ー 23話

ザシュ

「スラッシュ!」

「Healing」

ザシュ

「ブフォォォ」

ドン!

「スラッシュ!」

「ブフィィィイ」

ドスン!

「よし!レベルが上がった!」

見ての通り俺は、今一人でこのゲームをしている。と言うのも最近またリュウが変な時間からゲームをするようになったため、なかなか一緒にできないのがソロでやる原因となっている。ただ、このままでは俺だけゲームを楽しめない状態が続くため、不本意ながら冒険者組合に行きソロでもできるクエストを受けている最中だということだ。

ユーマ「確かにレベルは上がったし、強くなったとは言ったけど、リリスさん、絶対ソロでクリアできるようなクエストやらせてないよね?」

50分かけてやっとの事で倒したこの猪を見ながら、溜め息を付く。

(こいつの名前は、たしかFumble Boar (ファンブルボア)だったっけか?)

いつもレベル上げをしている草原とは真逆の方から街を出て進んだ先にいるモンスターなのだが、草原にいるモンスターよりも硬いし、早いしで倒すのに時間がかかってしまった。

ユーマ「まぁ、クエストは1体討伐だし、街に戻るか。」


リリス「あ、ユーマさん、お帰りなさい!」

ニッコニコの笑顔で、元気よく俺に話しかけてくるリリスさんに、少しムッとするが、大量の書類を抱えて忙しそうにする彼女を見てしまい怒れずに溜め息を付く。

ユーマ「もぉ、ひどいですよ。あんなに強いなんて聞いてませんって。」

リリス「え?何のことですか?」

何の事を言ってるんですか?というような顔をして、リリスさんは、そんなに難しいクエストだったかなぁと書類を見る。

リリス「ユーマさんが、受けたクエストは、私がおすすめしたこの、山岳に住む猪の討伐ですよね?」

ユーマ「はい、そうですよ。」

リリス「先ほど場所もお伝えした通り、冒険者組合を出てから右に曲がり、まっすぐ行き、草原側とは真反対の方向にある山岳に行くんですよ?」

ユーマ「そうですよ。」

俺は、頷きながらリリスさんに説明する。

リリス「そんなに難しかったですかね?」

不思議そうにしながらも、それはすみませんでしたと丁寧にお辞儀をして誤ってきたリリスさんに、申し訳なくなってしまい、俺も力不足ですみませんと返す。

リリス「リトルボアが、そんなに強かったなんて.....」

俺は、ボソっと呟くリリスさんの言葉に聞き返す。

ユーマ「リトルボアってなんですか?」

リリス「え?」

ユーマ「え?」

リリスさんは、俺が受けたクエストの書類を持ってきて、

リリス「えっと、ユーマさんが倒して来たのってこれですよね?」

と、猪の絵が書いてある書類を見せるのだが、若干見た目が違う。

ユーマ「え~っと、俺が倒したのって、確かファンブルボアですけど?」

と言うと、

リリス「えーーーーー!!!」

っと大声を上げてから、大丈夫ですか?怪我はないですか?とカウンターから出て来て俺の方に寄って確かめてくる。

ユーマ「いやまぁ、ダメージは受けましたけど、Healing技能スキルを持ってるんで、なんとか倒すことができました。」

リリス「いや、え?ん?」

と混乱するリリスさんを見ながら、どうしたんですか?と尋ねると、

リリス「山岳にファンブルボアがいたんですか?」

と、真剣な顔で聞いてくる。

ユーマ「はい、他のモンスターもいないし、そいつだけポツンと山岳で居座っていまして.....。」

と言うと、急いでリリスさんは何処かへ行ってしまい、どうしていいのか分からない俺はその場に残される。

リリス「......で、なんです!!!」

何か奥の方で真剣に話すリリスさんの声が聞こえた後、

「.......は?.........は、どうした?」

と、野太い声が聞こえた後、リリスさんが半泣きになりながら、俺の方に戻って来た。

ユーマ「えっと、その大丈夫ですか?」

リリス「グス、怒られちゃいました。」

と言いながら、ちょいちょいと裾を引っ張り、

リリス「ついてきてください。」

と言って案内されたのは、校長室のような場所で、偉い人風のおっさんがどしんと構えて座っていた。

リリス「お茶もってきます.....。」

と言いながら、部屋を出て行ったリリスさんが少し不憫に感じて見ていると、

NPC「アー、その危険な目に合わせてすまなんだな。」

と言いながらその野太いおっさんが思いっきり頭を下げる。

ユーマ「えーっとその、はい。まぁ結果として生きてるわけですし、気にしないで下さい。」

と言うと、そういうわけにもいかんし、お前さんに詳しい話を聞かんといかんと言って、重々しい質問タイムが続く。


NPC「フム、一応調べておく必要があるな。」

重々しい質問が終わり、ふぅっと溜め息を付き少し楽な姿勢になる。

ユーマ「そんなに、大事なんですか?」

NPC「いつもなら、ここまではしない。たまに生息域を離れてしまうモンスターは、何年かに1度くらい報告がある。ただ今回は、場所が悪い。」

NPC「ここには、冒険者を始めたばかりの初心者が多くいる。」

NPC「そんな中で、報告にないモンスターが、それこそ弱いモンスターだったならまだいいが、今回はそこそこ強いモンスターだったわけだ。」

NPC「そんなのに初心者が出会い、死んじまったら、冒険者組合の責任問題になっちまうし、そんな事があっちゃぁならねぇ。」

ユーマ「そ、そうですね。」

NPCが俺の肩をバンと叩き、

NPC「今回は何も大事にならんかったが、すまんかった。これは、わびだから気にせず持って行ってくれ、後これは、本来はダメな事だが、クエストは達成と言うことにしておくから安心しろ。」

と言って、今日はすまんかったな。もういいぞと言って、この話は終わってしまった。

(これは、あんまり言いふらすなって事だよな。と、貰ったお金を見ながら、そう思う。)

リリス「う~。」

唸り声を上げながら、半泣きで何かを書いているリリスさんに、挨拶をすると、

リリス「本当にごめんなさい~。」

と言って頭を下げて来た。

ユーマ「いや、本当に大丈夫ですよ。それにリリスさんが悪いわけじゃないじゃないですか?気にしないで下さい。」

そう言うと、少し元気になったリリスさんは、ありがとうございます。と言ってお辞儀をする。

俺は、今日はもう冒険者組合でクエスト受けれる雰囲気じゃないなと思い、冒険者組合を後にする。

それよりも、宿屋でも借りて瞑想でもするか。

最近は、ゲームを辞める前に瞑想をしてから辞めるようにしている。特に理由はないのだが、どうせあの体術のスキルを使えるようになるためには、瞑想をしないといけないっぽいことが書いてあったので、それが日課になってしまったのだ。

NPC「いらっしゃい。ユーマじゃないかぁ。今日もかい?」

元気よく話し掛けてくる宿屋のおばちゃん事、宿屋の看板娘(?)と呼ばれるおばちゃんは、ニコッとしながら、部屋の鍵を渡してくれる。

ユーマ「ありがとうございます。」

と言って、代金を支払いいつもの部屋で瞑想のスキルを使う。


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:14

Skill:Healing/王国騎士流体術(未完成)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/High Slash(高斬撃)/Magic Control(魔力操作)(未完成)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)(未完成)/Search(索敵)/Magic Regulation(魔力調整)

称号:プレイヤー


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「今回は、ユーマさんが戦ったファンブルボアについて解説しましょうか。」

「ファンブルボア、本来は山岳地帯に生息していないモンスターのようですね。」

「強さでいうと、14話で書かれたシールドボアよりも防御力は低いものの、素早さはこちらの方が速く、突進以外にも地面を揺らし相手をスタンさせる攻撃や、自身の移動速度や攻撃力を上げる魔法などを使ってきます。」

「そのため、一人では倒すのに時間がかかってしまったというわけですね。」

「次に、魔力調整と魔力操作について説明しましょうか。」

「いつ手に入れたのか分からない、魔力調整ですが、これは魔力操作を持っている状態で、瞑想を行った場合に手に入る技能スキルです。」

「魔力操作は、その名の通り、魔法を"効率よく使う上で"必要な要素の1つですが、魔力調整は、魔力の調子を整え、正常な状態にする技能スキルであり、それこそヒールに似た性能を持っています。ただし、ヒールはHPを回復しますが、それとは違い"MPを回復"するわけではありません。」

「魔力操作は、MPを消費し、魔法を補助することができる技能スキルですが、魔力調整は、MPもSPも"基本的"には消費しない、技能スキルです。」

「それじゃぁこれには、どんな効果が秘められているの?と感じる方も多いかも知れませんが、相手の魔力の調子が悪い時や正常でないとき、それこそ自分自身がそうなってしまった時に効果を発揮します。」

「それでは、本日の解説は以上とさせて頂きます。」

「ばいば~い。」

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