ー 40話

「あるところに1人の青年がいました。」

ベンチに座った女性は、手にハープを持ち不思議な音を奏で、1人の青年について語り始める。

「ある時、その青年は町娘に恋をし、二人は永遠の愛を誓いました。」

「しかし、町娘の父親は二人の仲に反対し、二人を引き裂こうとするのです。」

「父親は自分の娘を、貴族に嫁がせ自分の娘が今後、何不自由のない生活を強いられることのないように考えていました。」

「町娘は父親の要求を拒みました。私達は真に愛し合い、永遠の愛を誓った仲なのだと。」

「父親はそれに怒り、青年を町から追い出し、自分の娘を部屋に監禁しました。」

悲しいメロディーがハープから奏でられ、周りにいた人達も悲しい表情を浮かべる。

「青年は決心しました。このままでは、彼女を永遠に救い出すことができないと。」

「青年は町娘を連れ出し一緒に暮らそうと計画しました。」

「そのためには、青年には足りないものがあったのです。」

「それは、力でした。」

「青年は彼女に数年だけ待っているように頼みました。」

「いつか必ず、強くなり立派な男になって帰って来ると。」

「彼女は信じて待ち続けました。」

「冬が終わり、春が来て、夏が終わり、秋が来て、幾年の月日が流れても彼女は彼を待ち続けました。」

メロディーの調子が変わり、周りの人達も不安な表情を浮かべる。

「そんな娘を見ていた父親は、自分の行いが間違っていた事に気付き、彼を捜索しました。」

「彼に謝罪し、二人の結婚を認め、二人の幸せをこれからは、応援しようと.......。」

「それから、幾年の月日が流れて、ついに彼の居場所を発見しました。」

「父親は、すぐに馬車を用意し、娘と一緒に彼の元へ向かいました。」

「彼の元へたどり着いた時、娘は泣き崩れ、父親は彼に謝罪しました。」

「彼らの前にたっていたのは、青年の墓でした。」

「青年は、数年も前に亡くなっていたのです。」

そこでメロディーは終了し、観客は涙を流す。

「皆さん、私の詩曲を聞いてくれてありがとう。」

ハープを持っていた女性は立ち上がり、聞いてくれた皆に向かってお辞儀をする。

周りの人達は、涙を流しながら、彼女に拍手をしお礼を言う。

「うん、そうだね?悲しいね......。」

涙を流す人々を見ながら、女性はハープをベンチに置いて頷く。

「私も悲しい.....。だからね..........。」

「ハッピーエンドで終わらせたいの。」

その言葉を聞いて、周りの人達は涙を流し笑顔を浮かべて拍手をする。

「協力してくれるかな?」

ニコっと笑う女性を見て、周りの人達もつられて笑顔で応え、拍手の音も更に大きくなる。

「協力する!」

「どうすればいいんだ?」

「青年を救いたい!」

「町娘を救いたいわ。」

「ハッピーエンドにしたい。」

次々と女性に向けて応えられる声と拍手に、女性は手で静かにとジェスチャーをして場を沈める。

「そうよね?そうだよね。」

「皆、"ハッピーエンド"で終わりたいよね。」

そう言うと彼女は、ハープを手に持ち、先ほどよりも爽快な音を奏でだす。

「皆さん、聞いて下さい。」

「"幸せな結婚"」

聞いていた人たちは、虚ろな目に変わり、何処かへ向かって走り出す。

ポロロ♪ ロロロ♪ ロロ♪ テレン♪ テレン♪ ポロロン♪~


バリン(窓が割れる音)ドン!(ドアが壊れる音)

男性「な、なんだね!君たちは!?」

店のドアをぶち破り押し寄せてくる人達は、そのまま男性を押し潰す。

押し潰された男性は、抵抗も出来ぬまま、身動きを取れずにそのまま何処かへ連れ去られる。

男性「離せ!君達、自分達が何をしているのか分かっているのか!」

男性「私は、ダズウェル商会のって辞めろ!」

男性は、もみくちゃにされながらも広場の方まで運ばれ、そのまま押しだされて、そこで倒れ込む。

男性「いたたた.....君達!私にこんな事をしてただじゃおかないぞ!」

そう言って全員に向かって指を指すが、無言の集団に押し出されて、さらに広場の真ん中に連れて行かれる。

男性「聞いているのか!?ちょ、辞めろ!痛い!」

男性は手を踏まれ、踏まれた手を摩っていると、ベンチの所に座っている女性と目が合う。

男性「き、君のせいか?」

あたふたしながらも、ハープを持った女性を睨んで指差し後退りするも、後ろには大勢の人がいて逃げ出せない。

男性「な、なんなんだ君たちは!」

周りを見渡し、虚ろな目で見てくる民衆に恐怖を感じて縮こまる。


ポロロ....ロロ......ポロロン~

悲しい感じの曲調に変わり、周りの人達の目からは、涙が溢れだす。

「さぁ、元凶となる人物が私の目の前にやってきました。」

その言葉を聞いた人々は、拍手をし笑顔を見せる。

男性「な、なんなんだ君たちは!」

あわてふためくその人物を他所に、女性は語り始める。

「あるところに1人の青年がいました。」

「ある時、その青年は町娘に恋をし、二人は永遠の愛を誓いました。」

「町娘の父親は二人の仲に感動し、二人を応援したのです。」

男性「な、なんの話だ!」

男性「どけ!どくんだ。」

男性は、周りの人達を押しのけて広場から出ようとするも、周りの人達はそれを許さずに男性を押し返す。

「父親は自分の娘が、貴族に嫁ぐ事が娘の何よりも幸せな事なのだと信じていました。」

「しかし、町娘の"私達は真に愛し合い、永遠の愛を誓った仲なのだと。"と言う言葉に、父親は娘の幸せは私の思っている事ではないと感じ、彼らの結婚を心から祝福してあげるのです。」

男性は、うずくまり頭を押さえ叫び出す。

男性「や、辞めてくれ!」

男性「うぁぁぁぁぁぁ、痛い....痛い。なんなんだお前らわ。」

「二人の結婚は認められ、幸せに暮らしましたとさ。」

最後は悲しい感じの曲調から、綺麗で爽快な曲調で終わり、周りの人々は笑顔を見せて涙を流す。

「さぁ、皆さん。"バッドエンド"は御終いです。」

「これからの"物語"は、"ハッピーエンド"を綴りましょう。」

ハープを持った女性は、立ち上がり再びお辞儀をする。

頭を押さえてうずくまっていた男性は、女性の足元で目から血の涙を流し泡を吹いて倒れている。

「さぁさぁ、今日の詩曲は、これで終わりです。」

「また私の歌を聞いて下さいね。」

と言いその場から去って行った。


「ん?.....俺たちはここで何を.....。」

「それにしてもさっきは、いい曲を聞けたな!」

「そうねぇ。また聞きたいわ。」

「きゃ、何よこのNPC。道端で倒れてるわよ。」

「ほっとけって、どうせ酒飲んで倒れてるNPCだろ?」

「ちょっとおっさん....って、こいつ泡吹いて倒れてやがる。」

「お~い、誰か医者でも警備兵でも呼んでこい!」

「え~、ただのNPCだろ?」

「確かにそれもそうだな。そのうち起きるだろ。」

「そうね。NPCだもの.....。」


「今日も最高に、幸せな歌をお届けできたわ。」

嬉しそうに笑う女性は、ハープを片手にスキップをしながら進んで行く。

「フフ、良かったわね。」

目元を隠した女性が路地裏から出て来て、ハープを持った女性を見て嬉しそうに笑う。

「えぇ、今日も幸せをお届けしたの。」

「どうなお話なの?」

「そうねぇ、青年と少女の恋物語。」

「恋......いいわねぇ。」

「あなたは、恋をした事があるの?」

ハープを持った女性が、目元を隠した女性の顔を覗き込んで、どうなの?と聞く。

「そうね.....私は、恋より遊びの方かな~。」

それを聞いて溜め息を付いた女性は、

「あっそ。」

と言ってそっぽを向く。

「そんな、怒らないで?私達は、一心同体でしょ?」

「フン、あなたなんて知らないわ。私は、ハッピーエンドを探したいの。」

「あなたといたら......。バッドエンドになりそう。」

そう言って目元を隠した女性の方に振り返り、あっかんべーをして走って行く。

「もう.....。私がハッピーじゃないって言い方しないでよ。」

そう言ってハープを持った女性を追いかけて行く。


シュイン

ユーマ「あ、もう皆さんお揃いですか?」

昼頃にログインしたユーマは、荷馬車の中で雑談をしている人たちに声を掛ける。

ダリル「おう、ユーマ遅かったな。」

ユーマ「すみません。ダリルさん。」

ブラン「ちょっと、ダリル!ユーマ君は時間に遅れてないでしょ。」

クロウ「そうだぞ、ダリル。ユーマは勉強があるから少し遅くなるって言ってたじゃないか。」

ダリル「そ、そうだったな。わりぃなユーマ。」

と言いながら、頭を掻きながら謝る。

ユーマ「いえ、大丈夫です。それじゃぁ、出発しましょう。」

ダリル「おう。んじゃぁ忘れ物とかないな?」

ブラン「大丈夫よ。」

クロウ「OK。」

ダリル「そんじゃ、この後ボスと出会うと思うが気を引き締めて行くぞ。」

ダリル「最終確認だが、山賊や盗賊だった場合は殲滅だ。モンスターでも同じく殲滅。それでいいな?」

と言って全員に確認を取る。

ダリル「そんじゃぁ、出発。」

NPC「冒険者組合の方々、準備が出来たようなので行きますよ。」

NPC「そんじゃぁ!はいよ~。」

と言って馬を鞭で叩いて出発する。

暫くして森付近を走行していると、森の奥からガラの悪そうな輩が数十人出てくる。

ダリル「どうやら外れだ。」

ブラン「そうみたいね.....。」

クロウ「ッチ。」

ユーマ「山賊ですか?」

NPC「お、お前たち何者だ!」

Monster:ダバルゾーキンズ(山賊)

「ひゃっひゃ、こりゃ商会の馬車か?」

「そのようだぜ。」

「んじゃ、あるだけ全部持って行かせてもらおうかぁ?」

NPC「な、さ、山賊だ!」

NPC「冒険者の方々、頼みます。」

そう言ってローウェルさんは、皆の後ろに隠れる。

ダリル「おう、任された!」

荷馬車から勢いよく飛び出したダリルが山賊達を攻撃する。

ダリル「ダブルスラッシュ!」

ダリル「ブラン!そっちの茂みに隠れたやつ!」

ブラン「分かってるわよ!」

ブラン「エッジショット!」

「ぐあ。」

「お頭!あいつらやべぇです!」

「んだてめぇら!痛い目に会いたくなければ、どっかいけ!」

クロウ「ユーマ、こいつらの言う事は、無視して俺たちは後ろのやつを攻撃するぞ。」

ユーマ「はい!クロウさん」

続いて俺とクロウが回り込んだ山賊の相手をする。

ダリル「ドラゴンハウル!」

「てめぇらしゃきっとしろ!そっちの竜人狙え!」

「おう!」

ブラン「ダブルショット!」

「ぎゃぁ!」

「パラライズ!」

ブラン「ッキャ!」

ブラン「ちょっと、この山賊魔法使いいるわよ!」

ダリル「なんだと、ブラン!後何秒だ?」

ブラン「3秒!」

ダリル「クロウそっち行ってくれ!」

クロウ「了解、ユーマはローウェルの保護。」

ユーマ「了解!ホライゾンスラッシュ。」

NPC「あ、ありがとう。ユーマ君。」

ユーマ「いえ、ローウェルさんはそっちで隠れていてください。」

NPC「了解したぞ!」

NPC「ほら、行くぞ!私の護衛!」

護衛NPC「ハ!」

ユーマ「そっちは大丈夫ですか?」

クロウ「おう!」

ダリル「大丈夫だ!ユーマ!」

そうこうしていると.......。

アーク「ッチ......。」

舌打ちをしながらアークがログインする。

「お、お頭!一人増えました。」

「なんだぁてめぇ!どこから沸いて出てきやがった!」

アーク「あーあ、二日立ってまだ、クエスト終わってなかったのかよ!」

アーク「インパクトパラライズン!」

ダリル「な!おまえ!初日から来ないと思ったらやっぱり楽しようって魂胆だったのか!」

アーク「ッハ、てめぇらがさっさとこんなクエストなんてクリアしてればよぉ、楽して金もアイテムも手に入ったのになぁ!」

アーク「ドラゴンハート!」

アーク「パワーライズ!」

そう言ってアークは、山賊を次々に討伐する。

ダリル「おまえ.....。」

ブラン「ひ、卑怯よ!今更来たかと思えば、手柄の横取りね!」

アーク「ッハ!てめぇらが不甲斐ないからだろ!」

アーク「そんじゃ!これでもやるよ!インパクトショット!」

そう言ってアークは山賊をスキルで押してクロウの方へ送る。

クロウ「うお!」

アークに押された山賊がクロウの方へ飛んでいき、クロウが押しつぶされる。

クロウ「な、何をする!」

アーク「だっせぇなぁ。だっせぇなぁ!」

ダリル「てめぇ!いい加減にしろよ!」

怒ったダリルがアークに掴みかかろうとするが、

アーク「ッハ、んじゃてめぇはこれでも喰らっとけや!」

アーク「フレイムインパクト!」

そう言ってダリルを攻撃する。

ダリル「ッグ、おい!本格的に敵対するつもりか!」

ブラン「ちょっと!よくも私の仲間に!」

ブラン「エッジショット!」

アーク「ッハ、効かねぇな!ダークフレア!」

ブラン「ッキャ!」

ブランも攻撃されて、火傷をする。

Debuff:火傷(軽傷+継続)。

ユーマ「そっち、どうしたんですか?大丈夫ですか?」

アーク「ッチ、あの一番レベルが低い雑魚か。」

そう言って、ユーマの方へ行く。

ブラン「ユーマ君!敵がそっちにいったわ!」

ユーマ「え?あ!アークさん!助けに来てくれたんですね。」

アーク「おう!ユーマ、わりぃなぁ。あの後、忙しくてよぉ。」

アーク「なかなか、ゲーム出来なかったんだわ!」

と言って頭を掻きながらニコッとして近寄ってくる。

ダリル「ユーマ!攻撃しろ!敵はアークだ!」

ユーマ「え?」

アーク「わりぃな、ユーマ。そういうこった。」

アーク「ドラゴンブースト。」

そう言ってアークは、ユーマをぶん殴り吹っ飛ばす。

ユーマ「グハ......アークさん。」

Debuff:内出血、骨折。

アーク「ッハ、よえぇなぁ。」

ダリル「てめぇ!よくもユーマを!」

アーク「バカが!」

アーク「インパクトショック!」

ダリル「グアァ......。」

ふぅ....とため息を付いたアークは、岩の上に座って欠伸をする。

クロウ「何がしたいんだ!アーク.....。」

アーク「あ?楽して稼ぎたい、んでてめぇらがあまりにちんたらしてて遅いから呆れて腹が立って、その憂さ晴らしってとこかな。」

と言い嘲笑う。

ダリル「てめぇ......。」

ブラン「ライトニングショット!」

アーク「あーあー、てめぇマジでさっきからチクチクチクチクよぉ!」

アーク「死んどけや!」

ドン!(衝撃音)

ブラン「......ごめん。みんな......。」

[ブランは、死亡しました。]

アーク「あーあ、てめぇらが不甲斐ないからお仲間さん一人、死んじまったなぁ。」

「なんだなんだ仲間割れか?」

アーク「ア"?仲間?んなもんじゃねぇよ。」

「だったらこっちこいよ。荷馬車の物品全部ぶんどってパーティーでもやろうや?」

アーク「あー.....。」

アーク「それもありだな!」

と言ってアークが山賊の人と話しだす。

ユーマ「今のうちに......。」

NPC「でも、あの人たちは?」

ユーマ「あの人達が時間を稼ぐそうです。」

NPC「........。分かった急ごう。」

NPC「はいよ~!」

そう言ってユーマは荷馬車に乗り込み、ローウェルさんは急いで荷馬車を動かす。

アーク「ア"?んで、荷馬車が出発するんだよ。」

「お頭!あいつら逃げてます!」

「てめぇら止めろ!」

ダリル「そうは、させんぞ!」

クロウ「おう!ユーマとローウェルが逃げ切れるまで、俺たちが時間を稼ぐ!」

アーク「てめぇら!俺を何処までイラつかせるんだゴラァ!」

[ダリルは、死亡しました。]

[クロウは、死亡しました。]


急いで出発した馬車は数分後に、最終目的地点であるヴィギルアの街へ到着する。

到着すると、ローウェルさんは急いで警備兵に連絡し、森の中に山賊がいて護衛してくださっていた冒険者の方々がまだ戦っている旨を伝える。

それを聞いた警備の人達は、急いで森に行くも......。

山賊の姿は無く、プレイヤーの姿はどこにもなかったと言う。

と、そんな話をしていると、後ろからおーいと言ってダリルさんとクロウさんとブランさんがリスポーンをしてやってくる。

ダリル「いやぁ、無事間に合ったみたいだな。」

ユーマ「そ、そうですけど......3人は......。」

ブラン「気にしないでね。アークってやつのせいなんだから!」

ユーマ「そ、そうですけど.....。」

落ち込んでいると、ローウェルさんが話しかけてくる。

NPC「ユーマ君.....君の仲間は.......。」

申し訳なさそうにしているローウェルさんの横には、先ほどまで一緒にいた3人が立っている

ユーマ「いや、そのローウェルさん皆さんこちらに.....。」

NPC「ん......そうか辛いよなユーマ君。」

そう言ってローウェルさんは、肩をポンと叩いてくれる。

ブラン「あー、ユーマ君.....。申し訳ないのだけど、一度死んだプレイヤーは、彼らNPCには、死んだ判定として.....その~.....私達は別の人間として認識されるみたいなの。」

と言ってアハハと言いながら、申し訳なさそうな表情をする。

ダリル「そういうこった。だからあんまそう言う話はするな。馬鹿なやつか精神的にショックを受けておかしくなったやつかと思われる。」

ユーマ「そ、それじゃぁ報酬の方は?」

ダリル「もちろんないな。俺らは死亡したから失敗判定だ。」

ユーマ「そ、そんな!」

クロウ「そういうこった。まぁ申し訳ないって思うなら何かこの後奢ってくれ。」

ユーマ「ぜ、ぜひ!」

ユーマ「というか報酬も分けましょう!」

ブラン「それは、ダメよ。」

ダリル「そうだぞ、ユーマ!」

クロウ「そうだ、そういうのはダメだぞユーマ。」

そう言って3人は、報酬の受け取りを拒否した。


NPC「ユーマ君......彼らは.....勇敢で素敵な方々だったな。」

NPC「彼らのおかげで.......私達は生きていられるんだ。」

そう言うとローウェルさんは、泣きながら空を見上げるのだが、生きていることを知っている俺は、どうしていいのか分からず困惑した顔でローウェルさんを見る。

ユーマ「そ、そうですね.......。」

NPC「そうだ....もし彼らの家族.....の居場所を知っていたら教えてくれ、彼らの家族には謝罪して......それから、何の慰めにもならないかも知れないが、私から報酬を多く支払おう。」

ユーマ「あー.....場所は、知ってるんですけど....その.....。」

言うのに困っていると、何かを察したローウェルさんは、

NPC「いいんだユーマ君、辛いよな。こんなおじさんに教えるのもあれだもんな。」

そう言うとローウェルさんは、大量の金貨とアイテムを渡して、

NPC「これをあの方々の家族に渡してくれ......ユーマ君も今回はありがとう。」

そう言ってローウェルさんは、仕事があるからと言って去って行った。

ユーマ「.....どうしよう。何か変な感じに誤解されたし、貰うはずだった報酬よりも多いし.....。」

ユーマ「ダリルさんやクロウさんやブランさんは、生きてるんだけどなぁ。」

そう言いながら、クエストを達成した事を冒険者組合で報告する。

冒険者組合のテーブル席には、あの3人がユーマを待っていた。

ダリル「どうだった?ユーマ。」

クロウ「こういう護衛クエストは、初だったんだろ?」

ブラン「何か奢ってもらおうかしら!」

ユーマ「あの....その....報酬なんですけど。」

そう言ってテーブルの上に先ほど貰った報酬を置く。

ダリル「おい!これなんだよ。」

ブラン「こんなにもらったの?」

クロウ「これ.....総額いくらだよ。」

あまりの報酬の多さに3人は、びっくりしてテーブルの上の金貨とアイテムを見る。

ユーマ「そのぉ....亡くなった3人の家族にこれを渡してほしいって言われて......。」

ダリル「今までそんなことあったか?」

ブラン「そんなのなかったわよ。それにこんな風に貰ったって言うのも聞いたことないし。」

クロウ「それなら、俺は遠慮なく貰おうかな。」

ブラン「そ、そうね.....。」

そう言って3人は報酬を受け取ったがなんだかスッキリしない表情をしている。

ダリル「なんか......嬉しくねぇな。」

ブラン「そういうこと言わないの!」

クロウ「まぁ....俺もそう思う。」

そう言ってしょんぼりしながらも、酒でも飲んで忘れるかと言い、いろんなものを注文する。

ひとしきり騒いで話してフレンド登録をして、俺たちは解散した。

なんだかんだいい感じにこのクエストは終わったし、楽しかったが初めてアークさんのようなプレイヤーキルをする人間に出会ったり、NPCと戦ったりで釈然としない気持ちが心の何処かで残っている。

ユーマ「ふぅ.....楽しかったけど、疲れたな。」

そう言って教会に行くのをまた今度にして、ユーマはログアウトした。


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:21 → 23

Skill:Healing/王国騎士流体術(初級)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Double Slash(二連斬)/Horizon Slash(ホライゾンスラッシュ)/Chain Slash(チェインスラッシュ)/Battle Up(バトルアップ)/Magic Control(魔力操作)(初級)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)

称号:プレイヤー/竜の心呪/妖精の歓迎


PlayerName:ダリル

種族:竜人

職業:剣士

Level:29 → 28

Skill:Dragon Heart (竜の心臓)/Dragon Howling (竜の咆哮)

称号:不明

(所持アイテム一部損失/ステータスダウン中)


PlayerName:ブラン

種族:森人

職業:弓士

Level:32 → 32

Skill:.../Double Shot(ダブルショット)/Lightning Shot(ライトニングショット)/Edge Shot(エッジショット)

称号:不明

(所持アイテム一部損失/ステータスダウン中)


PlayerName:クロウ

種族:獣人

職業:格闘家

Level:32 → 31

Skill:.../昇上拳竜(初段)/鋼拳(中段)

称号:不明

(所持アイテム一部損失/ステータスダウン中)


[PlayerKiller]

PlayerName:アーク

種族:竜人

職業:不明

Level:不明

Skill:不明

称号:不明

(PlayerKillにより、以前よりもレベルUP/情報不明)


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「今回のクエストは、悲惨な結果になってしまいましたね。」

「ただ、すぐに合流出来たし、皆で報酬も貰えて良かったです。」

「アークさんがこんな暴挙に出るだなんて......。」

「まぁこれもゲームの楽しみ方の一つです。」

「さぁ、次回辺りシスターさんとの再会です。」

「懐かしいですね.....。」

「あれ?いつの話でしたっけ?」

「そうそう、24話.....え?シスターさんと別れたのってもうそんなに前なんですね。」

「早いですねぇ......。さぁさぁ12月25日というなんだか良く分からない大祭まで後少しってところですかね。」

「ユーマさんは、間に合うのでしょうか.....。」

「え?何が間に合うかって?」

「準備ですよ、準備。」

「着々と大祭に向けた準備は、いろいろな形で整いつつあります。」

「次々と語られる冒頭の人物も残すところ"後1人"です。」

「それでは、本日もサクッと解説を終了いたします。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「ばいば~い。」

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