ー 14話

シュイン

リュウ「やっぱ納得いかねぇ。」

今日のレベル上げの事を呟きながら俺はゲームにログインした。

(同じ戦闘して、同じ敵を倒したはずなのになんで俺の方がレベル低いんだ?)

そんな疑問が頭から離れない俺は、夜にゲームにログインして今度あいつと一緒にやるときよりもレベルを上げておいてびっくりさせよう考える。

リュウ「ただ、夜の敵ってマジで強いらしいんだよな。こんな低レベルでもやっていけるのか?」

そんな風に不安になりながらも、俺は今日の昼に来た草原にたどり着いてユーマが言ってた事を思い出す。

リュウ「なるほど。映画のワンシーンってこういう事か。」

確かに昼間とは違った風景で、空には満天の星空と大きな月、そして幻想的な草原が広がっている。

リュウ「これは、あんな反応にもなるわな。」

そんな事を思いながら昼間と同じように簡単に倒せるモンスターがいないか辺りを見渡す。

確かに昼間に見かけなかったモンスターが少なからずいるのだが、昼間見たようなモンスターもいて、昼よりは少ないがプレイヤーも見かける。

リュウ「なんだ。思ったよりは、ソロでもやっていけそうだな。」

そんな事を思いながら、俺はソロでも比較的に簡単に倒せそうな猪型のモンスターと、ネズミ型のモンスターを探す。

Monster:Shield Boar (シールドボア)

昼間の猪よりも一回り大きく、毛皮が灰色の猪と目が合って戦闘モードに突入してしまう。

リュウ「いや、これ昼間のやつとたぶん違う種類のモンスターだよな?」

昼間のは子豚って感じの猪だったのに対して、今は想像している猪よりは少し小さいがしっかり猪って感じの大きさのモンスターだ。

リュウ「とりあえずは、直進攻撃を避けてその隙をついて横から槍スキルで攻撃だな。」

猪は、2歩後ろに下がって前傾姿勢を取り俺の方へ突っ込んできた。ギリギリのところで俺はそれをかわしスキルで攻撃をする。

リュウ「スタブスピア!」

槍の矛先が一瞬緑色に光ったような気がした瞬間、俺は身体が引っ張られて前方の猪の腹に身体ごと突っ込んでしまう。

リュウ「うぉ!もっふもふだ。」

硬そうな見た目の毛とは裏腹にすっごい柔らかい毛に一瞬気を取られるのだが、現在の状況が最悪である事を思い出す。

猪は、攻撃されたことで猛烈に鼻息を荒くさせ、方向転換をし横腹にいる俺を思いっきり吹き飛ばす。

リュウ「うぉぉぉぉぉぉお。」

空高く待った俺の視界は、あり得ないくらいグルグルと回って木が生えたところに身体が吹っ飛び、木に思いっきり身体をぶつける。

リュウ「いってぇぇえ。」

いくら身体能力に秀でている種族であろうともレベルが低い俺のHPは、今の攻撃だけで大ダメージを受けているのが分かる。

リュウ「ゲ!?マジ?」

俺の視界の右上に大量のアイコンが付いている。

(スタンに骨折、それから内出血で出血ダメージ?あとは、窒息?)

どこから来たのかわからない窒息アイコンまでついていて俺の寿命が残り少ない事を悟る。

リュウ「いやいや、ダメだろこんな情けない死に方!」

リュウ「スキル使ったせいで死にましたとか笑えねぇよ。」

そんな事を思い歯を食いしばってゆっくり立ち上がるのだが、猪はもう前傾姿勢を終え突っ込んできている。

なんとか横に這いずって避ける事はでき、猪の方を見ると猪は木に頭を打ち付けて頭を左右に横に振っている。打ち付けられた木を見て見ると明らかに凹んだ後がある。

リュウ「こんなんくらったら即死確定じゃねぇか。」

俺は慌ててインベントリーからポーションを取り出して飲み干す。

リュウ「ぷはぁ。マッズ。」

HPを確認したいところだが、そんな暇なんて与えてくれず、猪は再度突っ込んで来る。俺は、横にジャンプして地面に腹を打ち付ける。

窒息と出血ダメージのアイコンが点滅して、身体がさらに重くなるのを感じる。

(これってもしかしてやばいやつか?)

そんな事を思いながら俺は、インベントリーから二本目のポーションを取り出して飲みだす。

それを見た猪は鼻息を荒くさせ、前傾姿勢を取りまた突っ込んで来るのかと思った瞬間。

「ブホ!」

という猪の声と共に俺の視界が一瞬真っ暗になり、何が起きたのか分からなかった。

目の前が明るくなった時には、俺の右半分の視界だけ暗闇になっていて、体中に切り傷がある。

(これって魔法ってやつか?)

明らかに剣や小さい刃物で切られたような傷跡は、猪の攻撃だとは到底思えない。

右上に新たなアイコンだけが見える。

(欠損アイコン.....。)

※欠損:プレイヤーの身体の一部が操作できなくなった際に現れるアイコン。一定時間もしくはポーションや回復魔法などで治る。

リュウ「こんなん勝てねぇわ。」

諦めて膝をついていると横から、猪に魔法が飛んでくる。

ドン!

猪が一瞬よろめいてターゲットが別のプレイヤーに代わる。

「大丈夫かぁ!」

大声で叫びながら近寄って来たプレイヤーの見た目は、明らかに重量級戦士って感じの見た目なのに、背中に弓を装備していて走ってくるのも早い。

「ほらよ。」

と言いながら回復薬を渡してくれて、包帯も巻いてくれた。

「あんた、ポーションで骨折とか直してたろ?」

リュウ「はい、これしかなくって。」

「あー、もしかしなくても初心者か?」

リュウ「昨日始めたばかりの初心者です。」

「なるほどなぁ。このゲーム骨折とか欠損とか、いろいろデバフあるだろ?」

リュウ「そうですね。今だって骨折に欠損それから出血に窒息までついてます。」

「あんた、よくそれで生きてられたな。」

「まぁ一応、回復魔法だとかポーションだとかでも治りはするんだが、適切な処置をする方が安いし治りも早いんだよ。」

「だからまぁ骨折だとかだったら安い包帯を、出血だったら塗り薬の回復薬を使うのがベストってわけだ。」

「もちろんそういう安いやつってのは限定でしか治らないから、骨折に塗り薬なんて塗っても治りはしないわけだが。」

と包帯を巻いてくれながら説明をしてくれる。

リュウ「そうなんですね。それより助けていただいてありがとうございます。」

「良いってもんよ。」

そう言いながら、男は立ち上がって猪を引き受けてくれたプレイヤーの方に手を振る。

「俺ら最近は、3人でパーティー組んで夜を回ってるんだ。良かったら一緒にやるか?」

リュウ「良いんですか?」

「おぉいいぞ。1人じゃ夜は辛いだろ?」

そうにこやかに返事をして、仲間の方へ戻って行った。

しばらくして猪を倒して戻ってきたプレイヤー3人と自己紹介をする。

「俺は弓使いのゲンだ。」

「私はシスターのヒマで、こっちは同じ初心者さんのヨリヨリさん。」

「実際はヨリヨリミドリさんって名前なんだけど名前が長いからヨリヨリさんって呼ぶようにしてるの。」

リュウ「リュウです。初心者でまだよくわからない事多いんですけど、よろしくお願いします。」

ゲン「よろしく!」

ヒマ「よろしくね。」

ヨリヨリ「よろしく。」

リュウ「そういえばヨリヨリさんが魔法使いなんですか?」

ヨリヨリ「そう。さっき俺が魔法撃ってタゲ代わって引き受けた。」

※タゲ:ターゲットの略。

リュウ「さっきは、ありがとうございます。」

ヨリヨリ「いや、だ...大丈夫。俺も前にあんな感じになってるとこゲンさんに助けてもらったばっかりだから。」

ゲン「いやぁ、ヨリヨリの時も危なかったが、リュウはさっきデバフばっかりで、もっとやばかったよな。」

リュウ「あ、はい。まじでさっき助けてくれなかったらヤバかったんで、助かりました。」

ゲン「そんなゲームの中なんだから、敬語なんてなしにしようぜ。」

ヒマ「そうそう、気楽に楽しくやりましょ?」

リュウ「わかりまし、分かった。よろしく!」

リュウ「それにしてもこのゲームなかなかレベル上がらないんですけど3人はどれくらいになってます?」

ゲン「俺は、レベル8だな。」

ヒマ「私は、レベル11ね。」

ヨリヨリ「まだレベル4かな。」

リュウ「俺、友達と昼にレベル上げしてたんですけど、友達の方がレベル上がるの速くって、 なんか悔しかったんで夜にレベル上げしに来たらこんな始末ですよ。」

ゲン「あーそっか知らないのか。このゲームな種族によって経験値に違いがあるんだよ。じゃないと種族によっては有利不利が生まれるだろ?」

リュウ「え!?そうなんですか?」

ゲン「そう、俺は森人つまりエルフってやつ?で、レベルが8なんだが、このヒマさんは、俺と同じ時に始めてレベル上げしてるんだが種族が人だから経験値が少なくてもレベルが上がりやすから、ヒマさんは俺よりもレベルが3上にあるってわけだ。」

ヒマ「ちなみにヨリヨリさんもエルフで、レベル上げが私よりも大変なはずなんだけど、もうレベルが4もあるのよ。」

ヨリヨリ「いや、そんなことないですよ。皆さんがクエストとか付き沿ってくれるので、レベルが速く上がるんです。」

リュウ「ちなみに俺って種族が竜なんだけど、どれくらいレベル上げって大変なんですかね?」

ゲン「あー、竜人かぁ。詳しくは知らないんだが、竜人はカッコイイ名前で人気だから攻略サイトに沢山情報があってそれ情報だと、序盤のレベル上げは大変らしいな。」

ゲン「必要な経験値が多いからなかなかレベルが上がらない代わりに人族でいうレベル3か4くらいのステータスをレベル1の時から持ってるっていうくらいには、ステータスが高いんだ。その代わり必要経験値も大幅に上がるってわけで....。」

ゲン「でもまぁ。レベル上げは大変だけど、さっきの戦闘で分かったと思うがあんだけデバフがあっても耐えれていただろ?」

リュウ「確かにそうですね。」

ゲン「普通は、あの猪の一撃をくらったら初心者なんて即死なのにな。」

リュウ「え!?そうなんですか?」

ヒマ「そうよ。あの猪に何度やられた事か。」

ヨリヨリ「ちなみに昼間の猪もまともにくらえば一撃で死んじゃうと思うよ。」

リュウ「え!?あんな子豚みたいに小さいのに?」

ヒマ「えぇ、あの見た目で空高く吹っ飛ばせるんですもの。ひとたまりもないわ。」

ゲン「回復はどんな感じだ?リュウ。」

リュウ「あ、欠損以外は治りました。」

ゲン「あー、欠損かぁ。もう少し待つか?」

リュウ「大丈夫です。右端が見えずらいだけで戦闘には問題ないので。」

ゲン「そんじゃぁレベル上げしようか。」

そう言って立ち上がったゲンさんは、弓を手に持ちヒマさんはメイスを取り出し、ヨリヨリさんはステッキを取り出した。


PlayerName:リュウ

種族:竜人

職業:槍士

Level:3

Skill:.../???/Stab Spear(突槍)


PlayerName:林野ゲン

種族:森人

職業:弓士

Level:8

Skill:不明


PlayerName:ヒマ

種族:人

職業:聖職者

Level:11

Skill:不明


PlayerName:ヨリヨリミドリ

種族:森人

職業:魔法士

Level:4

Skill:.../.../Wind Arrow(風の矢)

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