ー 10話

父「佑真、父さんは、母さん送って行くから。留守番頼んだぞ?」

佑真「分かったー。」

父「昼は、これで好きなもんでも頼んどけな。」

と言って、俺に昼飯代を渡して母さんと一緒に出掛けて行った。

ガチャ、パタン。

佑真「まだ、3時まで時間があるし、勉強でもしとくか。」

そう言ってから俺は、自室に戻って夏休みの宿題を進めていく。

(どうせ、あいつは今頃寝てんだろうなぁ。)

そんなことを考えながらやっていると、昼になっていた。

佑真「昼飯、どうすっかな?」

佑真「たまには、外で飯食ってくるか。」

俺は、部屋着から外出用の服に着替えてファミレスに向かう。

「いらっしゃいませ。1名様でしょうか?」

佑真「はい、1名です。」

「席にご案内いたしますね。」

佑真「はい。」

(考えて見れば見るほど、昨日のNPCってすごかったんだな。)

と感じてしまう。受け答えから表情の変化に手の動かし方。どれをとっても不自然な感じがしなかった。こういう話は聞いたことがないだろうか?

「「不気味の谷現象」」

ロボットを人間の容姿に近づければ近づけていくほど親近感が増す一方で、ある一定の度合いを越してしまったとき、"強い嫌悪感"を感じ奇妙に思えてしまう現象の事だ。

しかし、昨日のNPCにそれを感じることはなかった。まるで生きているみたいに....


「ありがとうございました。」

佑真「はぁ、食べた食べた。」

佑真「帰ったら、VR初めてあいつ待っとくか。」

そんな事を言いながら、俺は少しワクワクしながら家に帰った。


シュイン

陽気なBGMが聞こえてくるのと共に、美しい街並みが俺の目の前に広がる。

(まだ、時間があるしギルドに行ってクエストでも受けてくるか。)

そんな事を考えながら、昨日行った冒険者組合の場所へ向かう。

(それにしてもいろんな露店が並んでるなぁ。)

昨日の夜にはなかった露店が路肩に並んでいる。路地の方にも目をやると路地にもいくつか露店があるが、昼なのに少し暗いせいもあって怪しい雰囲気もあり近寄りがたい。

(全身黒ずくめで、顔隠して商売って......まぁあぁいうロールプレイ(?)っていうのも楽しみ方の一つか。)

そんなことを考えながら、冒険者組合に向かう。

昨日の夜とは違った最初に来た時の明るい感じのBGMが流れている。

リリス「ユーマさん、こんにちわ。」

ユーマ「こんにちわ、リリスさん。」

そう言いながら、リリスは奥からまた大量の書類を持ってやってくる。

ユーマ「いつも大変そうですね。」

リリス「そうですよ。大変も大変!超大変ですよ。」

リリス「この時期になるとなんでか人が増えて.....ハードワークってもんじゃないですよ!」

(アハハ.....そりゃ夏休みに入ってゲームをプレイする人が増えますからね.....)

なんてメタい発言は、どうせリリスには理解できない事なので心の中に仕舞っておく。

リリス「それで?ユーマさん、どのようなご用件でしょうか?」

ユーマ「クエストを受けてみようと思いまして、何か初心者におススメなのってありますか?」

リリス「初仕事ですね!やる気があっていいですね。」

リリス「ちょっと待ってくださいね。」

そう言って、持ってきた書類の中から、見つけました!と言って差し出してくる。

リリス「これなんかどうです?」

ユーマ「教会ですか?」

リリス「はい、教会の清掃です。」

ユーマ「確かに、初心者っぽいけど.....」

リリス「はぁ、皆さんそんな顔して受けてくれないんですよ。」

(そりゃぁ、ゲームの中でまで掃除なんてしたくないでしょうよ。しかもRPGのゲームで.....清掃したいなら、そういうVRゲームに行けばいいわけですし.......)

そんな事を思いながら、リリスの顔を見るとなんとも可哀そうな顔をしていたので.....

ユーマ「分かりました。それ受けますから、そんな顔しないで下さいよ。」

リリス「ほんとですか!ありがとうございます。」

そう言って、ニコニコしながらハンコを押して、地図を渡してくれる。

リリス「ここに協会があるんですよ。」

そう言ってリリスが指差した場所は、無法地帯地域の近くである。

ユーマ「あのぉここ、治安悪いって聞いたんですけど?」

リリス「アハハ、そうみたいですね。でも大丈夫ですよ。初心者さんが襲われることは滅多にないので。」

そう言って、断られないかな?断られないよね?とこちらをチラチラ見てくるので、俺は、分かりました。と答える以外に選択肢がなかった。

リリス「それでは、こちらのクエスト受理いたしました。完了の際はこちらの紙に教会の方からハンコを頂いて私どもの方に持ってきて頂けたらと思います。」

ユーマ「わかりました。」

そう言って断るに断れない半強制クエストが始まってしまった。

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