ー 11話

遠い昔のお話です。

1匹のドラゴンが、山の奥で多くの財宝を蓄えて暮らしていました。

ある時、山の麓にある村で干ばつが起き、多くの村人が飢えて死んでしまったのです。困り果ててしまった村人達は、山の奥まで歩きドラゴンに語り掛けます。

「どうか私達に、財宝を少し分けて頂けませんか?」

ドラゴンは、その要求を快く受け入れ村人達に多くの財宝を与えました。

村人達は、ドラゴンに感謝をし、村人達が飢えて死ぬことも無くなり、しばらくは幸せに暮らしました。

しかし、2度目の干ばつが起き、財宝が底を尽きかけていた村人達は、またドラゴンに頼み込みます。

「どうか私達をお助け下さい。」

ドラゴンは、その要求を断りました。それに怒った村人達は、自分達がどれだけ大変な思いをしているのかをドラゴンに語り掛けます。ドラゴンは渋々財宝を渡し、村人達はそれを持って村に戻って行きました。

ドラゴンは知っていました。村人達が働くことなく贅沢な暮らしばかりを求めていることを。

ドラゴンは知っていました。村人達が私のせいで傲慢になってしまったことを。

ドラゴンは知っていました。村人達の優しさは、もうそこには存在しないことを。

"白い綺麗な服"を着た村人達が再びドラゴンのもとへやってきました。

「私達に財宝を渡せ。」

ドラゴンは、要求を断りました。それに怒った村人達は、また自分達がどれだけ辛いのかを語り掛けます。しかしドラゴンはその要求を断りました。すると村人達は渋々村へと戻って行きました。

(これで良かったんだ。)

ドラゴンは、心が痛くなりながらも、いつの日か村人達が優しかったあの頃に戻ることを信じていました。

何日かたったある日、ドラゴンのもとへ一人の男がやってきました。その男はドラゴンに語ります。

「村人達を苦しめているのは、お前だな!」

ドラゴンは、それを聞き私がそんな事をするわけがないと言いますが、聞き入れてはくれません。

「お前のような邪竜の話なぞ聞けるか!」

ドラゴンは、全てを察しましたが、抵抗することはしませんでした。

抵抗する事のないドラゴンは、あっという間にその男に倒されてしまいました。

"白い服"を着た村人が言います。

「勇者様ありがとうございます。これで私達は幸せに暮らせます。」

そう言ってドラゴンが住んでいた洞窟へ村人達は入って行き、村人達は泣きました。

「勇者様ありがとうございます。」

そう涙を流しながら、何度も何度も勇者様に感謝しました。


おしまい。


(なんでこんな、残酷な物語なのだろうか。)

ユーマ「なんというか、酷い話ですね。」

神官「そうなんですよ。でもこれって史実を基にした物語なんですよ。」

そう言いながら、シスターさんは悲しそうな顔をする。

子供達は、俺が絵本を読んでいる間にいつの間にか寝てしまったようだ。

ユーマ「こういう絵本って最終的にハッピーエンドとか、なんか教訓になる事を描くんじゃないんですかね?」

神官「そうなんですか?こういう絵本は結構多いんですよ?」

そう言いながら、シスターさんは俺から絵本を回収して何処かへ行ってしまった。

神官「それでは、子供達も寝てしまった事ですし。」

ユーマ「あ、そうですね。そろそろ俺も約束の時間になりますし、ここら辺で。」

俺は、子供達を起こさないように静かに立ち上がって、お辞儀をして教会を出て行った。神父さんも俺にお辞儀をして、また来てくださいとニコニコ手を振りながら見送ってくれた。

ユーマ「今何時だ?」

時間を見ると、14:50になっている。

(クエスト報告は後にして、あいつと合流するか。)

そんなことを考えながら、あいつにメールをする。

--PosM--

佑真:おーい、達也。今日って何処に集合するんだ? 14:52

達也:あー、冒険者組合前でいいんじゃね? 14:55

佑真:了解。それじゃ、そこに集合ってことで。 14:56

達也:おう。 14:56


そんなやり取りをして俺は、急いで冒険者組合の方へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る