ー 24話

ユーマ「そろそろ、この街から出ていくかぁ。」

ヴィルギアの街を見渡して、そろそろ次の街に移動する事を考える。と言うのも、このヴィルギア以外で、今のところ他の街に行った事が無いからである。せっかくこのゲームをやっているのだから、ずっとヴィルギアで引きこもるのでは無く、もっと広い世界を探検して見たくなったのだ。

ユーマ「その前に、久しぶりに協会にでも行くか。」

あの日のクエストから、たまに子供達に会いに行っては、少し遊んだり、お菓子をあげたりしている。これもこのヴィルギアに留まっている理由の一つだ。

俺は、そろそろ別の街にも行ってみる事を教会の人に一応伝えておこうと、教会へ向かう。

神官「あら?ユーマさん、今回も子供達に?」

ニコニコしながら話し掛けてくれるシスターさん、

ユーマ「あ、シスターさん、いえ今回は、ご報告と言いますか....。」

ユーマ「えっと、その....。しばらくこの街を離れようと思いまして。」

そう言うと、少し悲しそうな顔をしながら、

神官「そうですか。それは、少し寂しくなりますね。」

神官「気を付けて、行ってくださいね?」

と言って、手を握ってくれた。

ユーマ「あ、はい。ありがとうございます。」

ユーマ「あ、あと、これを子供たちに。」

と言って、いろんなお菓子の入った袋を渡す。

神官「まぁ、こんなに....。いつもすみません。」

丁寧にお辞儀をして感謝してくるシスターさんに、

ユーマ「いえいえ、俺がやりたくてやってますので、気にしないで下さい。それでは、俺そろそろ行きますね。」

と言って、教会を後にしようとすると、

神官「あ、ユーマさん、少し待ってくださいね。」

と言って、シスターさんが協会の中へ入って行った。

(ん?どうしたんだ?)

と思いながら、待っていると、スタスタと走りながら戻って来たシスターさんが、俺に本を渡してくれる。

神官「えっと、よければこれをどうぞ。」

訳も分からず、取り敢えず受け取ってから、

ユーマ「えっと貰ってもいいんですか?」

と言うと、シスターさんは、少し迷いながらも無言で頷いてから、俺に本を渡す。

ユーマ「あ、ありがとうございます。」

変な空気が流れ、少し気まずいなと思いながらも、それをインベントリーに仕舞ってから、

ユーマ「そ、それじゃぁ、あ、ありがとうございました。」

神官「いえいえ、こちらこそありがとうございました。」

と言って、別れを告げた。

取り敢えず、先ほど貰った本が何かを確認するため、街の広場のベンチに座ってインベントリーから先ほど貰った本を取り出す。

ユーマ「あ、これって.....。」

俺が受け取った本は、あの時子供たちに読んだ絵本だった。

(この本........懐かしいな....。)

受け取った絵本を見てから、ページを開ける。


遠い昔のお話です。

1匹のドラゴンが、山の奥で多くの財宝を蓄えて暮らしていました.........。


(別に子供達と一生会えないわけでもない、いつだってこの街に戻って来れるし、毎日だって会いに行こうと思えば行ける。)

ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、この街から出ていくのが躊躇ためらわれる。

(あれから、いろんな事があったな.....。)

一つ一つの出来事を振り返りながら、絵本のページをめくって行く。


「どうか私達をお助け下さい。」

ドラゴンは、その要求を断りました..........。


次の街はどうしようか?


ドラゴンは知っていました。村人達が働くことなく贅沢な暮らしばかりを求めていることを。

ドラゴンは知っていました。村人達が私のせいで傲慢になってしまったことを。

ドラゴンは知っていました。村人達の優しさは、もうそこには存在しないことを。


俺は、絵本を読みながら、次に行きたい街について考える。


「村人達を苦しめているのは、お前だな!」

ドラゴンは、それを聞き私がそんな事をするわけがないと言いますが、聞き入れてはくれません。


(それにしても.....やっぱり酷い話だな。)

ペラ(ページをめくる音)


ユーマ「な.....え?」

俺は声を出して困惑し、この絵本に少し恐怖すら感じた。

なぜなら、その絵本に知らないページが追加され、内容が変わっていたからだ。


"白い服"を着た"×"が"言いました。"

「勇者様ご苦労様です。これで"×"は"×"に村人達は"幸せ"に暮らせます。」

そう言ってドラゴンの住処に入って行った村人達は、我に返り"絶望"しました。

「あぁ、聞こえますか勇者様?」

「あれが、人々の絶望です。」

"白い服"を着た"×"が笑いながら言いました。

「これで、"×"も喜ばれます。」

勇者は、己の過ちを理解しました。

自分がこの白い服を着たやつに騙されていたことに.......。

村人達は、"勇者"に牙をむきます。

「どうして、こんな酷いことが出来たのかと。」

そう涙をながしながら、何度も何度も勇者様に"訴えました。"

"白い服"を着た"×"が先導します。

「"×"は、あなたたちの過ちを悔いています。」

「"祈りましょう。"」

「さぁ、"祈りましょう。"」

ドラゴンは、悲しみます。

(村人達は救えなかった事を"永遠に後悔"しながら......。)


ペラ(ページをめくる音)

ユーマ「...............。」

本来、明るい感じに書かれていたであろう後ろの背景が真っ黒に塗りつぶされた次のページには、真ん中に白い服を着て十字架を持った人物に赤い印で力強くバツがされていた。そして何かよく分からない文字で、何かが書かれている。

そしてメモが一つ出てきた。

(次に行く街をお探しでしたら、ドラフニルと呼ばれる街をお勧めします。)

ユーマ「..............。」

本当に行って良いのだろうか......。

このメモを書いたのが誰かは分かっている。

あのシスターさんに違いないのだろう.........。


ペラ(ページをめくる音)


ドラゴンは、―。

そこから続く内容は、真っ赤に塗り潰されて、読めなくなっている。


ペラ(ページをめくる音)

ペラ(ページをめくる音)

ペラ(ページをめくる音)


ユーマ「終わり......。」

確か、初めて読んだ時の、この絵本の内容は、村人が勇者に感謝して終わる内容だったはずだ。

よくある、勇者の英雄譚、ただ胸糞悪い展開であったのは変わらない。しかし、これは英雄譚でも何でもない。

最初から最後まで絶望で締めくくられた内容で終わっている。童話の中にも、確かにハッピーエンドでは終わらない展開は存在する。

ただ、これは行き過ぎた内容であり、最悪の結末で締めくくられている。

そっと絵本を閉じて協会に戻ろうかと迷ってしまうが、内容が内容であるために少し躊躇ちゅうちょしてしまう。

ユーマ「取り敢えず、メモ通りに書いてある街に行けば、どういうことか分かるのかもしれない。」

俺は、自分で協会に行きたくない理由を無理や作ってから、取り敢えず一旦装備整えるか.....。と言ってから、絵本の内容は忘れることにした。

装備を購入し、アイテムを購入し、ドラフニルという街の場所も分かった。取り敢えず行ってみて、何もわからなかったら、シスターさんに聞くか。

と言ってドラフニルに向かって出発する。

あいつを待ってから次の街に行っても良かったのだが、あいつは最近夜中にしかログインしないのだ。

System:新たな称号を手に入れました。

完全に昼夜逆転した生活を送っている友に、溜め息を付きながら俺は、いつの間にか手に入れた称号に気が付かないまま一人で次の街に向かった。


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:18

Skill:Healing/王国騎士流体術(未完成)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Double Slash(二連斬)/Magic Control(魔力操作)(未完成)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)

称号:プレイヤー/竜の心呪


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「第11話で出てきた絵本の内容が変わっていましたね......。」

「シスターさんは、何を思ってユーマさんにこの絵本を託したのでしょうか?」

「それにドラフニルという街には、いったい何が隠されているというのでしょうか?」

「...........。さぁさぁ、今回も解説コーナーをさせて頂きますよ。」

「今回は、前回"大祭の書"で質問を頂きましたので、行動阻害系のデバフについて、いろいろお話させて頂きます。」

「質問、本当にありがとうございます。」

「他にどんなのがあるかについてですが、登場したものも含めながら解説させて頂きます。毎度おなじみに骨折や、出血も一種の行動阻害系のデバフですし、麻痺や欠損もこれに当てはまります。」

「他には、病気やリュウさんが食らったような目の欠損や、視界を見えなくさせるデバフ、暑さや寒さなどの環境デバフも存在します。」

「暑ければ、脱水と言うデバフがかかりますし、寒すぎれば凍傷で動けなくなってしまいます。」

「感電や、拘束系の魔法も行動阻害の一種ですし、精神汚染も行動阻害の一種です。ただ、精神汚染は、行動阻害と言うよりも思考を阻害するものに近しいため、曖昧な感じではありますけどね。」

「病気になってしまえば、吐き気に頭痛、腹痛などのデバフのオンパレードですし、毒も行動阻害の一種と言えます。混乱というデバフも存在しますし、恐怖と言うのも行動阻害の一種です。」

「もちろん軽めのものだと、行動阻害と言っても動きにくい程度のものだったり、ちょっと違和感がある程度のものですし、耐性があればそもそも効くことはありません。」

「適切な治療を行えば、ゲーム内だと数分から数秒で完治しますし、現実よりも苦しいと感じることはありませんので、ご安心ください。」

「他には、面白いデバフだと酩酊なども存在しますよ。」

「VRでいくらでも飲み食い出来ると言っても明らかに飲み過ぎたと判断された場合に発生するデバフです。」

「それこそ種族によっては、お酒が苦手な種族も存在するため、少しの量でも酩酊のデバフが付く可能性があります。」

「酩酊の時ってどうなるのかって?」

「足がふらふらして視界が、グルグル回ります。」

「実際に回るわけではなく、そんな気がするだけですので、ご安心ください。」

「もちろん、ゲームですので水を飲んだり、耐性を手に入れたり、寝てしまえば治りますよ!」

「寝るで、お馴染みの、催眠も一種の行動阻害のデバフの一つです。」

「詳しく話せば、まだまだデバフは存在しますが、取り敢えずはこんなところですかね。」

「もっといろいろお話したいのは山々なんですが、今後の内容に触れてしまうので、今回はこの辺で.....。」

「それでは、本日の解説は以上とさせて頂きます。」

「ばいば~い。」

「あ、解説してほしい事があったら是非コメントにお書き添え下さい!」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

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