ー 21話

NPC「ん?お~い。」

そう言いながら、元気よく声を掛けて来てくれたのは、あの時出会った警備兵のおじさんだった。

ユーマ「あ、ちょうど探してたんですよ。」

NPC「ん?どうしたんだい、何か困りごとかな?」

ユーマ「困りごとって言えば困りごとではあるんですけど、体術ってスキルを手に入れたくって、何か知りませんか?」

おじさんは少し考えてから、どうして体術のスキルが欲しいんだい?と聞いてきた。

ユーマ「えっと、図書館で体術の本をおススメしてもらって読んだんですけど、使えなくって.....。」

そう言うとおじさんは、ガッハッハと笑いながら、

NPC「あの本を読んじまったのか。あの本を読んだだけで、体術が使えるようになっちまったら、この世の中は今より平和じゃなかっただろうなぁ。」

そう言いながら、ヨシっと言っておじさんはこっちにこいと手招きした。

案内された場所は、警備兵達が普段休憩しているスペースで、そこで酒とジュースを持ってきたおじさんは、俺にジュースを渡して話し出した。

NPC「そうかぁ、お前さん本庶館のばあさんにあの本をおススメしてもらったんだろ?」

ユーマ「あ、はい。でもなんでわかったんですか?」

NPC「そりゃぁ、ここら辺で図書館って言ったらそこしかねぇからなぁ。」

ガッハッハと笑いながら、昼間っから酒を飲みだしたおじさんは、ポンと肩を叩いてから、

NPC「あの日の夜、体力作りとか言ってたのもそれ関連何だろ?」

と言い、真剣な目で見てきた。

ユーマ「えっと、あ、はい。そ、そうです。」

するとおじさんは、ッフと笑って顔を背けてから、

NPC「ありゃひでぇ本だっただろ。」

と言って笑いだした。

ユーマ「まぁ、その何というか。」

NPC「いやぁ緊張させちまったか?」

悪いなぁと言いながら、肩をポンポンと叩いてくるおじさんの顔は、にんまりとしていて続けて笑顔でこう言った。

NPC「ありゃぁ、体術の基礎とは書かれてはいるが、原本じゃねぇ。ありゃぁ、ただの偽物の本だ。」

と言いながら、おじさんは少し待ってなと言って古びた一冊の本を持ってきた。

NPC「あんな変な内容の本読んじまったら、取り敢えずは運動してみるかとか、体力作りしてみないとなとか思っちまうよなぁ。」

そう言いながら、持ってきた本を俺に渡してから、

NPC「これが、原本を写本したやつだ。」

と言い、

NPC「まぁ、お前さんならこの本を渡してもいいかもな。」

と言って、酒を飲みだした。

ユーマ「大切な本なんですよね?」

NPC「そりゃぁ、大切も大切よ。これが他に渡っちまったのをあの婆さんが知ったら、こっぴどく俺が怒られちまうわ。」

NPC「まぁ、だからこの本は、誰にも見せんじゃねぇぞ?あと読み終わったら俺に返せよ?」

とだけ言ってから休憩スペースから出て行った。

(えっと......。王国騎士流体術の基礎。)

<王国騎士流体術の基礎>

著者:Valkyulia Luden Helgen (ヴァルキュリア・ルーデン・ヘルゲン)騎士団長

技能スキルとは、"何だろうか?"そこに疑問を持つ者は数少ない。昔から存在し、私たちの生活と共に技術を積み重ね歩み進化を重ねてきた技能スキルは、時代と共に変化してきた。

技能スキルに限界は無く、類まれなる才能を継承して来た者でさえ、技能スキルの本当の真価を発揮することは、できなかった。

私は、己の生涯を掛けて1つの技能スキルの"神髄"を見ることを目標に、一つの新たな技能スキルを生み出すことに成功した。

それが、王国騎士流体術である。

精神を鍛え、肉体を鍛え、技能スキルとは、何かを知り、己を知った者だけが、この技能スキルの真の価値を見出せるだろう。

肉体とは、"魄"を鍛える事であり、精神とは、"魂"を鍛えることである。

この意味を知った時に、この王国騎士流体術は、技能スキルの枠を超えて本当の力となるだろう。

そのためにも基礎を固める必要はある。

1.肉体

技能スキルに頼らず、己の肉体のみで経験を積むこと。

2.精神

座禅を組み、瞑想を行い己を振り返り見つめなおすこと。

3.健康

健康とは、病気にかからない事ではない。

あらゆる耐性を得て成しえる技能スキルの事を指す。

4.学習

学習とは、単に学びを復習し、繰り返すことではない。

新たなモノを学び、吸収してこそ、その真価を発揮する。

5.体術

攻撃・防御についての基礎を、この先に記していく。


ピッピっピッピ、ピッピっピッピ。

ピッピっピッピ、ピッピっピッピ。

ユーマ「うぉ!あ、アラームか。」

いつの間にか、夕食時になっていた事に気が付き、急いであのおじさんを探す。

NPC「本はしっかり読めたかい?」

ユーマ「はい、ある程度は読むことができたので、後は大丈夫だと思います。」

ユーマ「これ、ありがとうございました。」

そう言うと、おじさんはもう少し貸すけどいいのかい?と言って、本を渡そうとする。

ユーマ「たぶん大丈夫です。もし分からない所があったら、またお伺いしたいんですけど、大丈夫ですか?」

NPC「あぁ、いつでも来い。」

そう言って、おじさんと別れた俺は、ステータスを確認しないまま急いでゲームからログアウトした。


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:9

Skill:Healing/王国騎士流体術(未完成)/Meditation(瞑想)/Slash(斬撃)/Magic Control(魔力操作)(未完成)/Boost Slash (斬撃上昇)/Hideing (身を潜める)(未完成)

称号:プレイヤー


<効果をネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「今回は、体術と瞑想について、解説していきましょうか。」

「ユーマさんのステータス覧から体術が消えて、王国騎士流体術に変わっていましたね。」

「ちなみに、ここでもし原本を読まなかった場合はどうなっていたのかについて解説していきましょう。」

「まず、その場合には、体術としてスキルを手に入れて使えるようになるのでご安心ください。ちなみに多くのプレイヤーは、体術の方のスキルを持っています。しかし体術としてスキルを身に着けてしまえば、王国騎士流体術を手に入れることは、できなくなってしまうというデメリットが存在します。」

「どれくらい性能が違うのかについては、そのうち解説させて頂きましょう。」

「まずは、その体術についての説明です。」

「体術のスキルを使用した場合に、どのような効果があるのかについてですが、HPとSPを消費し、攻撃力、防御力、素早さがUPします。」

「次に、精神攻撃系のスキルに対しての耐性が微量ながらUPする特典もついてきます。」

「ただし、効果時間と効果についてですが、熟練度に強く影響しており、熟練度が低いとほぼ意味のないスキルとなってしまいます。」

「ただ、熟練度を上げるのはとても簡単で、主に体力作りや、戦闘の経験などを通して熟練度が成長します。」

「次に瞑想です。」

「一見、スキルとして瞑想ってどうなんだ?役に立つモノなのか?と感じますが、本来の効果を知らない人達にとっては意味のない外れスキルだと言われているスキルです。」

「本来の効果は、精神の強化で、精神攻撃系のスキルに対する体制を永久的にUPする特典とMPの最大値を永久的に上昇させるという特典を持っています。」

「ただし、何故これが外れと言われているのかについてなのですが、非常に時間がかかるということと、レベルを上げた時にしか効果が表れないため、瞑想を使ったとしてもその時には何も効果を発揮しないというのが気付かれない外れスキルと呼ばれる原因です。」

「また、UPすると言っても数値としては、1~5という微量な数値であるため気付かれにくいというのも原因の1つとなっています。」

「ちなみに補足しておくと、瞑想中は、目を瞑った状態になり、全く動けない状態となるのがゲームをする上で最悪の外れスキルだと言われる原因の一つだったりします。」

「それでは、本日の解説は以上とさせて頂きます。」

「ユーマさんは、果たして王国騎士流体術を身に着けることはできるのでしょうか?」

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