったようですね.......。」

「こんなに強くなって.......。」

「それよりも....なんだかどこかスッキリしない終わり方でしたね。」

「それでは本日もサクッと解説をやっていきましょう。」

「ユーマさんのレベルの横についている+30ですが、バフ効果による推定レベルがどれだけ増えたかの数値です。」

「つまり今のユーマさんはレベル117くらいだという事ですね。」

「短期間でこれだけ強くなったのってどれほどの修行だったのでしょうか......。」

「恐ろしやぁ.......。」

「ちなみにレベル117だったとしてもヒカリさんとルーさんの方が圧倒的にレベルが高いんですけどね.......。」

「それでもそんなヒカリさんに勝てそうだったと言ったのはやはり、ステータスに現れない隠しステータスの熟練度の部分で彼らを上回っているという事でしょうか?」

「ユーマさんマメな性格っぽいですもんね.....。」

「チュートリアルで何回も技能の練習をしたり、するくらいだし、瞑想も欠かさず行うくらいなんですから。」

「熟練度が他の人よりも伸びているのは、当たり前でしょう。」

「しかも普通の人はその隠しステータスの存在すらしらないのですから。」

「ってことは、ユーマさんはそれを元から知ってたという事?ってなりますけど。」

「ユーマさんは、知ってたのではなく普通にマメな性格ってだけなのと、シスターさんが知ってて後からユーマさんにお伝えしたという可能性が大きそうですね。」

「では、本日のサクッと解説を終了します。」

「始めの大祭は無事終了したようです。」

「次回もお楽しみに.....。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「ばいば~い。」

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