罪源の書

罪源の書

ガタン(何かが傾いた音)

8月1日.....均衡を保っていたはずの大きな天秤が片方に傾いた。

パタン(本を閉じる音)

「            。」

不敵な笑みを浮かべたその人物は、4人にとある重要な任務を与える。

「キッシッシ、了解しました。」

「おっほっほ、畏まりました。」

「わかりま~した♪」

「僕に任せてよ!」

"本"から産まれたその4人の化け物は、最悪の未来を実現する"鍵"となるために動き出す。

初めは12月25日。

その日までに、プレイヤーに残された日数は.......残り146日。


世界の均衡を保つため、天秤は7人のプレイヤーにこの大祭を乗り越えられる力を授けた。


彼ら7人とプレイヤーが協力し、この化け物を倒さなければならない。

そうしなければ、最悪の結末はまた一歩進むこととなるのだから。


第35話:憤怒

第36話:強欲

第37話:貪食

第38話:嫉妬

第39話:倦怠

第40話:色欲

第41話:虚飾


彼ら7人のプレイヤーには、それぞれサポートとして1人ずつ計7名の精霊が憑いていて精霊には、彼ら7名のプレイヤーをサポートし怪物を討伐するための知識が備わっている。

天秤に選ばれし7名と7名の精霊とゲームをプレイするプレイヤー達全員が協力しなければならない。

大祭は、もうすぐそこまで近づいている。

それなのに............。

天秤は、人を選ばなかった。

選ばれた彼らにそれを全うする"使命"や、"責任感"は全くない。

ただ、彼らは心の赴くままにプレイヤーを殺し、弄び、.......。

手に入れた力で、心を満たした。


[憤怒]

彼は、心の優しい少年だった。

ただ彼の家庭がそれを許さず、容姿にも恵まれなかった。

家庭は崩壊し、彼は一人になった。

彼は人生に絶望し、両親と同じ道を歩んだ。

他者の優しさを知らない優しい心を持っていた少年。

そんな彼を救おうと、一人の少女が彼をVRに誘う。


[強欲]

我儘に育ってしまった少女。

彼女は、幼い頃から何でも欲しい物を与えられ、他人の物は何でも自分の物にする事が出来た。

ただ、彼女の我儘もそう長くは続かなかった。

経営が悪化し、彼女の家庭が崩壊した。

裕福な家庭から貧乏な家庭へと変わってしまった時。

「欲しい物は、何でも買って貰えたのに。」

彼女の心は次第に歪みいつしか全てを欲するようになった。


[貪食]

彼は、もともと貧しい家庭の人間だった。

いつもお腹を空かせ、時には盗みを働かなければ生きていけなかった。

そんな彼も、大人になり就職し、VRという新たな世界に触れることで、美味しい物を知り、世界を知った。

そんな彼の人生は、質素ながらもとても幸せだった。

しかし.......そんな幸せも長くは続かず、彼の働く会社の経営が悪化し倒産したことで、彼はまた職を失い財産を失った。

満たすことのできない空腹をやがてVRで求めるようになった。

今もまだ、彼は空腹であり続けている。


[嫉妬]

彼女の人生は、とても悲惨と言う一言に尽きる。

物心つく前から家庭はすでに崩壊しており、家族の仲は最悪で、彼女は両親から毛嫌いされていた。

自身の部屋から出ることも許されず、孤独な日々を過ごす中で、彼女はVRと言う機器を知り、それを親戚から譲り受ける。

"楽しい"、"嬉しい"、"面白い"。

彼女がそのゲームで初めて知った感情は、現実では知る事のできなかった不思議な物だった。

彼女は次第にそれを追い求めるようになり、他者から奪う事で得られることを知った。


[倦怠]

この人は、ただ空気になりたかった。

現実に目標が無く。

VRも人から勧められただけで、ただひたすらに寝る事にしか使っていなかった。

この人は、知恵を出せばノーベル賞も貰えるほど賢かった。

ただ、それをしなかったのは........。

人類に失望したからかもしれない。

能力を示せば、それを求めてしがみ付き、価値を示せば功績を他者に奪われる。

そんな世の中に彼は何の面白みも感じなかった。


[色欲]

ハッピーエンドを求める彼女は、バッドエンドを許せなかった。

彼女の過去に何があったのかを知る人はいない。

ただ、彼女は未来を変えてでも、彼女にとってのバッドエンドである結末を決して許さなかった。

そのため彼女にとってのハッピーエンドであれば、他者が死ぬことも厭わない。

バッドエンドは、終わりにしましょう。

これから綴るのは、"彼女にとっての"ハッピーエンドです。


[虚飾]

彼女(?)が一番よく分からない人物と言われている。

声の感じからして女性であると言われているが、何を目的にしているのかも分からず。

ただひたすらに道端で質問を繰り返す。

彼女にとっての質問の正解はなんなのだろうか?

もっとも恐ろしく残忍な能力を持ち、他者に決して心を許さない。

そんな人物が彼女です。


癖のある7名に癖のあるサポート精霊、天秤がプレイヤー達が乗り越えるために与えた力は、逆にプレイヤー達を苦しめる結果となってしまった。

それなのに依然として天秤は均衡を保ったままだ。

このままでは、最初の大祭も乗り越えられないだろう。


パタン(本を閉じる音)

「             。」

不敵な笑みを浮かべた人物は、概ね計画通りに進んでいることを喜ぶ。

1人で良かったのかもしれない。

そんな気さえ思えてくる。

12月25日まで残り25日。


ダン!(ハンコを押す音)

「ご主人しゃま!ご主人しゃま!」

「おっほっほ、皆に配るプレゼントは用意できたかな?」

「はいでしゅ!」

「そうかいそうかい。」

コップに牛乳を注ぎ、片手にクッキーを持った赤い服を着た老人が、小さい小人の頭をなでてカレンダーを見る。

「そろそろだね?」

「はいでしゅ!」

「さぁ、最後の準備に取り掛かろうか!」

「あいでしゅ!」

リン(鈴の音)


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「プレイヤー達は大祭を乗り越えることが出来るのでしょうか?」

「彼ら7名全員が協力し、プレイヤー全員が協力すれば決して乗り越えらない壁ではないはずなのですが.......。」

「彼らにその気は、全くないようです。」

「何人かは協力してくれそうですけれどね.......。」

「本日はサクッと解説をやって行きましょう。」

「それぞれ7名の能力の一部についてです。」


[憤怒]

怒れば怒るほどステータスが上昇し続けます。

"限界値はありません"。また、上昇したステータスは一部の条件を除き減少することはありません。


[強欲]

[強欲]が欲しがった者の対象以外に洗脳と支配を与えます。

近くにいた全員に無差別に洗脳と支配を施し、目的の物が入手されるまで、もしくは彼女が納得するまで一部の条件を除いて解けることはできません。

※状態異常なので解除は可能です。ただし、本人がそれに気付くことは出来ません。

また、洗脳と支配を受けたプレイヤーやNPCのステータスが上昇し、あらゆるデバフを感じなくさせます。

そのためデバフ自体はくらいますが、出血しても痛覚が麻痺し、痛みを感じません。

骨折をしても痛みを感じません。毒を受けても痛みを感じません。ゾンビ状態というわけです。

なお、目的が達成されますと感覚が全て戻り、感じていなかった分の痛みがプレイヤーやNPCに一気に押し寄せてきます。


[貪食]

食べるという行為によりHP、MP、SPが回復し、ステータスがアップします。

この食べるという行為は、無機物でも可能なため土や草、空気を吸っても回復します。ただ上限値が設定されておりそれ以上のステータスアップの効果はありません。

また、食べるという行為をやめた時点でステータスが減少します。

さらに、[貪食]がNPCやプレイヤーを食べることで相手の技能を一部強奪します。

強奪された事にプレイヤーは、気づくことが出来ません。

また、食べられた場合に記憶を欠損し、[貪食]と出会った事の記憶を忘れます。


[嫉妬]

他者の感情を喰らいます。

感情を喰われた人物は、一部の条件を除いて永遠にその感情を失います。

[嫉妬]が嫉妬を感じるとステータスが上昇し続けます。

また、上昇したステータスは一部の条件を除き減少することはありません。


[倦怠]

他者に倦怠感を与えます。

この人と会話をした人物全てに倦怠感を与えます。

倦怠感の効果は、会話時間によって延び一定の時間を超過すると、永久に倦怠感が抜けません。

また、倦怠感になったプレイヤー及びNPCのステータスが減少します。

超過した場合は、ステータスの50%が一部の条件を除いて永久的に減少します。


[色欲]

彼女の声を聞いた者を洗脳します。

彼女の感情が共有され、彼女の声を聞いた全てのプレイヤーとNPCが彼女に共感します。

洗脳時ステータスが上昇し、プレイヤーとNPCの数によって上昇値が変わります。

また、彼女自身も洗脳したプレイヤーとNPCの数によってステータスが上昇します。

洗脳が解除された時、ステータスは元の数値に戻ります。


[虚飾]

彼女の質問に応えると、彼女が本当に思った事の逆が反映されます。

つまり、また会いたいと願えば死に、死んでほしいと願えば永久的に生きます。

ただし、彼女が本心でそう思わなければいけません。

そのため本人はこの能力を全くコントロールが出来ません。


「これがそれぞれの能力の一部です。」

「これだけでも恐ろしいですね.......。」

「以上でサクッと解説を終了します。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「久しぶりの解説はいかがだったでしょうか?」

「それでは、ばいば~い。」

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