ー 41話
「ねぇ.....そこのあなた.......。」
「なんですか?」
振り返る青年は、道端に座るフードを被った顔の見えない人物に呼び止められる。
「"傲慢"である自分を見たことがある?」
「傲慢.....ですか?」
急に呼び止められて訳の分からないことを言うその人物にどういう意味かを聴き返す。
「そう、"傲慢"である自分。」
うなずくその人物を見ながら、
言葉の意味が分からなかった青年は、とりあえず見たことがないと応える。
「そう........あなたは、自分を客観視できていないのね。」
悲しそうな声でそう応えた人物は、立ち上がり青年の方に近寄り耳元で何かを囁く。
それを聞いた青年は、急に顔を青ざめてその場に立ち尽くし動かなくなってしまった。
「ありがとう。それじゃぁ"またね"。」
フードを被った人物が青年の方に振り返り、手を振った瞬間。
[―は、死亡しました。]
青年の首から上が吹き飛び、赤いエフェクトが飛び散る。
「フフ.......。」
フードを被っていて顔は、はっきりと見えないがその人物の口元は、不敵な笑みを浮かべている。
それを見て路地から出てきて人物は、後ろから声を掛ける。
「あーあ....死んじまったな。」
手を頭の後ろにやり、だるそうに出てきた人物は、青年だったモノを見ながら足で蹴る。
「ダメでしょ....蹴っちゃ......。」
そのぞんざいな扱いに溜め息をついて止めようとするが、
「てめぇにだけは、"これ"も言われたくないと思うぜ?」
と言われ、何も言えなくなり、口をつぐんでしまう。
そして路地裏か出てきた人物は、もう一度青年を足で蹴ってどかす。
「ごめんね......。"死"んでほしくなかったのに.......。」
[―は、死亡しました。]
と言った瞬間、再度ログが目の前に現れ、青年が死んだことを伝える。
それを見つめながらフードを被った人物の目からは、涙が溢れて出てくる。
「あーあ.....まただよ。」
「その口塞いだ方がいいんじゃねぇか?」
と言い、お口チャックと指でジェスチャーをするが、フードを被った人物は首を横に振る。
「どうせ意味がないでしょ?」
そう言いながら、悲しそうな表情に変わる。
「そうだな......てめぇが"死"ねばいいんじゃねぇか?」
そう言いながら笑う人物を見て、フードを被った人物がそれに応える。
「そうね....あなたが"死"なないのが一番いいのだけれど。」
そういうと、笑っていた人物の首から上が吹き飛び、赤いエフェクトが辺りに散らばるが、時が巻き戻されたように、一瞬で赤いエフェクトが首の方に吸い寄せられて、吹き飛んだ頭が戻ってくる。
「残念だなぁ。」
と言ってニコと不敵な笑みを浮かべる。
「そうね.......。」
そう言いながらニコと笑い返し、フードを被った人物は道端にまた座り込んだ。
休日が終わり、平日は普通に学校へ登校していた佑真は、その間、ゲームにログインする事がなかったため、シスターさんのいる教会にも行っていなかった。
佑真「ログインするか......。」
休日の昼頃、佑真は今まで後回しにしていた教会へ行く事にし、ゲームへログインする。
シュイン
[ユーマがログインしました。]
あれから何日ほど経ったのだろうか......。
ゲームを辞めてからという意味ではなく、シスターさんと別れてからという意味で言えれば、思っている以上に月日が経っている事だろう。
ユーマ「忘れられてないかな......。」
子供たちの事を考えながらも、あの絵本の内容が気になり足が竦む。
ユーマ「取り敢えず、お菓子でも持っていくか.......。」
そう言いながら遠回りをして、子供の好きそうなお菓子を買い、教会へ向かう。
ッサ(箒で掃く音)
教会の前で落ち葉を箒で集めている人物が目に入り立ち止まる。
黒い服を着たシスターさんだ。
ユーマ「お久しぶり....です。」
そう声を掛けるとシスターさんは、振り返り悲しそうな顔をする。
神官「もう.....来ないと思っていました。」
その言葉に一瞬ドキッとし、申し訳なさそうな表情をすると、
神官「ごめんなさいね。」
そう言ってシスターさんが謝罪をし、深く頭を下げた。
ユーマ「それは.....何に対する謝罪でしょうか?」
シスターさんは、俺の方をじっと見つめて申し訳なさそうな顔をした後に、
神官「こちらへ来ていただけますか?」
と言って手前抜きをして教会の中へ案内される。
前よりもボロボロになった気がする協会は、ひっそりとしていて廃墟感が漂っている。
ユーマ「子供たちは?」
神官「そちらの部屋で神父様とお昼寝中です......。」
そう言って長い廊下の先に案内された。
神官「すみませんね。少しお待ちいただけますか?」
案内された部屋の暖炉に火をつけたシスターさんは、紅茶を入れて俺の前に差し出す。
神官「絵本の事についてですよね?」
申し訳なさそうに俺の方を見るシスターさんに、俺は無言で頷く。
神官「どこまで知りましたか?」
ユーマ「そうですね.......何も分かりませんでした。」
そう言うと、シスターさんは悲しそうな表情と申し訳なさそうな表情をして、紅茶を飲む。
神官「そうですか........。もう何の痕跡もないのですね。」
その言葉に俺は頷いて、2冊の絵本をインベントリーから取り出す。
ユーマ「ただ、これは.....俺の推測なんですけど.....それでよければお話します。」
そう言うと、紅茶を置いてシスターさんは、静かにうなずいた。
パチ(暖炉の音)
暖炉の音だけが静かな部屋の中に響き渡る。
ユーマ「この絵本......シスターさんから貰った絵本の話が真実で、ドラフニルが起源のお話だと俺は思っています。」
ユーマ「以前のドラフニルは、干ばつの起きるような水源不足の続く地域でした。」
ユーマ「俺が訪れた時のドラフニルは、水の音が幻想的な......水上街でしたが.......。」
ユーマ「そんな水不足で困るような村であり、山に囲まれていたはずの場所であった大昔のドラフニルとは違い、今のドラフニルは、水に囲まれて周りに山のない街で、中央には大きな教会が建っていています。」
ユーマ「.....ドラゴンは、全てを奪われてしまったんですね。」
シスターさんは、涙を流しながら静かに頷く。
ユーマ「そんな話を知っているシスターさん.........。」
ユーマ「俺は、なんでシスターさんがそれを知っているのかは、これを見てなんとなくわかりました。」
メニュー画面を開いたユーマは、称号を見てから応える。
ユーマ「シスターさんがあの絵本に出てくるドラゴンなんですよね?」
そう言うとシスターさんは、ゆっくりと首を横に振った。
神官「いいえ、ユーマさん.....私は.......。」
大きく深呼吸をしたシスターさんは、俺の方をじっと見つめて小さく頷いた。
神官「そうですね。さっきのは半分は正解で、半分は外れです。」
どういう事か分からずに聞き返す。
神官「難しい話になりますが.......。」
そう言うとシスターさんは、涙を拭いて語りだした。
「ユーマさんは、ドラゴンって何かをしっていますか?」
首を横に振った俺に、シスターさんは悲しそうな顔をしながらニコと笑いかけて頷いた。
「そうですよね......もう知っている人は、少ないんですよね。」
「大昔、この世界には翼の生えた種族がいました。」
「その種族は、天に住まう"創造主"の使いで、天使と呼ばれる種族でした。」
「ある時、天使の間で問題が起きてしまったのです。」
「平和だったこの"星"は、瞬く間に怨念で溢れ、地上は化け物の巣窟と化しました。」
「そんな世界でも、変わらず以前の姿で生きている物がいました。」
「それが後に"ドラゴン"と呼ばれる存在です。」
「ドラゴンには、他の生物にない"知恵"を持っていました。」
「ドラゴンには、他の生物にない"力"を持っていました。」
「知恵を持ち力を持っていたドラゴンでしたが、争いには参加しませんでした。」
「そのため、天と魔のどちらにも就くことのなかったドラゴンは、孤立してしまったのです。」
「過激になって行く争いに、どちらからも毛嫌いされたドラゴンは、争いに巻き込まれ、だんだんとその数を減らしていきました。」
「争いはやがて引き分けに終わり、やがてドラゴンにとっての本当の平和が訪れました。」
「安心したドラゴンは、自身の寝床を作り快適に日々を過ごしていたのですが、今度は創造主の作った種族に狙われるようになったのです。」
「名誉のため、強さのため、装備のため、お金のため、信仰のため......。」
「ありとあらゆる方法でドラゴンは狩られ、さらにその数を減らしていきました。」
「人と仲良くなろうと考えたドラゴンも多くいました。」
「始めの方は、うまくいき仲良くなり、共に共生する道もできました。」
「しかし、私のように結局は、どれもうまくいかなかったのです。」
「洗脳され、悪者にされ......。」
「ドラゴンは、"争いを好まない優しい種族"です。」
「なので、決して私のような種族ではありません。」
悲しそうに笑うシスターさんの瞳には、憎しみと悲しみが入り混じっているような気がした。
「私は、その絵本のように人の勇者に狩られました。」
「勇者様は、とてもいい人でした........。」
俯いたシスターさんは、涙を拭き俺の方に顔を上げて真剣な表情をする。
「私は、ドラゴンではありません。」
再度言ったその言葉の本当の意味は俺には分からないが、真剣さが伝わってくる。
「私は一度死に生まれ変わりました。」
「そして誓ったのです。」
「いつか.....絶対に"創造主"に一矢報いると.......。」
立ち上がったシスターさんの司祭である黒い服が消え、禍々しい装いに変わる。
「私は竜霊魂(ドラゴンレイス)です。」
「種族で言えば、霊人でしょうか......。」
フフと笑うシスターさんの顔は、悲しみと怨念で溢れている。
禍々しいオーラを放ち、
「ユーマさん、手伝っていただけませんか?」
シスターさんは、とても申し訳なさそうな顔をしながらも、俺の方に手を差し伸べる。
ユーマ「それは、"魔"の方に就けと言う意味ですよね?」
それを聞いてシスターさんは、頷いて応える。
「そうですね......。彼らの目的と私とでは、少し異なりますがそうなります。」
頷いたシスターさんの手を強引に引っ張り、迷わずに俺は応えた。
ユーマ「分かりました。」
そう言って頷く俺をシスターさんは、安堵したような少し悲しそうな曖昧な顔をして、席に座った。
ここからが、書架に飾るの"本当の始まり"である。
PlayerName:ユーマ
種族:人
職業:剣士
Level:23
Skill:Healing/王国騎士流体術(初級)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Double Slash(二連斬)/Horizon Slash(ホライゾンスラッシュ)/Chain Slash(チェインスラッシュ)/Battle Up(バトルアップ)/Magic Control(魔力操作)(初級)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)
称号:プレイヤー/竜の心呪 → 竜霊魂(ドラゴンレイス)の欠片/妖精の歓迎
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「シスターさんが、ドラゴンでお化けだったんですね。」
「一体何歳....ゲホゴホ失礼しました。」
「女性に年齢を聞いては、いけませんね。」
「それよりも.....ユーマさんが魔の方へ就いてしましました.....。」
「これで良かったのでしょうか?」
「そして、以前も話したように冒頭に語られる人物はこれで終了です。」
「計14人全員が揃いました。」
「さぁさぁ、本格的にキャラが揃ってきましたね。」
「私は楽しみですよ!これからの物語が.......。」
「それでは、本日もサクッと解説を終了いたします。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「ばいば~い。」
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