ー 32話
神官「あー、なんと素晴らしき事なのでしょうか。」
フードを取ったその神官は、絶世の美女と言われても誰もが納得するような美貌を持ち、目を輝かせながら祈りを捧げている。
神官「もうすぐなのですね.......。」
神官「あの......聖女様........お召し物が汚れてしまいますよ?」
聖女「フフ.......。」
聖女は、ニコッとした優しそうな笑顔で見習いの神官に近づいてきて言う。
聖女「ねぇ?」
神官「は、はい!」
聖女「黙って?」
神官「も、申し訳ございません。」
見習いの神官は、土下座の姿勢を取り聖女様に涙目で謝る。
聖女「あらあら、私が虐めているみたいじゃない?」
神官「め、滅相もございません!」
聖女「はぁ......もう何処かに行ってくれるかしら?」
神官「は.......はい。申し訳ございませんでした........。」
トコトコ、バタン(ドアの閉まる音)
聖女「良い気分だったのに本当に最悪ね.....。"処分"しようかしら?」
聖騎士「お望みならば、私達が行いますが?」
聖女「そうね.....。そうだわ!」
何かを閃いた聖女は、フードを被り目元を隠しているが、口元はにんまりとしていてとても不気味である。
聖女「―。(小声)」
聖騎士「仰せの通りに!」
聖女「よろしくね?」
聖騎士「ッハ!お任せください!聖女様。」
聖騎士は、膝をつき胸に手を当てて聖女様に一礼する。
聖騎士「それでは、失礼いたします。」
バタン(ドアの閉まる音)
聖女「それにしても、勇者様には困ったものね。」
聖女「私たちの命令通りに動いて下されば、全てがうまくいくというのに......。」
聖女「きっと、まだ"主"の素晴らしさを理解していないのだわ。」
聖女「私がきちんと教えてあげなきゃね。」
聖女「"同じ女性"なのだし、きっともっと仲良くなれるはずなの。」
聖女「あぁ、勇者様。早く来てくださらないかしら?」
聖女「それともあの聖騎士には、やはり罰を与える必要があったのかしら?」
聖女「まぁ、きっと許して下さるわよね?」
聖女「そうね.....。もしダメなら、あの聖騎士の"命"で許して下さらないかしら?」
聖女「でも焦っちゃダメよね?もう少しで勇者様がここへ来るってお知らせがあったもの。」
聖女「その時にでも、たっくさんお話ししましょう?」
------------------------------------------------------------------------------------------------
トコトコトコ
神官「わ...私の馬鹿......。せ、聖女様に....ぶれ...ぃ......あぅ..........。(小声)」
ドン!
神官「ッキャ!痛いじゃない!」
神官「ご....ごめ.....な....さ.......。(小声)」
神官「しっかり前見なさいよね!」
神官「ごめ....な......。」
神官「フン!これだから平民は嫌いなのよ。(小声)」
聖騎士「そこの神官待ちなさい。」
神官「私ですか!」
目を輝かせながら聖騎士様に聞くが、予想だにしない事を言われる。
聖騎士「あぁ君じゃなくて。そっちの君だ。」
神官「あ....あぅ。は、はい。」
(こんなメソメソした平民がなんで聖騎士様に声掛けられんのよ!)
神官「あー、あ。ほんっと気分最悪ね。」
怒りながら去って行ったのは、貴族の元令嬢だ。わけあって暫くの間、教会で暮らすことになっている。
聖騎士「御取込み中だったかな?」
神官「い....いえ.....。」
聖騎士「そうかい。なら良かった。」
聖騎士「君の事で聖女様に頼まれてね。」
聖騎士「君にしか頼めない事なのだよ。協力してくれるね?」
神官「あ...あの....わ...私...なんかが......そんな.......。あの女性の方の方がきっと......。」
聖騎士「いやぁ.....君にしか出来ない事なのだよ。」
ポンと力強く肩を掴む。
神官「あ...あの....いた....い.....痛いで..す。」
聖騎士「あぁ、すまない。力が強かったかな?」
聖騎士「それより、どうかな?聞き入れてくれるかい?」
神官「えっと...その......。」
聖騎士「そうだねぇ。これを終えれば君は、聖女様のひいては"主"のお役に立てる素晴らしい事なのだよ?」
聖騎士「協力は無理そうかな?」
神官「は...はい。私なんかでよけ...れば....。」
聖騎士「本当かい?いやぁ、助かったよ。」
聖騎士「それじゃぁついてきてくれるかな?」
神官「は....はい。」
神官「......んで、あんな女が......聖女様の役に立つことを......。(小声)」
歯ぎしりの音を立てながら、物陰から聞いていた元令嬢は、さっきのメソメソした平民が羨ましくてコッソリと後をついて行く。
聖騎士「君は、確か.......平民出身だったかな?」
神官「は....はい。」
聖騎士「ここでの生活は、大変だろう?」
神官「い...いえ.....その....とても良くして頂いています。」
聖騎士「そうかい。でも、辛かったこともあっただろう?」
神官「..........。」
聖騎士「でもこれからは、もう大丈夫さ。」
神官「あの....それは....どういう?」
聖騎士「君は、聖女様のお役に立った素晴らしい人として、この教会での"新しい生活"を手に入れれるからね?」
神官「えっと....その...........やっぱり.......荷が重いです。」
聖騎士「どうしてだい?君にとっても良い事だよ?」
聖騎士「無理強いは、したくないんだ?」
聖騎士「どうかついてきてくれるよね?」
神官「えっと......はい......。」
聖騎士「ありがとう。」
神官「..........。」
神官「あ....あの......何をするんですか?」
聖騎士「行けば分かるさ。」
聖騎士「そんなに難しい事を要求したりしないから安心してくれ。」
聖騎士「協力してくれるだけでいいんだ。」
神官「あ.....あの.....こっちへの立ち入りは禁止だって.......。」
聖騎士「そうだね。ここから先は、とっても大事な事を扱っている施設でね?」
聖騎士「それでね。君に協力してほしい事は、この先にあるのだよ。」
聖騎士「あぁ、もちろんここでの話は、他で話してはいけないよ?」
神官「も....もちろんです。」
聖騎士「君は、良い子だね。」
キィィィイ(ドアの開く音)バタン。(ドアの閉まる音)
聖騎士「ちょっと待っててくれるかな?」
守護騎士「そっちの子達は?」
聖騎士「あぁ、例のだ。」
守護騎士「どうやら神官のようだが?」
聖騎士「聖女様の命令でね。」
守護騎士「上には、どうお伝えするつもりだ?」
聖騎士「あぁ、こっちの子は、"平民"なんだよ。」
守護騎士「なるほどな。」
聖騎士「あぁそれと―。」
聖騎士「待たせてしまって悪いね。」
神官「い....いえ......。」
聖騎士「それじゃぁ行こうか。」
カタカタカタカタ(鎖の音)バタン!(ドアの閉まる音)
聖騎士「この先は暗くなっていて、足元がとても悪いから気を付けるんだよ?」
神官「は...はい。ありがとう...ございます。」
守護騎士「その子は?」
聖騎士「例のやつだ。」
守護騎士「フン、なるほどな。」
神官「あの、例のってなんですか?」
聖騎士「あぁ、これから先の協力していただくやつの話さ。」
聖騎士「外部に漏らさないための暗号的なやつだよ。」
神官「な....なるほど。」
階段を下り、また固く閉ざされた扉に出会う。
聖騎士「開けてくれ。」
神聖騎士「そいつは?」
聖騎士「例のだ。」
神聖騎士「神官だぞ?」
聖騎士「聖女様の命令だ。」
神聖騎士「っは、なるほどな。また聖女様の面白い遊びってやつか。」
聖騎士「口が過ぎるぞ!」
神聖騎士「へいへい。それじゃぁこの先にどうぞ!」
ガタンカタカタカタカタ(扉の開く音)ドン!
聖騎士「さぁ行こうか。」
神官「ちょっと怖い....です。」
ガタンカタカタカタカタ(扉の閉まる音)ドン!
???「っへ、そいつもか?」
聖騎士「あぁ、そうだカール。」
カール「お嬢さん達、こんな所へ連れて来られて可哀そうになぁ。」
神官「あの.....それってどういう事なんですか?」
カール「おいおい、説明しといてやれよ。」
聖騎士「いやぁ、思いのほかこの子が従順でね。面白くなってつい。」
先ほどの優しかった声とは一変して、怖い声に変わる。
カール「っかー。性格の悪いやっちゃなぁ。」
酒瓶を飲みながら、白衣を着た人物は、じろじろとこちらを見つめた後に、壁の方を見てニヤリとする。
カール「そんでぇそっちのお嬢ちゃんは、好奇心でついてきたたちか?」
聖騎士「あぁ、どうやらこの子が羨ましかったようだよ。全く笑えるね。」
カール「ッハッハッハ、そりゃぁ可哀そうだ。」
神官「な!なによ!気付いてたの?」
姿を現した元令嬢は、聖騎士様の方を見て言う。
聖騎士「あまり聖騎士を舐めるなよ。たかがHideing技能ごときで私達が見破れないと思ったら大間違いだ。」
聖騎士「まぁ、君のその勇気には、感動ものだがね?」
カール「おい、リック!勇気じゃなくて無謀だろ?」
リック「違いない。確かに、規律に反して嫉妬でこんな所までのこのこと来るのだ。無謀以外の何者でもないね。」
神官「ちょ!何なのよ!」
顔を真っ赤にした元令嬢は、さっきから訳の分からない事を言っている二人にイライラする。
神官「フン!そ、それで!ここは、なんなのよ!」
リック「あぁ、ここは人体実験の場所さ。」
神官「な.......なんですって?」
さらにわけのわからない事を聞いて聖騎士様に聞き返す。
神官「"主"に仕える聖騎士様がそんな非道な事するわけないじゃない!」
神官「嘘は辞めて!」
カール「ッカー、面白れぇ事を言う嬢ちゃんだなぁ。」
カール「こいつも材料なんだろ?」
リック「あぁ、1人のはずだったんだが、途中から増えてね。」
神官「な、私はこの国の伯爵家の人間よ!」
リック「元だろ?」
神官「わ、私がいなくなったらお父様がただでは済まさないわよ!」
カール「ひゃっひゃっひゃ、こりゃぁ笑いもんだぁ。」
リック「残念だがね。君のそのお父様だとかいうのが助けに来ることも、私達が何かを訴えられることもないのだよ。」
神官「どうしてそんな事が分かるのよ!」
リック「国の方針だからね。」
神官「な......。ち、近づかないで!」
カール「はぁ、抵抗する人間ってぇのは、本当に嫌いだ。」
リック「そう言うな。どうせ抵抗してきたって俺らには、何の傷もつけられないだろ?」
カール「それは、そうだが。俺は、泣き叫ぶ人間の方が好きだな。」
リック「それは、私の後ろでしゃがんで動けないでいるこのお嬢さんの事を言ってるのかな?」
神官「ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい.....。(小声)」
カール「あぁ、でもこりゃぁ、壊れちまったんじゃねぇか?」
リック「もともと壊す予定だったんだから変わらないだろ?」
カール「それもそうだ。」
神官「辞めて!来ないで!」
カール「うるさいなぁ。ちょっと寝とけってぇ。」
神官「辞め.......。」
リック「こいつらは、奥の牢屋にでも入れておけばいいか?」
カール「あぁ、そうしてくれ。今は、こっちの実験が先だからなぁ。壊れたらこいつらを使う事にするよ。」
リック「分かった。あぁそれとこれをやるよ。」
カール「酒じゃねぇか!飲んでくか?」
リック「遠慮しておく。ここでの酒は、不味いからな。」
カール「ひゃっひゃっひゃ、若いねぇ、この悲鳴が良いんだよ。」
ニタァっと笑う白衣を着たカールと言う人物は、聖騎士のリックの肩を叩いてから、また来いよ!と言って送り出す。
カール「ひゃっひゃっひゃ、それじゃぁ、仕事を始めるとするか。」
Name:不明
種族:人
職業:見習い神官
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:平民/見習い神官/不運
Name:不明
種族:人
職業:神官
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:元令嬢/神官
Name:リック
種族:表示不可
職業:聖騎士
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:表示不可
Name:カール
種族:表示不可
職業:表示不可
Level:117(?)
Skill:表示不可
称号:表示不可
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「あらら、どうやら何かをやっているようです。」
「どんな実験なんでしょうかね?」
「え?論点がずれてる?恐ろしい事をしている?」
「そうですか?」
「まぁまぁ、そんなことより今回もサクッと解説をやっていきましょう!」
「そうですねぇ。今回は何を解説しましょうか?」
「最悪な結末って何かを聞きたい?」
「最悪だなんてそんな......。」
「私は、そうだとは思いません。」
「最高の結末ですよ!」
「え?前回と言っていることが違う?」
「あぁ、あれは邪魔者.....オホン!その人に伝わりやすい言い方をするために言っただけです。」
「決して私が最悪な結末だと思っているわけじゃないんですよ!」
「"×"の思い描いた物語は、―。」
「なんですから!ね?最高でしょう?」
「あなたたちの望んだ世界は、きっと実現するのです。」
「それでは、今後も"書架に飾る"をよろしくお願いいたします。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「ばいば~い。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます