技能の書

技能の書

 この世界には数多くの技能スキルが存在する。生活を豊かにするための物から、戦闘を補助するための物まで。その幅広く存在する技能スキルは、いったいどこから誰が作ったのだろうか?


ユーマ「えーっと、体術の基礎。(小声)」

ペラ(ページをめくる音)

<体術の基礎>

著者:Filu(フィル)

Valkyulia Luden Helgen (ヴァルキュリア・ルーデン・ヘルゲン)騎士団長様

技能スキルとは、あくまで補助的な役割である。基礎がしっかりしていなければ、本来の力を発揮することもなく終わってしまう。多くの者は、それに気が付く事なく生涯を遂げる。

類まれなる才能を持った人物でさえ、技能スキルの本当の真価を発揮することはできなかった。騎士団長である私でさえ、剣術において右に出る者こそいなかったが、技能スキルの神髄を見ることは出来なかった。

力とは、肉体を強化する事ではない。

精神とは、心を強化することではない。

教えを否定してはならない、傲慢になる者に心の成長の機会は訪れない。

限界を決めてはならない、停止する者に肉体の成長の機会は訪れない。

1.健康的な肉体

技能スキルの使用を控え、体力作りを行う。

しっかりと朝、昼、夕を食べる。

2.健康的な精神

早寝早起きを行う。

3.経験を積む

何より実践が一番である。

技能スキルの使用を控え、己の身体のみで経験を積む。

4.教えを乞う

技能スキルの優れた人物に教えを乞い、率先して取り入れる。


「体術の基礎とは、すなわち健康でいる事である。決して楽な道などない。」

Valkyulia Luden Helgen (ヴァルキュリア・ルーデン・ヘルゲン)騎士団長お姉様のお言葉です。


ユーマ「それから、っと。(小声)」

ペラ(ページをめくる音)

(ッゲ!)

そっとページを閉じる。

(なんというかこれ、体術の基礎とかじゃなくてストーカー(?)いや、ファン(?)が書いた本だろ。)

(この騎士団長さんも大変だなぁ。)

(朝から晩までのスケジュールがびっしり記録されてるし、これが凄いだとかあれがカッコいいとかしか書かれてない。)

俺は少しゾッとして背中辺りが冷たくなったのを感じる。

ユーマ「い、一応ステータスを見とくか。(小声)」


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:4

Skill:Healing/体術(未完成)


(ん?スキルが増えてはいるけど未完成ってなんだ?)

(今度、リュウにでも聞いてみるか。)

ピコン

System:メールが届きました。

ユーマ「お、ちょうどいい時に。」

--PosM--

佑真:今日も一緒にやるか? 14:00

達也:今起きた。 15:21

佑真:やっぱりそうかw 15:24

達也:今日は、俺この後、用事あるから一緒にやるのはまた今度にしてもいいか? 15:26

佑真:了解。それじゃぁまた今度、やろうぜ。 15:27

達也:おう! 15:29


(うーん、あいつ来れないらしいし、このことについてはネットで調べてみるとして、とりあえず残りの本でも読むか。)

<剣の振り方>

著者:Deks(デックス)


ユーマ「なるほどなぁ。これはしっかり剣について書いてあったなぁ。(小声)」

と言いながら、俺はさっき読んだ体術の基礎という本に目をやる。

(いや、まぁしっかりスキルとして手に入ったとはいえね。なんかファンが書いたであろう本の内容を見てしまったのは、どこか申し訳なさと気恥ずかしい気持ちになるな。)

(というか、なんでこんな本が図書館に置いてあるんだよ。)

と思いつつも、最後の本を手に取る。

ユーマ「これが魔法に関する本かぁ。(小声)」


※"×"は文字が欠けて見えなくなってしまった部分です。

<天魔の書>

著者:××××

 遠い昔のお話です。創造主が、新たな聖命を誕生させるもっと昔に、翼の生えた種族が空の上で暮らしておりました。実り豊かな大地に様々な動物。争いの無かった平和な世界は突如として終わりを告げてしまったのです。

 地上は、血に染まり動物は怪物と化し、生命の本質はあらゆる方向で転嫁てんかしました。元凶となった彼女の名を呼ぶ者は決していません。そのため記録としてここに綴ります。

 彼女の名は、"×××××××××"。

決して名を呼ばれることのない彼女は、××であり、魔の元凶である。

××××××は許しはしないだろう。×が××××××××.....

 天は主を、魔は彼女を表したこの書は、未来永劫語り継がれるべき話である。

(ページには、沢山の図形と絵柄が書かれてある。)

私は彼らの怒りに触れてしまったため、この書を託すとする。どうかこの本を読むあなたが未来に紡いでほしい。

魔とは、決して悪ではない。

聖とは、決して善ではない。

このことを覚えていてほしい。


ユーマ「う~んやっぱり、何度読んでもよく分からないなぁ。ほとんどが黒塗りだったり破れていたりしているんだよなぁ。(小声)」

ユーマ「最初に出てきた新たな聖命っていうのは、昨日読んだ本のえーっと確か名前は、癒しの聖職者だっけか?あれで出てきた聖命の書と関係あるのかな?普通は聖命って生命って書くよな?(小声)」

(それともこのゲームでは、こうやって書くのが普通なのか?)

(とりあえず、本を返してからステータスを確認して良い時間だし、いったんゲームは辞めるか。)

ユーマ「あのぉ、本を貸していただいてありがとうございました。」

NPC「はいはい、またおいでさね。」

おばあさんはニコっとしながらそう言って杖を取り出して本を元の場所に戻している。

カランカラン


シュイン

[ユーマさんがログアウトしました。]


PlayerName:ユーマ

種族:人

職業:剣士

Level:4

Skill:Healing/体術(未完成)/Slash(斬撃)/Magic Control(魔力操作)(未完成)

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