ー 44話

午後16:30。

「それでは、第2ラウンドだ。」

巨大な老人は白い袋に手を突っ込み、2体の人形を取り出す。

一体は、白いドレスをまとったお姫様の人形と、もう一体は、黒い角の生えた化け物の人形。

「さぁ、プレイヤーの方々、準備は整いましたか?」

「第2ラウンドは、この可愛いお姫様の人形を守り抜きましょう。」

「守れなかったら失格とし、全員にペナルティを与え、そのまま第3ラウンドへ行ってもらいます。」

「それでは、初め。」

お姫様の人形が地面に置かれた瞬間、人形がみるみる美しい人間のお姫様へと様変わりし、周りの風景も一瞬にして変わる。


「な、なんだ?」

「どうなってるんだ?」

???「慌てるな!ただの幻覚だ!」

ルー「うっせぇぞ雑魚ども!その姫だとかいう人形しっかり守っとけや!」

と言い2人は、もう1体の人形の方に剣を構える。


Monster:影人形(シャドウドール)


もう一体の人形は、見る見るうちに巨大な化け物へと変貌し動き出す。

???「来るぞ!」

ルー「そいつちゃんと守っとけよ!」

ドン!(衝撃音)

衝撃音と共に目の前にいたはずの二人が一瞬にして砂埃の中に消えて行った。

金属音と火花が散り、周りのプレイヤー達は砂埃の中に消えてしまった二人が、今どうなっているのかが見えないため、状況がつかめないままあたふたしている。

「お、おい。大丈夫なのか?」

ルー「うっせぇカスども!そのクソ姫連れて離れとけや!」

???「そっちにいる魔法班は防御を張れ!」


「は?」

「ディフェンスシールド!」

ドン!(衝撃音)

シールドを張った瞬間、砂煙の中から巨大な火球が飛んできてシールドが間に合っていないプレイヤー達に命中する。

「うぁぁ。」

「大丈夫か?」

「やばいぞ!回復班、魔法班を回復し、近接班は、姫を連れて逃げろ!」

「また攻撃が来るぞ!」

ドン!(衝撃音)

[―は、モンスターにより死亡しました。]

[―は、モンスターにより死亡しました。]

「こちら2名死亡!」

「姫にも少しだけダメージが!」

ルー「カスども!こんな簡単な任務もできねぇのか!」

ルー「さっさと姫回復して離れとけや!」

「りょ、了解!」


「ア"ァ"んだこれよぉ......。」

プレイヤー達があたふたしながら姫を移動していると、前からプレイヤーがやって来る。

「さっきまでよぉ.......オレア"ァ"ベンチで気持ちよく寝てたのによ"ぉ"。」

「ンデ、オレ"は塔の上で寝てんだ?」

機嫌が悪そうな....というより、今にでも俺たちプレイヤーを殺して回りそうな目つきの男性が、イライラしながらやってくる。

「ンダヨォ"ココ何処だ?」

近くに大聖堂があったはずの場所は、いつの間にか巨大な城へと様変わりしていることに気が付いてだるそうにしながらこっちに来るプレイヤー達に説明を求める。

「えっと.....その。」

「ア"?」

「ッヒ!」

「こらぁ!やっと見つけた!」

目つきの悪い人物の後ろから走って来た女性は男性にゲンコツを一発お見舞いして腕を腰にやり、

「今日は、私との約束があったでしょ!」

と言って首元を絞める。

「グェ。ゴラデメェ!」

目つきの悪い男性は、首を絞められたことで慌てて女性を突き飛ばす。

「ンダゴラァ、ゲホ。」

「死んだらどうすんだボケ!」

と言ってぜぇはぁぜぇはぁと息をし、首元を触る。

「何よ!このアホポンタンが!」

「私との約束をほっぽりだして隠れてたのがいけないんでしょ!」

と言ってもう一回男性にゲンコツをお見舞いしてやる。

「ンダゴラァ、頭悪くなったらどうすんだボケ!」

と言いながら、頭をさすりながら蹲る。

「あとなぁ俺は待ってたぞ!てめぇが来なかっただけだろうが!」

と言い立ち上がって、女性の胸倉を掴もうとするが躊躇し、

「クソが!」

と言ってそっぽを向く。

「嘘よ!いなかったじゃない!」

「今日は大聖堂の前で集合って言ったでしょ!」

「大事な日なんだから!」

と言って大聖堂があったはずの場所を指差し、フンと言ってそっぽを向く。

「おったわぼけぇ!そこのベンチで寝とったわ!」

と言って先ほど降りて来た塔の上を指差しながら女性を睨む。

「それは、待ってたとは言わないのよ!このバカ!」

と言ってもう一発殴ろうと拳を握り男性に近づく。

「ゴラァ!てめぇまた殴ったら頭悪くなるだろが!」

「やめろゴラ!」

と言い、女性の攻撃を躱す。

???「そっち行ったわ!防いで!」

「ア"?」

男性が振り向いた時、目の前に巨大な火球が飛んできて、男性は反射的に拳を前に出す。

「ンダゴラァ!」

その瞬間、拳に当たった火球が消し飛び跡形もなく消え去る。

「な....なんだ!」

「どうなってるんだ?」

「あんなスキルあったか?」

姫を遠くに逃がすために動いていたプレイヤー達がざわざわとしながら、男性の方へ集まる。

「ア"?んだよ。」

男性は、周りのプレイヤーの反応に疑問を持ちながらも女性の方を見る。

「やるじゃない!」

そう言って男性の背中をバシっと思いっきり叩かれる。

「うっせぇ!攻撃防いでやったんだからもう殴んじゃねぇぞ!」

と言って女性の拳を見つめる。

「もう!分かったわよ。」

振り下ろした拳を見て安堵した男性は、

「ンデヨォ、てめぇらはなんだ?」

「さっきからざわざわしてよぉ。」

そう言い、周りに寄って来たプレイヤーを見ながら睨みつける。

「コラ!そんなに睨んだら怖いでしょ!」

「てめぇその拳、今すぐしまえ!」

「ってぇなぁ.....。」

また女性に頭を殴られたことで男性はその場に蹲る。

「えぇっと。それで....プレイヤーの皆さんは何をなさって?」

そう言いながら集まって来たプレイヤー達に女性は今がどういう状況なのかを聞く。

「そ、それが。邪悪なモンスターの討伐とかいうイベントで、この姫を守るミッションが始まりまして......。」

と説明すると深刻そうな顔をしながら分かったわと言い、蹲っている男性の首を掴み持ち上げる。

「グェ!」

「ゲホ、ゲホ。」

「ンダゴラ!殺す気か!」

「違うわよバカ!」

「あんたが来なかったせいでもう第2ラウンドまで始まってんのよ!」

と言って火球が飛んできた方を指差す。

「マジかよ。」

と言いながら男性は頭を掻いてだるそうにしながら、屈伸を始める。

「てめぇら!女性泣かせたらただじゃおかねぇぞ!」

「特にそこの姫だとかいうの!しっかり守っとけや!」

それだけ言い残してその男性は、一瞬にして目の前から消えてしまった。

男性が消えた場所を見ると地面が少し抉れており煙が舞っている。

「あ、ごめんね!言葉キツイし顔怖いし、悪人面だけどとっても優しい人なのよ。」

「それじゃぁその姫様とかいうのよろしくね。」

そう言って女性の方は火球が飛んできた方に走って行く。

「ちょ、ちょっと待って!」

「そっちは化け物がいるんです!」

「分かってるわ!私は大丈夫だから!」

そう言って女性はプレイヤー達に手を振って行ってしまった。

「な、なんだったんだ?」

「それよりこの姫を安全な場所へ!」

「そ、そうだな。」

「それにしても.......これが幻覚だなんて......。」

そう言いながらプレイヤー達は、辺りを見渡すのだが、明らかに幻覚だとは思えないほど細部までマップが作り込まれている。

「こっちこい!ここから城の外へ抜けられるぞ!」

「お、こんなところに穴が!」

「おい!こういう穴の先は、トラップなんじゃないか?」

「安心しろ!トラップじゃなさそうだ!」

「な、なんでわかるんだよ!」

「こっち来て見て見ろよ!」

「んだこれは......。」

そこに広がっていた光景は、先ほどまで町があったはずの場所が、美しい森になっていた。

「もっと遠くまで行ったほうがいいのか?」

「一応行けるところまで逃げておけとの事だ。」

「了解。」

そう言って姫を連れたプレイヤー達は森の中へと消えて行った。


モンスターの方はというと、

ドカン!(衝撃音)

凄まじい衝撃音と共に巨大な化け物が横へ吹っ飛び城の壁をぶち破り瓦礫の中へと消えて行った。

???「な.....なに!?」

ルー「誰だてめぇ!」

お互い砂煙で見えない中、先ほど怪物を蹴り飛ばした人物の方を見つめる。

「ア"?ンダてめぇ。人に名前聞くならまず自分から名乗れや!ちなみに俺はイラだ!」

明らかに口の悪い人物がもう1人増えたことを察し、英雄は溜め息を付く。

ルー「ア"?ンダトォこのカス!」

イラ「カスじゃねぇ。イラだ!ボケ!名前もまともに言えねぇのか?」

ルー「ンダトォ!てめぇもっぺんいってみろや!」

イラ「何度でも言ったらァ"!名前もまともに言えねぇのかって言ってんだよボケ!」

ルー「ンダゴラ!顔見せろや!」

イラ「てめぇこそ顔見せろや!」

砂煙が晴れお互いに目を合わせた瞬間。

イラ「てめぇか?」

ルー「な、なんですか?」

先ほどまで威勢の良かったルーは、イラに対して低姿勢で応える。

イラ「ンジャてめぇか?そこのフード野郎!」

???「私じゃないわよ。それより飛んで行った化け物を追うわよ!」

イラ「ンダゴラァ命令すんじゃねぇ!」

ルー「そうだ命令すんな!」

???「な!今は争ってる場合じゃないでしょ!」

???「ほら来たわよ!」

城の瓦礫の中から3人に目掛けて火球が飛んでくる。

イラ「フン!」

拳を前に突き出したイラが火球を一瞬にして消し飛ばす。

ルー「な、な、な......んだてめぇかっけぇなぁ!」

イラ「ア"?」

ルー「すみません。(小声)」

イラ「ンデ謝ってんだよ。」

ルー「いやぁ、気に障ったかなって......。(小声)」

???「情けないわね......。(小声)」

先ほどの威勢が全くなく低姿勢で応えるルーに英雄は溜め息を付きながら言う。

ルー「ア?てめぇみたいな男な癖に女みたいなやつに言われたかないわ!」

イラ「てめぇ......。」

ルー「はい!なんでしょう!」

拳を握り締めたイラがルーに近寄る。

イラ「女に向かって暴言吐いてんじゃねぇ!」

そう言ってルーを思いっきり殴り飛ばす。

イラ「やべぇ.....ぶっ殺しちまったか?」

慌てて拳を引っ込めたイラは、吹っ飛んだやつを確認しに行く。

???「だ.....大丈夫みたい......。」

目を回しながら瓦礫の中で倒れて気絶しているルーをつつきながら、生きていることを確認する。

イラ「タフな野郎だな。」

???「それよりも....あなた!」

???「ど・う・し・て、私の事を女だってわかったのよ!」

アイテムで声を替え、姿を替え、絶対にバレるはずのないと思っていた彼女は、イラの方に近寄って睨みつける。

イラ「んなもん見たら分かんだろぉが!」

イラ「そんなかっこーしてっぇけどよぉ。てめぇが女ってことくらい見たら分かるわ。」

と言って頭を掻く。

???「そんなわけないでしょ!私は、今まで誰にも....いえ....一人いたわね。じゃなくてほとんどの人に気付かれてないのよ!」

そう言ってイラの方に詰め寄る。

イラ「ンジャその数少ないやつが俺だ!」

イラ「それより来るぞ!」

瓦礫をどかして起き上がって来た怪物が、雄叫びを上げて突っ込んで来る。

イラ「もう一発食らっとけや!」

イラ「怒りのパンチ!」

ドゴン(衝撃音)

眩い光がイラの拳に集中し、雄たけびを上げて突っ込んで来ていたはずの怪物が一瞬にして目の前から消え去り、突っ込んできた方とは真逆の彼方で砂煙を上げ衝撃音が響き渡る。

???「な.......何をしたの?」

イラ「ア"?ただ殴っただけだ。」

あり得ない光景を目の当たりにして目を擦って再度確認する。

???「何よそれ.......。」

先ほどまで少し絶望していた英雄は、希望が見えたことで微笑む。

イラ「殴っただけ...ってお前......。」

???「何よ。」

イラ「笑ったほうが可愛いぞ。」

???「うっさいわね。セクハラよ!セクハラ!」

と言い、顔を赤くしながらフードを深めに被りその場を離れる。

イラ「ンダヨ....褒めたのに。」

「コラァ!」

イラ「てめぇ!また殴ったな!」

後ろから走って飛び上がり思いっきり拳を振り下ろした女性は、

「あんたがいけないのよ!(大声)私がいるのに......他の人なんてほめるから....。(小声)」

イラ「ア"?なんだって?」

「うぅ、うぅうっさいアホ!」

そう言ってフンと女性はそっぽを向いたままフードを被ったプレイヤーの方に行く。

イラ「んだよ....。女性って分かんねぇなぁ。(小声)」

「ごめんね。あの子、アホでバカで悪人面だけど悪気ないのよ。」

イラ「アンダトゴラ!」

???「いえ.....大丈夫です。」

???「それよりも、協力していただけますか?」

と言って怪物が飛んで行った先に剣を向ける。

「もちろんよ!私は、イラフィリスよろしくね?」

???「あ、よろしくお願いします。」

と言って手を差し出しお互いに握手をする。


ガラ(瓦礫をどかす音)

ルー「いってぇ......何してたっけ.....。」

ルー「そうだてめぇ.....いや.........フード被った人....よ、よくも殴りましたな!」

先ほどと違って低姿勢だけど何処か喧嘩腰で、それでいて丁寧な言葉遣いを無理にしようとしたせいで逆におかしい感じになってしまっている竜人がフードを被ったプレイヤーに近寄る。

???「私じゃないわよ。」

と言ってイラの方を指差すと。

ルー「すっみっません!たぶんなんか俺が悪かったです!」

と言って腰を90度に曲げてイラに謝る。

イラ「何してんだコレ?」

と言ってルーを指差し、頭を掻きながらイラがやって来る。

???「知らないわよ。なんか私が殴ったって勘違いしたみたい。」

イラ「てめぇ。」

ルー「はい!」

目を瞑りピシっと立つルーに近寄ったイラは、

イラ「すまんかったな。でも暴言は良くないぞ!」

と言って自分の言葉遣いを棚に上げてルーの背中を叩く。

ルー「はい!今後は気を付けるです!」

敬語になれていないルーは、カタコトで喋りながらイラにお辞儀をする。

イラ「ンジャ、とりあえず教えろや。」

ルー「はい?」

イラ「名前だよ名前!そこのフードも教えろ!」

そう言ってイラが怪物の方を見ながら二人に聞く。

???「私は.........。」

ルー「俺は、キングルーだです!」

ルー「ルーって呼べ下さい!」

イラ「ンデ、フードは言えねぇのか?」

???「ヒカリ......。」

イラ「んだよ。良い名前があんじゃねぇか。」

ヒカリ「.....ありがとう。」


PlayerName:伝竜の覇者キングルー

種族:竜人

職業:魔斧士

Level:不明

Skill:多すぎるため詳細不明

称号:不明


PlayerName:ヒカリ(?)

種族:人

職業:剣士

Level:不明

Skill:不明

称号:プレイヤー/回帰者/.../Pioneer(先駆者)/英雄


PlayerName:イラ

種族:人

職業:無職

Level:不明

Skill:.../憤怒

称号:プレイヤー/憤怒/......


PlayerName:イラフィリス

種族:精霊

職業:支援

Level:不明

Skill:.../憤怒の権能

称号:憤怒の精霊



<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「第2ラウンドも大変なようですね。」

「それよりも、憤怒さんが到着したようです。」

「いやぁ、良かった良かった。」

「これで少しだけ長生きするでしょう。」

「え?何故長生きかって?」

「そりゃぁ.....以前も言ったように、全プレイヤーと選ばれし7名のプレイヤーが協力しなければ簡単には倒せない敵ですからね。」

「一人増えたところで....しかもプレイヤーも少ないですし.....。」

「皆さんリアルの方で忙しいんですかね?」

「そりゃぁクリスマスですもんね......。」

「リア充爆発しとけってやつですよ。」

「ふぅ....それでは本日は解説をすることも特にないのでね。」

「え?いろいろあるでしょ?」

「まぁ解説しようと思えばいろいろできますけど.....。」

「最近気づいたんです。」

「この解説で書いて行った設定を1つ1つ確認のために今まで書いた小説の設定を見て回らないといけない大変さが.....。」

「ってことで下手にスキルの解説とかしまくっているといつか設定が破綻しそうで.....。」

「まとめとけって話ですよねぇ.....。なので近いうちにまとめてこようと思います。」

「それでは....。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「ばいば~い。」

「スキルと称号は、また改めて解説していきます。」

「もうしばらくお待ちください。(´;ω;`)ウゥゥ」

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