ー 36話

「アァ...欲しい!欲しい!欲しい!ぜーったーい欲しいのー!」

と、駄々を捏ねて叫ぶプレイヤー、その光景に他のプレイヤー達も足を止めて彼女の方を見る。

「どうしたんだ?」

「なんの騒ぎだ?」

「なんかあのお嬢さんが、店主さんの売っている物をタダで欲しいって言ってるらしいぞ。」

「そんな無茶苦茶な。」

「我儘すぎるだろ.......。」

とざわざわとしながら集まってくるプレイヤー達、そんなプレイヤー達を見ながら商売上がったりだと溜め息を付く店主は、

店主「あんねぇ、お嬢ちゃん、お金を払わないとねぇ、商品は買えないんだよ?」

店主「分かる?お・か・ね?」

そうやって呆れたように、溜め息を付いてお嬢さんに説明するのだが、

「やーだ!欲しいの!」

と言っていう事を聞かない。

「まぁまぁ、店主さんこの子も小さいんだし。この辺でね、譲ってやったらどうですか?」

と変な事を言うプレイヤーまで現れだした。

店主「アァ"?馬鹿な事言ってんじゃねぇぞ。」

店主「店の物をタダでそこら辺のガキにやってちゃぁ商売になんねぇじゃねぇかよ!」

と、そのプレイヤーに怒りながら言う。

「どーして?私が欲しいって言ってるでしょ!」

と喚くお嬢ちゃんに店主は、

店主「だぁからぁ"、あんなぁ嬢ちゃん、欲しい欲しいってなんでもホイホイ上げてちゃぁ商売になんねぇの!」

店主「分かるか?商売、おじちゃんはなぁ?これで食ってんの!」

すると周りのプレイヤーが、店主に向けてそのお嬢ちゃんを庇いだす。

「まぁまぁ、ゲームなんだしそんなに強く言わなくたっていいじゃねぇか。」

「譲ってやれって。安いんだし可哀そうだろ?」

「この子にくらい良いじゃない。」

と言い出し、さっきとは一変したその周りの様子と圧に店主もだんだんと自分が間違っているのか?と思いだす。

店主「じゃ、じゃぁてめぇらがその嬢ちゃんに買ってやれよ!」

と言うと、

「あぁ、俺が買ってやるよ!」

「私が買うわ!」

「いいや、俺が買うね!」

と訳の分からない争いをし、殴り合いの喧嘩が始まった。

慌てた店主は、彼らのその異様な光景を見て止めに入る。

店主「ちょ、ちょっと待て!待ってて!なんでそんなにその嬢ちゃんのために必死になるんだよ。」

と店主が困惑しながら聞くと、

「だって可哀そうだろ?」

「欲しいって言ってんじゃないか。」

「あんたがタダで譲らないからだろ?」

と訳の分からない事を言いだし更に困惑する。

店主「お、おまら知り合いとかでもない赤の他人なんだよな?」

「そうよ!」

「そうだったらなんだよ!」

「だったらどうしたよ?」

と言い、邪魔をするなと店主を追い払う。

店主「こ、こんなんじゃ、商売になんねぇ!おめぇら全員どっかいけ!散れ!」

と言いながらシッシと店主はプレイヤー達を追い払う。

「私が買うって言ってるんだから買わせなさいよ!」

「俺が買うんだからどけって!」

「どけよ!俺が買うんだから!」

追い払おうとすればするほど、過激になっていくプレイヤー達に根負けした店主は、店主「分かった。わぁぁぁったって!もう、こんな商品くれてやる!だから散れ!」

と言ってプレイヤー達を押しのけ我儘を言っていた嬢ちゃんにアクセサリーを渡す。

店主「てめぇら二度と来るな!」

そう言って店主は、溜め息を付いて店仕舞いを始める。

店主「あれは、何だったんだ....。(小声)」

「ねぇ?」

店主「ひぃ!」

不意に後ろからあの嬢ちゃんの声が聞こえて悲鳴を上げる。

店主「な、なんだてめぇ!商品やったんだから!どっかいけって言っただろ!」

「ありがとう!おじちゃん!」

予想外の笑顔と言葉に困惑し、反射的に言葉を返してしまう。

店主「お、おう!また来いよ。」

「うん、また来るね。」

と言って去って行くプレイヤー。

店主「ふぅ、あんだったんだ?あれは......。」

と落ち着いて息を吸って先ほど自分が変な事を言った事を思い出す。

店主「ん?また来いよって言ったか?俺......。」

店主は、自分が先ほど酷い目に会ったばかりのその元凶にまた来いと言ってしまった事を思い出して、急いでそのお嬢ちゃんを追いかけようと、店仕舞いしていた露店をそのまま置いて勢いよく飛び出し辺りを見渡す。

店主「ッチ、いねぇ。どうしてあんなことを言っちまったんだ?」

普段でも言わない事を自分が言った事にも驚いたし、いつもなら絶対に無料でやったりしない自分の行動にも驚いた。

店主「寒気がする......。」

そう言って店仕舞いを再開する。そうすると後ろから馴染みある声が聞こえてくる。

「今日は、もう店仕舞いかい?」

店主「おぉ、今日は最悪でよ。やる気が失せちまった。」

「なんでぇ、なんかあったんかい?」

店主「あぁ、ちょい待ってな。もう店仕舞い終わっから、飲み行こうぜ。」

「ええでぇ!行こ行こ。」

そう言って、店主とそのプレイヤーは、今日あった不愉快な出来事を話すために酒場を経営している冒険者組合に向かった。


「ふんふふん♪ふんふふん♪」

「何かいいことでもあったのかい?」

「さっきね!優しいおじさんがアクセサリーくれたの!」

「"くれた"........ねぇ?」

「いいでしょ!」

「それは、くれたじゃなくて奪ったじゃないのかい?」

「違うよ?また来てねって言ってくれたもん!」

「そうかぁ、あの店主様もご愁傷様だね。」

「どうして?」

「いいやぁ、何でもないさ。」

「そのうち、"心臓"でもくれって言うんじゃないかい?」

「いらないよそんなばっちぃの。」

「あぁ、言葉をそのまま捉えちゃったかぁ.....。」

「えっとねぇ、その人の命より大切な物もくれって言うんじゃないだろうね?って意味だよ。」

「え~、でもそれが私の欲しい物だったら私のだよ?」

やれやれと言う風に頭に手を当ててどうしたものか....と言う。

「君は少し、自重をしたほうがいいんじゃぁないかい?」

「我慢しろって言ってるの?」

「そうとも言うね。」

「.........。君がくれたものだよ?」

「そうだねぇ。」

「じゃぁ、私のモノだから......。」

「...................。」

ふぅ、と言って息を吐き、少女の頭を撫でる。

「好きにするといいさ。」


シュイン

ユーマ「久しぶりだなぁ。」

久しぶりにゲームにログインしたユーマは、自分が何をしていて次に何をしようとしていたのかを思い出すために考える。

ユーマ「え~っと......インベントリー。」

二つの絵本を取り出し、ページをめくるが特に変わった様子もない。それに以前感じた嫌な感じ(?)というか息苦しさも感じない。

ユーマ「シスターさんに会いに行くかぁ。」

そう言ってユーマは、3か月ぶりくらいにヴィルギアに戻るために準備を始める。

ユーマ「ゲームをやるのが久しぶりだから戦闘は、なるべく避けたいんだよな。」

ユーマ「行商人のクエストとかで、護衛任務をやるか。」

行商人などの護衛任務のクエストでは、複数のプレイヤーとマッチングして行われる。そのため、危険な道中をソロで移動する心配もないし、ヴィルギアからだいぶ遠い場所に来ていることもあって周りのプレイヤーも俺よりレベルが高い、なのでソロよりも安全に帰れるだろう。

後これが一番の理由なのだが、護衛任務のクエストでは、クエストの失敗はあっても、死ぬことがほとんどないというのが大きい。理由は、NPCの死は二度と復活しないというゲームの特性上。護衛対象のNPCに強力なNPCが付いて周っているからだ。

そのため、プレイヤーが護衛任務のクエストを失敗することは、あってもその強力なNPCが守ってくれるため、プレイヤーが死ぬことがほとんどない、移動するには最高のクエストとなっている。

どうしてこれを最初に利用しないかったのかについてだが、理由はいろいろある。

まず、時間がかかりすぎる事、NPCの気分によって休憩や、宿泊場所がランダムで決まるため、ソロやパーティーで進むよりも時間が多くかかってしまうのだ。次に、人付き合い、プレイヤー同士もそうだが、NPCの御機嫌取りをしておかなければ、報酬に差が大きくでるらしく、NPCの気分によってはクエスト自体が白紙になる事もあるという。最後に、BOSSが必ず登場するという事だ。大小さまざまであるが、基本的には山賊が登場する。人の見た目であり、モンスターではあるが、NPCであるため彼らも死んでしまえば復活することは無いと言われている。そのため少し後味が悪いのだ。もちろん倒さずに縛り上げて逮捕することも可能だが、そうなると常に道中警戒していかなければならなくなるし、NPCの評価も下がってしまうので基本的には、倒すのがこのゲームの暗黙のルールとなっている。

安全に移動は出来るが、時間のかかるルートを選ぶか、ソロもしくは、パーティーを組んで早く進むかである。自分を護衛対象に移動することも可能だが、お金が多くかかるためあまりお勧めできない。

ユーマ「まぁ、一度は経験しておくべきだよな。」

そう言ってユーマは、冒険者組合に向かうのであった。


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:19

Skill:Healing/王国騎士流体術(初級)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Double Slash(二連斬)/Magic Control(魔力操作)(初級)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)

称号:プレイヤー/竜の心呪/妖精の歓迎


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「久しぶりのユーマさんでした。」

「え?そんな事より最初に出てきた我儘少女は誰だって?」

「今後登場する人物ですよ。」

「どうやら、前回出てきた強面男性とも関係があったり?なかったり?」

「それでも本日もサクッと解説をやっていきましょう!」

「今日は、護衛クエストについて話しましょう。」

「プレイヤーがゲームを抜けたい時は、どうするの?って思った方もいるでしょう。」

「そういう時は遠慮なくNPCにお伝えください。」

「そうすると、NPCが気を利かせて休憩時間を設けてくれます。」

「あとは、他のプレイヤーと交代で休む方法です。」

「どういう事ってなると思いますが、複数のプレイヤー参加型のクエストであるため、その人が抜けている間は、残ったプレイヤーがクエストをやるという感じです。」

「また、そのプレイヤーが戻ってきたときに、交代で他のプレイヤーが抜けて休むという事ができます。」

「難易度的に厳しくならない?と思った方、ご安心ください。」

「そういう場合は、難易度が下がる。もしくは、NPCが協力してくれるため適正レベルでクエストが進められます。」

「全滅エンドもあるの?」

「もちろんございます。」

「不慮な事故であったり、モンスターが襲撃して来たりと、運が悪ければ全滅エンドも普通に御座います。」

「ただ、そんなことはほとんどありませんので安心してご利用ください。」

「最も多いのは、そんな不慮な事故ではありません。」

「プレイヤーがNPCを裏切る行為です。」

「護衛クエストを受け、NPCの行動に腹を立てたプレイヤーによる襲撃が一番多いのです。ほとんどの場合、返り討ちにあったりしますが、相手はプレイヤーです。真っ当な方法で戦うバカはいません。毒薬等を料理に仕組んだり、寝込みを襲ったり、商品を盗んでとんずらしたりなど、ありとあらゆる方法でNPCを苦しめます。」

「そのため、全滅エンドの不慮な事故よりもNPC襲撃の方が多いのが現状です。」

「もちろんクエストをクリアすればそれなりの報酬も貰え、安全に次の街に移動できる特典がありますが、そんな事も気にできないほどストレスがやばいようです......。」

「それでは、サクッと解説を終了します。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「ばいば~い。」

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