ー 43話

12月25日、午後15:00。

それは、何の予告も無く訪れる。

ドン(地響き)

ガラガラ(瓦礫の崩れる音)

空から舞い降りて来た巨大な老人は、大聖堂のど真ん中に落ち、大聖堂の天井が崩れさり、砂埃が舞ってそいつの姿が見えなくなってしまった。

その巨大な老人に続いて鈴の音を鳴らしながら、空から多くの小人が降って来る。

「頑張るでしゅ~。」「やったるでしゅ~。」「お祭りでしゅ~。」

リン、リン、リン。(鈴の音)


???「来た.......。」

ルー「来やがったか!」

戦闘態勢をして構えていた二人は、互いに目を合わして目的の人物が落ちていった崩れた大聖堂の方を見つめる。

???「あなた.....何者よ!」

この事をすでに知っていたかのように武器を構えて同じ敵を見つめる竜人に驚いて、話しかけるが、ルーの方は、そいつの言った事は無視して中指を突き立てて敵対心剥き出しで、

ルー「ッハ、てめぇがあのクソ勇者か!」

ルー「あの獲物は、俺が貰う!」

と言い放ち、キングルーは、真っ先に飛び出した。

どうしてこんなにも自分に敵対心を剝き出しにしてさらには、私に挑発して来るのかは、分からないが彼に敵を奪われるわけにはいかない英雄は、キングルーを追いかける。

???「待ちなさい!」


ガラガラ(瓦礫の音)

崩れてしまった大聖堂で、頭から血を流しながら聖騎士は自分よりも大きな老人に剣を向ける。

聖騎士「何者だ!」

「おっほっほ、これはこれは、人間の皆様。」

「まずは軽い挨拶のつもりでやって来ましたがどうやら、創造主を崇める場所へ落ちてしまったようですね。」

白い顎髭をわさわさと触りながら、ゆっくりと立ち上がった巨大な老人、立ち上がると聖騎士よりも5倍も6倍もでかいその老人は、赤い帽子を拾い上げて埃を掃い、自身の頭の上に乗せ亜空間から白い袋を取り出す。

見た目はまさしくサンタクロースのそれは、白い袋から金色の鈴を取り出すと、リン!と鳴らす。

聖騎士「な!何をしている!止まれ!」

「おっほっほ、ちょっとしたプレゼントを皆様にあげようと思ってね。」

聖騎士「何を訳の分からない事を!」

ガキン(金属音)

聖騎士「な!?」

このデカい老人の肌が出ている部分を切りつけたはずなのに、ありえない音と共に弾かれて困惑する。

「おっほっほ、そう慌てなさるな。慌てなさるな。」

ゴソゴソと白い袋に手をやって取り出したのは、木彫りの人形だ。

「まずは、手始めにこれで遊んであげよう。」

???「そこの騎士、どきなさい!」

ルー「てめぇ!クソ勇者、邪魔すんな!」

ガキン(金属音)ガキン(金属音)

木彫りの人形からした音とは、到底思えないその音と共に二人が弾き飛ばされ瓦礫の方へ消えてしまった。

「おっほっほ、まずは第1ラウンド。」


Monter:💂おもちゃの兵隊💂


先ほどまで可愛らしい見た目だった木彫りの人形が、ありえないほど縦に大きく口を開けて、目玉をぎょろっと1回転させて恐ろしい見た目に変貌し、紫色の怨念を放つ。

「おっほっほ、それでは皆さんに楽しんで頂くために、小人たちに沢山の人々を呼んでもらいましょうか!」

リン!(鈴の音)

先ほど出した金色の鈴をもう一度鳴らした瞬間、大聖堂の周りで小さい鈴の音が鳴りだす。

リンリン♪ リンリン♪ リンリン♪ リンリン♪

System:全プレイヤーに緊急イベントのお知らせ。

System:クリスマスの日にやってきた邪悪なモンスターをプレイヤー皆で協力して倒しましょう。

System:参加方法は、インベントリーにプレゼントボックスを用意しております。

System:参加して下さるプレイヤーは、プレゼントボックスを開いて頂くと自動で転送されます。

System:警告:警告:警告:警告:警告

System:クリスマスの日にやってきた邪悪なモンスターをプレイヤー皆で協力して倒しましょう。

System:参加方法は........。


「おっほっほ、これで良いでしょう。」

「それじゃぁ私は、皆さんが集まるまで見学でもしていましょうかね。」

「ご主人しゃま、ご主人しゃま!大変でしゅ!皆様が集まる前に、あの者達が第1ラウンド突破するかもでしゅ!」

ぴょこぴょこと足元を撥ねながら、裾を掴みアレアレ!っと指を指す。

「おっほっほ、心配はいらないよ。」

「その場合は、第2ラウンドになるだけだからね。」

「そうでしゅね!」「なるほどでしゅ!」

うん、うん。と頷く小人たちの頭を撫でる老人は、さぁ君達も仕事の時間だよと言って送り出す。

「頑張るでしゅ!」「お仕事なのです!」「やったれ~でしゅ。」

小人たちは、元気に張り切って大聖堂の外へ行ってしまった。


「なんだあれは......。」

「デカすぎないか。」

「あれが邪悪なモンスター......。」

「クリスマスだからサンタがボスってか?」

大聖堂に鎮座する巨大な老人を見るプレイヤー達に小人たちがよってくる。

「ん?なんだこの可愛い生き物。」

Monster:パペットドール

「おい、こいつらモンスターだぞ!」

「ここ!安全地帯だよな?」


「落ち着くでしゅ!脆弱なる人間さん!」

「そうでしゅ!落ち着けでしゅ。」


ぴょんぴょんと撥ねる可愛い小人達を見て、なんだかプレイヤー達は和やかな雰囲気になる。


「な、なんか可愛くね?」

「かっわいい!」

「抱き着きたい!」

「これを倒すのか?無理だろ.....。」

そう言ってザワザワとしていると、メガホンを持った1人の小人が一喝しプレイヤー達は、驚いて静かになる。


「黙れ!でしゅ。うるさいでしゅよ。脆弱な人間さん。」

「これからルールをご説明なのでしゅ!」

えっへんと胸を張り天使の像の上に登った小人をプレイヤー達は注目して見つめる。

「可愛い.....。」


「黙れでしゅ!」

誰かがボソッと喋ったその言葉を小人がッシと言って指を立て唇の方に当てて静かに!とジェスチャーをする。

「それでは、静かになったようなので、ゲームのご説明!」

リンリン♪ リンリン♪

周りの小人たちが一斉に鈴の音を鳴らしだす。

「まず初めに!あの大聖堂に鎮座している我らがボスを倒すのが皆さんのお役目!」

「でも!あの大きなモンスターは、最初は倒せないのでしゅ!」

「そこで!あの我らがボスさんが召喚したモンスターを倒して行くのでしゅ!」

「全部倒せば!我らのボスを攻撃できるようになるのでしゅ!」

「途中で出てきたモンスターは、討伐するとプレゼントボックスが貰えるでしゅよ!」

「皆さん、気楽にご参加下さいなのでしゅ。」

リンリン♪ リンリン♪

「出来たらメッセージでいろんな人にお声がけ!」

「皆で楽しくゲームのイベントにご参加お願いでしゅ!」

リンリン♪ リンリン♪

「最後に我ら小人さんからの皆さんにプレゼントでしゅ。」

「どうぞ!」

リンリン♪ リンリン♪


ドン!(衝撃音)

砂埃を上げて黒い何かが大聖堂の方から飛んでくる。

???「ゲホ、ゴホ.....皆....プレゼント....開けちゃ.....ダメ!」

何かを必死に訴えて腹を抑えているプレイヤーが剣を地面に突き立て砂煙の中で立ち上がる。

???「皆!聞いて!ゲホ....ゴホ......。」

「おい、大丈夫かあんた?」

心配して1人のプレイヤーが先ほど衝撃音と共に大聖堂から飛んできたフードを被った人物に近づく。


リンリン♪ リンリン♪

「皆さん、プレゼントは受け取りましたか?」


???「聞いて.....お願い.......。」

「おい、あんた。まずは、ゆっくり深呼吸って....おい!」

???「どいて!」

ドンと心配してくれていたプレイヤーを押しのけて、天使の像の方へゆっくりと歩く。

???「お願い......。」


リンリン♪ リンリン♪

鈴の音が次第に大きくなり、

「それでは、メリークリスマス!」

と言った瞬間、天使の像の周りに集まっていたプレイヤー達が一斉に小人から貰ったプレゼントを開けた。


???「どうして.......。」

座り込んでしまったフードを被ったプレイヤーに、先ほど押しのけられたプレイヤーが近寄り、

「どうしたって言うんだい?」

「取り敢えずポーションでも飲んで。」

と言ってポーションを渡して起き上がらせる。

「大丈夫?」

と言う問いかけに、

???「もう手遅れなの.....。」

と言い天使の像の方を指差すと、プレゼントを開けた全プレイヤーが恐怖に怯え蹲っていた。


「な......。」

「どうしたんだ?」

「おい........。」

蹲って泣き叫んでいるプレイヤーに急いで近寄って声を掛けるが、錯乱していて会話が出来ない。

???「もう手遅れなのよ。」

そう言って立ち上がり回復したプレイヤーは大聖堂の方へ歩き出す。

「ちょっと待てって.....手遅れってどういう?」

そう言ってフードを被ったプレイヤーの腕を掴んだ瞬間、天使の像の前で怯えて跪いてプレイヤー全員が一斉にエフェクトとなって消えて行った。

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

[―は、恐怖値が上限を突破し、心肺停止により死亡しました。」

             ・

             ・

             ・

「こ、こんなことって.......。」

あり得ない光景に目を見開いて天使の像を見つめていると、

???「どいて...。」

と言われて、フードを被ったプレイヤーの腕を離してしまう。

「こんなことってあっていいのか?」

「こんな........。」

あり得ない光景に絶望して立ったままでいると、


リン♪

鈴の音が真後ろからして振り返る。

「脆弱なる人間さん。我々のプレゼントはいかがでしたか?」

そう言ってニコと笑う小人の頭上に目がいく。

Monster:パペットドール

「ハハ......。」

ザシュ(斬撃音)

[―は、モンスターにより死亡しました。]


ルー「ガッハッハ!雑魚が雑魚が雑魚が!」

ドン!(衝撃音)

ルー「ソウルディフェン....ガ!」

ドン!(衝撃音)

ガラガラ(瓦礫の崩れる音)

おもちゃの兵隊の横なぎを横腹に喰らって吹っ飛ばされる。

ルー「いってぇだろうが!技撃ってるときは、攻撃しないのがお決まりだろが!」

そう言いながら、モンスターのHP表示を見るが全体のHP70%から全く減っていない事に腹を立てる。

ルー「こんのクソゲーが!」

ルー「ソウルブレイク!」

パキンという割れた音と共に、紫色のエフェクトが飛び散るがモンスターのHPはあまり減っていない。

ルー「んだよぉ.....ぜぇ....はぁ........。」

ルー「なんなんだよ!」

ドン!(衝撃音)

???「邪魔しないで!」

ルー「ア"ン?」

クソ勇者に命令されてさらに腹が立つ。

ルー「てめぇが邪魔すんなや!」

ドンとフードを被ったやつを押しのけておもちゃの兵隊を攻撃する。

???「キャ、よくもやったな!」

思っていた反応と違い、少々驚いたが、

ルー「うっせぇ黙れ!男の癖にキャだとかいいやがってクソ邪魔なんだよ!」

と言って、モンスターに攻撃する。

???「お前がどけや!」

先ほどよりもどこか怒った様子の勇者に背中を押されて、足を瓦礫に引っ掛けて転ぶ。

ルー「てっめぇ、このクソ勇者がぁ!」

本格的に勇者とキングルーとの仲間割れが始ろうとしていた時、後ろから多くのプレイヤーがやってくる。

「いたぞ!」

「これがイベントのモンスターだ!」

「皆で攻撃しろ!」


ルー「ッチ、もう来やがったか。」

???「あなたのせいよ!」

???「あなたが邪魔しなければ、私がこのモンスターを倒して、この人たちがこれ以上犠牲になんてならなかったのよ!」

ルー「んだとてめぇ!」

ルー「てめぇのせいで俺がどれだけ苦労したと思ってんだボケ!」

???「はぁ、初対面でしょ!わけわかんない事言わないでよこのバカ竜人!」


「クソ、こいつ強いぞ!」

「ヒーラーは回復!」

「魔法使えるやつは、遠距離から!」

???「こんなバカに構ってる暇なんてないわ。」

ルー「あーあ、俺だっててめぇのようなクソ勇者になんて構ってらんねぇなぁ。」

そう言って二人は互いに押しのけあいながらモンスターを攻撃する。


「HP50%切ったぞ!」

???「なんですって?全員伏せて!」

ルー「アホども伏せろ!」


おもちゃの兵隊の目がぎょろっと1回転し、おもちゃの兵隊は、後ろの銃を手に取って発砲する。

ギュィィィン(弾丸の音)

「な.....なんだこれ.....」

「SFかよ。」

ライフルのような見た目の銃から、ありえない弾というよりレーザーに近い弾が放たれ、辺りを抉り飛ばす。

「こんなんありかよ!」

[―は、モンスターにより死亡しました。]

[―は、モンスターにより死亡しました。]

[―は、モンスターにより死亡しました。]

[―は、モンスターにより死亡しました。]

[―は、モンスターにより死亡しました。]

「こっちは、5名死亡!」

「そっちは?」

「足欠損3名、腕欠損2名」

「怪我したやつは回復しろ!」

「魔法班は、演唱準備!」

「近距離で戦ってる二人は....。」

???「命令しないで!」

ルー「黙っとけ雑魚ども!」

「えー....意思疎通不可なので、他の近距離班が魔法班を援護し、攻撃を防げ!」

「了解!」


ギュィィィン(弾丸の音)

「おっほっほ、まだ第1ラウンドというのに仲間内で協力もできないなんてねぇ.....。」

クッキーを片手にのんびりと見物する老人は、小人たちの方も見る。

「う~む、これほどプレイヤーが劣勢だと我々の目的が果たせないかもしれないなぁ。」

そう言って、牛乳を飲みながら高みの見物を決め込む。


午後16:30。

ようやく1ラウンド目のおもちゃの兵隊が討伐された。

「や、やったぞ。」

「ようやく倒したんだ。」

「これで終わりか?」

???「そんなわけない。」

ルー「バカか、話聞いてたか?」

そう言って全員が老人の方を見る。

「おっほっほ、第1ラウンドクリアおめでとう。」

「これは、私からの報酬のプレゼントボックスだ。」

そう言って白い袋からプレゼントボックスを取り出す。

「な、騙されないぞ!」

「掲示板で見たぞ!」

そう言って老人に指を指し責め立てる。

「おっほっほ、それはそれは残念だ。」

そう言って老人がプレゼントボックスをしまおうとすると、

???「貰うわ。」

ルー「何勝手に俺の報酬を持ってこうとしてんだよクソサンタ!」

と言って二人が前に出てくる。

「そうかいそうかい。」

そう言って二人にだけプレゼントボックスを渡し、


「それでは、第2ラウンドだ。」

地獄のクリスマスイベントの続きが始まった。


PlayerName:伝竜の覇者キングルー

種族:竜人

職業:魔斧士

Level:不明

Skill:多すぎるため詳細不明

称号:不明


PlayerName:不明

種族:人

職業:剣士

Level:不明

Skill:不明

称号:プレイヤー/回帰者/.../Pioneer(先駆者)/英雄


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「12月25日、初めの大祭がやっと訪れましたね。」

「それにしても.......ありえないほど敵は強いようです。」

「このままでは、敗北してしまうのではないでしょうか......。」

「それにしてもキングルーさんと勇者(?)ではない....英勇さんはとってもお久しぶりで、とっても仲が悪いですね。」

「虚実の書と第34話以降から登場していませんでしたものね。」

「さぁさぁ、7人の選ばれたプレイヤー及び精霊さんはやってくるのでしょうか?」

「始まったばかりでまだ、たかが第1ラウンド突破しただけですよ?」

「まだ間に合うはずなのです。」

「それでは本日もサクッと解説をやっていきましょう。」

「小人がプレイヤーにあげたプレゼントボックスについてお話ししましょうか。」

「あれは、ただの幻覚効果を付与するだけのボックスです。」

「ただえげつない幻覚ですけどね。」

「プレイヤーのトラウマを幻覚として登場させ、精神的に追い詰めるだけのボックスです。」

「追い詰められたプレイヤーは、発狂し最終的に心臓が麻痺して死亡します。」

「最も効率的で最悪で残虐な"二度とこのゲームをしたくなくなるような"そんなプレゼントを贈ったわけです。」

「ただ、何人かは復活後イベントに参加しに行ったようですけどね。」

「やはり人によっては、大丈夫な人とそうでない人がいるのでしょうか?」

「まぁそれでも辛い事には変わりありません。何故ならただでさえ化け物並みに強いレイドモンスターをステータスが下がっている状態で且つ、経験値やレベルも下がった状態で参加しないといけないということですからね。」

「何度死ぬこととなるのでしょうか?」

「記憶は大丈夫でしょうか?」

「どれほどの犠牲が出るのでしょうか?」

「あぁ....なんという最高な大祭!」

「おっと失礼しました。」

「このままでは、目的てきにも良くないのでプレイヤー方には、もっと沢山頑張ってもらいたいものですね。」

「それでは本日のサクッと解説を終了いたします。」

「次回は第2ラウンドです。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「さようなら~。」

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