ー 27話

ユーマが、ゲームをログアウトした後の出来事。

リュウ「ゲン!そっち行ったぞ!」

ゲン「ちょ!前衛しっかりしろって!」

ヨリヨリ「ファイアーボール!」

ゲン「おい!ちょま!」

ヨリヨリ「あ......ごめん。」

ドン!

ゲン「危ないだろ!」

リュウ「アハハ、俺もすまん。すまん。」

ヒマ「はいはい、私が回復してあげますよ。」

ヒマ「包帯巻き巻き。」

リュウ「それにしてもこいつ強かったなぁ。」

俺は、先ほど倒したモンスターからドロップしたアイテムを確認しながら言うと、

ヨリヨリ「そうですね。初めて戦ってみましたけど、強かったですよね。」

以前よりも打ち解けたヨリヨリさんが応えてくれる。このヨリヨリさん、とても人見知りなので、最初は、あんまり俺と話してくれなかったし、顔もなかなか合わせてくれなかった。まぁ、最初に会った時からそんな気は、していたので人見知りなんですって聞いた時もやっぱり?って感じの反応をしたわけだが、今では、こんな感じで仲良くなることが出来た。

ゲン「だいぶ強かったが、ドロップも良いし、何より経験値がうまい!」

と、ガッハッハと笑うゲンさんに、

ヒマ「こら!動かないの!包帯巻けないでしょ!」

と怒りながら、ヒマさんがゲンさんに包帯を巻いている。

ゲン「す、すまん。」

と言って、しょんぼりするゲンさんを見ながら、いつもの光景だなと思いながら辺りを見渡す。

リュウ「それにしても、だいぶ先の方まで来た気がするんですけど、新大陸ってまだまだ先なんだよな?」

ヨリヨリ「え、あ。はい。そうだよ。まだまだ先だと思う。」

急に話を振られてびっくりしたヨリヨリさんは、敬語かため語か曖昧な感じで返事をする。

リュウ「遠かったんだな.....。」

ゲン「なんだ?リュウは、新大陸行きたいのか?」

リュウ「いや、この前.....って言ってもだいぶ前なんですけど、俺のリア友と新大陸に行こうぜって話をして、森の中突っ切って行こうとしたんですよね。」

ゲン「は?」

ヨリヨリ「え?」

二人ともびっくりしたのか言葉を失っているようだ。

リュウ「いやぁ、そんなに遠くないんだろうなぁって思って....。」

リュウ「そんで、結局まぁ逃げ帰って来たわけなんですけどね。」

ゲン「お前、さすがにそれは....。」

ヨリヨリ「友達はなんて言ってました?」

リュウ「もう無茶に付き合わされるのは嫌だねって言われましたね....。」

するとゲンさんは、大笑いしながら、まぁそうだろ。と言って俺の背中を叩く。

リュウ「いやぁ、レベルも上がったし森の中のやつと戦ってもやっていけるかなぁって思ってさ。」

ヨリヨリ「いやいや、レベル上がっててもあんな森の中とか無茶ですよ....。」

と言いながら、ヨリヨリさんに呆れた顔をされる。

ゲン「ってことはだ。森の中でなんかヤバいやつに遭遇して逃げてきたわけだ?」

ゲン「よく逃げかえって来れたな。」

とゲンさんが感心するのだが、

リュウ「いや、遭遇して倒して来たんだけどさ。」

と言うと、え?やるじゃねぇか。と言ってまた俺の背中を叩く。

リュウ「いやぁ、倒したのは、倒したんですけど、あのビギナーズキリングだったんだよなぁ。」

と言うと、あぁ、なんだそいつかよ。と言う風に、ちょっとがっかりされる。

リュウ「いや、あいつ森の中だとヤバかったんだって、いつもは平原で倒すから知らないんだろうけど、森の中だと草むらに隠れて的確に急所を狙ってきやがってさ。」

と説明する。こんな感じで、雑談しながら朝になるまでレベリングをするのが最近の日課だ。

ヒマ「ほぉら!雑談ばっかりしてないで、モンスター来たよ!」

ゲン「お、そんじゃぁ。張り切って行きますか!」

リュウ「今度は、任せとけ!」


「朝のニュースをお伝えします。」

「最近話題のVRMMORPG、書架に飾るをご存じでしょうか?」

「最近は、このゲームによりVRの人口が急激に増加し、数多くの企業が注目を向けています。」

「今回は、このVRについて心理学者である土内つちうちさんにお話を伺いましょう。」

「あ、あの.....土内どないです。よく、名前を間違われるんで気にしないで下さい。」

と言って、頭を搔きながら返事をする。

「す、すみません。土内どないさん。」

「あ、いえ。気にしないで下さい。」

「それで、えーっと.....VRについての話でしたかね?」

「そうですね.....。私は、この傾向に対し、あまり良い印象を持っていないんですよ。」

「と、言うと....どういう事でしょうか?」

「そうですね。まず、利用者に未成年者が多い点というのに問題がありますね。」

「最近、学校に行かないお子様が増えている事が以前に社会的な問題となっていたでは、ありませんか?」

「は、はい。そうですね。」

「このゲームによってさらに学校に行かなくてもよいという風潮が出来てしまう危険性があるのでは、ないかという事ですかね。」

「このゲームでは、ゲーム内のアイテムと現実のお金とでやり取りが行われていますよね?」

「は、はい.....。」

「これにより、働かなくてもお金を稼げてしまう状況とそれこそ、子供たちが大金を手にしてしまう手段を確立してしまうという事に問題があると思われます。」

「そ、それって良い事なのではないでしょうか?どういったことでそれに対して問題があるのでしょうか?」

「まずは、お金の大切さをしっかり学べない、学ぶ機会を奪われてしまうという点ですかね。」

「子供たちが大金を楽に稼げるようになってしまえば、それこそゲームを遊ぶだけで稼げるような状況になってしまえば、お金の価値についてしっかりとした認識を持てなくなってしまうのでは、ないかと考えられます。」

「他には、リテラシーのなっていない子供たちが詐欺にあう可能性。」

「他にも様々な点がございますが、こういう事が起こりえます。」

「最近、機械の導入や、電子化等様々な分野で教育の分野に、進歩といいますかなんといいますか、見られますよね?」

「私は、それについてもあまり、良い印象を持っていません。」

「まぁ、これについては、今回の話では関係ない話になってしまいますので、省くとして....。」

「より一層、子供たちの教育の機会を奪ってしまうのではないかという懸念がございます。」

ドンと机に拳を置いて、土内さんは深刻な表情をする。

「次にですね。これが一番の問題だと考えているのですが、道徳的な話になるんですが、ゲーム内では、殺人に窃盗等、現実で行えば、罪となるような事が簡単に行えます。それこそ今もどこかでは、それを楽しんでやっているプレイヤーもいるでしょう。」

「こういった行為を現実と仮想で、判別のつかない人がそのうち出て来てしまうのでは、無いかと懸念しており―。」

ッピ(チャンネルを替える音。)


佑真「またやってるね。」

母「母さんは、あんたがそういう事をしないのは知ってるけど、連日こんな放送ばっかり聞いてるとちょっと心配だわ。」

佑真「辞めようか?」

母「ううん、いいのよ。心配だけど、せっかく打ち込める何かを見つけたんだから、気が済むまでやって見なさい。それに勿体ないでしょ?」

佑真「う、うん。わかった。」

と言って、朝食のパンを食べる。親がゲームをやりなさいっというのは、珍しい話だが、熱中して何かに取り組んでいるというのが、母さん的には嬉しいらしい。

父「まぁ、ゲームだろうがなんだろうが、お前が誤った道に進まず、楽しくやれてたらそれでいいさ。」

父「ただ、勉強は、しっかりしろよ。」

と言って、肩にポンと手を置く。

「次のニュースをお伝えします。」

「今日―。」


シュイン

ユーマ「う~ん.....」

腕を伸ばしながら、昼時にゲームにログインした俺は、今朝の会話を思い出す。

(俺は、まだこのゲーム内で出会ったことないけど、そういえばこのゲームってPK推奨だったもんな.....。)

※PK:PlayerKiller、プレイヤーを殺すこと。

ユーマ「それに、昨日無防備の状態でログアウトしたままだった俺をお姉さんは、殺そうと思えば楽に殺してアイテムや経験値を奪えたわけか.....。」

もしゲームで楽に経験値やアイテムを手に入れることが出来るのだったら、誰だってそれを好んでやるだろう。もちろんPKは、倫理的に良くないと俺は思っているが、大半のプレイヤーは、ゲームなのだし、それを推奨している物を遊んでいるわけなのだから、良くない事だという風に思わなくて当然だろう。もちろんPKには、デメリットも存在するが、この広い世界では、そのデメリットもあまり意味をなさないだろう。

(殺されなくて、本当に良かったな.....。)

昨日は、戦闘エリアでログアウトしただけではなく、デバフを受けたままの状態で、ログアウトを行ったわけなのだから、もしも相手がPKプレイヤーだったら俺は格好の餌食だっただろう。

だから本当にあのお姉さんには、感謝しかない。

それよりも、昨日はあの後、カフカルまで何事もなく無事に到着する事が出来たという事が驚きだ。あの後、それなりに森の中や舗装された道を走り、モンスターに出会うことなく無事にたどり着くことが出来た。昨日の失敗を繰り返さないように、村に着いた後もすぐにはログアウトするのではなく宿屋に泊まりメッセージも確認してログアウトした。

今日は、カフカルでゆっくり観光をした後に、このままドラフニルまで行けたらいいなとは考えているが、別に急いでいるわけではないので、一つ前のシャリルという村を観光してからそこで1泊することになるだろう。


PlayerName:リュウ

種族:竜人

職業:槍士

Level:19

Skill:.../Dragon Heart (竜の心臓)/Dragon Howling (竜の咆哮)(未完成)/Stab Spear(突槍)/Boost Spear (突上昇)/Double Spear (二連突)

称号:プレイヤー


PlayerName:林野ゲン

種族:森人

職業:弓士

Level:26

Skill:.../Boost Bow (弓上昇)

称号:プレイヤー


PlayerName:ヒマ

種族:人

職業:聖職者

Level:30

Skill:不明

称号:プレイヤー


PlayerName:ヨリヨリミドリ

種族:森人

職業:魔法士

Level:21

Skill:.../.../Wind Arrow(風の矢)/Fire Arrow (火の矢)/Fire Ball (火の球)

称号:プレイヤー


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:19

Skill:Healing/王国騎士流体術(未完成)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Double Slash(二連斬)/Magic Control(魔力操作)(未完成)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)

称号:プレイヤー/竜の心呪/妖精の歓迎


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「どうやら、VRが社会現象となっているようです。」

「今後どのようになっていくのでしょうかね?」

「それでは、今回もサクッと解説をやっていきましょう。」

「そうですね。今回はPKのメリットとデメリットについて教えていきましょうか。」

「PKのメリットは、主にプレイヤーのアイテムの強奪と経験値の強奪です。」

「"第3話"で書かれているゲーム内のデスペナルティを覚えているでしょうか?」

「あれで失うモノを争奪できるという仕組みになっています。」

「ただし、"全てを奪える"わけではありませんので注意してください。」

「デメリットは、"隠しステータス"の"カルマ値"の上昇や、一定期間"犯罪者"という称号が付き、一部の村や街で警備NPCから逮捕や殺害される可能性があるということと、他プレイヤーがKILLをした際、その者が犯罪者プレイヤーであった場合にはそのデメリットを受けない、もしくは、懸賞金を得られるというのが挙げられます。」

※カルマ値は、"基本的"にはデメリットとされていますが、一部のスキルや称号では、有用なためにわざと上昇させるプレイヤーもいます。

「また、被害者の人数が増えれば増えるほど、デメリットは加算され、最終的には、国が兵をあげてその者を捕らえるというような措置をする場合もございます。」

「PKとは、いうもののNPCにも適応されており、NPCを殺せばデメリットは、加算されます。もちろん逆の場合もデメリットは、加算されます。また、殺したNPCの身分によっては、デメリットが"永久"に消えない事になりかねませんので注意が必要です。」

「それから、作中で書かれてあった"この広い世界では、デメリットがあまり意味をなさないだろう"というのは、犯罪者だけの街や村が少なからず存在しているため、そこで一定期間を過ごし、称号が剥がれた後に何事もなかったように普通にプレイをする事が可能だという事です。」

「ただし、"第9話"で出てきたような無法地帯の事を指しているため、どうなっても自己責任です。」

「それでは、本日の解説は以上とさせて頂きます。」

「ばいば~い。」

「あ、解説してほしい事があったら是非コメントにお書き添え下さい!」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

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