竜人の書
竜人の書
竜人とは、なんだろうか?
ドラゴンの末裔か?
ドラゴンが人間になった姿か?
ドラゴンを模して造られた存在なのか?
それともまた別の存在なのだろうか?
主が創造した種族は、"5種"あると言われている。
その中でも竜人は、特別な存在であり、自身をどの種よりも完成された生命体であると信じている。
何故それを信じるに至ったのか.......。
竜人には、他の種では成し得ない"呪いのような"能力を有していたからだ。
ザーーー。
水の音が、BGMとなり幻想的な光景が見られる水上街ドラフニル。
このゲームを始めたなら、一度は観光に来た方が良いと呼ばれるほどの人気なスポットとなっている。
そこにやっとの事で辿り着いたユーマは、行く当てもなく彷徨っていた.....。
ここに来れば、メモの意味や、書き換えられた絵本の内容について何か分かるのかもと思っていたユーマは、着いてからも特にゲームのイベントが発生するというわけもなかったので、行く当てもないまま彷徨う羽目になってしまっている。
ユーマ「はぁ......。」
心なしか、ゲームの中なのに日差しが暑く感じられる。
(まぁ、何もなかったらなかったで、シスターさんに聞きに行けばいいか.....。)
と、あまり気の乗らない事を思いながら、取り敢えず店内に入って一休みする。
NPC「いらっしゃいませー、御好きな席へどうぞ。」
ユーマ「あ、は~い.....。」
窓側の席に座りながら、外ではしゃいでいるプレイヤーの姿を見て、これからどうするのかを考える。
(そろそろ本格的に受験シーズンに入るわけなのだから、ゲームの辞め時ではあるわけだが......。)
絵本の内容が、心の中で引っかかって離れない。
(はぁ......。絶対これのせいだよな?)
いつの間にかついていた称号のせいにして指でトントンとつつきながら、剥がれないかやってみる。
称号:竜の心呪
ユーマ「はぁ....。もっかい絵本でも読んでみるか?」
ペラ(ページをめくる音)
特に内容の変わっていない残酷な結末の絵本を読みながら時間を潰していると、コーヒーを持ってきた店員さんが、話し掛けてくる。
NPC「その絵本って、ドラゴンの宝って絵本ですよね?」
ユーマ「え、あ、はい。そうですね。」
急に声を掛けられてびっくりして変な声が出てしまう。
NPC「あ、急にすみません。」
ぺこっとお辞儀をして謝る店員さんに、
ユーマ「あ、いえ。大丈夫です。それで、この絵本の事知ってるんですか?」
と聞く。
NPC「はい、知ってるも何もこの街では、有名な絵本ですよ。」
ユーマ「そ、そうなんですね.....。」
こんな残酷な本が何故有名なんだ?という疑問が残るが、NPCが笑顔で言うのだからそうなのだろう.....。
NPC「良い絵本ですよね?」
ユーマ「え?」
予想だにしない事を言われて、困惑する。俺の反応がおかしいのか、NPCがバグってるのかは知らないが、この絵本を決して良い内容の本だなんて俺には、到底思えないのでもう一度聞き返す。
ユーマ「ど、どこら辺が良いですかね?」
NPC「え?そーですねぇ。最後にハッピーエンドになるところとか、皆好きだと思いますよ?」
決してハッピーエンドでは無いこの絵本の結末に.....俺は、NPCに最後にもう一度聞き返す。
ユーマ「ハッピーエンドですか?」
NPC「えぇ....。」
おかしなことを言うなぁという顔をされながら、首を傾けるNPCを見て、俺の知っているこの絵本とNPCの知っている絵本とでは、内容が違うのではないかという結論に至る。
ユーマ「そ、そうですね。ハッピーエンド....アハハ....。」
取り敢えず、愛想笑いをしてから、急いでコーヒーを飲み代金を払ってから、急いで店を出る。店員は、俺の行動を不審に思っただろうが、今はそれどころじゃない。
(本屋って何処だ?)
この街では、有名と言われるだけの絵本なのだから、本屋にならこれと同じ題名の絵本くらい売ってあるだろう。
辺りをきょろきょろ見渡して、"探さなければ"という思いに駆られながら、俺は本屋を探して回る。
<ドラゴンの宝>
著者:Lieo Afuthor (リオ・アフトール)
遠い昔のお話です。
1匹のドラゴンが、山の奥で多くの財宝を蓄えて暮らしていました。
ある時、山の麓にある村で干ばつが起き、多くの村人が飢えてしまったのです。
困り果てた村人達は、山の奥にいるドラゴンに会いに行きました。
村人達は、ドラゴンに言います。
「どうか私達をお助け下さい。」
ドラゴンは、その要求を快く受け入れてから、村人達に自分の財宝を分け与えました。村人達は、そのドラゴンの行動に感謝をし、村に帰って行きました。
しばらくして、二度目の干ばつが村を襲いました。村人達は何とかしようと頑張りましたが、その努力も実らず、またドラゴンに助けを求めに行きます。
寂しかったドラゴンは、村人達を歓迎し話を聞いてあげます。
「なるほど、それは辛かっただろう....。」
頷きながら、納得するドラゴンに、
「どうか私達をお助け下さい。」
ドラゴンは、一度はその要求を断りましたが、村人たちの話を聞いてから、村人達を助けてあげることにしました。
「ありがとうございます!」
村人達は、そのドラゴンの行動に感謝を示し、ドラゴンのために祭りを開いてあげました。
寂しかったドラゴンは、村人達のその行動に喜び、いつまでもいつまでも楽しく暮らしました。
ドラゴンは、考えていました。
村人達を助けることが、本当に正しい事だったのかと.....。
ドラゴンは、思いました。
村人達を助けた事で、今の楽しい暮らしがある事を.....。
ドラゴンは、知りました。
村人達のおかげで寂しさを忘れることが出来た事を....。
ドラゴンは、誓いました。
村人達のこれからを、出来る限り助けていく事を.....。
これからも世代を受け継ぎ続いていく祭り。
ドラゴンを称えるためにつけられたその村の名前は、ドラフニル呼ばれ、美しかった村は、街へと変わり、今も永遠に語り継がれる物語となりましたとさ。
めでたし、めでたし。
絵本とは、本来こういう物語が多いのだろう.....。
この絵本を最初に読んでいれば、俺はシスターさんから貰った絵本の話の内容を否定し、これほど重くは受け止めなかっただろう。
ただ.....。今は、そう思えない。
このどうしようもない怒りが、どこからかひしひしと湧いてくるのだから......。
(どうしてだろう?)
右上を確認するが、デバフを受けた様子もない.....。
今すぐ投げ出してしまいたい絵本を強く握りしめて、インベントリーの中へしまい込む。
ユーマ「ふぅ.....。落ち着けよ俺.....。」
軽く深呼吸をして、ベンチに座り、水の音を聞きながら、インベントリーを開けて2冊の本を取り出す。
著者の書かれていない絵本と、著者の書かれた絵本。
どちらも同じ題名で、冒頭は同じ内容から始まるが、結末が残酷な絵本と幸せな絵本。相反する二つの絵本を持ちながら、空を見上げて考え込む。
シスターさんは、この本を俺に見せたかったのか?
最初にこの絵本....まだ内容が書き換えられる前、子供たちの前で読んだ絵本の感想をシスターさんに言ったとき、シスターさんは悲しそうな顔をしながら、"史実を基にした物語"だと言った。
史実という事は、歴史上の事実を基に作られたという意味であっているはずだ......。
でもそれこそあり得ない話だ。もしそうだとしたなら........。
シスターさんは、何百年?もしかしたら何千年?も生きた"人"という事になる。だからと言ってシスターさんが、嘘をついたとは思えないし、嘘をつく理由もないだろう。
もしかして、この絵本が全部嘘を書いているのか?だとしてもおかしい話だ.....。この街では、有名な絵本だとNPCは、言っていたしドラフニルと最後に書かれているため、ここで起こった物語を書いているのは、間違いないのだろう。ただ....そうなのだとすれば、なおさらおかしいのだ。ドラゴンが住んでいたであろう山なんてものも周りになければ、干ばつに会うほど水に苦しむような場所にも見えない。
ペラ.....。絵本を開けて目に入る真っ黒に塗りつぶされ、真ん中に白い服を着て十字架を持った人物に血が滲んだような赤い線で力強くつけられたバツの印のページ.....。
その後ろの背景と、著者の書かれた絵本の"いつまでもいつまでも楽しく暮らしました"というページの背景に似ている。
おそらくこのページを黒く塗りつぶしたのだろう。
ユーマ「はぁ......。」
溜め息を付いて空を見上げても、何も思い浮かんではこないので、諦めてインベントリーに仕舞う。
(俺にどうしろっていうんですか?)
"探さなければ"という心のどこかで感じるその脅迫や命令にも似た感情と、どうすればいいのかわからない現状に困惑する。
取り敢えず.....。怪しいのは、教会か.....。十字架と言えば教会しか思い浮かばない。シスターさんも教会で暮らしているのだが、今更ながら絵本とはいえ、十字架を持った司祭らしい人にバツ印とか書いていいのか?と思ってしまう。
(まぁ....行けば分かるか.....。)
行きたくない気持ちは山々というか、もう心の中はいっぱいいっぱいなのだが、"行け"という感情が俺を教会に連れて行ってしまう.....。
ここでゲームを辞めてログアウトでもすれば、遠い未来でこんな結果には、ならなかったのかもしれない......。
PlayerName:ユーマ
種族:人
職業:剣士
Level:19
Skill:Healing/王国騎士流体術(未完成)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Double Slash(二連斬)/Magic Control(魔力操作)(初級)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)
称号:プレイヤー/竜の心呪/妖精の歓迎
<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>
「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」
「同じ題名の2冊の絵本で内容が異なっているようですね。」
「史実を基に書かれていると言われた絵本と、ハッピーエンドで終わる昔から伝わる有名な絵本。」
「一体何が起こっているのでしょうかね?」
「それでは、今回もサクッと解説のコーナーをやっていきましょう。」
「う~ん....何を解説しましょうかね?」
「称号の妖精の歓迎について解説していきましょうか。」
「効果は、妖精全体の好感度が上昇するのと、いたずらされやすくなる事でしょうかね?」
「他には、妖精の村へ歓迎されやすくなる特典や、贈り物を貰える可能性が増える特典が付いてきます。」
「妖精からの贈り物は、花束や花の蜜、アクセサリーなどが基本的に多いです。」
「他には、軽いバフ効果などを貰えることがありますよ。」
「バフ効果の中には、幸運だったり、素早さの上昇、防御力の上昇等が含まれています。」
「ただし、嫌われてしまえば、デバフ効果を与えられるかもしれませんので注意してくださいね。」
「デバフ効果の中には、不運だったり、視界反転、沈黙、見た目の変更等が含まれます。」
「好かれれば、それなりに友好的な種族ですので、取り敢えず.....嫌われないようにすることをお勧めします。」
「それでは、本日の解説は以上とさせて頂きます。」
「ばいば~い。」
「解説してほしい事があったら是非コメントにお書き添え下さい!」
「いつでも、どんなのでも歓迎です!」
(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))
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