ー 37話
「クッチャ、クッチャ......。」
「クチャ....クチャ。」
「おい、クチャクチャしながら食うなって、汚いだろ?」
「んあ?」
先ほどからクチャクチャと音を立てながら食べていた人物が、食事の手を止めて注意した俺の方をじっと見てくる。
「な、なんだよ?」
そう言うと、そいつは下を向いてまた食事を始めだした。
「クッチャ、クチャ......。」
「だから、汚いって......。」
そう言って何度も注意するがそいつは、全く聞く耳を持たない。
「..........、はぁ。」
半ば諦めて溜め息をついていると、
「おまえ.....、料理、美味いな。」
不意に言われた褒め言葉に少し嬉しくなりそいつを見るが、そいつの汚い食べ方を見て喜びが失せる。
「あ、ありがとよ、ただもうちょっと綺麗に食ってくれよ。そしたら俺も素直に喜べるんだがな......。」
そう言うとそいつは、勢いよく立ち上がって辺りを見渡す。
「なぁ、おまえ。」
「な、なんだよ。」
「客、来ないのか?」
痛いところを突かれて、溜め息を付く。
「はぁ、まぁそうなんだよ。ここは、立地が最悪だったらしくてね。」
そうやって説明していると、そいつが俺のいるカウンターの方にやって来る。
「お、おい。こっちは、従業員以外は立ち入り禁止だぞ。」
「ちょ、聞いてるのか?」
聞く耳を全く持たないそいつはこっちの方にやってくると、あり得ないほど大きな口を開け.......。
気が付くとそいつは、いなくなっていた。
「な、なんだったんだ?」
辺りを見回すといつの間にか店内は、暗くなっており、外は真っ暗になっていた。
「いつの間に........。」
急いで店の外に出ると、周りが俺の方を見て悲鳴を上げる。
「な、なんだよ?」
「ちょ、ちょっと.......。」
「だ、誰か!」
「お、おい....それ.....だ....大丈夫なのかよ?」
「はぁ?何言ってんだよ......。」
周りが俺の方を見ては、悲鳴を上げるので不安になった俺は、店の中に戻ってドアを閉める。
ふと視界に入った窓越しに反射して映った自分の姿が目に入る。
「は?」
バタン(倒れる音)
目の前に映る地面に赤い何かが染みわたる。寒いのか暑いのか分からない自分の体温に恐怖さえ感じる。
「これっで.....ゲームだよな?」
「メニ"ュー.......。」
「メ...ニ......。」
「目?」
[コックフール^@^は、死亡しました。]
気が付くと俺は、ヴィギルアの街にいた。
「な、なんで俺?こんなところに......。」
「というか、何してたんだっけ?」
「って、もうこんな時間じゃねぇか!」
「明日も仕事だってのによぉ。ログアウトしねぇと。」
シュイン
[コックフール^@^がログアウトしました。]
「美味しかったですか?」
西洋風な雰囲気とは、相反した和風な傘を持っている人物がプレイヤーに声を掛ける。
「美味かった。」
「そうですか、そうですか。それは、ようござんした。」
プレイヤーと一緒に歩きながら、笑顔を見せて頷く。
「でも、最後のデザートは、不味かった。」
「それは.......とても残念でしたね。」
持っている傘をくるっと回転させ、悲しそうな顔が傘の隙間からチラっと見える。
「うん、とても美味い料理、作れるやつだったから、そいつも美味いと思ったのに。」
「フフ、次に期待ですね。」
再度くるっと傘を回転させ、その隙間から見えた唇の端からは、真っ赤な何かが付いている。
「そうだ!次は、お前も喰え!」
「わかりんした。次は、ご一緒させてもらいんすね。」
くるくる回転している傘からは、どこか嬉しそうというのが見て取れる。
ユーマ「あのぉ、商人護衛のクエストってここで合ってますかね?」
NPC「そうだぞ、私がこの商会を率いる。ブラズマー・ローウェルだ!」
NPC「ローウェルでも、プラズマ―でも好きに呼んでくれ!」
ユーマ「よろしくお願いします。ローウェルさん。」
NPC「あぁ、よろしく頼むよ。少年。」
NPC「他の皆なら、そこの広場で待ってるから会ってきなさい。」
と言って広場の方を指差すと3人のプレイヤーが雑談していた。
ユーマ「す、すみません。あなた達がこのクエストの他のプレイヤーの方ですか?」
ダリル「あぁ!俺たちもこの商会のクエストを受けたダリルだ。」
ダリル「んで、そっちがクロウで、こっちがブラン。」
クロウ「よろしく。」
ブラン「よろしくね!」
ダリル「んで、後一人来るらしいんだけど......。」
ユーマ「あ、あの人達ですかね?」
ダリル「おーい、そこの人!ローウェルのクエストならココだぞ!」
と言って手を振る。
アーク「おぉ、ここだったか!」
アーク「俺は、アークだ。よろしくな!」
ダリル「そんじゃぁ、皆揃ったようだな。」
ブラン「そうね。」
クロウ「んじゃぁ、出発しようぜ。」
そう言って皆でローウェルの荷馬車に乗り込もうとするのだが、
ダリル「あー、ちょっと待ってくれ。」
ブラン「どうしたのよ?」
アーク「どうしたんだ?]
ダリル「俺と、ブランと、クロウは、もともと知り合いだし、今は同じパーティーだから、このクエストでどうやるかとか、なんとなく察せられるし、戦闘も連携が取れる。」
ダリル「ただ、今回は、俺以外にも野良の人....あー、他のプレイヤーもいるわけだろ?」
ダリル「まずは、自己紹介からしようぜ!」
ブラン「そ、それもそうね。」
アーク「それじゃぁ、とりあえず馬車の中で話すのでもいいか?」
ダリル「それでいいだろ?」
ユーマ「あ、はい。そうしましょう。」
そう言って、馬車の中で自己紹介が始まった。
ダリル「んじゃ、一通り自分の自己紹介とか終わった事だし。」
ダリル「作戦会議というか、今後の事を話すか。」
ユーマ「今後の事ですか?」
ダリル「あー、ユーマさん....ユーマでいいか?」
ユーマ「はい。」
ダリル「ユーマは、このクエストは初めてで今回は、街の移動を安全に行いたいからこのクエストに参加したんだよな?」
ユーマ「はい、そんな感じです。」
ダリル「このクエストが、最後にNPCと戦わせられるのを知ってるよな?」
ユーマ「山賊でしたよね?」
ダリル「そうだ。もちろんモンスターがボスってのが一番だが、NPCとなると倒したくないってプレイヤーが一定数存在するんだ。」
ダリル「だから、倒すか、逮捕するか、降参して終わらせるか。最初に決めておこうって事だ。」
ユーマ「俺は.....出来る限り倒したくないですね。」
アーク「俺は、倒すに賛成だな。」
ダリル「俺は、どっちかというと逮捕がいいんだが.....こう人数が多い場合だと、倒すに賛成だよな。」
ブラン「私も倒すに賛成ね。」
クロウ「俺は、逮捕だな。貰える報酬も増えるし。」
ダリル「ってなことで、倒すが3で逮捕が2なんだが....倒すでもいいか?」
ユーマ「分かりました。」
ダリル「まぁ、そんなに気落ちするな。出会わない可能性だってある。」
ブラン「そうよ?それにね。倒さなかった場合、他の善良なNPCが被害に会う可能性だってあるんだから.....。」
クロウ「まぁ.....俺は、リーダーに従う。」
アーク「ゲームだとはいえ、後味悪いかも知れんが.....すまんな。俺は俺の身の安全が最優先なんだ。」
ユーマ「いえ、大丈夫です。倒す事にしましょう。」
そう言って、作戦会議が終わって今後の事も話し合った後、雑談が始まった。
普段しているゲームや、見ているアニメの話、学生時代どうだったか等いろんな話が聞けた。
NPCであるローウェルさんも、途中から会話に混ざってこの世界の話や、子供時代の話などを沢山してくれ、実はもうすぐ娘が産まれ今度、家に帰るのが楽しみだという話をしていた。
NPCとはいえ、しっかりした設定がある事にも感心するが、会話をしているときの表情の変化や会話の抑揚もしっかりしていて普通の人間にさえ思える。むしろプレイヤーよりも人間味があると言えるだろう。
そんな感じで道中は、楽しい会話をしながら休憩地点にたどり着き、夜も遅いこともあって今日は、全員がログアウトして明日からまた出発する事に決まった。
PlayerName:ユーマ
種族:人
職業:剣士
Level:19
Skill:Healing/王国騎士流体術(初級)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Double Slash(二連斬)/Magic Control(魔力操作)(初級)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)
称号:プレイヤー/竜の心呪/妖精の歓迎
PlayerName:コックフール^@^
種族:獣人
職業:料理人
Level:不明
Skill:不明
称号:プレイヤー
PlayerName:ダリル
種族:竜人
職業:剣士
Level:28
Skill:不明
称号:不明
PlayerName:ブラン
種族:森人
職業:弓士
Level:32
Skill:不明
称号:不明
PlayerName:クロウ
種族:獣人
職業:格闘家
Level:31
Skill:不明
称号:不明
PlayerName:アーク
種族:竜人
職業:鈍器使い
Level:27
Skill:不明
称号:不明
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「どうやらユーマさんは、楽しくゲームが出来ているようですね。」
「え?また新しい人物が出てきた?」
「そうですね。ただどうやら、前回、前々回の人物たちと少し関係があるようです。」
「直接的な関係ではなく、間接的にですけどね。」
「それにしても、今回の人物は、少し恐ろしかったですね......。」
「書架に飾るはいったい何処へ向かっているのでしょうか?」
「今日は、サクッと解説をお休みします。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「ばいば~い。」
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