善悪の書

善悪の書

"善"とは何でしょうか?

"悪"とは何でしょうか?

善とは必ずしも良い行いであるとは限りません。

悪とは必ずしも悪い行いであるとは限りません。

"天"が我らの導きであるように....

決して消えてはならぬ、記録と共に.....

ゴーン ゴーン ゴーン (鐘の音)

神官「すみません。祈りを捧げる時間でしたもので。」

ユーマ「いえ、大丈夫です。」

神官「クエストのために来て下さった冒険者様ですよね?」

ユーマ「えっと、はい。そうなりますね。」

神官「ありがとうございます。あまりこの依頼を引き受けてくれる方がいないものでして、困り果ててしまっていましたので。」

ユーマ「そ、そうなんですね。」

(そりゃ、こんな無法地帯の近くかつ、ボロボロな教会の清掃なんて誰もしたくないでしょうよ.....。それにどうせやるなら、皆冒険したいでしょうし。)

俺は苦笑いしながら、アハハと笑う。

ユーマ「それで、どこの清掃をすればいいんでしょうか?」

神官「ご案内いたしますね。冒険者様には、こちらの倉庫の清掃をお願いしたくてですね。」

渡り廊下を歩いて教会の中を案内してもらっていると、奥の方からひょこっと顔を出して、多くの子供が近寄ってきた。

子供「ねぇねぇ。お兄ちゃんは何処から来たの?」

子供「冒険者ってやつか?カッコイイな!」

子供「初めて来た人ー。」

子供「遊んでー、遊んで。」

神官「こら。ダメですよ。冒険者様にご迷惑をお掛けしては。」

ユーマ「アハハ、大丈夫ですよ。」

俺がそう言うと、子供たちはもっと近くまで寄って来て動けなくなってしまう。

子供「大丈夫だって。」

子供「遊んで、遊んで。」

俺が、子供たちに囲まれて動けなくなっていると、奥から女性の神官がやって来る。

神官「こらー!あなた達!冒険者様はお仕事のために来て下さったのよ。」

神官「邪魔しちゃダメでしょ!」

神官「あとは、頼みますよ?シスター。」

神官「はい、すみません。神父様。この子たち、珍しかったみたいで。」

神官「ほら、行きますよ。」

子供「はーい。」

子供「ちぇ、せっかく遊んでもらえたのになぁ。」

子供「うぅ....」

子供たちは残念そうにしながら、シスターに連れられて奥の部屋に消えて行ってしまった。

神官「騒がしくてすみません。」

ユーマ「いえいえ、掃除が終わって時間がありましたら、良ければ子供たちと交流させてください。」

神官「いいのでしょうか?」

ユーマ「はい。子供は好きですし、構いませんよ。」

神官「それでしたら、早く終わらせましょう!」

そう言って、神父さんは腕まくりして張り切っている。

神官「こちらの部屋でして、暗いので足元にお気を付け下さい。」

ユーマ「なんというか、すごいですね。」

神官「しばらく依頼を受けていただけなかったもので......」

倉庫は、蜘蛛の巣がそこら中に張っており、ネズミまでいる。木の箱に入ったジャガイモなんかは、芽が出てしまっている有様だ。

ユーマ「これは、時間がかかりそうですね。」

神官「お恥ずかしい限りです。」

そう言いながら黙々と作業を進めて行き、綺麗になった頃には、午後2時すぎになっていた。

(ゲームの中とはいえ、この重労働は精神的に疲れたな。)

神官「ありがとうございます。これで依頼は完了です。」

そう言いながら、クエストの紙にハンコを押して頂く。

ユーマ「それじゃぁ、まだ時間がありますので、子供たちと遊ばせて頂きますね。」

神官「本当ですか?あの子達も喜びます。」

そう言いながら神父さんは、ニコニコしながら案内してくれた。

神官「神父様、冒険者様。どうかなさったんですか?」

神官「冒険者様が、子供達と遊んで下さるそうです。」

神官「まぁ、ありがとうございます。子供達も喜びます。」

そう言いながら、シスターさんは俺の手を握り上下に振って、お辞儀をする。

そうこうしているうちに、子供達が近寄ってくる。

子供「遊んでくれるの!」

子供「肩車ー。」

子供「絵本読んで!」

子供「追いかけっこ。」

次々と、いろんな要求が出てくるので俺は困ってしまう。

ユーマ「アハハ、1つずつな。」

子供「追いかけっこ!」

子供「えー、絵本!」

子供「肩車!」

子供「冒険者ゴッコ」

神官「こら、こら。冒険者様が困っていますよ。仲良く決めなさい?」

子供「はーい。」

ユーマ「それじゃぁ、じゃんけんして決めようか?」

子供「じゃんけんって何?」

子供「新しい技?」

ユーマ「じゃんけんって言うのはね。」

そう言って、一通り説明して勝ったのは、女の子が要求していた絵本を読むことだった。

子供「えー、絵本やだぁ。」

神官「我儘言わないの。」

子供「はーい。」

シスターさんと神官さんが他の子どもをなだめながら、俺は持ってきてもらった絵本を読み始める。


遠い昔のお話です.........

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