ー 12話

リュウ「おーい、ユーマ待ったか?」

ユーマ「いや、俺も今さっき来たとこなんだよ。」

リュウ「珍しいな。」

ユーマ「何がだ?」

リュウ「いや、だってお前、いつも10分前には集合場所で待ってるじゃないか?」

ユーマ「あぁ確かに。」

リュウ「なんか忙しかったのか?」

ユーマ「いや、先にこのゲームの中に来てはいたんだけど、お前との待ち合わせの時間まで、まだ時間があったから先に簡単なクエストやってたんだよ。」

リュウ「なんだよ。それならもっと早く言えよな。」

リュウ「俺も早くログインして遊びたかったのに。」

ユーマ「いや、お前それだと勉強しねぇじゃねぇか。」

リュウ「アハハ、バレたか。」

リュウ「そんじゃ、そのクエストは終わったのか?」

ユーマ「あぁ、さっき終わって今から報告するとこだ。」

リュウ「ちなみになんのクエストやったんだよ?」

ユーマ「教会の清掃」

ブハッと言いながらリュウが笑う。

リュウ「お前、清掃って。RPGのゲームだぜ?」

ユーマ「いや、それはそうなんだけど。このクエストをNPCに紹介されて、断ったら可哀そうな顔してたからな。」

リュウ「お人好しすぎだろ。ゲームだしNPCだぜ?」

ユーマ「まぁ、それはそうだけどな。どうにもNPCがリアルすぎて.....」

リュウ「あー、確かに。このゲームのNPCってNPCらしからぬというか、良い意味でリアルだよな。」

そんな事を二人で言いながら取り敢えず、冒険者組合の中に入る。

リュウ「んじゃユーマは、クエスト報告行ってこいよ。」

ユーマ「おう、行ってくるわ。」

カウンターでは、リリスさんが忙しそうに書類を見てハンコを押していた。

ユーマ「リリスさん、クエスト終わったんでその報告です。」

リリス「あ、ユーマさん遅かったですね。何かあったんじゃないかと少し心配したんですよ?」

リリス「あの辺、少し治安が悪く初心者でも危ないので。」

(やっぱ初心者でも危ないくらいには、治安が悪いんじゃないか.....)

そんな事を心の中では思いながらも、クエスト達成書を渡す。

リリス「はい、確認しました。報酬を渡しますので少々お待ちくださいね。」

そう言ってリリスは椅子から降りて奥の方へ行ってしまった。

少し待っていると、リリスが袋を持ってやってきた。

リリス「これが達成報酬の200Shellと、こちらは追加報酬の本です。」

ユーマ「この本って?」

リリス「なんか神父様が、これも報酬として渡してほしいとのことでして。」

ユーマ「そ、そうなんですか。ありがとうございます。」

リリス「いえ、いえ。こちらも助かりました。いつまで経ってもこのクエストはやってくれる人がいなかったので。」

俺は、アハハと苦笑いしながら、それじゃぁ人を待たせてるのでまた来ますと言ってリュウのところに戻ってきた。

リュウ「お~、終わったか?」

ユーマ「あぁ、なんか変な本を追加報酬で貰った。」

リュウ「そうか。まぁ座って何か食えよ。」

そう言いながら、リュウはすでに漫画肉とジュースを頼んで座っている。

ユーマ「食うの早すぎだろ。」

リュウ「まぁでも、雑談にはこれが一番だろ?」

そう言いながら、昨日初めて来たばっかだろという突っ込みは置いておいて俺は、漫画肉とは別の料理を頼んでみる。

リュウ「んで、報酬はどうだったんだ?」

ユーマ「あー、経験値が少々と200Shellと、この本を貰った。」

リュウ「報酬やっぱショボいな。」

ユーマ「NPCが困るほど不人気なクエストらしいからな。」

ブハ。とジュースを吹き出しながらリュウは笑う。

リュウ「まぁ普通は、清掃クエストだけでも最低1000は、貰えるらしいしな。」

さっきそこのプレイヤーに聞いた。と言い、いつの間にか仲良くなっている他のプレイヤーに手を振っている。

ユーマ「まぁ、場所が場所で、失礼だけどボロイ教会だったからかもな。」

リュウ「へぇ。場所ってどこだったんだ?」

ユーマ「昨日行かなかった場所しかないだろ?」

リュウ「あー、確かに昨日探索中に協会は見てないもんな。」

リュウ「ってことは?つまり、行ったのか?」

ユーマ「その通り。」

ブハッハッハッハ。と今日一番の大笑いをする。

リュウ「ユーマ、お前って初心者らしくねぇな。」

ユーマ「仕方ないだろ?NPCに騙されて、昨日は夜が危険だってお前は、教えてくれなかったんだからな。」

リュウ「いやぁ、それにしても昨日は、ハードモードの夜を平然と帰って来て、今日は無法地帯からの生還か。」

リュウはニヤニヤしながら俺を見る。

リュウ「なんかもう。すげぇやつだな。」

リュウ「しかもNPCに騙されるとか滅多にないぞ。」

ユーマ「初心者は、滅多に襲われないから大丈夫だって言ってたんだよ。そしたらさっきなんて言ったと思う?」

ユーマ「初心者でも危ない場所だってよ。」

ブハ。と言い、手でテーブルを叩きながらまたリュウは笑いだす。

リュウ「良いように使われたな。」

リュウ「まぁ、そのユーマ。命大事にだぞ?い・の・ち・だ・い・じ・に。」

そう言いながら、昨日の講習で聞いたであろう言葉をリュウは言いながら、笑いだす。

ユーマ「はぁ、最悪だ。」

リュウ「まぁまぁ。最悪な場所から生還した勇者様よ?元気出せって。」

そんな冗談を言いながら、リュウはずっとニヤニヤしている。

ユーマ「はぁ。もういいよ飯食うから。」

俺は、先ほど頼んで持ってきてもらった料理の、チーズとスモークウインナーに齧り付く。

ユーマ「うめぇなぁ。」

そう言いながら、はぁと溜め息を付き、ジュースを一気飲みする。

リュウ「まぁ、冗談はこのくらいにして、まずはレベル上げするか?」

ユーマ「そうだな。」

リュウ「んじゃまぁ。食い終わったら行くか。」

そう言って、また雑談しながら頼んだ料理を食べ進める。

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