ー 30話
ダンジョンの深層、今だ誰も到達出来ていないはずの層にその人はいた。
???「ッチ」
そろそろ見つけてくる頃合いだと思い準備はしていたが、思った以上に早くそいつらに出会った事で苛立ちを感じる。
神官「やっと見つけましたよ、勇者様。」
神官「主に感謝いたします。(ボソ)」
手を前に出し、祈りの姿勢を取って口元をニコっとさせた神官。フードのせいで目元までは、見えないが美人なのが分かる。
(気色悪い......。)
信仰という狂信的な思考を持った神官のそれは、主のために常に行動し、主に命を捧げている。もし、主に死ねと命令されれば疑問を抱かずに死ぬような連中だ。
神官「さぁ、私達と共に教会へお越しください。」
ニコっとした笑顔でそう応える神官、拒絶されるはずがないと思ってやってきた神官に、
???「断る。」
と言う。理解ができない神官は、もう一度聞き返す。
神官「あの、それはつまり.....ついてきてくださらないと捉えてよろしいのですね?」
???「ッチ、だから.....。」
聖騎士「なんと無礼な!」
言葉を遮って無礼な物言いに腹を立てた聖騎士は剣を構え、攻撃の姿勢を取る。その瞬間、
神官「黙りなさい。」
神官が聖騎士に一喝し、聖騎士は剣を下げ謝罪する。
聖騎士「ッハ!申し訳ございません。」
神官「勇者様......我々は、あなたの帰還を長らくお待ちしておりました。」
神官「どうか、私達と共に教会へ参りましょう?」
???「.............。」
聖騎士「応えないか!」
神官「黙りなさいと言ってるでしょう!」
聖騎士「........。」
神官「申し訳ございません。勇者様、この者の無礼は私から謝罪させて頂きます。」
神官「本日はご都合が悪いようなので、また後程お伺いいたします。よろしければ、どうか一度だけでも、教会へお越しください。」
???「...............ッチ。」
ここで聖騎士が、攻撃してくれでもしたら行かなくていい理由が出来たが、そうならなかった....いや、そうさせなかった神官に腹が立つ。
神官「ほら、戻りますよ。」
聖騎士「し、しかし.....。」
神官「黙りなさい。あなたの無礼な行いのせいで勇者様は、大変お怒りなのです。」
聖騎士は、拳を強く握りしめてフードを深く被ったやつに睨みつける。
聖騎士「もう....しわけ....ございま.....せん。勇者様のその広いお心でお許し下さると、嬉しい限りで.....す........。」
そう言いながら、深々と一礼するが強く握った拳からは、血が滲み出て歯ぎしりが聞こえてきそうなほど口元が歪んでいる。
神官「さぁ、行きますよ。」
聖騎士「ッハ!」
そう言ってぞろぞろと神官達は、ダンジョンから出て行った。
???「これは、使わずに済んだか.....。」
手に持っていたアイテムをインベントリーに仕舞い、再びダンジョンの最下層に向けて出発する。
(あいつらに協力するつもりは微塵もない。)
だがしかし一度は、どうしても教会へ行かなければならない。教会に行ってしまえば今までのような立ち回り方は、今後難しくなってしまうだろう。そのため教会へ行くのは、後回しにしてきたわけだがこれ以上後回しにするわけにはいかなくなってきた。
???「まだ....まだだ....。」
こう言ってはいるが、どうしても一度だけ教会へ行って来なければならない。神官の思惑通りになるのは、しゃくではあるが目的のためには、どうしても行かないといけないのだ.........。
「リリス、調子はどうかな?」
リリス「はぅあ!も、問題ありません。」
「そういえばこの前、冒険者組合の仕事で失敗をしたようだね?」
リリス「あぅ.....。ご、ごめんなさい。」
「いや、別に責めているわけではないんだ。」
「それに、ヴィギルアの被害としては何もなかったのだから良かったじゃないか?」
リリス「...........。グスン(すすり泣き)」
「.......どうやら、私の言い方が少々きつかったようだね。すまない。」
リリス「そ、そんな滅相もございません。」
「まぁ、これからも職務に励みたまえ。」
リリス「は、はい!」
ガタン!(机に何かをぶつけた音)
リリス「ひゃぁあぅあ。(悲鳴)」
「大丈夫かね?」
リリス「あ、あい。す、すみません。大丈夫です。そ、それでは!」
「ふぅ....。もうちょっと彼女も気を抜いて仕事をしてくれてもいいものなんだがね。」
近くにあるソファーで寝転がって、お菓子を食べている人物を見てそういう。
「またですか~?(もごもご)」
お菓子を食べながら、またリリスが何かやらかしたんでしょ~と言う風に応える。
「そう言うんもんじゃないよ。あの子は、あの子なりに頑張っているのだから。」
「は~い。」
「はぁ.....それで、君の方は順調なのかね?」
「う~ん、微妙って感じ~。」
「やっぱり、私達が手を出すと"天秤"が邪魔するよねぇ。」
「まぁ、仕方がないさ。あれのおかげで我々も得をしている部分があるのだから。」
「君も職務に戻りたまえ。」
「は~い。」
バタン(扉を閉める音)
「ふぅ。」
「お疲れのようね。」
「い、いえ、滅相もありません。」
シャツをピシっと整え、眼鏡を上にくいっと上げる。
「いいのよ。そんなに気を遣わなくても......あなたたちのおかげで次の段階に踏み込めるのだから。」
「やっとですね。おめでとうございます。」
「えぇ、ありがとう。でも、焦ってはいけないわ。」
「もちろんでございます。」
「全ては、貴方様とプレイヤー達のために。」
「フフ......。ありがとう。」
「それでは、私も職務に戻らせて頂きます。失礼します。」
一礼して去って行く。
「........あの子達には、迷惑を掛けてばっかりね。」
「それに、"プレイヤー達"にも......。」
「本当にごめんなさい。」
バサ(羽の音)
月明かりに照らされた真っ黒な翼.....。
遠い場所を見つめながら、いずれ訪れるはずの"誰か"を待ち続けている。
「最悪の未来だけは、どうにか"回避"しなければならないのよ。」
(決して、×の思い通りにさせては、ダメ。)
バタン(扉を閉める音)
海を越え山を越え、主が"創造"したと呼ばれる種族が訪れた事のない未踏破領域、環境は最悪で、常に太陽の届かない場所。
そんな場所に建てられた立派な城で待っている彼女は......いったい"誰を"待ち続けているというのだろうか?
Name:リリス
種族:表示不可
職業:冒険者組合の受付嬢(?)
Level:表示不可
Skill:表示不可
称号:表示不可
PlayerName:不明
種族:不明
職業:不明
Level:不明
Skill:不明
称号:.../Pioneer(先駆者)/英雄
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「第29話では、皆様に大変ご迷惑をお掛けしてしまいすみません。」
「あわあわってしちゃってブチッって切っちゃったみたいです。( ノД`)シクシク…」
「どうかその広いお心でお許しいただければと思います。」
「それでは、本日もサクッと解説をやっていきましょうか。」
「勇者様って呼ばれていた方についてお話いたしましょう!」
「ついに以前から出ていたフードを被った人物についての解説が!?」
「と、期待している方々....すみません。」
「解説できるところは、とっても少ないです。」
「まずは、彼(?)、彼女(?)は、勇者なのか?」
「答えは、NOです。現時点では、勇者と言う称号を手に入れておりません。」
「そのため厳密に言えば、勇者ではありません。」
「じゃぁ、何かを知っているように話したり、結末の事をしっているような素振りをしていたのは、何故?」
「何故なのでしょうね?」
「もしかしてループしてるの?」
「う~ん、現時点ではお応えできません。」
「もしかして、掲示板で<近々ヴィギルアの街で、自然発生の
「いいえ、あの人は、掲示板で書き込みをしておりません。」
「従って、あの掲示板で書かれていた人物は、別に存在します。」
「偶然?」
「いいえ、偶然ではありませんよ。」
「知っている人物によって書かれたものです。」
「その方は、勇者が現れることも知っていたようですね。」
「どうやら嘘つき呼ばわりされているようですが.....。」
「あら、どうやら喋りすぎてしまったようです。」
「それでは、本日のサクッと解説のコーナーは以上とさせて頂きます。」
「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
「ばいば~い。」
ブチッ
※回線が切断されました。
System:復旧を開始いたします。
[あぁ....これは"現実"なのだと。]
[それから、俺はお偉いさんを侮辱した罪で、牢屋に入れられそれはそれは、ひどい生活を強いられた。]
[食事や水が与えられないだけならまだましだ。拷問まがいの鞭打ちだけでなく、人体実験のような事もさせられた。]
[おかげで、気絶耐性や痛覚耐性、薬物に対する耐性や、空腹に対する耐性等は、人よりも多く手に入れることができたわけだが、それでも好んでこんな生活をしたいやつなんていないだろう。]
[何度も何度も頭を下げたが、向こうからしたら貴重な実験材料なわけだ。]
[なかなか、離してはくれなかったし聞き入れてはくれなかった.....。]
[だから逃げ出すことにしたのだよ。]
[いつも人体実験をさせられる時に、牢屋から塔のある場所へ移動させられるのだが、その移動で外を出歩く瞬間がある事を私は知っていた。]
[移動させられる時は、いつも目隠しをされた状態で移動するわけなのだが、目隠しがずれた時があってね。]
[それで、知る事が出来たんだ。]
[以前の私だったら体力も無くて出来なかっただろうが、この世界では、思った以上に身体を自由に動かせる。]
[私は、無我夢中で走った。]
[背中や足に何度も矢が刺さり、口からは血が流れ、息も苦しくなっていく。]
[それでも、走り続けやっとの事で逃げ出すことが出来た。]
System:復旧いたしました。
System:それでは、これからも"書架に飾る"をよろしくお願いいたします。
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