成長の書
成長の書
町の外の草原は、昨日の夜に見た景色とはまた違った景色が広がっている。
ユーマ「おぉ、すげぇな。」
リュウ「え?昨日、ここで薬草採取したんじゃなかったのか?」
ユーマ「いや、そうなんだけど夜は、なんか映画のワンシーンみたいな景色で、今はなんというか、田舎?というかThe 草原って感じの景色だなって思ってさ。」
リュウ「へぇ、そんなに違うもんなんだな。」
と、ニヤニヤしながら聞き返してくる。
ユーマ「はぁ、そんじゃどこでレベル上げするんだ?」
そう言いながら、辺りを見渡すと周りでは、多くのプレイヤーが狩りや薬草採取などをしている。
リュウ「そうだなぁ。もうちょい人がいない場所でポップするのを待つか。」
※ポップ:モンスターが現れることを指します。
ユーマ「そうだな。んじゃ、森の中とか?」
リュウ「あー、森は辞めた方がいいぞ。強いモンスターがたまにいるし、視界も悪いからな。」
リュウ「行くなら、もうちょいレベル上げてからだな。」
ユーマ「そうなのか。んじゃぁあの辺にするか?」
リュウ「そうだな、あの辺行くか。」
と、岩の方を指差した後に付け加えて、
リュウ「まぁ、お前なら森の中でも生き残れるんじゃね?」
と笑いながら言ってくる。
ユーマ「もういいだろそれ?」
リュウ「わりぃわりぃ。」
そうこうしている内に1匹のモンスターがやって来る。
Monster:Gray Wolf (灰色狼)
リュウ「来たぞ。初戦闘!」
そう言いながら、リュウは長い槍をインベントリーから取り出し、大声で叫ぶ。
リュウ「俺の新品装備一回目の犠牲者!」
ユーマ「むっちゃ物騒な掛け声辞めろよ。」
そう言ってリュウは、モンスターにダメージを与える。
俺も続いて、ひるんでいる敵に攻撃する。
「キャン!ウゥゥ!ガァァウ!」
狼は、俺たちから少し距離を離れ、睨みながらグルグルと俺たちの周囲を回っている。
リュウ「一撃は無理かぁ。」
そう言いながら、リュウが再度突きの姿勢を取り攻撃するが外してしまう。
それを見計らって狼がリュウに飛び掛かって噛みついてきた。
リュウ「うお!やられた。」
そう言うリュウの腕を見ると赤いエフェクトが出て、リュウのHPが徐々に減っている。
リュウ「くそぉ。運がいいやつだな。出血ダメージ食らってる。」
ユーマ「なんだそれ?」
リュウ「あぁ、出血ダメージは出血部分を押さえるか、回復しないと一定数ダメージ受け続けってちょ待てよ。」
そんな説明はお構いなしに、狼は背後に回って飛び掛かってくる。
リュウ「ちなみに、血を流し過ぎると貧血でスタンになることもあるから気をつけろよ。」
※スタン:戦闘不能や気絶の事。
今度は狼が俺の方に飛び掛かって来て思ったよりも重いその狼に体制を崩した俺は、狼にのしかかられ身動きが取れない。
ユーマ「ちょ、おま。辞めろって。」
それを見たリュウはチャンスとばかりに狼の横腹に槍を突き刺す。
「キャィィィイン!」
そう甲高い声と共に、目の前で狼が消えた代わりにウィンドウが現れる。
ユーマ「経験値と素材が手に入ったねぇ。」
リュウ「いやぁ、危なかったな。」
そう言いながら、リュウは草原で寝っ転がって上を見ながら大声で笑う。
ユーマ「あれ、最弱モンスターってやつだろ?」
リュウ「そうらしい。」
ユーマ「強くね?」
リュウ「まぁVR初心者の初戦闘にしちゃ生きてるだけで大勝利みたいな?」
ユーマ「まぁ、そうかぁ。」
俺も草原で寝っ転がりながら綺麗な青空を見上げる。
ユーマ「夏やなぁ。」
リュウ「暑いなぁ。暑さなんて感じないけど。」
ユーマ「メタい事いうなよ。」
リュウ「レベル上がったか?」
ユーマ「まだ。」
リュウ「俺もまだ。」
ユーマ「まだやるか?」
その言葉を聞いてリュウは立ち上がり、
リュウ「あったりめぇよ!」
と言い、槍を振り回す。
ユーマ「あぶねぇな。まぁ頑張るかぁ。」
そう言って俺も立ち上がって、武器を構える。
そんな話をしているとまたモンスターがやってきた。
Monster:Small Wild Boar (突撃子猪)
ユーマ「なんかさっきより強そうなんだけど。」
リュウ「豚だと思おう。」
ユーマ「牙あるのにそんな事思えるかぁ!」
ドドドドドドと聞こえてきそうな勢いで俺の方に突っ込んで来るのだが、俺が横に避けた先には、岩がありそこに子猪はぶつかって倒れてしまう。
ユーマ「え?」
リュウ「え?」
「フゴゴゴオォ」
なんとも可哀そうなその姿に一瞬思考が止まってしまうが、リュウが透かさず槍で攻撃し、それに続いて俺も攻撃する。
「フゴォ」
起き上がってきた子猪の目は充血していて見ているこっちもそうとう怒り心頭である事が見て取れる。
「フオォォォオ」
と甲高い声でまた突撃して来るのだが、横に良ければ簡単に回避できてしまうので、なんというか本当に初心者向けって感じの敵である。
ユーマ「なんかこいつ。」
リュウ「あぁ、見た目だけだな。」
何と言うか可哀そうだと言えば可哀そうなのだが、見た目通りに動きは早いのだ。ただ、本当に猪突猛進しかしないし猪にしては豚くらいの大きさなので、横に避けやすいく簡単に攻撃が回避出来てしまう。
そのため、先ほどより苦戦する事なく倒してしまった。
ユーマ「経験値は少ないけど、安全に倒せるしこんなやつでいいよな。」
リュウ「まぁ、さっきみたいな狼よりはマシよな。」
そんな会話をしながら子猪を探すのだが、周りの初心者っぽいプレイヤーはその事に気づいてるいるわけで、周りには子猪を狩っているプレイヤーしか見かけない。
ユーマ「まぁ気長にね。」
リュウ「まだ昼だしな。ゆっくりレベル上げすっか。」
俺とリュウは雑談しながら、子猪を見つけてはレベルが上がるまで狩り続けた。
PlayerName:リュウ
種族:竜人
Level:1
PlayerName:ユーマ
種族:人
Level:1
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