転移の書

転移の書

昔、どこかで立てられた掲示板サイトでの話。まだこの世界にVRというのが出来るずっとずっと昔のお話です。

とある人物が異世界に来たけど質問ある?というスレッドを立てました。

※スレッド:掲示板や電子メール、話題などの事を意味します。

最初は皆、よくある作り話だと馬鹿にし、証拠を見せて見ろと言います。スレッドを立てた人が証拠の写真だと言い写真が載せられますが、画像は歪みまくり虹色に彩られた気味の悪い写真が送られてくるだけでした。

やはり嘘つきだったのか、どこかやばい人物じゃないのか?などと推測が立ち、この話は終わりの方向へ進むかと思われましたが、一人の人がスレッドを立てた人に対し、馬鹿にしながらも取り敢えず話を聞いてみようぜ?と問いかけます。

周りの皆もそれに賛同し、どんな面白い話がスレッドを立てた人から繰り広げられるのか期待しますが、なかなか返信が返ってきません。

逃げたのか、恥ずかしくなったのか、やはり嘘つきだったのか?もしかして異世界で何か問題が?等と推測が立てられ、もう解散でしょ?と言う風な雰囲気が流れ出てきた頃に1つの投稿が為されます。

それは、スレッドを立てた人が朝起きてから現在までの出来事が事細かに書かれた文章でした。

あまりにも長いその長文に、読むのが苦痛に感じた人たちは、要約を頼み何が言いたいのかをスレッドを立てた人に問いかけましたが、"助けて欲しい"、"どうやったら帰れる?"の一点張りでした。

さすがに付き合いきれなくなった人たちは、スレッドを去ってしまいました。

それでも、少ない数ですが残ってくれた人たちが質問を続けます。

"今はどうしているの?"、"危険な場所にいるのじゃないか?"、"どんな人がいる?"

数多くの質問が為され、スレッドを立てた人が1つ1つに返信をします。

"今はどうしているの?">>>"親切な人(?)に助けてもらって今は町の中にいる。"

"危険な場所にいるのじゃないのか?">>>"さっきまで森の中にいて、ウサギに襲われていた。"

"どんな人がいる?">>>"耳が生えてる人とか、鱗がある人とか、小さい人とかいる。"

"あの写真って何?">>>"町の中を撮影したもの。"

"今もってる物って?">>>"着てるジャージと、財布にそれから携帯とモバイルバッテリー。"

"異世界にいるらしいけど、ネットどうなってるん?">>>"俺も良く知らない。警察に電話したら馬鹿にされて切られた。"

"異世界特有のステータスってある?">>>"分からない....今から恥ずかしいけど、言ってみる。"

"ステータスあった?">>>"言ったけど出なかったからないんじゃない?"

"ギルドってある?">>>"今それっぽいところに連れて来られて、身分証作って貰ってる。"

"親切な人って何者?">>>"耳が長い美人な人だった。"

"うらやまけしからん">>>"俺はそんな事より家に帰りたい。というか泣いてたら助けてくれた。"

"魔法ってあるの?">>>"分かんない、聞いてみる。"

"魔法あった?">>>"魔法は、あるらしいけどあんまり良いイメージじゃないみたい。"

"これからどうするん?">>>"なんか身分証作るのに、試験があるらしい。"

"大丈夫なん?">>>"無理、体力ない。帰りたい。"

"Youは何しにここへ?">>>"知らん、朝起きて部屋出たら真っ白な部屋で次の瞬間、森の中とか笑えない。"

"試験ってどんなのなん?">>>"薬草採取らしい。今からそれについて教えてくれるらしいから、また後で話す。"

"おーい、死んだか?">>>"酷いこと言うな。生きてる。家でだらだらしていたい。"

"お前そればっかりだな。">>>"頑張って外に出ようと思って、久しぶりに扉開けたら異世界とか笑えないって。"

それからも、何日か掲示板内で会話が為されるが、最後に。

「助けて、帰りたい。」

その言葉を残して、スレッドを立てた人からの投稿は無くなった。

"大丈夫?"、"生きてるか?"、"充電無くなったか?"

いろいろな推測が立ったが、返事が返って来ることは二度となかった。


XXXX年XX月XX日 ゲーム内にとあるスレッドが立った。

始めてこのゲームでバグが発見される?

このスレッドに語られたゲームは、書架に飾るという名前のゲームで、VRを通し世界を冒険し探検し、様々なことが出来ることで有名なゲームである。その高い技術力に、関心を向ける企業も多い中、今までバグと呼ばれるようなものが一度も見つかっていない事に、多くの者がそのスレッドに興味を引いていた。

ただ、それが本当の話なのかを証明することは結果として誰もできなかったのだが.....。

この中で語られた話では、ゲーム内に特殊なNPCが出現したというものだった。話し掛けても、そのお爺さんは、「家に帰りたい。」という事が語られるだけであり、「家の帰り方、教えますよ」と応えると血相を変えて襲い掛かってくるというものだった。そのスレッドを見て、実際にその場所を多くの人が訪れたが、そのお爺さんに会えることは一度もなかったため、この話は結果として嘘として語り継がれる話となった。


Name:不明

種族:人

職業:不明

Level:不明

Skill:不明

称号:.../元勇者/転移者


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「本日語られたお話は、なんだかホラーチックな話でしたね。」

「スレッドを立てた人は、帰れたんでしょうかね.....。」

「称号に、元勇者と転移者。これがスレッドを立てた人のステータスだったとしたら.....。な~んてね。そんなわけないでしょ!ないよね???」

「急になんでこんな話を書いたのかって?これは、"創造の書"を書く以前からもともと書くつもりでいた"大事な書"です。」

「さぁさぁそんな事より、書架に飾るについて解説させて頂きます。」

「え?今更だって?」

「そう!今更ですけど、解説していきます。」

「それはもうなんでも出来るっぽいんですよ。」

「運動から、料理に、戦闘に、睡眠に、破壊に、魔法に、創造に......。」

「リアルとほぼ変わらないし、リアルを超えているのでは?なんて言われています。」

「医療面でもおかしいほどの技術を有しているっぽいですよね。」

「足が不自由な人、目が不自由な人でもこのVRを通せば、自由に歩き、自由に見渡し....。」

「スタンなんてくらったときに痺れたような感覚の再現なんてほぼほぼ不可能な領域なんじゃって思ってしまいます。」

「なので、沢山の企業がこの書架に飾るに注目しているのに対して有益な情報が何一つ手に入っていないというのは、怖い話ですよね?」

「書架に飾るが発売される以前に何処かの企業が、VRゲームのベータ版を一時期やっていたそうなんですが.....。」

「っと、その話はまた別の機会にさせて頂きます。」

「それでは、本日の解説は以上とさせて頂きましょうかね....。」

「え?ざっくりしすぎ?もっとしっかり説明することがあるんじゃないかって?(フフフ)」

「そんなものは、書架に飾るで語られていけば分かる事ですよ。」

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